ぶれない軸はジャズピアノ×コミュニティ人間科学部での学び。マルチな音楽家を目指して

掲載日 2026/7/13
No.399
〈2025年度 学友会表彰(青山連合会表彰)団体最優秀賞受賞〉
コミュニティ人間科学部
コミュニティ人間科学科 2年
藤崎 円緒
東京都立豊多摩高等学校出身

OVERTURE

2年連続で学生ビッグバンドの頂点を極めたロイヤルサウンズジャズオーケストラのバンドミストレス*に2年次で就任した藤崎円緒さん。コミュニティ人間科学部での学びを音楽表現へと広げながら、将来はミュージシャンを目指し、多角的な活動に全力で取り組んでいます。

オスカー・ピーターソンから矢野顕子へ、
広がった音楽観がコミュニティ人間科学部の進学につながる

ピアノを習い始めた幼い頃、ピアノは「楽譜に書かれた通りに正確に弾くもの」というイメージが強くありました。ある日、兄の野球の送迎の車中で、カーステレオから偶然流れてきたのが、オスカー・ピーターソン*のジャズピアノでした。初めて耳にしたその演奏は、同じ楽器とは思えないほど自由で生き生きとしていて、子どもながらに強い衝撃を受けたことを覚えています。「ピアノって、自分の表現として音楽を生み出していいんだ」と気づき、私の中で大きな変化がありました。それ以来、クラシックに加えてジャズにも取り組むようになり、小学校2年生からは作曲も始めました。現在はジャズを軸に、演奏だけでなく、作曲、編曲にも取り組みながら、音楽と向き合っています。また、青山学院大学の青山連合会所属部会である「ロイヤルサウンズジャズオーケストラ」(ロイヤル)の一員として、仲間とともに演奏をつくり上げる経験も大切にしています。

*オスカー・ピーターソン…20世紀が生んだ芸術、ジャズの巨人の一人で、卓越した演奏技法と芸術性をたたえられるピアニスト。1999年に高松宮殿下記念世界文化賞を受賞するなど、国際的に高い名声を得ている。

進路を考える中で、高校進学では音楽大学付属高校も検討し、さらに将来を見据えて音楽大学への進学も考えました。それでも、さまざまな学びや経験を積んでみたいという思いから、音楽専門の教育機関には進学しませんでした。作曲や編曲など幅広い表現に挑戦していくためには、演奏技術を磨くだけでなく、多様なバックグラウンドを持つ人たちと関わる環境に身を置いて刺激を受けたほうが、自分の音楽の幅が広がると感じたからです。

きっかけは、大好きなアーティストの矢野顕子さんのライブで、「わらべ歌」をフュージョン*にアレンジした楽曲に出会ったことです。素朴でどこか懐かしい旋律が、ジャズやロックの要素と重なり合って、新しい音楽として立ち上がっていく。その自由でしなやかな表現に触れ、「伝統と今はこんなふうにつながっているんだ」と感動して、わらべ歌に関心を持つようになりました。

*フュージョン…1960年代後半に生まれたジャズのスタイル。電気楽器を取り入れ、ロックやR&B、ラテンなど、ジャンルの異なる音楽の要素を融合した音楽。1970年代にはジャズ界を席巻した。

消えていく音楽も多い中で、わらべ歌が現在まで受け継がれているのはなぜなのか? その理由を知りたい、自分の作曲にも取り入れたい、と思うようになりました。わらべ歌は、子どもたちが遊びや日常の中で自然に歌い、口伝えで受け継がれてきた伝承歌です。人と人との関係や暮らしの中で育まれてきた歌は、コミュニティの中で生き続けた文化なのでは?と感じました。こうした関心を深められる場として興味を持ったのが、青山学院大学のコミュニティ人間科学部でした。文化やコミュニティの継承に焦点を当てた学びに魅力を感じたこと、そして相模原キャンパスを見学して、広々と緑豊かで、落ち着いて学べる環境に一瞬で魅了され、進学を決意しました。

高校時代には軽音部に所属。卒業生でバンドを組んで演奏することも

強豪ロイヤルサウンズジャズオーケストラで知る、
学生ビッグバンドの魅力と本気度

大学では学生ビッグバンドで活動することを、入学前から決めていました。中でも青山学院大学のロイヤルに入部を決めたのは、ジャズにとどまらず、ファンク*やフュージョンなど多彩なジャンルに挑戦できる点です。学生ビッグバンドでは伝統的なジャズを中心に扱う団体が多い中、「ジャンルにとらわれず音楽をつくる」というロイヤルのスタイルは、わらべ歌を現代風に再構築する矢野顕子さんの音楽にひかれた原体験と、自分の目指したい方向が重なるように感じました。

*ファンク…1960年代後半にアメリカで生まれた音楽ジャンル。アフリカ系アメリカ人が置かれてきた社会的背景の中で発展し、抑圧に対する自己表現としての側面を持つ。強いベースとリズムによるグルーヴが特徴で、ヒップホップにも影響を与えた。

ロイヤルではシンセサイザーを担当することが多い

ロイヤルは、今年で創立55周年を迎える学生ビッグバンドの古豪で、レギュラーバンドは、2025年のヤマノ・ビッグバンド・ジャズ・コンテストで最優秀賞を受賞し、2連覇を達成するなど、伝統と実力を兼ね備えた強豪バンドです。その成果が評価され、学内の2025年度学友会表彰でも青山連合会表彰部門の最優秀賞(団体)も受賞しています。

実際に入部してまず驚いたのは、先輩方の音楽に真剣に向き合う姿勢です。学業と両立しながらも高い演奏レベルを追求する環境で、私自身も気が引き締まり、意識も大きく引き上げられました。

1年次には、ジュニアバンド(1・2年次生で構成)のリズム・セクション(鍵盤・弦・打楽器)で、ピアノとシンセサイザーを担当しました。メンバー全員が音楽への強いこだわりを持っているので衝突は日常茶飯事、時には険悪な雰囲気が流れることすらありました。それでも「昨日の自分たちより上手くなって高みを目指す」という思いだけは共通に、議論と試行錯誤を重ねながらセッションの技術を磨いていきました。毎年、全国のジュニアバンドが山梨県の河口湖ステラシアターに集まる学生ビッグバンドの祭典「国際ジャズオーケストラ・フェスティバル(ステラジャム)」に出場し、第15回大会で私たちリズム・セクションがベストセクション賞を受賞しました。この経験を通じて、メンバー同士の対話も増え、お互いの感性の違いを生かし、共有しながら音楽をつくり上げる楽しさを実感できるようになったと思います。

ロイヤルのジュニアバンド集合写真(2025年夏、ステラジャム)

2年次になって、レギュラーバンドのバンドミストレス*を務めています。先輩方から推薦していただいたことがきっかけで、まだ経験も十分とは言えない中での役割に戸惑いもありましたが、その期待に応えられるよう、演奏だけでなく、運営にも主体的に関わりながら、バンド全体の音楽をより高いレベルへと引き上げていけるよう取り組んでいます。

*バンドミストレス…演奏面・運営面の両方でバンド全体をまとめる女性リーダー。演奏面だけでなく、練習や公演の運営などバンド全体の舵取りを担う

ソロ活動は、ロイヤルとは別に、小学2年生から続けてきた個人としての音楽活動です。昨年は、「ジャパン・ジャズ・ポップ・ピアノコンペティション」(JJPPC)で、ジャズ・演奏家ティーンズ部門で銀賞を受賞しました。
ビッグバンドの演奏には、多くの楽器が重なり合うことで生まれるサウンドの厚みや高揚感がありますが、ソロ演奏には、自分の感情をそのまま音に乗せられる自由さがあります。ロイヤルでの経験を通して、ソロでも右手と左手の対話、自分一人の中でアンサンブルを成立させる意識が強まり、聴かせたいメロディをより印象的に響かせられるようになりました。

ロイヤルではシンセサイザーを担当する機会も多く、ピアノとは求められる演奏技術の違いに課題も感じています。大学ビッグバンドでシンセサイザーを取り入れている団体は少ないので、ロイヤルならではのサウンドを支える重要なパートです。一方で、触れる時間が長くなると、ピアノ特有の打鍵の強さや繊細なタッチの感覚が鈍ってしまいます。両方を大切にしたいので、できる限りグランドピアノに触れる時間を確保するよう意識しています。授業の空き時間には、相模原キャンパスの器楽練習室のグランドピアノをフル活用しています。ロイヤルの練習拠点は青山キャンパスですが、両キャンパスに充実した環境が整っていることは、音楽をライフワークとして続けている私にとって大きな支えであり、青山学院大学の魅力の一つです。

クラシックとスペイン音楽、ジャズが融合したパスカル・ヒメノ作曲「演奏会用リズムエチュード 第1集 」。大好きな曲でJJPPCジャズ演奏家ティーンズ部門銀賞を受賞

多様な視点と出会い、学びを深める――
コミュニティ人間科学部での学び

コミュニティ人間科学部のカリキュラムは自由度が高いので、自分の関心から出発した課題を、実際のフィールドでの体験と結びつけながら深めていけるところに魅力があります。「地域社会調査法入門(基礎調査)」では、地域を見る視点や調査方法を学びながら、自分でテーマを設定し、現地調査にも取り組みました。祖父母が暮らす福井県では、田んぼの形をスケッチしたり、子どもたちが「手まり唄」で遊ぶ様子を観察したりしながら、わらべ歌が暮らしの中で自然に受け継がれてきた文化であることを実感しました。自分の興味から学びが広がっていく感覚が新鮮で、ワクワクしながら学んでいます。

また、3年次に取り組む「地域実習2」では北海道・上士幌町を選びました。地域づくりの先進的な取り組みを現地で学びたいと考えたためです。実習では、地域の課題解決やまちづくりに関わる実践的な活動に取り組む予定ですが、その一方で、北日本に多く残る伝承文化にも以前から関心があります。現地での滞在を通して、機会があれば地域に根ざした踊りやお祭りなどの伝統芸能にも触れてみたいと考えています。

1年次前期から現在まで楽しんで履修している「英語講読」担当の黒岩裕先生と(右が藤崎さん)

黒岩裕先生の「英語講読Ⅰ・Ⅱ・」の授業では、世界で起きているさまざまな出来事や社会課題について英語の文章を読み、学生同士が日本語で議論し、英語で感想をまとめます。意見交換を通して多様な考え方に触れられることが面白く、時事的なテーマの議論は毎回盛り上がり、自分にはない視点、新しい発見があります。

授業だけでなく、課外活動を通して学びを深められる点も魅力に感じています。先生方とテーマごとに活動する本学独自の「アドバイザー・グループ」では、学部や学科にとらわれず、自分の興味に沿って参加することができます。私も今年度から、沖縄・琉球の芸能や文化を研究されている輪島達郎先生のアドバイザー・グループに参加し、三線をはじめとする沖縄の伝統音楽について学びを広げていく予定です。

相模原キャンパスといえば学生食堂IVYShopのソフトクリーム。日替りフレーバーが学生たちに人気(中央が藤崎さん)

世界と社会を知り、大学でのさまざまな経験を通して、
自分の音楽を深めていきたい

大学に入学してからの1年を振り返ると、勉学と音楽活動のほかにも、視野を広げる経験に挑戦できたことが高校時代との違いです。

春休みには、ステラジャムの関連プログラムとして、カリフォルニア大学バークレー校(UCB)でジャズセッションを学ぶ2週間の短期留学「California Jazz Camp」に参加しました。現地では、ジャズを共通言語にレッスンやセッションが進み、言葉だけに頼らず、音で表現をやり取りする体験がとても印象に残っています。想像以上にレベルの高い学生に出会い、「負けられない」と強い刺激を受けることもあれば、同じように学業と音楽を両立しながら努力している姿に親近感を覚えることもありました。自分の現在地を見つめ直すとともに、世界の中で音楽に向き合うということのリアルを実感することができました。夜は仲間とジャズクラブに足を運んで、本場アメリカのセッションに触れるなど、濃密で、かけがえのない2週間となりました。

UCBで開催された「California Jazz Camp」にて(前列右端が藤崎さん)

夏休みには、音楽に限らず視野や見聞を広げたい、地域社会と行政の関係を、実際の現場で知りたいと考え、インターンシップにも参加しました。地方議会に関わる現場で、広報資料の作成や住民の方への聞き取りなどのお手伝いをしました。インターン先の議員は、自ら地域を歩き、住民と直接向き合いながら課題を見つけ、関係を築く姿勢を徹底されている方で、その様子を間近で見る中で、「人と人との関係の中で社会がつくられている」ということを実感しました。中学生の頃、先輩のミュージシャンから「最終的に音楽業界で生き残れるのは、高い演奏技術を誇る人ではない。人とのつながりを大切にすることができる人だ」と言われたことがあります。インターンシップを経験したことで、この言葉は音楽に限らず、社会全体に通じるものだと実感できるようになりました。これからもこの言葉を自分の軸として大切にしていきたいと思っています。

ロイヤルの練習は、大会前になると1日10時間に及ぶこともあり、学業やソロ活動との両立が大変だと感じることもあります。それでも、一つのことに絞るより、いくつかのことに同時に向き合い続ける方が、私は最後まで本気でやりきれると思っています。逃げ道をつくらないことで集中力も高まり、時間の使い方やモチベーションも自然とレベルが上がっている感覚があります。

また、学部での学びを他の活動に生かすことも意識しています。例えば、地域活性化の授業で学んだ「誰に向けて、何を達成するのか?」という視点は、バンドミストレスとしてのマネジメントやイベント企画にも生かせると感じています。ロイヤルでは今春、実力ある多くの先輩方が卒業・引退し、新体制でのスタートとなります。不安もありますが、成績にとらわれず、今の私たちだからこそ生み出せるサウンドを形にしていきたいと考えています。

コミュニティ人間科学部での自由度の高い学びは、作曲や音楽的な感性にも良いインスピレーションを与えてくれていると感じています。今後の専門的な授業や地域実習をとても楽しみにしています。わらべ歌をはじめとする地域文化について、自分なりの視点で深く探求し、この学部での学びを生かした独自の音楽制作につなげていくことが、在学中の大きな目標です。そして将来は、学生時代に得たさまざまな経験を糧に、演奏・作曲・編曲を幅広く手掛ける、マルチに活躍できるミュージシャンになれたら、と思っています。

学内の器楽練習室を活用しながら、勉学と音楽、両方に全力で取り組む藤崎さん

※各科目のリンク先「講義内容詳細」は掲載年度(2026年度)のものです。

コミュニティ人間科学部

コミュニティ人間科学部では、日本国内の地域に着目した社会貢献を追究し、地域文化とそこに暮らす人々の理解を深め、より良いコミュニティ創造に寄与する力を培います。幅広い知識の学び、体験し行動するプログラムを通じて、自ら課題を発見・解決し、地域の人々との互助・共助のもとにコミュニティの未来を拓く力を育成します。
日本の地域社会は、高齢化や過疎化などさまざまな課題に直面しています。その解決に力を発揮するには、地域の人々に接し、活動の実際を知り、共感する体験が重要です。コミュニティ人間科学科では、地域の人々や行政についての学びをはじめ、市町村やNPOと連携した体験的実習などを展開。専門的知識や技術をもつ職業人として、地域の活性化や持続的な活動支援ができる人材を育てます。

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