No.273
掲載日 2023/11/16

150周年記念企画
「未来を拓く青学マインド」

目標を明確にし、
自分を客観視する

|校友・卒業生|

浦和レッドダイヤモンズ
小泉 佳穂

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青山学院高等部サッカー部
長澤 広大/山澤 剛瑠

青山学院は2024年創立150周年を迎えます。その歴史の中で学院から羽ばたき、自分の道を切り拓いた数多くの卒業生が、さまざまな分野で活躍しています。本インタビューでは、青山学院大学卒業後、プロサッカー選手としてキャリアを築いてきた小泉佳穂選手が、自らの可能性を広げるために、どのように考え、研鑽を重ねてきたのか、青山学院高等部サッカー部所属の長澤広大さんと山澤剛瑠さんが迫ります。

Profile

浦和レッドダイヤモンズ

小泉 佳穂

2019年 経営学部経営学科卒業

前橋育英高等学校3年次に全国高校サッカー選手権大会(インターハイ)の準優勝に貢献した後、青山学院大学体育会サッカー部で背番号10を背負い、エースとして活躍。大学卒業後は、FC琉球を経て2021年シーズンから浦和レッドダイヤモンズ(レッズ)に所属。左右両足を利き足とし、両足から繰り出す高精度のキックを武器に、攻撃的ポジションの中心を担っている。

Before Interview

インタビューを行う2人は、青山学院高等部サッカー部でサッカーに取り組みながら将来について模索しています。憧れの存在であるJリーガーの小泉選手にお話をうかがい、それぞれが未来を拓くヒントを見つけます。

青山学院高等部 3年 サッカー部所属

長澤 広大

1人では出来ないチームスポーツであるという点がサッカーの魅力だと思います。勝利するためにチームでひとつになれた時は最高に楽しいです。将来も、仲間と共に何かひとつのものをつくり上げる仕事がしたいと思っており、選択肢を広げるために勉学との両立に努めています。私のポジションはゴールキーパーですが、あまり身長が高くなく、目立った技術があまりないので改善したいと考えています。サッカー選手として恵まれた体格とは言えない小泉選手が、どのような工夫をしてプロ選手への道を歩み、現在に至ったのかお聞きしたいです。


青山学院高等部 2年 サッカー部所属

山澤 剛瑠

今年度のインターハイ東京都予選では、高等部サッカー部として数十年ぶりのベスト20位という結果に貢献でき、とても達成感がありました。幼い頃からサッカーをやってきたので、将来的にはサッカーに関わる仕事に就きたいと考えています。プロ選手を目指しているわけではありませんが、部の中では本気でサッカーに向き合っている方だと思います。部活への取り組む姿勢の温度差があるチームメイトもいる中で、どのようにモチベーションを保てばいいか、手がかりを得たいと思っています。

TALK THEME

1st TALK

「学生時代、
大切にしていたことは︖」

「モチベーションを保つためには、
自分の意志で道を選ぶことが
大事だと思います」

私は高校卒業後、青山学院大学に進学する予定です。サッカーという中心軸がある中で、小泉選手はどのような大学生活をおくり、勉学にはどのように向き合っていましたか。

長澤さん

小泉さん

サッカー部の活動に集中していたので、遊びに行くことはほとんどなく、本当に部活一色の大学生活でした。そんな中でもきちんと単位をとるためにしっかり勉強し、レポートやテストにも真剣に取り組んでいました。
勉学との両立という面では、サッカー部は相模原の緑が丘グラウンドで活動を行い、青山キャンパスと離れているので移動が大変でした。基本的に練習は朝行うのですが、7時半から2、3時間練習した後、青山キャンパスに移動するので、必然的に出られる授業が3限以降に限られてしまうのです。学生なので授業に出席するために練習を休むことは認められていましたし、実際みんなそうしていましたが、僕はなるべく練習に出てそれ以外の時間の授業で単位をとるようにしていました。何に重きをおくかという価値観の話なので、どちらが良いということではありませんが、自分としてはメリハリをつけてがんばったなと思うところです。授業の前にはよく17号館の学生食堂で昼ご飯を食べていましたね。「イチナナカレー」が好きでした。

経営学部で学ばれましたが、印象に残っている授業やサッカー選手としてのキャリアに生かされている学びはありますか。

長澤さん

小泉さん

サッカー部の部長(当時)である宮崎純一先生のゼミナールでサッカークラブの経営について学んだことは、今に生きていると言えるかもしれません。どういうところからお金が出て、どのような人たちの協力のもとでクラブの経営が成り立っているのかということは理解できていると思います。あとは、昨年まで浦和レッズの監督がスペイン人だったので、知っている単語が聞き取れる程度ではありましたが、第二外国語でスペイン語を学んでいたのが多少役立ちましたね。

大学ではプロ選手を目指しているチームメイトが少なかったとお聞きしました。そのような環境でプロ選手を目指すモチベーションはどのように保っていたのですか。

山澤さん

小泉さん

本気でプロを目指している人はほとんどいなかったので、モチベーションを保つのはかなり難しかったです。でも、プロを目指していなくても一生懸命やっている人はいましたし、高校のチームメイトは皆プロを目指していたので、そういう人たちががんばっている姿に刺激をもらって気持ちを高めていました。ただ一つ言えるのは、大学生での部活動は、自分がどうしたいか、自分の意志で道を選ぶのがモチベーションを維持するために大事かなと思います。

大学時代に出会った将棋にサッカーとの共通点を見つけ、熱心に取り組まれているそうですね。あえてサッカー以外のことからサッカーについて考えるヒントを見つけようとされているのはなぜでしょうか。

長澤さん

小泉さん

これはもう習慣だと思います。いわゆるプロフェッショナルな人に憧れがあり、小学生の頃からプロアスリートなどのドキュメンタリーを見るのが好きでした。自分もそういう人に少しでも近づきたいと、いろいろな分野で結果を出している人の思考の中に、自分にも重なる部分とか、参考にできるところがないか見るクセがついているのだと思います。


2nd TALK

「強いチームを作るために、
必要な考え方とは︖」

「自分の視点と相手の視点は別。
自分の視点が必ずしも
正しいとは限らない」

プロになるといろいろな国籍や年齢の人とコミュニケーションをとる必要があると思います。外国人選手や年上の選手とは試合中どのようなことを意識してコミュニケーションをとっていますか。

山澤さん

小泉さん

外国人選手だからといって特別何かを意識するということはないですね。込み入った話でなければ大抵のことは簡単な英語で通じますし、普段からしっかりあいさつし、笑顔で話していれば問題ないと思います。
年齢についても、4歳上でも10歳上でもそれほど意識は変わりません。それよりも、その選手がどういう功績を残してきたかというところが大きいですね。たとえば同じクラブで活躍された小野伸二さんなど、日本代表として長年活躍してきた選手とお会いしたときには、さすがに緊張しましたし、気軽に話しかけられません。でも、そういう選手は自分とは経験値が違うので、向こうから声をかけてくれることが多く、こちらから何かを働きかける必要はあまりなかったですね。
ただ、相手が誰であろうと意識しているのは、自分が見ている視点と相手が見ている視点は別だということです。プレーが噛み合わない時、相手には相手の思惑があってプレーの選択をしているわけで、自分の視点が必ずしも正しいとは限らないということは心に刻んでいます。

なぜそうした意識を持たれるようになったのですか。

山澤さん

小泉さん

シーズンを通して戦っていると、チームとして結果が出せない難しい時期があるものです。サッカーは、たとえばメッシのようなとんでもなく強烈な選手がいたら、それだけで勝つこともありますが、基本的にはチームの意識が統一されて、全員が同じ方向を向いて戦っている時が強いものです。特に昨シーズンうまくいかない時期を経験した中で、やはり各々の意識や思惑がバラバラになっていると感じ、そういう時にどうしたらチームとして同じ方向を向けるのかということをすごく考えるようになりました。それぞれの考えがあるのですから、自分が正しいという視点で相手を否定し、強引に意見を通そうとしてもうまくいきません。チーム全体で不和が生まれないようにやっていくためには、時に、あえて相手の考えにゆだねてみたり、自分の考えに寄ってもらったり、というようなバランス感覚や調整がすごく大事だと思っています。実際はとても難しいことなので、口で言っているほどできているとは思いませんが、考え方としては意識しているというところです。


3rd TALK

「自分の可能性を広げるために、
大切なこととは︖」

「自分を客観視して、
自分に足りないものを
考えられる人はどんどん伸びる」

これまでサッカー選手として自分を高めるために、どのようなことを考え、工夫されてきましたか。

長澤さん

小泉さん

サッカー選手になっている人は身体的に恵まれていたり、センスがある人が多いと思います。そういう才能がある人はそのまま素直に進めばいい。では、そうでない人はどんな工夫が必要かというと、考えてサッカーをやることだと思います。
僕の場合は、自分が今できてないことを見つめ直して、そこをしっかり埋めていくという方法で努力してきました。ドリブル、パスなど各項目の能力のマックスが100とします。それをほとんどできない0の状態から結構できる60の状態までもっていくのと、60の状態から100にするのを比べると、60から100の方が差が小さく、労力的に楽なように思えますが、実際は労力的には0から60の方がはるかに楽だと思うんです。長所も突き抜ければ、その一本で世界と勝負できるレベルに到達できるかもしれませんが、たとえば、部活内では一番筋トレができて、フィジカルが強いとしても、それを日本のトップレベルまで上げるのは実際とても厳しい。逆にその選手が足元の技術が20くらいしかないなら、それを60にする方が絶対に簡単なはずで、総合値を伸ばすうえでは有効だと思います。
必ずしもこのやり方が正解ではないと思いますが、どのような方法を選ぶにしても自分の現在地を確認できないと、伸びしろも見つかりません。自分のことをしっかり客観視して、今自分に足りないものや、自分がやるべきことをしっかり考えられる人がどんどん伸びるのではないでしょうか。それに、考えて努力する能力は、一度手に入れられればいろいろなことに応用が利きます。自分自身、考えながらサッカーに取り組んできたことで、どんなことをやってもある程度習得できるようになり、上にいけるという自信がつきました。

私たち中高生におすすめの本はありますか。

山澤さん

小泉さん

好きな本は挙げたら切りがないくらいありますが、読みやすくてためになるという点では『夢をかなえるゾウ』をおすすめしたいです。印象に残っているのが、意識を変えるのではなく環境を変えるという話です。意識や思考する習慣を変えるのはとても難しいので、努力しようとがんばっても続かない。それなら環境を変えてしまえばいいということです。たとえば、家に帰ってテレビをダラダラ見てしまうのを変えたいのなら、テレビのコンセントを抜いておく。そうすると、テレビを見るときにコンセントをつなぐという作業が入り、そこでブレーキがかかりますよね。今でも役に立っている考え方です。他には、バスケットボールに打ち込む高校生たちの姿を描いたマンガ『あひるの空』、陸上の青春小説『一瞬の風になれ』も、高校時代に読んで、勇気をもらいました。

これから自分の未来を拓いていこうとしている青山学院の児童・生徒・学生に、メッセージをお願いします。

長澤さん

小泉さん

人は自分が生きやすい形、生きやすい場所で生きるのが一番幸せだと思っています。そのために、できるだけ早いうちに自分のことを知るのがとても大事だと思います。自分はどのようなことに喜びを感じるのか。どのようなことが得意なのか。どういう人が好きなのか。そういうことがわかれば、自分に合った生き方ができるので、人生がすごく豊かになるんじゃないかと思います。

本日はありがとうございました。

長澤さん

山澤さん

After Interview

今後のキャリア設計や夢の実現に向けて、インタビューを行った2人が小泉選手のお話から見つけたヒントは?

できることを伸ばすよりできないことに目を向けるという気づき

長所も飛び抜けてしまえば世界と戦うことができるものになるが、まずは自分の短所を知ることが大切であり、60%できることをさらに伸ばすよりも0%から60%に伸ばす、そんな考え方に感銘を受けました。自分にはなかった考え方であり、すぐに実行に移してみたいと思いました。私は現時点ではまだはっきりとした夢が決まっていませんが、どんな分野にも当てはまる考え方だと思うので、今後自分が選んだ道で力が発揮できるよう、しっかり心にとどめておこうと思います。(長澤)


足りないところを改善し、成長につなげたい

小泉選手がプロを目指すモチベーションをどのように維持していたのかというお話から、視野の持ち方によって意識は変わる、高い目標を実現できることを学びました。今、所属する環境が全てではないこと、目標や志を同じくする友達や仲間の存在、彼らの姿勢に目を向けて、刺激を受けることの重要性です。小・中学校時代の友達でプロ選手を目指している友達や、自分よりも熱心にサッカーに取り組んでいるチームメイトがいるので、そのような仲間を意識しながら部活動に取り組むことで、今まで以上にモチベーションを保てるのではないかと感じました。これからそれを実践することで、チームの強化と自分の成長に繋げていきたいです。(山澤)

150周年特別企画

*掲載されている人物の在籍年次や役職、活動内容等は、特記事項があるものを除き、原則取材時のものです。

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