150周年記念企画
「未来を拓く青学マインド」
「伝える」ことで
心にポジティブな変化を
|校友・卒業生|
フジテレビ アナウンサー
井上 清華
×
青山学院中等部
宮本 莉子/吉田 実来
今年、青山学院は創立150周年を迎えました。学院を巣立った数多くの卒業生が、自らの能力や個性を磨き、幅広い分野でキャリアを切り拓いています。今回は、フジテレビの情報番組で“朝の顔”として活躍する井上清華さんに、「伝える」ことに興味を持つ、青山学院中等部の宮本莉子さんと吉田実来さんがインタビュー。アナウンサーとして言葉を発するときの心構えや仕事術、青学の魅力についてお聞きしました。
(*取材時2024年3月現在)
Profile
フジテレビ アナウンサー
井上 清華
2018年 文学部 比較芸術学科卒業
青山学院大学ではE.S.S.(English Speaking Society)に所属し、在学中からお天気キャスターとしても活動。2018年に株式会社フジテレビジョンにアナウンサーとして入社し、現在は「めざましテレビ」メインキャスターのほか、「ホンマでっか!?TV」や「ミュージックジェネレーション」などさまざまな番組で進行を務めている。
Fuji Television Announcers Profile(井上 清華)
青山学院中等部 3年
宮本 莉子
吹奏楽部に所属し、コンクールや演奏会を目標に、アルトサックスのパートリーダーとして練習を引っ張っている。みんなで何かを成し遂げることや人とコミュニケーションをとることが好きで、楽しいことなどを共有し、一緒に笑顔になれるときに喜びを感じる。将来は「何か」を伝える職業に就きたいと考えている。
青山学院中等部 3年
吉田 実来
吹奏楽部に所属。小さい頃から歌うことが好きで、音楽塾に通い、ギターや音楽理論、作詞・作曲などを学んでいる。課題も多く、落ち込むときもあるが、聴いてもらえる幸せを感じて練習に励んでいる。夢はシンガーソングライターになること。
TALK THEME
1st TALK
「伝える仕事をするうえで
大切にしていることは?」
「瞬時に想像力を働かせて、その場面で
どんな立場の方も傷つけることが
ない言葉は
何かないか?を考えてからコメントを
発するようにしています」
私は吹奏楽部の活動をがんばっていて、高等部でもブラスバンド部に入り、音楽を続けていこうと思っています。音楽を含めて「何か」を伝えることが好きなので、アナウンサーの仕事にも興味があります。井上さんはなぜアナウンサーを志望されたのですか?
宮本さん
井上さん
アナウンサーの道に進んだのは、青山学院大学での出会いがきっかけなんですよ。テレビで見ているアナウンサーに漠然とした憧れがあったのですが、もともとは引っ込み思案で臆病な性格なので、自分とは別世界の職業だと思っていました。それが、青学に進学して仲良くなった先輩がTBSのアナウンサーになられたり、私自身も在学中からテレビに出演する機会をいただくようになったり、さまざまなご縁があって。そこから、この業界にどんどん近づいていきました。最終的にアナウンサーになろうと決意したのは、就職活動でアナウンサーのインターンシップに参加したときです。不安でいっぱいだったカメラテストがすごく楽しくて、笑顔で帰路についたことを今でも覚えています。それを機に、「アナウンサーになれたら楽しいはずだ」と考えるようになりました。
私の夢はシンガーソングライターになることです。アナウンサーも歌手も人前に立って伝える仕事という共通点があると思いますが、どんなことを大切にしていますか?
吉田さん
井上さん
コメントを述べるときは、なるべく自分の気持ちとかけ離れないような、正直な言葉を選ぶことを心掛けています。情報番組の「めざましテレビ」は取り上げる範囲がとても広いので、コメントするタイミングで与えられた時間が10秒足らずと短いこともあります。思っていることをうまく表現できず、「もっとこう言いたかったのに!」と悔しい思いをした経験がたくさんあります。ボキャブラリーを増やす努力をし、最近やっと自分の気持ちにぴったり合った言葉選びが少しできるようになってきたかなと思っています。
あともうひとつ、さまざまな立場の視聴者の方がなるべく不快な気持ちにならない言葉選びを意識しています。たとえば、私が「これがいいですよね」と言ったら、そう思わない方は嫌な気持ちになるかもしれない。同じ物事でも感じ方はそれぞれ違うと思うので、瞬時に想像力を働かせて、その場面でどんな立場の方も傷つけることがない言葉は何かないか?と考えてからコメントを発するようにしています。すごく難しくて、まだまだできていないのですけれど。
日々、そのような気持ちで仕事に向き合っていても、テレビの向こうの視聴者の皆様の反応を直接確かめることはできないので、真意がちゃんと伝わっているのか不安もあります。だからこそ、「あの言葉に救われました」とか「あのとき苦しかったけど、すごく元気をもらえました」といったお声を一つでもいただくと、見ている方の気持ちを少しでもポジティブな方向に変えるお役にたてたことを実感できて、「アナウンサーになってよかった」と思います。
吹奏楽部のミーティングで演奏曲や演出を決めるときに意見が対立してしまい、何十分も決まらないことがあります。番組で司会をしていて、話が思った方向に行かないときがあると思いますが、どのように対処しているのでしょうか。
宮本さん
井上さん
部活だとみんな同年代で、まとめるのって難しいですよね。私の立場とは少し違うかもしれませんが、例えばバラエティー番組では出演者の皆さんが番組を楽しく盛り上げようと、話題がどんどん脱線していくことがあります。話を戻さなければいけないけれど、強引だと空気を読めない感じになってしまう。そこで、少しだけ違う質問をしてまず半歩戻し、段階を踏みながら徐々に元の話題に寄せていくようにしています。
私は本番で緊張してしまい、思い通りに歌えないことがあります。生放送は一回限りで、さまざまな緊張やプレッシャーがのしかかってくると思いますが、本番で自分の力を出し切るために大事にしていることはありますか?
吉田さん
井上さん
アナウンサーの先輩方がよく「しっかり準備をしていても実際に本番で出せるのは2割だ」とおっしゃっていて、準備をして行かなかったらその2割すら出せないのかと思うと、やはり納得できるまで準備することが大事だなと思います。
それから、私が就職試験のときから今でも実践している緊張対策は、ひたすら「この中で私が一番だ!」と強い気持ちで言い聞かせること。自分の中だけで思う分は自由ですし、シンプルだけど意外と効きますよ。アナウンサーになって何年たっても、芸能界はじめ各界で大御所と呼ばれる方と共演させていただくときはどうしても恐縮して緊張してしまうものですが、「お守り」としてそういう気持ちを心の片隅に持って本番に臨んでいます。吉田さんも、自分をスターだと思うくらい心を大きく持つとお守りになるかもしれないですね。
気分が落ち込んだり、辛いことがあったりしたときにも笑顔でいるための、気持ちの切り替え法はありますか?
宮本さん
井上さん
それが意外となくって(笑)。朝起きたら顔を洗って、歯を磨いて、コーヒーを飲んで、発声練習をして…と毎朝のルーティンの流れの中で気持ちも自然に切り替わっていきますね。それに「めざましテレビ」のスタジオが楽しいので、仕事をしているうちにどんどん元気になっていくことが多いです。人と話すと嫌なことを忘れたり、ちょっと前向きになれたりするので、周りの人との関係って大事だなと思います。
2nd TALK
「大学時代に
心掛けるべきことは?」
「『為せば成る、為さねば成らぬ何事も』。
失敗してもいいからやってみるということが大事」
文学部比較芸術学科ではどんな勉強をされたのですか?
吉田さん
井上さん
比較芸術学科の勉強は本当に楽しかったです。1、2年次に「美術」「音楽」「演劇映像」の3領域を相互に関連させながら学び、美術展やコンサート、舞台など生の芸術に積極的に触れる機会をたくさんさせてもらったおかげで、興味の幅が一気に広がりました。元々は舞台に興味があって比較芸術学科に入ったのですが、授業を通して美術が大好きになって、結局3年次には西洋美術がご専門の水野千依先生のゼミを選択しました。ゼミ生の誰かから「こういう展覧会に行きたいです」と声が挙がると、水野先生がゼミ活動として実現してくださって、学外に出かける機会も多かったです。美術は今も大好きで、いつか美術展の音声ガイドを務めるのが夢なんですよ。
楽しそうですね!大学はどんな学部に進もうか家族と話したりしますが、今はまだ「わからない…」という気持ちになってしまいます。
宮本さん
井上さん
将来的なメリットなどで学部を考えるより、好きなことができるかどうか、を大切にするとよいと思います。友人を見ていても、好きではない方面に進んだ人は苦労する場面もある印象でした。授業も素直に好きと思える、興味のある科目を選択した方が前向きに取り組むことができますから。
学生時代、将来に向けて意識して取り組んでいたことはありますか?
吉田さん
井上さん
福岡県出身で一人っ子ということもあって、両親からは大学を卒業したら地元に帰ってくるようにと言われて東京の青山学院大学に進学しました。だから、大学の4年間は東京でしかできないことをしよう!と決めて、青山祭での大きなイベントやキャスターのお仕事をはじめ、ご縁を大切にしながら人生で一番思い切って飛び込んでみた期間だったと感じます。吉田さんも、宮本さんもさまざまなことに挑戦しておくと道が開けると思いますよ。
私はいつか留学してみたいと考えています。アナウンサーのお仕事で英語の大切さを感じることはありますか?
宮本さん
井上さん
英語ができるアナウンサーにしか担当できない仕事があるので、英語はできたほうがよいと思います。大学時代はE.S.S.に所属していましたけれど、アナウンサーの仕事として通用するレベルで英語が話せるわけではありません。在学中に海外留学して英語力を磨きたいと思うことはありましたけれど、テレビのお仕事にご縁があって学業とを両立させることになって留学のタイミングを逸してしまいました。留学に行った友人がうらやましかったですね。在学中に短期間でもいいから留学すればよかったなと思っているので、宮本さんはぜひ挑戦してほしいと思います。
生きていくうえで大切にしている言葉を教えてください。
吉田さん
井上さん
「為せば成る、為さねば成らぬ何事も」。福岡から上京することすら怖がっていた私が、大学入学後にさまざまなことに挑戦するとき、いつも胸に秘めていた言葉です。この言葉に背中を押してもらって新しい世界へ一歩踏み出すことができた、だから今の自分がある。そう考えると、失敗してもいいからやってみるということが大事なのだと思っています。
3rd TALK
「青学の魅力は
どんなところ?」
「個性豊かな人たちが集まっている中で、それぞれを尊重し合う。
青学は自分がありのままでいられる場所」
吉田さん
井上さんが考える青学の魅力とは何ですか?
さまざまな地域から個性豊かな人たちが集まっている中で、それぞれを尊重し合う青山学院大学の雰囲気はすごく居心地が良く、最高の大学生活でした。大学で出会った人はみんなやさしくて、ホームシックにもならずに済みました。何かを否定されるということが一度もなかった気がします。青学は自分がありのままでいられる場所というのでしょうか。アナウンサー試験や仕事で授業に出られないときも、先生方もみんなで応援してくれました。また、高校までは少人数の学校で人間関係も限られた中だったので、青学で多様な人たちと出会って、広い世界を知る経験がなければ、今、さまざまな方とお会いしてお話をうかがうという仕事をするのは難しかったかなと思っています。
私は青学の大学だけしか知らないけれど、中等部と共通するところはありますか?
井上さん
吉田さん
スポーツや勉強、音楽など、みんなやりたいことをやっていて、のびのびしているなと思います。
宮本さん
私は中等部から青学に入って、入学直後は知り合いがいなくてとても不安でしたが、みんなフレンドリーですぐに仲良くなりました。
そうなのですね。私もびっくりするくらい何の違和感もなく青学に馴染んでいたという感覚です。特に比較芸術学科は文学部の中でも少人数なこともあって、中学校や高校のクラスのようにみんな友達という感じでした。私は4月生まれなのですが、大学入学から3週間しか経っていないというのに、教室に入ると学科の仲間が誕生日のお祝いをしてくれたのです。これには感動しました。「すてきな大学生活の幕開けだ!」って(笑)。
大学時代の友人とは今でも仲良しです。早朝の情報番組に出演していると、夜は遅くても9時には寝て午前1時半に起床という生活をしています。友人たちも社会に出て忙しく過ごしているのですが、半日休暇をとって会う時間を作ってくれたり、時間を合わせてくれたり、とてもありがたいです。
井上さん
吉田さん
中等部では、先生たちが「自分のタラント(各自に与えられた神の賜物、才能)を伸ばしなさい」とよくおっしゃいます。伸びやかな環境で安心して学業と音楽を両立できています。
中学校や高校は学校の規律の中で過ごすことが多いと思いますが、青学は中等部で既に個々を伸ばすことを推奨してもらえるのは贅沢でうらやましいです。自己肯定感や自分の才能を大人になってから伸ばそうと思うとそれなりに苦労するのではないかと思います。伸び盛りの今のうちに頑張って好きなことに取組んでいると、おばあちゃんになってもその軸で充実した生活を送れるのではないかと思います。
井上さん
宮本さん
これから私たちが高校、大学と進んでいくにあたってアドバイスをいただけますか?
仕事は「好きなこと」の延長にあると感じます。今の時点で自分の好きなことに夢中で取り組むことができて、個性を伸ばせる環境にいるのは素晴らしいことですよね。青学の高等部なら、それをさらに押し進めていけるのではないかと思います。大学では、それまでに取り組んできた「好きなこと」の幅をもっと広げれば、社会人になってからきっと役に立ちますし、人生がより豊かになると思います。授業にもたくさん出て、旅行に行ったり、サークル活動をしたり、大学のさまざまな制度もあるので、興味があることに挑戦して、たくさんの経験をして、とにかく「楽しい」と思うことをどんどん広げていくと、将来の選択肢も広がるかもしれません。欲張りになって後悔のないように過ごしてください。
井上さん
宮本さん
吉田さん
今日はありがとうございました。
After Interview
夢を見つけ、実現するために、二人が井上さんのお話から得たヒントとは?
失敗を恐れず、たくさんのことにチャレンジしたい
演奏会などのソロで緊張して練習どおりにいかないことに悩んでいたので、井上さんのお話をうかがい、何事もたくさん準備や練習をしてこそ、自信につながり緊張を乗り越えることができるのだと改めて気づきました。私はこれまで不得意なことは避けたりやらなかったりすることが多かったけれど、夢を見つけるためにもまずはチャレンジする精神が大切なのだと感じました。青山学院というお互いを尊重して個性を自由に伸ばすことができる環境にいるからこそ、失敗を恐れずたくさんのことを経験し、好きなこと、得意なことを見つけていきたいです。(宮本)
本番前に思い出したい、「自分が一番」
ルーティンを作るとどんな気持ちのときも自然と切り替えられるというお話が印象に残り、積み重ねるというのは大事なことなのだなと思いました。また井上さんは、たくさん準備をして今できる精一杯を尽くしたら、あとは「自分が一番」と思って本番に臨むことが大切だとおっしゃっていました。本番前に緊張したときにこの言葉を思い出したいです。好きなことを突き詰めて、「為せば成る、為さねば成らぬ何事も」という気持ちでワクワクするいろいろなことに挑戦してみることや、人との関わりの大切さも知りました。私も周りの人とのご縁を大切にしたいと思います。(吉田)
※情報は取材時(2024年3月)のものです。