No.292
掲載日 2024/3/27

150周年記念企画
「未来を拓く青学マインド」

多様性と個の時代の経営術

|校友・卒業生|

株式会社BuddyCompass代表取締役社長
高石 大地

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経営学部 経営学科2年
水野 晴香

青山学院は、2024年11月に創立150周年を迎えます。数多くの卒業生が、在学中の学びを生かし、幅広い分野で社会に貢献されています。今回は、青山学院大学理工学部を卒業し、4年後の2020年に創業したブランディング企業「株式会社BuddyCompass」を順調に成長させている高石大地さんに、起業を目指して経営学部で学ぶ水野晴香さんが、経営や起業での考え方、大学時代に取り組むべきことなどをうかがいます。

Profile

株式会社BuddyCompass代表取締役社長

高石 大地

2016年 理工学部 経営システム工学科卒業

IT企業、株式会社リクルート勤務を経て、2020年、地方企業、中小企業の再生、コンサルティング、ブランディングを行う株式会社BuddyCompassを創業。感銘を受けたマンガ『ワンピース』をお手本に、個々の社員が主体性をもって働ける環境を大切にしている。2022年、ウェディングやレストランを手がけるディライト株式会社の経営企画、人事部長として取締役に就任し、計4つの企業の経営に従事している。大学時代は、軟式野球サークル「ANGELS」で代表として活躍。

経営学部 経営学科2年

水野 晴香

福井県立藤島高等学校出身

起業家や経営者など、経済の第一線で活躍する人に憧れていたこと、国際分野への関心が高かったため、独自の英語教育やPBL等を通して経営学を体系的に学べる青学の経営学部に進学。起業家がゲストスピーカーとなる授業や、学部主催のビジネスワークショップ等を通して、多分野の経営者の話をうかがいながら将来のプランを練っている。ダンスサークル「NACK」に所属。公演に向けて日々練習に励んでいる。

TALK THEME

1st TALK

「起業するには、
1本に軸を絞るべき︖」

「自分の興味に素直になって、いろいろなことにチャレンジを」

私は将来の起業を目指して経営学部で学んでいます。高石社長が2020年に起ち上げられた株式会社BuddyCompassは、さまざまな企業のブランディングやコンサルティングに携わっていらっしゃいますが、その分野での起業されたのはどうしてですか?

水野さん

高石さん

少し長くなりますが、起業したきっかけからお話しします。新卒で入ったのは、システム開発を行うIT企業でした。その企業は、残業が少なく働きやすかったのですが、リーダーの指示通りに動くのが当たり前という風土がありました。仲の良い同期が、うつ病を患って休職したことをきっかけに、「それぞれの個性を大切に、全員がフラットな関係で同じ目標を持てる会社をつくれないだろうか」と考えました。僕はマンガ『ワンピース』に感銘を受け、何かと参考にしています。仲間と一緒に海賊船に乗って夢を追いかけるようなイメージです。
しかし、起業の方法や経営で必要な知識もわからない状態でしたから、まず株式会社リクルートに転職して経験を積むことに決めました。そして、ブライダル情報誌「ゼクシィ」の部署でブライダル産業のマーケティングに従事する中で、「相手の良いところを光らせる」ことが自分に合っているのではないかと思いました。学生の頃から、友人の良いところを見つけることが得意でしたし、サークル活動でも、それぞれのメンバーの良さを生かせるように意識していました。「ブランディング」は、まさにそういう分野だと思ったのです。
水野さんは、どんな分野での起業を考えているのですか。

まだ漠然としているのですが、今よりもっと女性が働きやすい企業を増やしたいという思いと、自身の化粧品に対する興味をつなげたいと考え、コスメブランドを起ち上げたいと思っています。

水野さん

高石さん

とても素敵ですね。

ありがとうございます。今は、まずは化粧品会社に就職して勉強してから自分のコスメブランドを準備するのが良いかなと思っているのですが、国際分野にも興味があります。大学でいろいろな経験をするほど「これをやろう」という軸が揺らいでしまう感覚があります。大きいことをなし遂げようと思うのなら、やることを1本に絞った方が良いとは思いますが、このように揺らぐ経験はありましたか。

水野さん

高石さん

揺らぐ経験ばかりですよ。何を大事にするのか、何にチャレンジするのか、永久に悩み続けるのだと思います。だからこそ「最初から1本にしなくては」という考え方は、僕は違うと思います。
先ほども言ったように、個性を生かし、皆が生きがいを持って働ける企業をつくり、それを社会全体につなげていきたいと思っています。これが最も大切にしている「軸」です。僕はBuddyCompass以外にも、レストランやホテルを運営する企業、映像制作企業の経営にも携わっています。こうした事業は、興味があって「やりたい」と思ったから始めたものですが、これらの経験は「軸」を太くしっかりさせることにつながっています。例えば、ホテル事業を通して生きがいを感じる時間の提案をしたり、生きがいを見つけられなくて悩んでいる人を元気づけたりするための映像を制作するといったことです。「これ1本に」とこだわらず、時間が許すのなら、自分の興味に素直になって、どんどんチャレンジしたら良いと思いますよ。


2nd TALK

「経営者としての
決断はどのように︖」

「組織としての決断は、
信頼できる仲間と話し合って」

興味があることを追求した方が良いとうかがって安心しました。起業家の方は「社会を変えたい」という夢を語られることが多いと思います。私も女性の地位向上など貢献したい思いはありますが、いちばんは「これをやってみたい」という自分の気持ちです。こうした自己本位の姿勢で良いのか考えることがあります。

水野さん

高石さん

僕も今、地方の企業のブランディングと再生を通して、日本の価値を上げたいという思いがあります。でもその大本は、「『ワンピース』のように、夢を追いかけたい、青春したい」という気持ちです。
起業を始めた頃は、黒字化することに熱中し、社会のことまではなかなか視野に入れられませんでしたが、黒字化が達成できたら世界が広がって、自分がやれることの可能性も広がっていきました。まずは自分がいちばん熱くなれる目標を掲げて取り組めば良いと思います。できること、やりたいことはいつか広がっていきます。

高石社長は、転職でも起業でもたくさんの決断をされてきたと思います。私は優柔不断で決断力に自信がありません。良い決断をするためのアドバイスをいただけたら嬉しいです。

水野さん

高石さん

一度決断すると、元に戻れないものなので、その感覚はよくわかります。水野さんは、地元はどこですか?

福井です。

水野さん

高石さん

大学入学で東京に行くことに対して、最初不安は感じませんでしたか?

はい、不安がありました。

水野さん

高石さん

でも、実際に東京で暮らしてみたら、徐々に生活に慣れて普通になったのではないかな。僕も起業を決めた当初は不安もありましたが、行動を起こしてみると、心配事はすぐにたいしたことではなくなりました。なので、まずは行動に移すことを心がけています。そして「失敗するのは普通のことだ」と思うことも大切にしています。決断をためらうのは、失敗が怖いから。僕は、特別な才能を持つわけでもなく「普通の人間」です。だからこそ、失敗してもそれを受け入れる気持ちで決断するようにしています。
ただし、これは個人の決断についてのお話です。組織としての決断は、多くの人生を背負っているので、難しい問題も出てきます。グループ会社を含めて従業員が40人くらいになったBuddyCompassでは、経営層のメンバーと話し合って決断するようにしています。それは、「普通の人間」である僕には、組織全体に影響を及ぼす大きな決断は自分一人ではできないからです。このことを恥ずかしがらず周りに伝えて、信頼できる仲間と一緒に決断するための時間をつくっています。

3rd TALK

「大学時代に
やっておいた方が良いことは︖」

「自分を飾らずにいられる、
心の底から信頼できる友だちを
つくろう」

大学時代の経験で、今役に立っていることはありますか。

水野さん

高石さん

サークル活動は役に立っています。僕は「ANGELS」という野球サークルに所属して、代表も務め、どうやったら皆が楽しく集まって活動できるか、常に考えていました。
今は、福利厚生や残業の少なさ、給料の高さだけでは、従業員を雇用し続けるのは難しい時代です。それぞれが個性を生かしてやりがいを持って働く「個の時代」だからこそ、トップダウンのリーダーシップだけではうまくいきません。この時代の要請と、お金がもらえるわけではなく利害関係なしに人々が集まるサークルのあり方は非常に似ていて、「こうすると人は喜ぶ」「こういう状況で組織が活性化する」という経験をいくつも積み重ねたことが、今、とても生きています。
水野さんは何かサークルはやっていますか。

「NACK」というダンスサークルに所属しています。

水野さん

高石さん

ああ、知っています。僕の友だちにも所属している人がいましたよ。楽しそうなサークルですね。

はい。とても楽しいですし、この経験を将来生かすことができればうれしいです。
春から、私は3年生になり就職活動も始まります。将来、経営者を目指す上で、学生のうちにやっておいた方が良いことは、どんなことでしょうか。

水野さん

高石さん

サークルの話でも触れたように、利害とは関係なく、心の底から信頼できる友だちをつくってほしいですね。ずっと良い仲間でいられるのは、自分を良く見せようと無理しないでいられる友だちです。
BuddyCompassは右肩上がりで成長できていますが、その要因は第一に仲間に恵まれていることだと考えています。ここのメンバーにも大学時代の友だちがいるし、それ以外にも、創業時、まだ何も結果の出ていない僕を助けてくれる大学時代の友だちがたくさんいました。

今はダンスサークルの友人と特に親しくしています。学食で他愛のない話をして楽しい時間を過ごすだけでなく、私が落ち込んだ時には、忙しい中でも耳を傾けてくれる友だちです。もちろん逆の立場の時もあります。そうして向き合える友だちは、大切にしていきたいと思います。

水野さん

高石さん

大学では本当に友人に恵まれました。卒業して思うのは、青学には価値観を押し付け合わない多様な考え方を容認する自由な雰囲気があったということです。多様性を尊重するカルチャーが根付いていたと思います。利他を大切にするキリスト教の精神やサーバント・リーダー*の考え方も影響しているのでしょう。今後さらに「組織」から「個」の時代に変化していく社会の中で、青学卒業生はより活躍できるのではないかと思っています。

*自分の使命を見出して進んで人と社会とに仕え、その生き方が導きとなる人。

他大学の友人の話と比較して、青学は「個人が輝ける」という部分が魅力的な点だと思います。ビジネスワークショップや少人数制の英語教育、また、留学制度や学生サポートの充実など、多様な方面において学生の好奇心を最大限に伸ばし、養ってくれる環境が整っています。意欲の高い学生に対してしっかりと後押してくれるこの環境が、今の自分の成長にとても大きく関わっています。また、自由な大学生活を楽しむ雰囲気もあり、過ごしやすさを感じています。

水野さん

高石さん

これは、今僕が大学生に戻れるなら、絶対に実践したいと思っていることですが、自由で多様なことができる環境を生かして、あともうひとつアドバイスがあります。それは「自分で決めて自分で行動しよう」ということです。「誰かがやっているからやろう」という姿勢だと、本当に何かやりたい時に結果が出せなくなります。週末のボランティアに参加してみたり、サークルの会合に行ってみたりとか、ほんの小さなことで良いです。迷いながらも決断し、実行することは、自分の中で財産になります。周りに流されず積極的に自分で決断をすることを心がけてほしいと思います。

今日は貴重なお話をありがとうございました。

水野さん

After Interview

経営者という夢に向かい、水野さんが高石さんとのお話から得たヒントは?

興味に素直に、自分に合った道を探していきたい

これまで、講義などで経営者のお話を聞くことはありましたが、1対1でお話しすることは初めてで緊張もありました。けれど、高石社長がフランクに話してくださって、経営者としての考えだけでなく、飾らない人柄にも触れられたと感じています。自分のやりたいことを考えることはできても、社会的な貢献までは考えられないことに、これで良いのか不安に思う気持ちもありましたが、自分の興味や夢に素直になって良いというお話には勇気づけられました。「リーダーとはこうあるべき」と硬直した考えを持ってしまいがちですが、リーダー像は決して一つではないと思えたことも私にとって大きな収穫です。将来の経営だけでなく、日頃のサークル活動やチームで動く場合などでも、自分に合ったリーダー像を模索していきたいと思います。(水野)

150周年特別企画

*掲載されている人物の在籍年次や役職、活動内容等は、特記事項があるものを除き、原則取材時のものです。

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