社会が抱える問題への
気づきを得て思考を深める
青学での学びの日々

掲載日 2022/9/6
No.176
<2021年度 学業成績優秀者表彰 優秀賞受賞>
<2022年度 学業成績優秀者表彰 最優秀賞受賞>
<2023年度 学業成績優秀者表彰 奨励賞受賞>
総合文化政策学部 総合文化政策学科 3年
テイ ガイリン

OVERTURE

幼少期から憧れ続けていた日本で暮らす喜びを胸に、総合文化政策学部で学び、2022年度学業成績優秀者表彰で最優秀賞を受賞したマレーシア出身のテイさん。知的好奇心と高い目的意識を維持し、学部での学びを通して関心を高めた社会的弱者やマイノリティの人々を取り巻く社会問題に対して、アートを通じて創作表現する活動にも取り組んでいます。

ワクワク感に満ちた青学での日本文化の学び

両親の仕事の都合により上海で育ち、物心がついた頃から、中国語に吹き替えられた日本のアニメは生活の一部となっていました。ある日、日本のアニメを吹き替えではなくオリジナルの音声で見た時、日本語のやさしく丁寧な響きに一瞬で魅了され、「恋」してしまいました。その日以来、アニメのセリフや歌詞を日本語の原語でそのまま覚えることから始め、次第に日本の文化や景色にも心惹かれるようになり、「私は絶対に日本に住む!」と心に決めて、その夢をかなえるために一直線に行動してきました。中学校では日本語が勉強できる「日本語クラス」を選択しました。高校は日本語コースがあるインターナショナルスクールに進学し、高校3年生で札幌にある姉妹校に転校しました。初心を貫き、日本に来ることが実現して心からうれしかったです。

大学では、イベントなど「企画」の立案や実施に関する勉強がしたいと思っていたのと同時に、日本古来の文化に強い興味があることを高校の進路指導の先生と相談しているうちに、青山学院大学の総合文化政策学部を紹介していただきました。私自身も、学部の授業一覧を見て、プロデュース力が養える豊富な科目に加え、日本文化への興味にぴったり合致した授業があること、さらに、第三言語として強化したいと思っていた英語教育が重視されていること、また“最先端の情報や文化がいち早く集まる「表参道・渋谷エリア」にキャンパスが立地していること、この4つの要素が大きな魅力となって「ここで学びたい」と迷うことなく青学を受験しました。
入学後、日本文化への興味に従って履修した「日本芸能論」※、「伝統産業論」などの授業は、いずれも外国人の先生が担当していることが興味深い点です。中でも、KUSHELL, Michael先生の「祝祭論」※の授業で、先生ご自身が実際に体験された「地歌舞伎」(地方の祭礼などで、その土地の人々によって演じられる歌舞伎)のお話をしてくださったことが強く印象に残っています。日本文化を外国人の視点で語る講義には、外から日本文化を見ることによって発見できる新鮮な視点があるので、先生方のお話には多くの共感を覚えました。また、「私は日本の文化が好きで、今ここ(日本)にいる」というワクワク感を、先生方と共有できている感覚がとても楽しかったです。入学後に感じた新たな青学の魅力は、先生方が総じて、ご自分の経験や国際的な視点を大切にされているというところです。
履修科目を決める際には、興味のある授業を逃してはもったいないので、シラバスは他学部開講科目を含めじっくり読み込みます。江戸時代の怪談について学ぶ「日本文学特講Ⅰ[6]」という日本文学科の授業を見つけ出し、現在楽しく学んでいるところです。私の勉強法は、授業科目ごとにノートを用意し、例えばオンライン授業で配信された講義資料は、自筆でノートに書き写してみて、重要と思うところにハイライトをつけたり、思いついたアイデアを書き出したり、ということを続けています。効率的ではないかもしれませんが、このノートが知識の習得にも論文を書くときにも役立っています。2022年度の学業成績優秀者表彰最優秀賞を受賞することができたのも、一つ一つの授業に目的を持ち、丁寧に勉強した結果ではないかと思います。

※2022年度は開講なし(2023年度開講予定)

思考力と表現力が身に付いた総合文化政策学部でのゼミと
ラボ・アトリエ実習

総合文化政策学部の学びの特徴といえば、なんといっても「ラボ・アトリエ実習」(ラボ)と「文化演習」(ゼミナール(ゼミ))です。ラボでは、大好きな美しい日本語を自分でも書いてみたい、日本語を使って自分を表現したいという思いから、2年次から「『言葉の力』ラボ」で学んでいます。このラボは、学生が関心のあるテーマを選び、テーマごとに集まったチームで、言葉を用いた創作を行います。私は昨年度、「多様性多文化」、「小説」、「食」という3テーマのチームに入りました。「小説」チームでは、それまで何度も書こうと思いながら書けずにいた小説を書くことに挑戦しました。なかなか日本語が出てこない苦しみを味わいましたが、最終的に3,000字程度の短編小説を書き上げることができ、大きな自信になりました。また、「多様性多文化」チームで行った座談会には、ラボ担当の本田英郎先生も参加してくださって、3時間もの意見交換をしたことがとても印象に残っています。他者の発言を聴くことによって多くの気づきがありましたし、それを受け止めた上で、日本に暮らす外国人として伝えたいことを考え表現することができ、とても有意義な時間でした。

「ラボ・アトリエ実習」の「多様性多文化」チームで行ったオンライン座談会

ゼミは、さまざまな社会問題について考える森島豊先生のゼミに所属しています。入学直後、森島先生のオンライン授業を履修したところ、画面越しに学生を引き付け、楽しませるための工夫を凝らした授業をなさる先生の熱意に心をつかまれました。森島ゼミのテーマである社会問題に、私自身が詳しくなかったからこそ、ゼミは知識だけでなく他者の考えも含め広い視点で学ぶ場にしたいと思い、選択しました。ゼミもラボも、学習テーマや進め方などを学生主体で話し合いによって決めることが多く、どうやって他者と協働していけば良いのか勉強になりますし、主体的に問題を見出す思考能力が身に付き、自分の思いを言葉で表現することができるようになったと思います。

関心を持つことが社会を変える第一歩

学部での学びを通して自分が最も変わったと感じる点は、社会問題に強く関心を持つようになったことです。本学部ではゼミやラボ以外でも、文化の多様性を尊重しながら平和的な共存について考察する授業をはじめ、国籍や性別、難民など多様性に関する社会問題を考える機会が多くあり、マイノリティに心を寄せる気持ちが芽生えました。

そのような問題意識を行動に移し始めています。ゼミの友人に誘われた学外活動ですが、マイノリティの人たちの声を、アートを通して社会に届ける芸術実験チーム「Art Lab Philia」に、運営メンバーとして参加しています。私たちの近年の問題意識「ジェンダーという枠を超えて、個々人が輝きを放ち生きるには?」という問いを掲げた活動は、「渋谷から世界へ問いかける、可能性の交差点」をコンセプトにする施設SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)が公募する「未知の価値に挑戦するプロジェクト『QWSチャレンジ』」に採択されました。QWSステージで発表するために制作したプロジェクト紹介動画には、米国出身のトランスジェンダーである文学部教授McCREADY,Elin S.先生にもご出演いただきました。発表に至るまでの過程で、当事者の方々との多様なトークセッションや高校生との勉強会などを行い、私たち自身が学び、たくさんの気づきがありました。それまでLGBTQ+を扱っているニュースには悲しくネガティブな印象がありましたが、McCREADY先生をはじめプロジェクトで出会った方々は、皆さんが自分のアイデンティティーを肯定したうえで人生を楽しんでいる姿が格好良く、鮮烈でした。私にとっての一番の収穫は、自分は自分のままで良いのだという勇気を得たことです。作品を見た周りの人からも「勇気をもらった」とか「知ることができてよかった」という声をいただきました。チームでは「無関心を関心に」というミッションを掲げていますが、すべては関心を持つことから始まります。固定観念の枠は決して超えられないものではない、知ることで徐々に変化していくものだと思えるようになりました。

QWSステージでの「Art Lab Philia」発表の様子

たくさんのやさしさに触れたからこそ先入観なく交流したい

私が日本に来て感じたことの一つに、カテゴリー化によるステレオタイプと実態は違うということがあります。例えば、日本人は自分の意見を言わないと聞いていましたが、積極的に考えを発信する人がたくさんいますし、外国人である私に偏見なく接し、話を聞いてくれます。一方、残念ながら一部のSNS上で、人種や国籍や民族の違いに対し、誤解や偏見に基づくと思われる心ない投稿、レイシャル・ハラスメントを目にすることもあります。だからこそ、誰とでも先入観なく同じ人間として交流したいという思いがあります。社会に多様性を広げようというのであれば、無自覚な偏見に意識を向けなければいけないという問題意識が芽生え、卒業論文では、日本にいる外国人に関する問題をフラットな視点で調べ、学生生活の集大成としてまとめたいと考えています。

振り返れば、私は青学でたくさんの人の温かさに触れて過ごしてきました。青学は海外に興味がある学生が多く、私が中国育ちだと知ると積極的に中国語で話そうとしてくれる人もいます。先生方も親切で、1年次はコロナ禍でオンライン授業でしたが、日本語の授業の先生が、美しい文字で励ましの手紙を書いてくださり、学習支援システムにアップしてくださったことは忘れられません。また、私は東南アジアからの私費留学生を対象にした「SGH財団留学生奨学金」を受給していますが、応募の手続きにあたって、学費・奨学金課で手厚いサポートをしていただきました。職員の方が毎回笑顔で対応してくださり、奨学金の採用が決まった時には一緒に喜んでくださったのもうれしかったです。
日本が大好きな気持ちは今でも変わらず、毎日が夢のように感じています。できれば卒業後も日本で暮らし、人々を幸せにできる仕事がしたいと思っています。
皆さんも日本での生活や勉強に不安があるかもしれませんが、新しい物事に触れることによって生まれる喜びや、人と接することで知る温もりをきっと感じることができると思います。「日本に行きたい」、「日本に留学したい」という想いを握りしめて、諦めずに頑張ってください。

総合文化政策学部

青山学院大学の総合文化政策学部では “文化の創造(creation)”を理念に、文化力と政策力を総合した学びを探究。芸術・思想・都市・メディアなどの広範な領域を研究対象とし、各現場での“創造体験”とともに知を深めていくチャレンジングな学部です。新たな価値を創出するマネジメント力とプロデュース力、世界への発信力を備えた“創造的世界市民”を育成します。
「文化の創造」を理念に、文化力と政策力を総合した学びを探究します。古典や音楽、映像、芸能、宗教、思想、都市、ポップカルチャーなどあらゆる「創造」の現場が学びの対象です。どうすれば文化や芸術によって社会をより豊かにすることができるのか。創造の可能性を模索し、自身のセンスを磨きながら、アートのトータルプロデューサーとして社会への魅力的な発信方法を探ります。

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国際センター

国際センターは、大学の国際化に関わる教育支援と国際人育成をサポートしていきます。主な業務は、海外協定・認定校を対象とする「学生派遣」と「留学生の受入れ」、短期語学研修などのプログラムやイベント等の企画・運営、および青山学院中・高等部などの設置学校と大学間のグローバル化に関わる一貫教育体制のサポートなどを担います。国々の多様な文化や慣習および学生の異なる価値観を尊重しながら、海外大学と本学との連携をさらに強化・拡充していきます。

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