数学とサッカーを
こよなく愛する
リケジョから
「頼れる教員」に

掲載日 2020/9/29
No.27
神奈川県立霧が丘高校
数学教員
長田 瑞穂
NAGATA Mizuho

OVERVIEW

数学教員になることを夢見て入学した青山学院大学理工学部物理・数理学科。
2017年3月に青山学院大学大学院理工学研究科博士前期課程を修了した若き長田先生は、悩める高校生と全力で向き合っています。

コロナ禍に揺れる学びの場にこそ「サーバント・リーダー」

新型コロナウイルスの蔓延という未曽有の脅威にさらされたまま、人生の大きな分岐点を迎えようとしている高校3年生――彼らの担任教諭として、私にいま何ができるのか。自問自答する日々が続いています。私は大学院(理工学研究科)を修了し、2017年4月に新任の数学教員として、この神奈川県立霧が丘高校に配属されました。教職に就いてまだ4年目。3年生の担任になるのも、進路指導を行うのも今年が初めてです。ただ、2020年2月末に一斉休校要請が出て以降、学校教育の現場は前例のないイレギュラーな状態ですから、その意味では若手もベテランも解を模索しつつ、対応に追われています。生徒の学びを止めないように教職員全員で知恵を絞り、緊急事態宣言下においても在宅勤務や時差通勤で感染防止に努めながら、学習課題の作成などに取り組んできました。

日々の学習のこと、進路のこと、部活動や学校行事のこと……生徒はさまざまな不安や迷いを感じています。3年生であればなおさらでしょう。年齢が近いこともあって話しやすいのか、普段は生徒からいろいろな相談を受けるのですが、休校中や夏季休業中は直接はなかなか会えないので、彼らの不安がよく見えません。オンラインで課題を提出するためのツールを使って、「志望校について調べた?」などとコメントを送ることぐらいしか、生徒一人ひとりとの関わりを保つ術がない。
寄り添い、支え、そして導く――青学人の気質を象徴するとされる「サーバント・リーダー(自分の使命を見出して進んで人と社会とに仕え、その生き方が導きとなる人)」の精神は、いまコロナ禍に揺れ続ける学びの場にこそ求められていると感じます。私の中にも、それが育まれていることを願わずにはいられません。

微分方程式を使って
「がんの免疫モデルの解析」に取り組む

やはり女性には珍しいのでしょうか。「なぜ数学の先生に?」とよく聞かれますが、もともと中学時代から数学が好きだったことに加え、高2のときにすごく楽しそうに授業をされる数学の先生と出会ったんです。数学への愛が溢れていて、あんなふうに自分もなりたいと思ったのがきっかけですね。青山学院大学の理工学部物理・数理学科を選んだのは、担任の先生が「教育学部ではないが、青学は教職にも手厚い」とアドバイスしてくださったからです。それとやはり、生まれ育った北海道を離れて都会で暮らしてみたい、キャンパスライフを送ってみたいという憧れもありました。渋谷のキャンパスに通えると勘違いしたまま入学が決まり、親に「あなたが行くのは相模原キャンパスだよ」と言われて……あれは衝撃でしたね(笑)。
でも、相模原で過ごした6年間はとても充実していました。3年次に履修した竹内康博先生の『微分方程式』の授業に感銘を受けて、4年生から竹内先生の研究室へ。教員になるのにマスター(修士号)は必須ではありませんが、やはり数学が大好きなので、たった1年の研究で卒論を書くのは中途半端、3年間じっくり向き合いたいと大学院へ進んだのです。竹内研究室では、生命現象のメカニズムを数理学的に解き明かす「生物数学」を研究し、微分方程式を使ってがんの免疫モデルの解析に取り組みました。
学生にあれこれ指示を出すのではなく、私たちが自分でまずやってみて、わからなければ自分から質問してくるように導いてくださった竹内先生のご指導には感謝しかありません。竹内先生に限らず、私が青学でお世話になった教職員のみなさんは、自分からアクションを起こせば、すごく親身になってくださる方ばかり。おかげで、高校までは親と先生に頼りきりだった私にも、自分で考えて動く自主性がだいぶ身に付いたように思います。

竹内康博教授と韓国での学会に参加

自主性を求められた6年間、あらためて周囲の支えに感謝

大学での研究と高校での学習とでは目的・内容が違いますが、私もいま、生徒が自分で考え、自分から質問してくるように授業の進め方などを試行錯誤しているところです。もちろん数学教師ですから、数学そのものの魅力も伝えていきたいです。「数学を勉強してどのような意味があるの?」と言う生徒もいますが、「数学はがんの研究にも使われているんだよ」と、実際に生物数学を学んだ私ならではの強みを生かして、少しでも彼らの興味の芽を引き出せるように心がけています。

確かに自分の中学・高校時代を振り返っても、数学が好きな友人、とくに女子はほとんどいませんでした。大学の研究室でも私ともう一人だけ。だから、学部のときに、「Rikejo カフェ」という理系学部を志望する女子高校生向けのイベントを手伝ったときは驚きましたね。理系を目指す女子中高生が大勢来てくれて、すごく新鮮でした。少数派という意味ではもう一つ。私はサッカーも好きで、小・中学校とも男子の部活に一人混じって活動していたんです。高校では地元の女子クラブチームでプレーし、大学ではフットサルのサークルへ。いまもオフにフットサルを楽しみますし、学校ではサッカー部の副顧問を務めています。
数学も、サッカーも、自分としては好きなことにただ打ち込んできただけですが、それができたのは周囲の大人が環境を整え、支えてくれていたからです。自主性を求められた大学・大学院での6年間で、どれほど自分が恵まれていたかも身に染みてわかるようになりました。感謝の思いを忘れず、私も生徒を支えていかなくてはと強く思います。難しい時節だからこそ、「頼れる教員」でありたいですね。

「Rikejo カフェ」に学生スタッフとして参加(右)

長田さんの1日
(現在は新型コロナウイルスの影響で30分後ろ倒し)

  1. AM 6:00

    起床

  2. AM 7:30

    学校到着

  3. AM 8:00

    職員打ち合わせ

  4. AM 8:35

    SHR、朝読

  5. AM 9:10

    授業 1日4コマ程度、授業準備、グループの仕事(広報)

  6. PM 3:30

    部活

  7. PM 7:00

    帰宅

卒業した学部

理工学部

理工学部には、理学系、工学系をあわせて6つの学科があります。
“相模原キャンパス”を拠点とし、学部附置機関であるCAT・先端技術研究開発センターや機器分析センターをはじめ、先進の施設や設備は、国内外トップレベルを誇ります。
自然科学の基盤となるサイエンスの最先端研究はもとより、広く社会に貢献することを目指す多彩なテクノロジー研究開発を推進しています。なお、2021年4月、理工学部 物理・数理学科を「物理科学科」「数理サイエンス学科」の2学科に改編予定です。

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所属した研究科

理工学研究科

理工学研究科では、キリスト教の精神に基づいた本学の行う教育基盤に立って人格を陶冶し、専門の学術の教授・訓練を通じて精深な学識と研究能力を養うとともに、堅実な社会人として国際的にリーダーシップを発揮し、「地の塩、世の光」として文化の発展・創生に寄与し得る人物の養成を目的とします。

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