「ビジネスで
世界を変える」。
夢が走り続ける力に
丸紅米国会社 シリコンバレー支店
文学部卒業
OVERTURE
大学での学びのフィールドは、海外留学やインターンシップ、ボランティアを通じて世界中に広がっています。
文学部で学びながら数々の海外ボランティアで見識を広げた髙橋さんは、世界を幸せにする夢を胸に、ビジネスの最前線で活躍しています。
世界の最前線で、デジタルヘルスの新技術を発掘
AIなどの先端技術を用い、医療や健康増進における市場課題を解決することを目指す、デジタルヘルスは、近年急成長を遂げている注目の産業です。私は今、デジタルヘルスケアにおけるイノベーションの最前線・サンフランシスコで、新たな技術やサービスの発掘に力を尽くしています。
IT産業やスタートアップ企業の集積地であるシリコンバレーの中でも、デジタルヘルス分野のスタートアップ企業が集中しているのがサンフランシスコです。私が勤務する丸紅では現在、デジタルヘルスケアスタートアップの技術・サービスを日本で展開するため、事業提携や投資を通じた協業を進めています。そのために必要な新技術やトレンドを調査し、数千社のスタートアップ企業の中から弊社とシナジー(相乗効果)がある企業を発掘し、業務提携に向け、関係を構築し、提携交渉を進めていくことが私のミッションです。また、AI医用画像診断システムを開発するEnlitic社をはじめとする、既存提携企業との事業開発も推進しています。
シリコンバレーには、優秀な技術者、ビジネスパーソンなど世界のトッププレイヤーが集結しています。起業家やエンジニアたちは、常に費用対効果を考え働いている為、無駄な面談や電話には取り合う事はせず、食事さえ「ムダ」と考える人も珍しくないような日本とは大きく異なる環境です。自分の命を懸けて起業し、現地で奮闘する人達と日々接し、当地におけるビジネス環境の厳しさをいつも実感しています。Give and Takeの文化が根付いていることから、スタートアップ企業との打ち合わせ等でも、短時間で相手に有益な議論や提案をし、「話す価値がある人間だ」と相手に感じさせられるかが勝負です。ここでの仕事は緊張の連続ですが、今ではビジネスパートナーとしてだけでなく、友人として付き合う仲間も増えてきました。
デジタルヘルス事業は、サンフランシスコ発の構想として、私が新規事業として会社に提案してチャンスを頂き、チームメンバーと共に一から作り上げてきたものです。私は、新規事業開発を大きなミッションに、シリコンバレーに駐在しました。足を使っていろいろな人に会い、話を聞き、市場調査を進める中で、当地のリソース・強みを活用することができ、新興産業でありながら、高い成長性が見込める、デジタルヘルスに大きな可能性を見出しました。この分野はまだ歴史が浅く、私たちにとってもほぼグリーンフィールド(未知の領域)で、私を含めてたった2人の担当者でスタートした事業です。
事業が拡大するのに合わせて、会社に承認をいただき、スタートアップ企業が集中するサンフランシスコに新たに拠点を開設したり、ベンチャーキャピタルやヘルスケアに特化したコンサルタントなど、外部の専門家と提携して事業を進める新しい体制を構築していきました。
デジタルヘルス事業は、年々成長を続け、今年4月には日本にデジタルヘルスに特化した子会社も設立されました。チームとして、複数の案件の事業化を推進していますが、関連当局への承認申請など、医療分野は商用化に一定の時間を要する為、案件成就に向け、まだ走り始めたばかりです。まだまだ挑戦は続きます。
貧困、不平等―。世界を知ることに費やした4年間
私の大学生活は、「世界を知り、自分の視野と知見を広げる」ことに充てた4年間でした。その起点は、高校3年の時に参加した海外でのボランティアにあります。
指定校推薦で青山学院大学への進学が決まった後、時間に余裕が生まれたこともあり、ベトナムでのボランティア活動を経験するスタディーツアーに参加しました。ボランティア先の孤児院や路上で目にしたのは、子どもたちに突きつけられる「機会の不平等」という悲しい現実でした。「同じ人間なのに、生まれた国や地域によって人生で得られるチャンスに格差があってはいけない」。そのような強い憤りを感じたことが、大学4年間の学びの方向性を決めたように思います。
入学後は、長期休暇の度に、ボランティア等の活動に参加する為に世界各国・各地を訪れました。インドでは、子どもの頃から尊敬していたマザーテレサが創設した「死を待つ人の家」などでボランティアを経験し、タイの山岳民族を支援するNGOでは、働きながら山岳民族が抱える貧困や無国籍問題と向き合いました。オーストラリアでは、食事や宿泊場所と経験や時間を交換する世界的な取り組み「WWOOF(ウーフ)」に参加し、2カ月間、ズッキーニ農場で働きながら、農業や環境、価値観の多様性について考えました。
世界での経験と学びを通じて感じた事は、ボランティア活動等では1つの村を変える事が出来ても、世界は変えられないということ。そして何か大きなインパクトにより、世界のより多くの人が機会の平等を得られる社会づくりに貢献したいということでした。ビジネスの力を使って、インパクトを最大化したいと考え、友人と協力して、青山キャンパスのすぐそばでチャリティーレストランを開きました。収益は100%途上国の支援に充て、収益を利用してインドのある村に作った灌漑設備は、今も300人の村人の生活を支えています。
学内での学びでも、世界の事象に目を向ける姿勢は一貫していました。
特に、印象に残っているのは、当時学内にあったWTO研究センターがオーガナイズした、世界経済に関する授業です。TPP交渉が動いていた時期だったため、貿易摩擦や関税問題と世界経済の動向をリアルタイムで追いながら学ぶことができました。金融業界や商社の第一線で活躍するビジネスパーソンが講師を務める講義も多く、世界で仕事をする上で必要な基礎知識を現場目線で教えていただける、貴重な機会だったと思います。その授業で講師を務めてくださった方のお一人には、今でもメンターとして助言をいただいています。生涯にわたって尊敬できる人生の先輩と出会えたという点でも、私にとって意義の大きな授業でした。
学内外で世界に目を向けていた大学生活ではありますが、普段の私は、フットサルサークルの友達と毎日のように飲み会をするような、とても「大学生らしい大学生」でした。たくさん学び、たくさん遊び、非常にアクティブに過ごした4年間だったと思います。
大学生活で、人生のビジョンを見つけてほしい
青山学院大学で学び、世界約50か国へ足を運んで見聞を広めた結果、私がたどりついたのは、自分が人生を懸けて目指すゴールは、人々の機会平等を叶える為、ビジネスの力で不平等や格差を生む世界の仕組みを変える、ということでした。
医療や健康は、国や地域を問わず、すべての人にとって身近で重要な問題です。現在、先進国では高齢化による医師不足と社会保障費の増加、途上国では医療サービスの供給不足が大きな課題となっています。私たちが進めているAIを応用した画像診断システムによって、診断の高度化や精度向上が実現すれば、こうした社会課題の解消が期待できます。また、アルツハイマー病などまだ根本的な治療法が見つかっていない疾病も、早期発見を可能にする新技術を発掘し事業化できれば、今以上に病状の進行を遅らせたり、新たな治療薬の開発に繋げたりすることもできるかもしれません。
今、私の周りには、これまで診断方法や治療法がなかった病気に対して、新たなソリューションを開発しようと真剣に取り組む多くの起業家や技術者がいます。そのソリューションが花を咲かせ、実を結ぶためのサポートをすることが、私の仕事です。これまで市場になかった、革新的技術やサービスを開発するスタートアップ企業を見つけた時には本当にワクワクしますし、病に苦しむ患者さんや家族の救いになり、医療業界全体の仕組みを変えうる仕事であることに、やりがいと面白さを感じています。
社会に出て10年弱が経った今、私が高校生や大学生のみなさんに伝えたいのは、「人生には持久力が必要だ」ということです。世界には、優秀な人や才能のある人はたくさんいます。しかし、優秀な人が必ず大きな成功を収めるとは限りません。物事を成し遂げるためには、決して辞めない、諦めないことが大事です。非常に単純なことに聞こえますが、実は難しく、結局、それが何より重要なのだと社会人経験を経て感じます。
そして、大学で学ぶ4年間は、人生を諦めずに走り続けるための夢を見つける時間なのだと思います。私が大学時代に見つけた夢は、貧困をなくし、誰もが自分の道を自分で決めることができる世界をつくること。その夢があるからこそ、今も情熱を持って走り続けることができます。ぜひ青山学院大学で「どの方角に向かって自分の人生を歩みたいのか」を探し、将来のビジョンを見つけてください。それが、人生を走り続ける為に必要なエネルギーとパッションになるはずです。
髙橋さんの1日
(現在は新型コロナウイルスの影響で在宅勤務)
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AM 8:30
サンフランシスコ市内のオフィスに車で出社。
社内外からのメールの確認・対応 -
AM 10:30
デジタルヘルス分野のニュース等に目を通して
最新の動向を把握 -
PM 0:00
ランチの時間は15分ほど。
手軽に食べられる弁当で済ませることがほとんど -
PM 1:00
スタートアップ企業との会議や打合せ。
1日平均3~5社ほど -
PM 5:00
東京の担当者とテレビ会議
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PM 7:00
帰宅。仲が良いビジネスパートナーとは、
ハッピーアワーに軽く飲みながら仕事の話をすることも
卒業した学部
文学部
青山学院大学文学部では、「人類への奉仕をめざす自由で幅広い学問研究」を行うという大学の理念のもと、歴史ある人文学の成果を共通の知的基盤として、文学部を構成する五学科それぞれの専門性に立脚した目標を設定しています。