アフリカのザンビア共和国
で多様な人々と協力し
支援に打ち込む

掲載日 2022/2/21
No.139
独立行政法人国際協力機構(JICA)
現在ザンビア駐在
国際政治経済学部 国際政治学科卒業
後藤 理沙

OVERTURE

国際政治経済学部での学びやディスカッションサークルで、多様な人々と共に考え議論する力を身に付けた後藤さん。長い間興味を持ちボランティアでも携わっていた途上国支援を仕事にした現在、大学で培ったスキルを生かしながら、同僚の日本人や現地スタッフといった多様な人々と力を合わせて活躍しています。

ザンビア共和国で元難民を支援

JICA(独立行政法人国際協力機構)の職員として、ザンビア共和国の事務所で働いています。事務所ではザンビア国内のインフラ・都市開発支援に従事し、現在はザンビア政府が行っている元難民への政策支援と事務所の経理を担当しています。
ザンビアには、周辺国の紛争から逃れてきた元難民がたくさん暮らしています。定住を希望する元難民に対してザンビア政府は土地を提供しており、JICAは移転先の区画計画や住民管理、登記システムの整備などを行っています。また、彼らが移住先で生計を立てるための農業支援にも力を注いでいます。目指しているのは自給自足の農業ではなく、収穫物で収入を得る営農です。マーケットニーズに合わせた農作物の選択や、種蒔きのタイミング、畑の管理方法といった技術的な内容を指導しています。

ザンビアにはJICAの日本人関係者が約30人駐在し、正規職員以外に企画調査員や専門家、ボランティアなどがいます。また、日本を基盤に短期派遣で活動するコンサルタントは、多い月で数十人がザンビアで活動を行っています。それ以外にドライバーも含めた現地のスタッフが20人所属し、政策支援の場合には、ザンビア政府や元難民支援の国際機関UNDP(国連開発計画)のメンバーと一緒に事業に取り組みます。これだけ多種多様な人たちと協力しながら支援を進めていくわけですから、全員の意見を調整するのがとても困難です。国や立場によって意見も価値観も異なるため、自分の常識で判断しないことを肝に銘じねばなりません。外国人に対してだけでなくチーム内の日本人の間でもお互いを理解し合うよう配慮しています。まさに、「他者理解」に重きを置く、青山学院大学で培われた精神が大切になる仕事です。
また、赴任当初は英語でのコミュニケーションにも苦戦しました。青山学院大学ではディスカッションサークルに所属し、ゼミナール(ゼミ)でも議論の機会があったので、論理的に話す力や、みんなと一緒に考え、答えを導き出す力が鍛えられたと思います。とは言え、日本人以外の方とやりとりする場合は英語です。話をしている最中に自分の考えを的確に伝える表現が咄嗟に出てこず、英語で議論する難しさを痛感しました。いまでは海外赴任も長くなり、英語は生活の一部になり、臆することなく議論できるようになりました。

開発途上国について考え続けた4年間

開発途上国の支援に興味をもったのは、中学生の頃です。夏休みの宿題に職業体験があり、国際NGOのインターンシップでイベントや事務を手伝いました。そしてたまたまその国・地域に生まれたというだけで苦しい境遇に置かれている人々がいることを知り、衝撃を受けたのです。しかし幼かったこともあり、そのまま特に行動に移すこともなく、大学生になりました。
中学生の頃の強い思いが甦る出来事となったのは、大学進学後すぐに行われた1泊2日の学部オリエンテーションでした。そこで大学公認のボランティア・ステーション(現・ボランティアセンター)によるネパールプロジェクトの映像を見て、ふたたび衝撃を受けました。今回は迷うことなくすぐ団体に参加し、1年次のうちにネパールへ赴いて防災・衛生教育支援に携わりました。

このネパールでのボランティア体験をきっかけに、本格的に途上国への関心が深まったと思います。ゼミナールでも開発途上国をテーマに研究を進め、ルワンダやフィリピンについて論文を書きました。
このように、大学では常に開発途上国に関心をもっていたのですが、実は就職先として開発途上国支援の道は想定していませんでした。ボランティアとして関わるイメージが強く、仕事と結びつかなかったのです。そんな中、青山学院大学で行われたのが、JICAの就職説明会でした。登壇された職員の女性が子どもを産み育てながらキャリアを積んでいらっしゃるのを知り、JICAが就職先として一気に現実味を帯びました。

大切なのは、あらゆる人に寄り添う心

青山学院大学にはいろいろなタイプの学生がいて、専門分野の学びやサークル、アルバイト、学生団体などそれぞれ好きなことにチャレンジしていました。多様性を認め合い、他者への理解を大切にする青山学院大学で過ごした経験は、世界を舞台に働く自分の基礎になっていると思います。
日常業務で大切にしていることは、近くで働いている同僚やスタッフにも気を配ることです。国際貢献というと、どうしても視野を大きくと捉えがちですが、遠い国の人々だけでなく、身近な人の想いや課題にも目を向けるべきだと思っています。多くの人の助けとなる良い事業をするためには、良いチームでなければなりません。皆がストレスなく仕事に集中できるよう、どうすれば充実して働けるかを配慮しながらバックアップしています。

コロナ禍によって世界の様相は一変する中で、私自身も日本が抱える課題を考える機会が多くなりました。ザンビアよりも日本のほうが経済的には豊かなはずなのに、自殺者が多いのはなぜか、格差で苦しむ人が増えているのではないかなど、大学時代からずっと世界の課題を見つめ続けてきたからこそ、日本のことも見えてきたこともあるかもしれません。今後も途上国支援を続けながら、日本をより良くするために何ができるのかも考えていこうと思っています。

※登場する人物の在籍年次や役職、活動内容等は取材時(2020年度)のものです。

卒業した学部

国際政治経済学部

青山学院大学の国際政治経済学部は国際社会への貢献を掲げ、国際系学部の草分けとして創設されました。3学科×5コース体制のもと、専門性と国際性、現場感覚を重視した学びを実践しています。グローバルレベルの課題への理解を深め、エビデンスにもとづいて議論・討論するスキルを養成します。領域を超えて学べる独自の学際教育、所属学科を超えて選べるゼミナールブリッジや英語で専門科目を学べるグローバル・スタディーズ・プログラム(GSP)等によって、世界の多様な人々と協働し、新たな価値を創造する実践力を育みます。

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*掲載されている人物の在籍年次や役職、活動内容等は、特記事項があるものを除き、原則取材時のものです。

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