社会情報学部での学びと、他者の2倍も3倍もの努力で、日本での就職の夢を実現

掲載日 2023/9/29
No.262
社会情報学部
社会情報学科 4年
JO SENA(ジョ セナ)
韓国 Seoul Samsung High School出身

OVERTURE

日本での就職を目指す外国人留学生は、日本人と同じレベルでの就職適性検査や一般常識、時事問題、ビジネス日本語といった数々の壁を克服しなければなりません。韓国出身で、社会情報学部のJO SENAさんは、国際感覚と学部の専門性を生かしながら、就職にまつわる障壁を一つ一つ乗り越え、楽天グループ株式会社からエンジニア職の内定を得ることができました。JOさんは、どのようにいくつもの壁を乗り越えたのでしょうか。社会情報学部での文理融合の学び、就職活動への取り組み、後押しとなったサポートについてお聞きしました。

親しみのある日本に留学。文理融合の学びを求めて社会情報学部へ

私は、日本に縁がある家庭環境で育ち、高校の第二外国語で日本語を勉強していました。高校時代にアメリカに1年間留学も経験しましたが、大学は日本に留学することに決めました。
高校では理系コースを選択し、日本の大学の情報は、インターネットで理系学部を中心に調べていました。あるとき、日本の大学では、社会的課題を解決するために、文系も理系も同時に学べる文理融合の学部が増えているという記事を目にしました。これからの時代は、理系の「情報科学」の技術が社会に広く応用され、文理双方の知識が必要となるのだろうなと、深く納得しました。

そこで視点を変えて、文理融合の学部でリサーチをし直して、青学の社会情報学部のページにたどり着きました。先に社会情報学部を知って、後から青山学院大学の存在を知りました。文系の「社会科学」や「人間科学」と、理系の「情報科学」をつないで、社会・情報・人間という3つのキーワードで学ぶという社会情報学部は、広い視野を持って現代社会の問題にチャレンジしたいという私の志向にぴったりだと感じました。
外国人留学生入試で初めて相模原キャンパスに来た時、「なんてキャンパスが素敵なんだろう!」と驚いて、「絶対にこのキャンパスで学びたい!」と思ったことを、4年経った今でもはっきり覚えています。

入学と同時にコロナ禍になってしまい、1年次は全授業がオンラインだったので、韓国から履修しました。最初は、日本語で大学の授業を理解するのが難しく、わからないことを聞く友達もいなかったので、一人で必死に勉強しました。苦しい状況でしたが、授業で習った知識を使ってパソコンで新しいことができるようになるのが楽しかったです。「統計入門」では、「R」という統計ソフトでプログラミング言語を使って統計分析を行ったり、データをグラフにしたりするのが面白かったです。「コンピューティング実習」では、本格的にコードを書いて自分を紹介するWEBコンテンツを作ったり、グループでミニゲームを作ったり。授業だけでは時間が足りず、グループのメンバーと授業時間外にもオンラインで集まって作業をしたので、一緒に勉強する友達ができるきっかけにもなりました。

ゼミでの学びで苦手意識を克服し、向上したプレゼン力と思考力

コロナ禍に韓国の若者の間で株式投資が流行ったことをきっかけに、資産運用に興味を持ち、得意な数学の知識を使ってお金の流れを考えるのが面白そうだと思い、伏屋広隆先生のゼミナール(ゼミ)で金融について学んでいます。

1年次に履修した「社会数理Ⅰ」「社会数理Ⅱ」のでの伏屋先生の説明がとてもわかりやすかったことや、ゼミの大学院生のTA(Teaching Assistant)に質問できる機会を設けて丁寧に対応してくださったことが深く印象に残っていたので、ゼミの雰囲気がイメージできて、自然な流れで伏屋ゼミに入ることを決めました。

毎回のゼミでは、前半は伏屋先生の金融理論の講義の後に学生がディスカッションを行い、後半は学生が雑誌『日経ビジネス』の記事から自分の好きなテーマを選んで考察して発表して、他の学生がコメントをする、という二部構成です。

金融理論は難しく、専門用語と数式も多いので、完全に理解するのはかなり大変です。授業中に知らない日本語が出てくると、調べているうちに説明が進んでしまいがちですが、伏屋先生の講義は、難しい内容を理解できる言葉で丁寧に解説してくださるので、ゼミで不安を感じることはほとんどありません。

『日経ビジネス』の考察にコメントをする学生はランダムに指名されるので、発表を聞きながら自分の考えをまとめることが習慣になっています。毎回、仲間のプレゼンテーションを聞くので、日本語の使い方や、聞き手の興味を引くテクニックを自然と学ぶことがでました。以前は言葉の壁もあって、人前で話す場面ではかなり緊張していましたが、ゼミでの経験を通じて自然に話すことができるようになりました。今、社会で起きていることを深く考える力も身に付きました。ゼミでの積み重ねの効果で、就職選考時のディスカッションの場面でも自分らしく臨めたかなと思います。

関連リンク:お金に関する人々の行動メカニズムを紐解き、金融市場の安定化へ 伏屋広隆教授

1日約7時間勉強に励んだ伏屋ゼミの合宿にて(左から2番目がJOさん)

他者の2倍も3倍も努力が必要だと覚悟を決めて挑んだ就職活動

3年次になる前に卒業後の進路を考えて、次は企業で働く経験がしたいと、日本で就職することを決心しました。留学生として身に付けた国際感覚や言語力は、企業に貢献できる強みになると思いますが、採用に留学生枠はありません。しかし、自分の努力で言語や文化のハンディを克服すれば、日本人と同じようにキャリアアップのチャンスは与えられるのだとポジティブに考えることにしました。就職活動は、周囲の2倍も3倍も努力が必要だと覚悟を決めました。

最初に始めたのは、多くの日本人の友達がいる韓国人の青学の先輩に、日本の就職活動の特徴や流れについて聞くことでした。例えば、韓国での就業体験は、休学して長期間参加するインターンシップ(インターン)が一般的ですが、日本では1dayの仕事体験など種類がたくさんあることを初めて知りました。また、留学生は採用面接にたどり着く前に、適性検査の力不足やエントリーシートの準備不足で落ちてしまうのが現実だと聞いて、ハンディを乗り越えるためには、とにかく早目に準備を始める必要があることを教えてもらいました。

どうしても日本語を読むスピードが日本人より遅いので、適性検査対策は、「言語(国語問題)」が課題になると考えて、同学年の友人たちがテキストを購入する時期よりだいぶ早い時期から対策に取り組みました。就職活動中、ビジネス日本語の壁を感じたこともありますが、入学してから、カフェやコンビニの接客、塾講師など、いつも日本人と関わって実社会でコミュニケーションをとる仕事にこだわってアルバイトをしていた経験が役に立ちました。また、日本人はこの場面ではどんな言葉を使うのか、周りの人が話す言葉をよく聞いて、覚えて、真似ることでビジネス日本語を覚えていきました。

青学の留学生の就職支援もフル活用しました。特に、青学生専用の進路・就職支援システム「Web Ash」から予約ができる「外国人留学生個別相談」では、専門相談員の方が、エントリーシートの書き方から面接での受け答えの仕方まで、ずっと励ましながら親身にアドバイスをくださって、本当に心強かったです。

3年次のゼミ合宿は千葉県。授業後は海に行ったり、バーベキューをしたり。楽しい思い出

インターンの体験から見えたエンジニアとしての未来

就業体験型のインターンでは、社会情報学部で学んでいるうちに興味を持った「エンジニア」「金融のリスクマネジメント」「企画職」の3つの職種に絞り、できるだけ多くの企業の就業体験イベントに挑戦してみました。

その中でも、楽天グループ株式会社(楽天グループ)の説明会で知った「QAエンジニア」という職種が、私のこれまでの経験や培ってきた能力を生かすことができる仕事だと感じました。QAエンジニアのQuality Assuranceは「品質保証」という意味で、システム開発者が想定していない操作をしても問題ないか、提供するサービスがユーザー目線で使いやすくなっているかを検証する役割を担うエンジニア職です。
情報科学の知識を生かしながら、人間の行動に対する広い視野を持って、社会に新しい価値を生み出すという仕事は、青学の社会情報学部が目指すところと同じだと感じました。

そして、楽天グループといえば社内公用語英語化という話は私も知っていましたが、就業体験イベントに参加してみて、日本でありながら国際色が豊かで多様な国や地域の人たちと一緒に働くことができる職場環境ということがわかって、私にはとても魅力的だと感じました。

結果として、たくさんの企業のインターンに参加してみたことで、納得のいく企業に出会えたと思います。参加企業の多くが、インターン生はマニュアルに沿って何かをやってみるという内容が多かったのに対し、楽天グループは、与えられたテーマを参加者がグループワークで自由に考えるというスタイルだったことは印象的でした。枠のないところで裁量を持って仕事ができる文化があり、 意欲的に挑戦できると感じました。

国際理解と言語スキルを育むボランティア活動は、子どもたちの可愛さに癒される時間

常に学んで成長し、日本と韓国の架け橋に

大学生活では、日本の大学生が4年間のうちに経験することは、同じようにやってみようと思って行動していました。アルバイトの他にも、韓国人の知人が相模原キャンパスの近所で始めたボランティア活動に参加して、地域の日本人の子どもたちに英語を教えたり、「相模原祭」には「韓国留学生愛好会」で韓国料理の模擬店を出店したりと、思い出がたくさんできました。
これからも常に何かを学んで成長できる人、誰かの役にたてる人でありたいと思っています。そして、どのような形になるかはわかりませんが、日本と韓国をつなぐ存在として役に立ちたいと思います。例えば 、楽天グループの韓国での展開サービスにぜひ携わってみたいと思っています。

相模原祭に韓国留学生愛好会で韓国料理の模擬店を出店(右がJOさん)

※各科目のリンク先「講義内容詳細」は掲載年度(2023年度)のものです。

JOさんの就職活動スケジュール

  1. <2年次> 2021年冬

    韓国人留学生の先輩から情報収集

  2. <3年次> 2022年5月~

    インターンシップ選考

  3. <3年次> 2022年9月~

    約10社の就業体験型インターンシップに参加

  4. <3年次> 2022年10月~

    本選考スタート

  5. <3年次> 2022年11月

    楽天グループ株式会社からエンジニア職の内定をいただき、就職活動終了
    ※年度によりスケジュールは変更になる可能性があります。

社会情報学部

現実の社会には文系・理系の境界はなく、高度情報化社会と呼ばれる現代では、文系・理系の双方に精通していることがアドバンテージとなります。さまざまな社会的課題を解決するため社会情報学部においても“文理融合”の学びを追究しています。文系の「社会科学」「人間科学」と、理系の「情報科学」の各専門領域をつなぎ、各分野の“知”を“融合知”に高めるカリキュラムを整備。新たな価値を創造し、社会へ飛び立てる力を育みます。
文理の垣根をなくした「文理融合」をコンセプトに、社会・情報・人間の複数分野にまたがる学際的な学びを展開。学問領域をつなぐことで生まれる新たな価値観で、一人一人の可能性を広げ、実社会における複雑な問題の解決に貢献できる人材を育てます。

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国際センター

国際センターは、大学の国際化に関わる教育支援と国際人育成をサポートしていきます。主な業務は、海外協定校・認定校への「留学生派遣」と、海外協定校からの「留学生の受入れ」、私費留学生のサポート、そしてそれらの学生向けの奨学金業務、夏期春期に行われる短期語学・文化研修などのプログラムの企画・運営等を担います。各国の多様な文化や慣習および学生の異なる価値観を尊重しながら、海外大学と本学との連携をさらに強化・拡充していきます。

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