掲載日 2023/2/20

教育人間科学部 教育学科
教室で生きてはたらく
論理的表現力を高める

長谷川教授からの
Message

教育人間科学部 教育学科 教授
長谷川 祥子

教育人間科学部教育学科では、教育学の専門的な知識と技術を持ち、社会の幅広い分野で活躍できる人を育てています。興味や進路に合わせて5つのコースから専門分野を選び、教育の本質と専門性、教育の担い手である人間について理解を深めます。幼稚園から高等学校まで幅広く、教諭一種免許状(教員免許状)の取得が可能です。

Q.ゼミナールの研究内容や特色を教えてください。

本ゼミナール(ゼミ)では、授業開発・教材開発に関する研究や、教科教育・国語教育に関する研究を行っています。授業開発・教材開発の研究は、小、中、高等学校の教科・科目について新しい授業や独創的な教材をつくり出すことを目指しています。教科教育・国語教育の研究では、例えば国語教育の場合、国語に関する一般常識を対象として、乳幼児期から社会人など生涯にわたる教育を追究しています。
ゼミの学生の半数ほどは、国語科教員志望です。それ以外の科目の教員を志す学生も所属しており、最近では、社会科の地理的分野における授業開発や、小学校の外国語活動のための教材開発、英語科教員の英語力を研究した学生もいました。全ての教科・科目を対象に、学生がそれぞれの興味関心や進路に応じた研究に力を注いでいます。
ゼミでは、学生が自分の研究テーマに必要な文献を読み、考察し、その成果を発表することを主な活動としています。また、小、中、高等学校で行われている授業の分析や学習内容の検討、卒業生や修了生とのハイブリッド研究会などにも取り組んでいます。
現在はコロナ禍のため、授業の動画を視聴して分析を行っていますが、以前は学校にうかがって授業を見学する機会をつくっていました。学校を見学することで、学生の皆さんは「子どもがこんなふうに取り組んでいた」「先生のこの発問が効果的だった」といったたくさんの学びがあり、教室の雰囲気、学校の様子を直接感じることの意義と学校がもつ力を実感しました。

Q.ゼミではどのような学びを重視しているのでしょうか。

論理的表現力の向上を大切にしています。論理的表現力には、論理的文章表現力と論理的音声表現力があります。ゼミでは、学生が自らの研究成果を資料として用意し、それを発表しながら、両者の力を高めていきます。
そのために、ゼミの中で、学生がお互いの発表・報告への感想を率直に伝え合うことを重視しています。「感想」とは、自分の判断を言葉で示すことです。つまり「楽しかった」や「面白かった」ではなく、「こういう点が良かった」「こんなことが疑問として残った」という率直な感想を伝え合います。また、卒業論文の執筆過程では、学年を超えて研究の構想や経過を発表し合い、互いの研究内容を共有することにも力を入れています。ほかの人の研究は、自分とは距離がある分、本人以上に的確に考察できることがあります。他者からの感想で研究を進めることができ、聞いている側も、他者の発表や感想から新たな考え方を発見することができます。感想という形でそれぞれの判断を述べ合うことが、お互いの研究を進める上で有効であり、論理的表現力を伸ばすことにもつながると考え、その大切さを学生に伝えています。
もうひとつ大切にしているのは、学生が独自の研究テーマを見つけ出し、自ら研究方針を発見する過程です。そのため、丁寧に学生の話を聞くことを心掛けています。研究テーマを決める過程では、学生が何に興味をもっているのかを聞き取り、関連する書籍を紹介したり、別の見方を提示したりしながら相談に応じています。なかなかテーマが決まらない学生もいますが、変化の過程は成長の過程と考え、支援するよう努めています。決定までの過程を大切にするという点は、卒業後の進路についても同様です。教員採用試験には採用枠が少ない教科があり、卒業時に希望通りの道に進むことが難しい学生もいます。自分が納得して選んだ道ならば、次年度以降も挑戦することができるでしょう。考え抜いた上で自分自身の道を選択してほしいと願い、その一助になれればと思っています。

Q.ゼミに興味のある高校生・在校生にメッセージをお願いします。

ゼミ活動を通して目指しているのは、論理的表現力を確かに身に付け、その力を使って社会で自分の希望に沿った将来を設計していくことです。ゼミ生の6割程度が卒業後は教員として学校現場に行きます。授業をつくる上でも、教員同士や保護者、地域の方々と連携してより良い教育を実現する上でも、論理的表現力は欠かせないものです。このゼミで、ぜひ教室で「生きてはたらく力」を高めてください。
子どもが伸びていく姿を想像しながら、授業を考えたり、つくったりすることは、本当に楽しいものです。学生同士、互いに意見を交わしながら新しい授業や教材をつくっていってほしいと思っています。

学生の
Message

教育人間科学部 教育学科 4年
東京・私立桐朋女子高等学校出身
高橋 南帆

中学校の卒業式で「卒業生の挨拶」を担当した際、国語の先生の指導で表現力を高めることができた経験から、国語科の教員を目指すようになりました。教員免許を取得できる大学は数多くありますが、幅広い領域から人間の成り立ちすべてについて学べるカリキュラムに魅力を感じ、青学の教育人間科学部を選びました。
長谷川ゼミは、互いの研究内容や進捗状況を把握しながら皆で学ぶことができるところに楽しさを感じます。仲間の発表は、漫然と聞くのではなく、良かった点や疑問点をメモしながら聞いています。ゼミの時間中頭を回転させているので、その分だけ自分の身になる学びができています。また、卒業研究が完成するまでに、読み、書き、修正することを繰り返す過程も重要な学習だと考えています。そのため、研究対象とする文献や自分の文章と向き合い続け、表現していくプロセスは知的な楽しみがあります。2年間のゼミ活動を通して、自分の考察を書きながら論理的に考えを構築する力、伝えたいことが明確に伝わる文章を書く力がつき、考える道具としての「書く力」を伸ばすことができたと実感しています。
卒業研究は、「高等学校国語科における翻訳小説(サリンジャー作品)の学習指導研究―青春小説に描かれる若者像」をテーマにしています。小説と若者の心理に興味があり、それを国語科教育と結びつけて研究したいと考え、長谷川先生にもアドバイスをいただきながらこのテーマに決めました。卒業後も大学院で研究を続け、小説を教材とする授業に対する自分なりの軸を見つけたいと考えています。教科書を読む力は、全ての教科の基本になる力です。国語力を高めることができれば、おのずとほかの教科も楽しく学び、理解が広がるのではないかと考えています。国語科教育の専門性を生かして、子どもたちが生涯学ぶことを楽しみ、人生を豊かに過ごす力を育む教員を目標に、今後も研究に取り組んでいきたいです。

教育人間科学部 教育学科

青山学院大学の教育人間科学部は、教育学科・心理学科を連携させながら、「人間」をさまざまな角度から学ぶ多彩な講義や、理論を実践する演習や実習を展開しています。理論的かつ実践的なアプローチの反復によって、人間についてより深く追究します。現代社会や人間の諸問題を読み解く高度な専門性と、自ら行動するための課題解決能力・自己教育力を育成します。
教育とは、年代や環境を問わず生涯にわたって行われる普遍的なものです。教育学科では乳幼児期から老年期に至るライフサイクルの中で、人間がどのように発達・学習・社会化・成熟していくのかを学修し、3年次に選択する専門分野の学びを通して、教育の本質と理想の姿、教育の担い手である人間という存在について理解を深めます。幼稚園から高等学校まで幅広い教員免許状の取得が可能です。

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