留学で培った固定観念に
とらわれない自分、
そして日本人としての
アイデンティティー

掲載日 2023/3/13
No.220
総合文化政策学部
総合文化政策学科 4年
中島 彩陽
神奈川県立湘南高等学校出身

OVERTURE

英語力の向上という目標と、多様な価値観や考え方に触れてみたいという思いを胸に、イギリスのケント大学に協定校派遣交換留学(交換留学)をした中島さん。世界各国から集まる学生たちと積極的に交流を図り、自身の内面に大きな変化と成長をもたらした留学生活を振り返りました。

総合文化政策学部の英語の授業がイギリスで学ぶ土台に

高校2年生のときにオーストラリアでホームステイをしたことが、大学で交換留学を志したきっかけです。英語の勉強をするのは好きでしたが、それまで海外の人と交流する機会がほとんどなかったので、現地の人々の気取らないオープンな雰囲気や日本人と異なる笑いのポイントなど、何もかもが新鮮でした。英語というツールでいろいろな国の人ともっと話せたら楽しいだろうなと思い、大学生になったら英語圏の国に留学したいと考えるようになりました。
総合文化政策学部に進学したのは、中学校で美術部に所属するなど、以前から文化・芸術に興味があったことに加え、あらかじめ特定領域に特化することなく、在学中に柔軟に学ぶ分野を選択できる学部の独自性に魅力を感じたからです。入学後は、アートを社会にどのように生かしていくかを考える「アート・デザイン概論」や美術館の運営に関する「ミュージアム展示論」など、アートマネジメントを中心に学んでいます。また、世界を視野に発信・プロデュースするための英語教育が重視されているので、学部の英語の授業を通じて、留学先で英語を使って学ぶための基礎づくりができたと思います。英語圏の国でも長い歴史と伝統が息づくヨーロッパへの憧れがあり、イギリスの大学への交換留学を目指すことにしました。

1年次には毎日のようにネイティブ・スピーカーの先生による英語の授業を履修しました。担当の先生の一人がイギリス人だったことから、イギリス英語のアクセントに耳を慣らすことができましたし、英語でエッセイを書いたり、プレゼンを行ったり「発信型リテラシー」としての英語力が養われました。留学中のレポート作成は、質・量ともに日本で経験した課題よりも遥かに高いライティング・スキルが求められたので苦労しましたが、青学で実践的な英語力を身に付ける経験がなかったら、対応することができなかったのではないかと思います。スピーキングとリスニングの強化には、オンライン英会話を毎日欠かさず短時間でも継続することに加え、国際センターのチャットルームを活用しました。多様な国から来日した留学生とお互いの大学生活について話し、世界各国のキャンパスライフを想像するのも楽しかったです。

2年次後期から渡航予定だったイギリス留学は、コロナ禍の影響を受け1年間延期となってしまいましたが、振り返ると、その分、青学で授業での学びの積み重ねが増し、思考力がついた段階で留学できたことはプラスだったと思います。留学の大きなテーマ「偏見や固定観念にとらわれない人間になる」を渡航前に見つけることもできました。それまでの私は、自分と異なる価値観の人に出会ったとき、頭では「育った環境が違えば当たり前」と理解しながらも、感情として相手を受け入れられない場面があり、留学体験を通じて、多様なバックグラウンドを持つ人と交流することによって、そうした偏見を解消したいと考えたのです。そこで、イギリスの中でもイギリス国教会総本山のカンタベリー大聖堂をはじめ歴史的な建造物立ち並ぶ場所であり、150か国以上から留学生を受け入れているケント大学(University of Kent)に留学することを決めました。

クラスメートに刺激を受けて身に付けた積極性、深まった専門性

ケント大学では、青学で学んでいるアートマネジメントに加え、アートの本場で美術作品そのものについての知識を深めたいと思い、主に美術史の研究を行う学部(School of Art)を選択しました。School of Artでの授業は、講義とディスカッション形式のクラスをセットで受講するシステムでしたが、ディスカッションの時間に、現地の学生や他国からの留学生が、自分の意見をためらうことなく堂々と述べる姿に大きな刺激を受けました。私は授業で意見を求められたとき、できれば発言したくないと思うタイプでしたし、留学初期は特に、英語で内容をしっかり聞き取れているのか自信が持てず、「こう思うけれど、違うかもしれない」などと考えているうちに結局、何も言えずに授業が終わってしまうということを経験しました。自分が変わらなくてはいけないと奮起し、「授業の中で1回は発言する」といった目標を段階的に設定し、1つずつ達成していくうちにディスカッションに徐々に参加できるようになりました。

日本サークルの仲間とピクニック

また、さまざまな個性や考え方に触れ、他者に対して寛容になったと思います。自分には理解できないような言動をする人に出会っても、相手の気持ちを想像してみることができるようになりました。そして、イギリスでの多様な生き方をしている人との出会い、例えば、一度就職してから大学に入り直した人、子育てしながら大学に通っている人などとの交流によって、これまでの自分は、世の中の流れに同調することで安心感を得て、周囲から受ける「今はこれをする時期(すべき)」という固定観念に強くとらわれていたことに気づかされました。留学の一番の収穫は、英語力はもちろんですが、自分自身を客観的に見つめ直す体験から得られた内面のポジティブな変化だったと思います。

港町・ブライトンにて友人たちと

帰国後は、以前の私であればハードルが高いと感じていた授業内の発言や課題が「なんてことはない!」と感じられるようになりました。例えば、総合文化政策学部の特色でもある「ラボ・アトリエ実習」で私は、建築及び都市デザインを専門としていらっしゃる團 紀彦先生の「渋谷 − 青山都市領域ラボ」に所属していますが、アウトプットとして、ラボの1年間の成果を一冊の印刷物としてまとめるプロジェクト・リーダーを担うようになっていました。また、多くの美術館・博物館があるイギリスでの学びによって、学部での勉強がより豊かなものになっていることも実感しています。ケント大学の教授と一緒にロンドンの美術館を訪れ、解説していただきながら作品を鑑賞したことは、現地に留学したからこその贅沢で貴重な体験だったと思います。美術の理解が深まったことで、現在履修している「美術史(2)」の授業にも主体的に楽しく取り組めています。授業への取り組み姿勢が能動的・意欲的に変わったことを実感しています。

ウクライナ侵攻をヨーロッパで体験し、
国際政治・経済に対する意識が変化

多くの楽しい思い出がある中、ヨーロッパ留学中にロシアのウクライナ侵攻が起きたことは特に強く印象に残っています。ロシア人の友人は、少なからず異国で肩身の狭い思いをしていたと思いますが、表面的にはこれまでと変わらず明るくふるまっていました。自国と自分のアイデンティティーの狭間で、内心どんな気持ちでここに身を置いているのだろうと思うと、苦しい気持ちになりました。一方で、ウクライナの隣国モルドバにいる親戚に会えなくなってしまい心配を募らせている友人の話を聞き、戦争の渦中にいる人や、直接・間接に影響を受ける国々の人たちの気持ちを、「自分事」として考えるきっかけとなりました。それまでの私は海外のことに興味があると言いながら、世界で起きていることを外側からなんとなく眺めていただけだったことに気づかされました。私にとって「知っておくべきだが難しくて遠い存在」であった国際政治・経済に対する意識が、この出来事によって大きく変わることになりました。以降、各国のニュースをチェックすることが習慣になり、教養を身に付けるために本を読むことも増えました。

友人たちとのクリスマスディナー

日本人としてのアイデンティティーを携え、日本のものを世界へ

日本を離れ、外から日本を見るという経験も留学しなければ得られないものでした。日本の持つ有形無形の魅力や価値を、海外の人たちから教えられ、再認識・再発見することにつながりました。日本製品や日本を海外の人たちが高く評価してくれる機会が日常的にあり、日本人としてのアイデンティティーを強く意識するようになりました。こんなにも求められている日本のものを海外に届ける仕事がしたいと考えるようになり、卒業後は、株式会社ユニクロに就職する予定です。世界20カ国以上の国と地域で事業を展開するユニクロは、ロンドンに大きな店舗があり、また、さまざまな国の友人がユニクロの商品を愛用しているのを目の当たりにして、世界で広く認知され、評価されている日本発のブランドで日本と世界をつなぐことに寄与したいと考えました。グローバル企業であるユニクロが、通年採用を行っていることも、3年次後期からの留学を志願した私にとって幸いでした。ゆくゆくは自分が主体となって、日本の良いものを発信する立場になることができたら、と考えています。「自分が何をしたいのか」の問いを大切に、これからの道を歩んでいきたいと思います。

留学先のカンタベリーの街を友人と散歩中

中島さんの交換留学スケジュール

  1. <1年次> 2019年 4月

    入学直後から留学を視野に入れ、授業や自習で英語力アップを目指す

  2. <1年次> 2019年 夏

    IELTS受験

  3. <1年次> 2019年 冬

    イギリス(スコットランド)のスターリング大学協定校留学内定

  4. <2年次> 2020年 春

    新型コロナの流行で留学中止

  5. <2年次> 2020年 夏

    IELTS再受験

  6. <2年次> 2020年 冬

    イギリス(イングランド)のケント大学協定校留学内定

  7. <3年次> 2021年 9月

    留学開始

  8. <4年次> 2022年 6月

    帰国

総合文化政策学部

青山学院大学の総合文化政策学部では、“文化の創造(creation)”を理念に、文化力と政策力を総合した学びを探究。芸術・思想・都市・メディアなどの広範な領域を研究対象とし、各現場での“創造体験”とともに知を深めていくチャレンジングな学部です。新たな価値を創出するマネジメント力とプロデュース力、世界への発信力を備えた“創造的世界市民”を育成します。
「文化の創造」を理念に、文化力と政策力を総合した学びを探究します。古典や音楽、映像、芸能、宗教、思想、都市、ポップカルチャーなどあらゆる「創造」の現場が学びの対象です。どうすれば文化や芸術によって社会をより豊かにすることができるのか。創造の可能性を模索し、自身のセンスを磨きながら、アートのトータルプロデューサーとして社会への魅力的な発信方法を探ります。

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国際センターは、大学の国際化に関わる教育支援と国際人育成をサポートしていきます。主な業務は、海外協定校・認定校への「留学生派遣」と、海外協定校からの「留学生の受入れ」、私費留学生のサポート、そしてそれらの学生向けの奨学金業務、夏期春期に行われる短期語学・文化研修などのプログラムの企画・運営等を担います。各国の多様な文化や慣習および学生の異なる価値観を尊重しながら、海外大学と本学との連携をさらに強化・拡充していきます。

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