コミュニティ人間科学部
での学びを指針として
設計した
2本の道で描く将来

掲載日 2022/9/29
No.183
<2022年度 学業成績優秀者表彰 優秀賞受賞>
コミュニティ人間科学部
コミュニティ人間科学科 4年
福原 麻衣
茨城県立水戸第一高等学校出身

OVERTURE

子どもの福祉について強い関心を持ち、コミュニティ人間科学部で学ぶ福原さん。自身の思いと向き合いながら将来進む道を模索し、大学での学びや経験から得た多くの気づきを手引きにして希望する進路を見つけ出しました。

青学独自の推薦制度で叶えた大学進学

物心が付いた頃から将来は福祉に携わりたいと考えてきました。特に子どもに関わる何かがしたいという思いが強く、小学生の頃の夢は保育士、小学6年生になると、特に児童養護施設で働きたいと考えるようになりました。それは私が児童養護施設で育ったからであり、他の道を知らなかったからと言えるかもしれません。青学に進学しようと考えたのも、児童養護施設入所者を対象にした「全国児童養護施設推薦」という推薦制度があることを知ったからです。この制度により入学した学生は学費が免除される他、毎月10万円の奨学金が給付されます。こうしたサポートは親からの経済的援助を受けられず、後ろ盾のない私にとってこれ以上ないほど心強く、施設の職員から本制度の話を聞き、他の志望校もありましたが職員と何度も話し合った末に心を決めました。加えて推薦制度の入学者には学部の教員が専属のアドバイザーとして付いてくださることになっており、1年次から折に触れて声をかけて頂いています。

いろいろな学部を検討していた中で心惹かれたのが、私が入学した2019年度新設のコミュニティ人間科学部でした。まず地域と人に焦点を当てて学べる学部ということに興味を持ち、さらに本学部には5つの専門領域があり、そのひとつが「子ども・若者活動支援プログラム」であることを知り、子どもについて多角的に学び、幅広い知識を身に付けられるのではないかと期待し、志望しました。

一市民として子どもに関わる道を選択

大学での学びは、卒業後の進路を考える上での指針になりました。本学部の特色として、地域活動を体験する「地域実習」が必修科目として設けられていることがあげられます。私が実習先に選んだのは「ドリームプレイウッズ」という冒険遊び場(プレーパーク)で、運営しているボランティアの方々と一緒に畑の草むしりをしたり、竹林の伐採をしたりと主に遊び場の整備を体験しました。子どもの自主性の尊重を方針としている場所なので、子ども主導で遊びが展開する様子を垣間見ることができましたし、それまでは「大人として子どもと関わる=仕事」と考えていましたが、職業としてではなく、一市民として子どもと関わる道もあるのだという認識を得られたことは何より大きな収穫でした。

3年次からは子ども家庭福祉について学ぶ横堀昌子先生のゼミナール(ゼミ)に所属し、現在は「子どものアドボカシー」について研究しています。アドボカシーとは、福祉利用者などの権利を守る仕組みの一環として取り組まれる、当事者の意見表明の保障のことで、国連・子どもの権利条約第12条において子どもの権利として意見を表す権利が規定されています。横堀先生の授業でこの言葉を初めて知った時、「自分が児童養護施設で生活している子どもたちにできることはこれだ」と感じ、先生に本をお借りして調べるようになりました。そして、その過程で子どもの意見表明を支援する「子どもアドボケイト」という存在を知りました。アドボケイトは児童養護施設や児童相談所の一時保護所、障がい児施設などを定期的に訪問し、施設の職員には言えないような子どもの声を聞いたり、上手く言葉に表せない胸の中にある気持ちを形にする「意見形成の支援」をしたりして、それを伝える手伝いや代弁を行う人で、100%子どもの味方という立場にあります。大人の都合を考えずに子どもの思いを尊重できるのが子どもの特権であると施設で生活している間は考えており、私はいつでもともに生活する子どもたちの味方としてそれに寄り添いたいと考えて子ども時代を過ごしてきました。しかし、仕事で子どもと関わるとなればルールを守らせる責任も生じ、子どもの声に応えられないこともあります。そうであれば、子どもに関わる仕事は果たして自分に向いているのだろうかと迷いが生まれていたところ、自分が望む子どもとの関わり方は大人という立場で大人の都合を考えずに子どもの思いに100%寄り添えるアドボケイトだと確信し、将来は仕事とは別にアドボケイトとしての活動をしていこうと決意しました。

就職採用面接は働いている人の思いを知るチャンス

就職活動は、児童養護施設で発達障がいを持った子どもと共に過ごしてきた経験と、私の母親が精神障がいを持っていたことから、障がい者福祉に絞って進めました。最終的に就職を決めた理由は、障がい者の就労や日中活動の支援をしている社会福祉法人で、特に携わりたいと思っていた心の病を持つ方々への支援を行っていること、かつ実際に施設見学をさせていただき、職員の方が生き生きとして、利用者の方も楽しそうに活動されている雰囲気がとても良いと思ったからです。

この業界での採用面接では、ほとんどの場合志願者から採用担当への質問の時間が設けられています。その際には必ず「働く時の心構え」を尋ねていました。私は面接を実際に働いている人の声を聞くことができる貴重な機会と捉えていたので、緊張せずにのびのび受け答えができたと思います。その中で、障がい者の自立訓練を行う企業の面接担当者から伺った「利用者と深く関わり過ぎてこの人がいれば大丈夫という関係になってしまったら、自立という観点からは失敗だ」というお話が深く胸に刻まれています。施設の職員の方が心の拠り所だった私は、自分も将来そういう存在になるのだという意識でいましたが、障がい者の方々は最終的には社会で自立して生きていくことが目標である以上、依存の対象になるのではなく、自身の力で生活するための支援をしていくのだということを心に留めておこうと思っています。
私は人に頼ることが苦手な性格で、就職活動についても自分の進路は自身で考えなければと思いがちでした。結果的には良い就職先とのご縁がありましたが、振り返ると第三者の意見を自分からもっと求めて行くことで、より自信を持っていろいろな判断ができたかもしれないという気持ちもあります。是非皆さんは進路・就職課など大学の就職活動サポートも利用してみてください。

今の時代にこそ求められる「人と人とのつながり」

学業以外では、3年次から始めたフェアスタートサポートという特定非営利活動法人でのインターンも大切な学びの場となりました。そこは児童養護施設の子どもたちへの就労支援を行っている団体で、私は普段主に職業適性検査やVRT(職業レディネステスト*)の採点等に携わらせていただいています。しかし、それだけではなく、私は一当事者として、支援をしたいという企業の方との会合に同席したり、どのようなケアが必要かインタビューしていただくことなどが多々ありました。児童養護施設というのは本当に関心を持たなければ知ることができない世界だと思います。それでも施設の子どものために何かしたいという人がたくさんいるということを改めて知り、すごく励まされましたし、人のつながりが希薄化していると言われる今の時代に、他者と支え合い、助け合える関係を作ることが必要だと感じました。

インターン先の団体が協力したロータリークラブのイベントにて司会を担当

学部での学びにおいても、最終的には「人と人とのつながり」が大切であるということはどの授業でも共通するところです。この学部を象徴する「コミュニティ」とは「他者に関心を向けられる関係性」であり、継続的な関わりがあるからこそ互いのニーズや課題をくみ取り、共に解決に向かっていけるのだと思っています。
就職活動と並行して「子どもアドボケイト」の養成講座も受講してきたので、卒業後は、障がい者福祉の仕事とアドボケイトの活動を両立していくつもりです。仕事においては、児童養護施設で多くの職員に支えられてここまで生きてこられた私が、今度は障がいを持つ方の幸せの実現をサポートできるよう、一人一人の声に耳を傾け伴走していきたいと思っています。そしてアドボケイトに認定された後には、施設を訪問して子どもの声を聞く活動をしていきたいです。これからもずっと子どもの味方であり続け、さまざまな要因でかき消されてしまわぬよう、子どもたちの思いや声を大切にしていきたいと思います。

* Vocatinal Readiness Test 通称VRT。基礎的志向性と職業準備性を測ることにより、主に中学生や高校生等の進路指導における自己理解の用具として活用されている。(一般財団法人 日本職業協会Webサイトより)

福原さんの就職活動スケジュール

  1. 〈3年次〉 2022年1月

    早期選考を行っている企業1社へエントリー

  2. 〈3年次〉 2022年3月~

    説明会参加、エントリー、選考

  3. 〈4年次〉 2022年4月

    子どもアドボケイトの養成講座を受講開始

  4. 〈4年次〉 2022年5月

    4ヵ所から内々定をいただき、障がい者福祉を行っている法人に決定。就職活動終了

コミュニティ人間科学部

コミュニティ人間科学部では、日本国内の地域に着目した社会貢献を追究し、地域文化とそこに暮らす人々の理解を深め、より良いコミュニティ創造に寄与する力を培います。幅広い知識の学び、体験し行動するプログラムを通じて、自ら課題を発見・解決し、地域の人々との互助・共助のもとにコミュニティの未来を拓く力を育成します。
日本の地域社会は、高齢化や過疎化などさまざまな課題に直面しています。その解決に力を発揮するには、地域の人々に接し、活動の実際を知り、共感する体験が重要です。コミュニティ人間科学科では、地域の人々や行政についての学びをはじめ、市町村やNPOと連携した体験的実習などを展開します。専門家として、地域社会の構成者として、地域の活性化や持続的な活動支援ができる人材を育てます。

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