音・吸音研究を通じて、安心して生活できる環境づくりに貢献したい

掲載日 2024/2/6
No.282
理工学部 機械創造工学科 4年
小塙 和輝
千葉・私立志学館高等部出身

OVERTURE

中学時代のドローンとの出会いをきっかけに、機械工学の分野に進んだ小塙さん。理工学部機械創造工学科に入学後、専門的かつ多彩な授業を通じて研究者としての礎を築いていきました。現在は「騒音低減」をテーマに卒業研究に取り組む小塙さんに、学科での学びの魅力や専門の研究内容などについて語ってもらいました。

ドローンとの出会いをきっかけに、機械系の分野に進む

私が機械工学の分野に興味を持つようになったのは、中学時代にドローンに触れたことがきっかけです。プロペラの仕組みなどに引かれてドローンの観察や修理を続けるうちに、自分でも機械を作ってみたいと考えるようになりました。やがてエンジニアの道を目指そうと思い、青山学院大学の機械創造工学科に進学しました。

機械創造工学科での学びは実り多いものとなりました。特に、機械工学における重要な要素である4力学(材料力学・機械力学・流体力学・熱力学)を早い段階から学べたことは、自分の研究の基礎をつくりあげる上で大きな意義があったと思います。例えば、入学前から楽しみにしていた「機械創造工学演習」の授業では、自転車を分解して力学的な仕組みを学ぶことができ、非常にためになりました。

3年次前期に履修した、設計を初歩から学ぶ「機械設計製図」も面白い授業でした。渦巻ポンプを題材に、自分で必要な寸法を考えて設計図を描きました。ポンプに用いる水車の大きさや回転速度など、多くの要素を考え合わせる必要があるため「複合的に考える」力が鍛えられたうえ、作業量も多かったのでテキパキと行動する力や忍耐力が身に付きました。ポンプの設計製図の仕様は学生ごとに異なるので、履修者の設計図と比べたり、参考にしたりすることができません。自分の力で設計図を精査し、完成させる訓練になりました。自ら設計図を描いたことで、ものづくりについて根本から理解できました。ポンプ一つにしても、設計者のいろいろな工夫が込められ、私たちの生活を支えていることが分かりました。

また、2年次後期に履修した「青山スタンダード」科目の「囲碁で養うロジカルシンキング」は特に印象に残っています。プロの囲碁棋士が指導してくださるユニークな授業で、初歩的な囲碁の打ち方から始まります。授業の本当の目的は、さまざまな打ち手の理解を通じて戦略的な視点を身に付けたり、物事をロジカルに考えたり、俯瞰する大局観を学ぶところにあります。半期の授業が終わる頃には私もそれらが自然と身に付くようになっていました。4年次になった現在は、この授業のスチューデント・アシスタント(SA)も務めています。学生と直接関わりながら、囲碁の打ち方などのサポートを行うのですが、経験を積むうちに、学生が自力で気付くように見守るべきところ、直接教えるべきところの見極めができるようになってきました。こうした「教えるタイミングの重要性」を理解できたのも、SAの経験から得られた知識の一つです。

「騒音」の研究を通じて社会に貢献したい

機械創造工学科のカリキュラムの大きな特徴は、低学年のうちから「研究室」に所属できる「ラボ・ワーク(AⅠ・AⅡ、BⅠ・BⅡ)」という授業があることです。4年次に所属する研究室の雰囲気や研究内容を2年次から体験できます。2年次では、材料強度学を専門とする蓮沼将太先生の研究室で、「引張試験」や「シャルピー衝撃試験*」などを通じて、より強度の高い材料を探す研究を行っていました。3年次では、動力学や制御工学を専門とする菅原佳城先生の研究室で、「騒音の低減」を研究テーマに選びました。騒音に興味を持つきかっけには、中学時代に興味を持ったドローンとの関わりがあります。ドローンを扱っていくうちに、飛行音や操作音が騒音につながる危険性を知り、世の中の騒音全般に意識が向くようになったのです。そこから「皆が快適に生活できる環境をつくりたい」と考えるようになり、騒音の一因となる低周波音を粉体に吸音させる研究に取り組みました。「ラボ・ワーク」で先輩方のハイレベルな研究に触れることでモチベーションも高まりますし、日々いただくアドバイスの積み重ねが大きな学びとなって、4年次からのスタートダッシュが切りやすくなったと感じています。

*ハンマで試験片を打撃して破壊し、打撃後のハンマの振り上げ角度を読み取って試験片の破壊に費やされたエネルギーを求める試験。

4年次の現在は、菅原研究室に所属して「補聴器の騒音低減」をテーマに卒業研究を進めています。補聴器を使用すると「ザーッ」という風雑音(風切り音)が発生することがありますが、この風雑音の発生メカニズムを考察している段階です。実験では「風洞」という風を発生させる装置を用います。補聴器に風を当てて雑音を発生させ、音圧をマイクロホンで測定したあと、そのデータを基に解析を行います。解析には専門のソフトウェアを用い、補聴器周辺の気流や圧力、音源の位置を調べていきます。最終的には風雑音の低減手法を確立し、世の中に役立てたいと考えています。

風洞実験の様子

菅原研究室では毎週進捗発表会を行うのですが、その際、先輩方の高度な研究内容や鋭い質問、先生のアドバイスなどからたくさんの気付きがあります。この進捗発表会を通じて、分からないことがあっても妥協せず努力する力を伸ばすことができました。

卒業後は大学院に進学し、当面は今の研究を発展させていく予定です。音や振動制御が関わる領域は広いので、より積極的に社会に貢献するための方策なども考えながら、将来進む道をしっかり検討していきたいと思っています。

機械創造工学科での4年間は「人生の糧」に

高校までは、既に答えのある問題について学んできましたが、大学では、いまだ答えの出ていないテーマについて自ら探り、研究を進めていきます。自分で考え、解明していくという研究の喜びは大きなものです。研究内容をさらに高めていくためには、実験を重ねて精査・分析を繰り返す苦労がありますが、それを乗り越えて解決することにやりがいを感じています。

機械創造工学科で過ごした4年間では、学業面以外にも多くのことが得られました。コロナが少し落ち着いた2年次以降は、対面授業も増えたことで学科内や囲碁同好会のクラブ活動等で仲間を見つけることができました。これにより幅広い情報に触れる機会が増え、分からないことを教え合ったり将来のことを話し合ったりできるようにもなりました。また、先輩方との交流を通じて、就職や将来展望を具体的にイメージできる力も身に付きました。大学生活で得られたコミュニケーション能力や論理的思考力、粘り強く努力する力などは、社会でも必要とされるものです。機械創造工学科での経験や積み重ねてきた努力の数々は、今後の人生の糧となるものだと思っていますし、引き続き大学院で研究が続けられることを楽しみにしています。

囲碁同好会にて

※各科目のリンク先「講義内容詳細」は掲載年度(2023年度)のものです。

理工学部 機械創造工学科

青山学院大学の理工学部は数学、物理、化学といったサイエンスと、テクノロジーの基礎から最先端を学ぶ環境を整備しています。国際レベルの研究に取り組む教員のもと、最新設備を駆使した実験、演習、研究活動の場を提供するとともに、独自の英語教育を全7学科統一で実施。未来志向のカリキュラムにより、一人一人の夢と可能性を大きく広げます。
機械創造工学科が掲げるモットーは、「未来を創造する機械工学」。自動車産業や重工業などに不可欠な広範囲の工学を基盤に、ソフトウェア技術を組み合わせることで、夢のある心豊かなものづくりを志向する独自の工学を推進しています。その根底には「人と社会と自然の共存」という大命題があります。このテーマを実現するための創造力と想像力を養い、21世紀のものづくりを担う人材を育成します。

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