私たちの目に映る
ジャパニーズカルチャー
OVERVIEW
青山学院大学は、多くの学生が
世界各国へ留学し、同時に、多くの留学生が
各国から集まる「学生たちの交差点」。
グローバルな視野を持ち、
異文化に飛び込んでチャレンジしている
2人の学生を紹介します。
青山学院大学では、現在450人を超える外国人留学生が学生生活を送っています。その中には専攻にかかわらず、日本の文化を学びたいという意思を持つ学生が多く存在します。そのような学生が日本の文化について学ぶことができる授業が「日本学」です。アメリカ出身のBEST, Tyler Leoさんや韓国出身のBAEK HYEINさんも、現在「日本学」で日本の文化を学ぶ学生の一人です。授業を通して学ぶ日本文化の印象や魅力、留学の経験を通して得られるものについて、二人が語ってくれました。
遙か昔から受け継がれる
文化への驚き
アメリカ出身のBEST, Tyler Leoです。2019年の9月から経営学部の交換留学生として青山学院大学で学んでいます。私はアメリカで育ちましたが、母親が日本人なので子供のころから何度も日本を訪れていました。その中で感じていたのが、日本には勤勉さや周囲への気遣いなど、アメリカとは少し異なる文化があるということです。実際に日本で生活し、もっと日本人のものの考え方を学びたいという思いがあり、留学を決めました。
留学を機に、様々な日本の文化を学びたいと考えていましたが、金銭的負担や手続きが必要なことも多く、自分一人でできることには限界があります。だからこそ、授業を通して日本の文化を学べる「日本学」は、とても素晴らしい授業だと思います。まずは、授業で様々な日本の文化に触れてみて、その中で特に興味をもったものについて、自分でさらに掘り下げて学んでみようと考えています。
今日の授業は日舞。シンプルな一本の扇子で深いストーリーを作り上げていく踊りを見て、奥深さを強く感じました。そのように感じたのは、授業で踊りの一つ一つの動きに意味があることを説明していただいたからです。もし知識もなく、ただ見ているだけだったら、踊りの奥深さを感じることはできなかったかもしれません。
また、先生のクリエイティブな発想も印象に残りました。扇子を使って別のものを表現する「見立て」を習ったとき、他の学生からのリクエストに、先生が即興で動きをつけ、カンガルーやハンティングなど、どうやって扇子で表現するのだろうと思うようなリクエストにもかかわらず、先生はどのように表現したらよいかが始めから分かっていたかのように応えてくれました。その発想はとてもユニークで、誰にでもできることではないと感じました。
生け花も印象に残った授業の一つです。生け花については知識も興味もありませんでしたが、授業の中で印象が変わりました。三人の先生がそれぞれに花を生けてくださったのですが、よく見るとそれぞれ少しずつ違っていて、花の生け方にも一人一人のスタイルがあるのだと分かってきたのです。自分でも実際に生け花を体験してみたことで、花を生けることでリラックスできるという発見もありました。
日舞も生け花もそうですが、プロフェッショナルの先生が指導をしてくれるからこそ、感じられるものや理解できることがあります。このような経験は誰もができることではないので、「日本学」の授業に感謝しています。
日本の文化を学んでいて感じるのは、長い歴史の中で生まれた文化が今も受け継がれていることの面白さです。アメリカは歴史が浅い国なので、昔の文化といってもせいぜい200年程度前のもので、今の文化とそれほど大きく変わりません。しかし日本には1000年以上前の文化も残っており、そこには今の時代とは全く違う考え方や生活スタイルが見られます。
それほど古い文化の中に、今の生活にも受け継がれているものがあるというのは驚くべきことです。例えば、日本には季節ごとの旬の食べ物があり、その食べ物を食べると元気になるという考え方がありますが、そのような考え方は昔からずっと受け継がれています。大相撲も昔からの伝統が大切にされています。これは、現代の人たちが昔の人たちに感謝していることの表れではないかと思います。
留学は2020年の8月までですから、せっかく日本にいるので帰国するまでの間にいろいろなことを経験したいと思います。2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックでは、映像撮影の際に選手をアテンドするアルバイトを行う予定です。留学中に東京オリンピック・パラリンピックにかかわりたいと考えていたので、とても楽しみにしています。また、将来のことはまだ具体的には決まっていませんが、留学した経験や日本語能力を生かして、アメリカと日本、両国の人たちとコミュニケーションをとりながらビジネスができるといった、それぞれの国の人たちをつなぐような仕事に就きたいと考えています。
留学をして思うのは、母国で生活しているときとは違い、全てのことに積極的に取り組む必要があるということです。何事にも積極的に取り組むことでとても毎日が忙しくなりますが、だからこそ様々な人とのかかわりが生まれ、おかげで日本人の友人もたくさんできました。また、青山学院大学に留学していることを伝えると、ほとんどの人が青山学院大学を知っているし、ポジティブなイメージをもってもらえるので、それはとても助かっています。
ちなみにアメリカでは、留学生はとても注目され、オープンに話しかけてもらえます。日本人のことを好きな人が多いアメリカに留学すればきっとたくさんの友人ができると思います。
自由自在な表現に
魅せられて
韓国出身のBAEK HYEINです。私は青山学院大学法学部の3年生です。元々、韓国ではグラフィックデザインの勉強をしていましたが、次第に別の道に進みたいと考えるようになりました。日本への留学を考えたのは、プライベートで日本語を学んでいたためですが、具体的に何かをしたいというよりは、日本の生活が自分に合うか合わないか、まずは一年間、試しに住んでみようという気持ちでした。最初は食文化に慣れないところもありましたが、次第に慣れてきて、今では全く問題ありません。
日本語学校を経て青山学院大学に入学し、日本での生活は今年で5年目になりました。東京で過ごすことにもすっかり慣れて、外国に住んでいるという感覚もなくなってきています。せっかく日本語を勉強し、日本の大学で学んだのだから、就職もこのまま日本でしたいと考えています。
「日本学」は、以前授業を受けていた友人たちから勧められて受講しました。その時に実際の授業の写真を見せてもらったのですが、自由な雰囲気で楽しそうだと思いました。基本的には外国人留学生を対象とした科目なので、このような授業を受けられるのは外国人留学生の特権だなと思います。
「日本学」では様々な日本の文化が取り上げられますが、それぞれの分野に精通した方に教えていただけるところに面白さがあります。今日は日舞の授業でしたが、日舞は実際に見てみると、動きがとても自然で自由だと思いました。着物は動きが制限される服だと思うのですが、それを感じさせないところにすごさを感じます。きっと動きが不自然にならないような工夫をして踊っているのだと思います。
また、八王子車人形の授業もとても印象に残っています。人形の表情に変化があったり、関節が自由自在に動いたりと、様々な表現ができることに驚きました。大きな人形を自在に操ることも、誰にでもできることではないと思います。授業では明るい場所で見たので人形を動かす糸が見えていましたが、実際に舞台で見るとまた雰囲気が違い、さらに圧倒されるのではないでしょうか。
様々な日本の文化を学ぶ中で印象的だったのは、何かを教えてもらう際のマニュアルがなく、先生の呼吸や動き、話し方などを自分で見て、真似て学ぶことが多いということです。例えば、西洋の音楽であれば楽譜が残されているので、その通りに弾けば誰でも同じように表現することができます。しかし、多くの日本の文化の場合は一人一人の学び方によって表現が変わってくるし、時代ごとに表現の形が変わっていくように思います。もちろん似たようなところは他の国にもあるのだと思いますが、日本の文化に広く見られる特徴なのではないかと感じています。
今後の授業で楽しみにしているのが、書道です。韓国では漢字をほとんど使わないので、筆で文字を書く文化が薄れつつあります。私は小学生の頃に絵画を習っていたのですが、そこで墨絵を経験したことがあり、大学でデザインを学んでいた頃には、カリグラフィー(欧文の文字を独特のタッチで美しく書く技術)を学んだこともあります。カリグラフィーの練習には、日本の筆ペンを使っていました。このような経験を通して、日本の文字の美しさを表現する書道をいつか学んでみたいと思っていたので、授業を心待ちにしています。機会があれば授業以外でもどこか習える場所を探して、書道を学んでみたいと考えています。
これまでの生活を振り返ると、日本の生活になじむことができた理由の一つは、青山学院大学の環境にあるように思います。他の大学であれば、外国人留学生向けに英語で授業を行うこともあるようですが、青山学院大学では日本人の学生と同じように日本語で学び、同じように評価を受けます。特別扱いされないことで、日本の生活に慣れることができたのだと思います。
留学の経験から感じるのは、ずっと同じ環境にいると見えないものが多いこと、別の世界に出てみると今まで見えなかったものが見えてきて、自分の視野が広がることです。韓国と日本の両方の言葉を理解できるようになったことで、ニュースなどで同じ情報を扱っているのに、それぞれ違う伝え方をしていることに気付くことがあります。情報が多い現代社会において、正しい情報を選択することにも留学の経験は役立つと感じているので、機会があればぜひチャレンジすることをお勧めします。
- 日舞(Japanese dance)-
扇子を使った舞踊の特徴について、講師を務める舞踊家の藤間蘭黃先生からレクチャー。日舞の特徴の一つである扇子を使った「見立て」(物を使って別のある物を表すこと)は、受け取り手が想像することではじめて成立することを学びます。
「見立て」に使用する扇子を学生全員に配布。初めて触る扇子にみんな興味津々です。扇子は「要」を中心にして開くことが説明された際には、「要」は日本語で「最も大切な部分」という意味を持つこともあわせて紹介されました。
世界各国から集まっている学生一人ひとりに、扇子で見立ててみたいものを挙げてもらい、蘭黃先生が手本を見せます。オーストラリア出身の学生が挙げたのはカンガルー。蘭黃先生が扇子を育児嚢の中の子どもに見立てると、学生から感嘆の声が。
いよいよ実践として女形の踊りにチャレンジします。取り上げるのは「都鳥」という作品。お手本を見た後に、蘭黃先生のレクチャーを受けながら踊りを真似します。実践とレクチャーを通して、何気ない一つひとつの動きにも深い意味があることを知りました。
日本学
外国人留学生向けに「日本を学ぶ」科目として、青山キャンパスでは「日本学」を開講しています。「日本学」では、日本の代表的な伝統文化(華道、書道、茶道等)を、実演、体験を交えて学びます。講演者は世界各国への訪問経験を有する各分野の専門家が中心で、日本の文化を知ることによって、母国の文化との対比を目指します。講義は留学生だけでなく、国際人としての活躍を希望する日本人学生も聴講することができ、学生がともに日本文化を学ぶ授業です。
青山キャンパスでは前期に「日本学A」、後期に「日本学B」を開講。
相模原キャンパスでは地球社会共生学部の専門科目(他学部履修可)として、「Traditional Art and Culture in Modern Japan/Topics in Japanese Culture Ⅲ」(英語講義)を開講し、多くの学生が履修しています。