稲垣准教授からの
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稲垣 春樹
本ゼミナール(ゼミ)では、イギリス近現代史を幅広く扱っています。学生は自分の興味・関心に合わせて自由に研究テーマを選んでいて、現代的な課題を取り上げる学生も多くいます。ディスカッションを重視し、文章を書く訓練にも力を入れています。
Q.文学部史学科をどのように捉えていますか?
私は2020年に本学に着任しましたが、歴史学の体系的なカリキュラムが整えられていることに強い印象を受けました。学生は1年次に日本史、東洋史、西洋史、考古学のすべての分野について広く学んだ後で、2年次以降に各分野に分かれて専門的な学びを深めていきます。最終的に、3~4年次のゼミを通じて、自分自身の研究を卒業論文として完成させることが目標です。教員の最新の研究成果を紹介する特講も1年次から数多く開講されていますから、自分自身の視野を大きく広げつつ、高い専門性を身に付けることができるようになっています。
Q.ゼミでの指導内容について教えてください。
私自身の専門は18〜19世紀のイギリス帝国史ですが、学生はイギリス史のさまざまなテーマについて幅広く研究しています。ゼミは文献講読と文章を書く実習が中心で、両方でグループディスカッションを多く取り入れています。
文献講読では、学術論文を毎回2~3本取り上げ、まずはグループで、次に全体でディスカッションをします。さまざまなテーマについて「歴史学ではこう扱う」ということを知ってもらうために、関心に沿った論文を学生自身に選んでもらうことを重視しています。ゼミには様々な関心を持つ学生が集まっていますので、毎回の授業では多様な視点からの意見が飛び交い、しばしば深い議論に発展します。
一般的に歴史学のゼミは「読むこと」が中心になることが多いのですが、卒業論文の準備としても卒業後の仕事や生活においても「書くこと」の練習は大切ですので、ゼミでは文章を書く実習も行っています。4年生であれば卒業論文の草稿の一部、3年生も卒業論文で扱いたいテーマについて調査したものなど、毎回1,200字程度の文章を全員が用意し、グループワークを通じてお互いの文章を改善していきます。粗探しではなく、良いところをたくさん指摘してもらうようにしています。教員も毎回すべての文章に目を通し、内容や書き方についてフィードバックをします。
Q. ゼミや講義を通じて、学生に伝えたいことは何ですか?
史学科での学びを通じて、たくさんの資料から必要な情報を引き出す力、自分の意見をまとめてわかりやすく表現する力、プロジェクト管理の力など、様々な実践的スキルを身に付けることができます。それは自分にとっても社会にとっても有益なことですから、自信をもって歴史学の研究をして欲しいと思います。また、特にゼミのディスカッションを通じて、共同作業によって新しいものを生みだす経験、他の学生の問題意識や関心に触れて価値観が揺さぶられる経験、世界の見方が変わる経験をたくさんしてほしいと思います。
ゼミには、人種差別、移民排斥、階級格差、ジェンダー不平等など、現代的な課題を研究テーマとする学生が多くいます。現在を相対化する歴史学の視点は、これらの諸課題にアプローチするひとつの有効な方法となります。過去の事実と向き合うことは、現代社会に特有だと思われがちなことが実は昔から継続する問題であると気付いたり、今常識だと思われていることを問い直したりするきっかけとなるからです。学生には、歴史学ならこう考えるという思考の型を身に付け、社会の中での実践に役立ててほしいと思っています。
また歴史学は、過去の人々の行動や考え方について、現代の常識や価値観をいったん保留して、その当時の歴史的な文脈の中で理解しようとする学問です。その姿勢は、自分には理解できない「他者」に出会ったときに、意見の相違や対立をまずは受け入れ、相手を尊重しようとする姿勢に通じるものがあります。そのような意味での「寛容さ」や「コミュニケーション能力」も、歴史学を学ぶことで身に付けてほしいと思っています。
学生の
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千葉県・私立植草学園大学附属高等学校出身
根っからの歴史好きで史学科に入学しました。1年目で歴史学の広い範囲を学べるので、「好き」で終わらない知識を身に付け、自分の興味の対象を見つめ直してコースを選べたことがとても良かったと思います。
稲垣先生のゼミでは、ディスカッションを通していろいろな視点や意見に触れられるので、毎回新しい気付きがあります。毎週2本の論文を読む時間を要するため、忙しさはありましたが、多様な意見交換ができたことで興味がどんどん広がっていく楽しさがあり、大変さは感じませんでした。
卒業論文のテーマは「19世紀から20世紀のイギリスの同性愛」です。ゼミで読んだ論文の中にたまたま同性愛に関することが書かれていたことがきっかけとなりました。ジェンダー史への興味からテーマが広がったのですが、同性愛はまだ研究が進んでいない分野でもあり、私が取り組む意義があるのではないかと考えました。
ゼミで卒業論文の進捗報告をすると、皆が質問やディスカッションをしてくれて、他の人の視点から客観的に自分の研究をブラッシュアップすることができました。また、必要な構成要素など論文執筆の基本ルールは先生が丁寧に教えてくださり、ゼミでは文章を書く訓練も重ねていたので、執筆をスムーズに開始できたと思います。
論文から論点を見つけ解決方法を探ることを、ゼミでは常に実践していました。卒業後も、歴史学とゼミで培った問題発見と解決をする力、そしてディスカッションを通して身に付いた力を、存分に役立てていきたいと考えています。
文学部 史学科
青山学院大学の文学部は、歴史・思想・言葉を基盤として、国際性豊かな5学科の専門性に立脚した学びを追究します。人間が生み出してきた多種多様な知の営みにふれ、理解を深めることで、幅広い見識と知恵を育みます。「人文知」体験によって教養、知性、感受性、表現力を磨き、自らの未来を拓く「軸」を形成します。
ロマンあふれる歴史を扱う歴史学は、実は史料を読み解き過去を再構成する科学的・実証的な学問です。史学科では、日本史、東洋史、西洋史、考古学という4つの視点から学びを深めます。過去について学ぶことは、異文化に対する広い視座を養うとともに、現代社会の成り立ちに関する理解を深め、社会の持続可能性を探ることにも通じます。これらについて自身の見解を客観的に表明できるよう、指導します。
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多様性の街「渋谷」で、自分だけの特別な場所を見つける
(フランス・トゥール大学)
Maxime Labbé
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経営学部 経営学科 4年
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