第二外国語で交換留学に
挑戦。自分の目と心で
異文化を学び、出会いを
糧にスペイン語を習得

掲載日 2023/3/23
No.222
国際政治経済学部
国際コミュニケーション学科 4年
伊藤 佳菜
新潟県立長岡高等学校出身

OVERTURE

留学への強い意欲を持って国際政治経済学部に入学した伊藤さんは、第二外国語の授業で初めて接したスペイン語の楽しさに魅了され、協定校留学制度を利用してスペインのサラマンカ大学に留学しました。スペイン語力を向上させたい一心で貪欲に勉強した充実の日々、かけがえのない出会い、異文化に身を投じたからこそ得られた気づきについてお聞きしました。

スペイン留学のきっかけは楽しかったスペイン語の授業

第二外国語にスペイン語を選択した理由は、「スペイン語が国連の公用語の一つである」「発音が日本語と似ていて取り組みやすそう」、その程度であって、特別な思い入れがあったわけではありません。英語が好きで得意でもあったので、英語圏を前提に、留学は入学前からの目標でした。高校1年生の時にオーストラリアにホームステイをした際、初めての海外体験に苦労もしましたが、自分が「外国人」というマイノリティーの立場になって、見えること・感じることが日本にいる時と全く変わるという体験が鮮烈でした。海外生活では、苦労することが成長を遂げるチャンスになると実感できたので、大学生になったら、海外で苦労して学ぶ環境に身を置きたいと考えました。入学直後からオーストラリアへの協定校留学(交換留学)を目指して出願準備を始めたものの、コロナ禍で留学生の派遣が中止となり、2年次の留学は叶いませんでした。先の見えない状況ではありましたが、留学したいという気持ちは絶対に曲げたくなかったので、海外派遣が再開した最初のタイミングで渡航できる国に行こうと決断しました。

その頃には、留学先として、英語圏以上に第二外国語で出会ったスペインに強く心を惹かれるようになっていました。2年間学んだことでスペイン語への興味が高まっていて、現地でもっと力を伸ばすことができたら面白そうだと思ったのです。この気持ちの変化は、1年次にスペイン語科目の担当だった渡邊 千秋先生とORDONEZ DE MOMIYAMA先生の明るいお人柄と快活な雰囲気の授業によるところが大きいと思います。対面授業でスペイン語圏特有の陽気な空気を共有しながら、初めて学ぶ外国語の楽しい世界に引き込まれました。渡邊先生には、3年次からゼミナール(ゼミ)でも指導を受けていますが、スペイン留学中のゼミの先輩、八木 優斗さんのお話を聞く機会があり、これもスペインに留学するという選択肢もあることを認識するきっかけになりました。また、私が交換留学に応募する年からスペインの協定校が4校に増えたことも好機となり、「せっかく間口が広くなったのだからチャレンジしてみよう」と背中を押されました。

「スペインのお母さん」に支えられ、スペイン語の習得に奮闘

国際的に難関大学・難関学部と認識されているハイレベルな学習環境に挑戦できることも交換留学の魅力の一つだと思います。私が派遣されたサラマンカ大学(Universidad de Salamanca)は、スペイン最古の伝統ある大学で、街はヨーロッパ有数の大学都市です。特に語学分野に強いことで知られる大学で、選択した翻訳学部には、学部独自の厳しい入学試験を突破した、向学心あふれる学生が世界中から集まっていました。3カ国語、4カ国語が話せるという人も珍しくなく、「私ももっと頑張らなくては!」と奮起して勉強しました。

スペイン渡航直後は、咄嗟にスペイン語で言葉が出ず、日常会話もままならないという体験をしました。しかし、頼る人もいない、「やるしかない」状況で、知りうるスペイン語を必死に使ってコミュニケーションをとり続けているうちに、1カ月もすると相手がゆっくり話してくれる内容は何となく理解でき、言いたいことを伝えることができる、挨拶や毎日使うフレーズならすらすら話せる、くらいになりました。せっかくスペインにいるのですから、もっと高いレベルを目指して、友人やホストファミリーと深くコミュニケーションをとれるようになりたいと思い、公立のスペイン語学学校にも約1年間通いました。新しい言語の習得は、取り組んだ分だけ実力となって身に付くことが楽しく、とにかく貪欲にスペイン語の勉強をしました。充実感が苦しさに勝っていたため、大変だったという意識はありません。結果として、語学学校で受験したCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)のB2に合格することができました。これは外国語の4技能(読む、聞く、書く、話す)の習熟度を示す指標で、ビジネスで運用できるレベルとされています。

サラマンカ大学留学中、大聖堂の前で

また、寮ではなくホームステイを選択したことによって、第2の母のように信頼できるホストマザーに出会えたことが、現地の生活で何より心の支えになりました。実は、このホストマザーは、青学からの交換留学生を4代にわたり受け入れてくださっています。先述の八木さんが3代目、私は4代目になります。これは留学に行く前から一つの安心材料だったうえ、ホストマザーはコミュニケーションをとても大事にしてくれる人だったので、毎日おしゃべりするのが楽しく、人生相談に乗ってもらえたのもいい思い出です。将来のことなど考えすぎて不安になりがちだった私に、ホストマザーはよく「もう十分考えたわよ!」と声を掛けてくれました。今を楽しみ、上手くいかなくなったらその時に考えればいい、そんなふうに楽観的に、肯定的に考えられるようになり、ホストマザーには、「今まで来た日本人学生の中で、あなたが1番スペイン人みたいになったわね!」と言われたほどです。振り返ると、異国にいながら安心して「帰る家」があったから、1年間の留学生活を楽しく乗り越えることができたのかなと思います。

ホストマザーと観劇に

現地体験とゼミでの学びが結びついた瞬間、
現場を「自分の目で見る」ことの意義を実感

留学中も、渡邊ゼミの授業にはオンラインで自主参加を継続し、現在に至ります。ゼミでは、西洋美術史やスペインの歴史、ジェンダー論など、スペインの文化や社会に関わる事象を多角的に学んでいるので、現地での体験とゼミでの学習が結びついた瞬間、「あの本に書いてあったのはこういうことか」と、知識が深い記憶として定着します。例えば、ゼミで「15M(キンセエメ)」という2011年5月15日にマドリードで起こった大規模抗議運動について学んだ時のことです。政治に意思が反映されないことに不満を募らせた若者を中心に約5万人もの市民が歴史あるソル広場(Puerta del Sol)を占拠し、政府に対して抗議活動を行う事態は、日本にいれば想像しがたいことです。スペインに行けば誰もが一度は足を運ぶ観光名所でもある広場ですが、一つのことを訴えるためにあの広場を埋め尽くすほど人が集まった、そのスケール感をイメージできるかどうかで受け止め方は違ったと思います。何か物事を知ろうとするとき、その現場を自分の目で見ることには大きな意味があると感じています。現在、渡邊先生の「スペイン語文献精読Ⅱ」の履修を通じて語学学習を継続しており、「スペインの労働環境とジェンダー格差」をテーマに友人と2人で取り組んだ卒論では、スペイン語の文献を取り入れることもできました。

友人とのマドリード旅行にて

また、ロシアによるウクライナ侵攻をヨーロッパで体験したことも、深く印象に残っています。人間の尊厳が踏みにじられる現実を目の当たりにしたとき、ロシア人の友人が自国ロシアに対して怒りを露わにする様子に触れ、国家と個人のはざまで揺れ動く立場の人たちの存在を明確に認識しました。それ以降、国籍などの属性にとらわれず、誰にでも先入観なく、フラットに接することの大切さを再確認し、それを心にとどめてコミュニケーションを図るようにしています。

日本と地元・新潟を「外から見る」機会を得て、
日本の魅力と潜在的価値を再認識

世界各国の人たちとの交流、留学での成功体験の積み重ねが自信につながり、自分を信じて行動できるようになったと思います。就職活動においても、留学で培った力や経験は自己アピールのポイントになりました。私は幼い頃から食べることが大好きで、日本のお菓子のバリエーションの豊かさ・品質の高さをスペインで再認識したことから、日本のお菓子を世界に広めたいと考え、好きなお菓子を数多く展開している、私の出身地・新潟を代表する株式会社ブルボンに就職を決めました。東京の大学に進学してスペインに留学したからこそ、日本とりわけ地元・新潟を外から見る機会を得て、新潟の魅力と潜在的価値を再認識した結果の進路です。会社の営業拠点がないスペインへの進出を実現させ、ホストファミリーや友人たちにブルボンのお菓子を食べてもらうことが目標です。

渡邊ゼミで国立西洋美術館を訪れ、ピカソの作品を鑑賞(後列右から3番目が伊藤さん)

長期にわたり海外で学ぶ経験は、人生でいつでもできることではないと思います。青学は協定校が充実しており、アジアやヨーロッパにも英語で留学できる大学がありますし、私のように第二外国語圏に行くなど、興味関心に応じた選択が可能です。留学奨学金などサポート制度もあります。留学したいという思いがある人は、その気持ちを大切に持ち続け、チャンスを生かしてほしいと思います。

伊藤さんの交換留学スケジュール

  1. <1年次> 2019年 春

    入学。学内の留学セミナー(渡航国や費用、語学試験についてなど多種多様)に複数参加

  2. <2年次> 2020年 春

    コロナ禍の影響を受けて全学的に留学(渡航)中止が決定

  3. <2年次> 2020年 8月

    スペインの協定校3校への留学出願準備(志望理由書、語学能力証明書など)、出願

  4. <2年次> 2020年 10月

    学内ゼミ選考(現代スペイン社会を扱う渡邊ゼミを選択)

  5. <2年次> 2020年 12月

    交換留学学内選考で第一志望のサラマンカ大学への派遣内定

  6. <3年次> 2021年 6月

    スペインへの渡航(派遣)決定、ビザなどの留学準備

  7. <3年次> 2021年 9月

    留学開始

  8. <4年次> 2022年 7月

    帰国

国際政治経済学部
国際コミュニケーション学科

青山学院大学の国際政治経済学部は国際社会への貢献をそのミッションとし、国際系学部の草分けとして創設されました。3学科×5コース体制のもと、専門性と国際性、現場感覚を重視した学びを実践しています。グローバルレベルの課題への理解を深め、エビデンスにもとづいて議論・討論するスキルを養成します。世界の多様な人々と協働し、新たな価値を創造する実践力を育みます。
国際コミュニケーション学科では、激変する国際社会において政治学的・経済学的な視点からだけでは扱いきれない国際事象を学問領域として学修・研究します。異なる文化への理解と他者との共存について考え、国際社会が抱える諸問題の解決に貢献できる人材を育成します。卒業生は国際渉外・広報、各種海外協力事業団、通訳・翻訳、マスコミ業界などさまざまなフィールドで活躍しています。

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国際センターは、大学の国際化に関わる教育支援と国際人育成をサポートしていきます。主な業務は、海外協定校・認定校への「留学生派遣」と、海外協定校からの「留学生の受入れ」、私費留学生のサポート、そしてそれらの学生向けの奨学金業務、夏期春期に行われる短期語学・文化研修などのプログラムの企画・運営等を担います。各国の多様な文化や慣習および学生の異なる価値観を尊重しながら、海外大学と本学との連携をさらに強化・拡充していきます。

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