成長のきっかけは
思考錯誤を繰り返した
専門分野の研究と課外活動

掲載日 2023/7/19
No.248
経済学部
経済学科 4年
梅田 瑞樹
東京都立竹早高等学校出身

OVERTURE

小中学校時代の海外生活において、日頃から経済的な格差を目の当たりにしていた梅田さん。その経験が経済学への興味につながり、経済学部経済学科で学びを深めてきました。ゼミナール(ゼミ)での研究や青山学院大学経済学部学生会(AESA)の活動を通して、自ら考え、壁を乗り越える経験を積み重ね、社会で生きる主体性や確かな思考力を身に付けました。

経済格差を身近に感じた海外生活が経済学への興味のベースに

私は小学1年生から4年間をフィリピンで、小学5年生の一時期と中学校の3年間をタイで過ごしました。開発が進んでいる地域のすぐそばに貧困層の方が住んでいるなど、東南アジアの光と影ともいえる経済格差を身近に感じて育ちました。また、現地で物の価格表示を見ると日本円でいくら位になるか計算することが習慣化していたこともあり、日常的にお金について考える機会が多い環境で暮らしていたと思います。このような経験から、人間が生きていくうえで欠かせない経済活動の仕組みについて学びたいと考えるようになりました。青山学院大学の経済学部に進学を決めたのは、幅広い領域の経済学の授業が用意されており、多様な選択肢の中から自分が突き詰めて学びたい分野を見つけられることに魅力を感じたからです。

本学部で学び、成長した点のひとつがレポートを書く力です。1年次の前期に履修した「ミクロ経済学」の授業では、学んだ理論をベースに具体的な事例を自ら探し、考察するという難易度の高いレポートが課されました。大学で求められるレベルのレポートを書くのはこの時が初めてだったので、何から手を付ければよいのかもわからず、アカデミックライティングセンターにアドバイスを求めました。大学院生のチューターから論文やレポートの書き方について個別指導していただきながら、授業でインプットした理論の応用や自分の言葉でアウトプットすることで、初めての本格的なレポートをまとめ上げることができました。この経験により、その後の専門科目を学ぶ上で基盤となるミクロ経済学の知識をしっかり身に付けることができ、履修後に自分自身の成長が感じられました。

大学入学当初はパソコン操作にも不慣れでしたが、本学独自の全学共通教育システム「青山スタンダード」科目で全学必修の「情報スキルⅠ」を履修し、WordやPowerPointの使い方をマスターできました。身に付いたスキルをそのままレポート作成やプレゼンテーション(プレゼン)用の資料づくりなどに生かすことができ、本学のカリキュラムでスムーズに学習を進めるための大きな支えになりました。

主体的に考える力が養われたゼミのグループワーク

1年次から経済史や統計、金融など、経済学の基礎を広く学んでいくうちに、矢吹初先生の「財政学」と「租税の経済学」を体系的に履修しました。これをきっかけに、日常生活に深く関わる身近な分野の経済学に興味を持つようになりました。自身の生活に役立つ知識を得られることに楽しさを感じたのがその理由で、例えば「租税の経済学Ⅰ」では、主に所得税について学び、実際に所得税の仕組みや具体的な税額の計算ができるようになりました。会社員になれば、所得税の算定は会社が行ってくれるものだと受け身の姿勢の人が多いと思いますが、国民の三大義務でもある納税について、自分自身の納税額が正しいのかどうか知る必要があると考えています。所得税に限らず、租税は暮らしと密接に結びついているものなので、なぜ、どのような仕組みで税金が成り立っているのかという知識を持ち、政策に目を向けることはとても大切だと思います。

3年次からは吉田健三先生のゼミナール(ゼミ)に所属し、以前から関心があった経済格差や貧困救済に関わりの深い社会保障制度を中心に学んでいます。3年次の後期には、各々の興味関心に応じたテーマでグループ研究を行い、他大学とのゼミ交流会で発表しました。私は、世界規模でキャッシュレス化が進む中、なぜ日本はキャッシュレス化が進まないのかという問題意識から、キャッシュレス化と治安の関係性に着目して研究を進めました。政府がキャッシュレス化遅れの原因として、日本は治安が良く現金を持ち歩く際リスクが少ないことを挙げていることから、それを客観的に検証してみることにしました。

当初は情報収集やデータ分析も不慣れで、研究をうまく進めることができず、2週間に1度行う中間報告のプレゼンを苦手に感じてしまうこともありました。特に、治安の良さというのは抽象的なので、それをどのような指標で測っていくかが難しく、適切なデータを探すのに苦戦しました。たくさんの壁にぶつかりましたが、吉田先生がその時々に道が開けるようなアドバイスをくださったおかげで研究を深めることができました。さらに、同じ班のメンバーと話し合いの時間や回数もどんどん増やしていくことで結束力が強まり、研究も良い方向に向かっていったように思います。自分にはない視点に刺激を受けながら一つの成果物を作るというのはゼミならではの活動だと思います。主体的に考える力を身につけることができ、充実感と達成感がありました。

吉田ゼミの仲間と

青山学院大学経済学部学生会(AESA)でリーダーとして
イベントを牽引

学業以外では、経済学部公認の学生団体「青山学院大学経済学部学生会(AESA)」の活動に力を入れてきました。AESAではゼミ対抗のプレゼンコンテストや履修相談会、就職活動に向けたメイクアップ講座など、経済学部生の学生生活が豊かになるよう支援する活動を行っています。特に印象に残っている企画は、金融業界に勤務している・していた青山学院の卒業生による校友会組織「金融青山会」と就職活動中の学生の交流イベントでリーダーを務めたことです。

コロナ禍で準備からイベント本番まで全てオンラインで実施したため、コミュニケーションの取りにくさが最大の難題でした。準備段階では伝達ミスが何度も起こり、対面より丁寧な情報共有が必要であることを痛感したので、ミーティングの回数を増やして運営メンバー同士の仲を深めながら、重要事項はしっかり確認することを心掛けました。

いよいよ迎えたイベントの初回は、学生からの積極的な発言や質問があまりなく、沈黙する場面が多く生じてしまいました。原因は、オンラインの距離感があったこと、初対面で相手の人物像がわからないこと、参加した学生の金融業界への関心の強さに差があることだと考えました。この反省をふまえて、2回目の開催時には、OB・OGに事前アンケート回答を依頼し、詳しい仕事内容や収入、福利厚生の満足度など質問のきっかけになるような情報をまとめてスライドで表示しました。そうした工夫により、イベント中のコミュニケーションを活発化させることに成功し、事後アンケートでは参加者の満足度が初回よりも20%アップする結果となりました。さまざまな苦労がありましたが、企画を運営する仲間と共により良いイベントとなるよう試行錯誤した結果、学生から「参加して良かった」「また開催してほしい」との声が寄せられ、大きなやりがいを感じました。課題の本質を分析し、相手が求めているものを提供できた嬉しさは今でも心に残っており、大きな自信にもなりました。

青山祭ではAESAで謎解き脱出ゲームを出店

一歩踏み出せば得られるものは大きい

卒業後は、日本のメーカーで事務系総合職の仕事に就く予定です。小中学校時代の海外生活の経験から、海外と関わることができる企業で、社会基盤を支え経済成長に寄与する仕事ができることを軸に、業界・業種・企業研究を重ねて就職先を選びました。内々定先はインフラ整備の一端を担う製品を製造しており、海外事業も展開していることから、品質の良い日本製品によって世界に影響を与えていけるというところにも魅力を感じました。就職を見据え、学生のうちに英語レベルを高めたいという思いから、卒業までの約3カ月間カナダに留学します。この場所を選んだ理由は、治安の良さや人種のモザイクと言われるほどの多様性を感じられる点です。留学という大きな挑戦をすることで、自分の視野を広げながら困難を乗り越える力を身に付けたいと思っています。
また、ゼミやAESAの経験も仕事において役立つと思っています。社会に出てからも、目的に向かって課題を解決する道を見つけ出し、自らアクションを起こす能動的な人でありたいです。

私は大学に入るまでリーダーや表立った活動をしないタイプでしたが、一歩踏み出して挑戦してみることで得られるものは想像以上に大きいということを実感しています。ちょっとしたきっかけで人生が変わることもあると思うので、「自分はこうだ」と決めつけず、少しでも興味を持ったことがあれば、何事もチャレンジという意識でやってみてください。実りの多い、楽しい大学生活が送れると思います。

※各科目のリンク先「講義内容詳細」は掲載年度(2023年度)のものです。

経済学部 経済学科

経済とは人々が生存していくことであり、多様な要因にもとづいて成り立っています。それゆえ、その理解には幅広い視野が求められます。青山学院大学の経済学部においては、このような経済を学ぶ場として多様なテーマの研究が蓄積されており、公正な社会の創造を目指して本質を理解し論理的に行動する力を育成します。
経済学の対象は、労働・娯楽・教育・医療など社会全体におよびます。経済学科では、社会全体への柔軟な視点を養い、より良い経済システムへの道を模索します。「理論・政策・歴史」という伝統的な体系のもと、幅広い教養と専門知識を総合的に修得します。資源配分の効率性について学び、より公正な社会の実現に貢献できるよう、「自ら分析できる力」「弾力的な思考力」「行動力」を育みます。

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