夢は日本のビジネスを支える弁護士。正確な知識と「説明できる力」で、司法試験に挑む

掲載日 2023/6/1
No.239
<2022年度 学生表彰(個人)受賞>
法学部法学科 4年
髙谷 健太
千葉県立幕張総合高等学校卒業

OVERTURE

大学4年次在学中に司法試験予備試験*に合格し、2022年度に学生表彰(個人)を受賞した髙谷健太さん。卒業後、7月に実施される司法試験受験のため勉強を続けている髙谷さんに、在学中の大学生活と司法試験にかける思いについて伺いました(取材は卒業直後の4月に実施しました)。
*法科大学院課程の修了者と同等の学識及びその応用能力並びに法律に関する実務の基礎的素養を有するかどうかを判定することを目的とし、短答式及び論文式による筆記並びに口述の方法により行うもの(司法試験法第5条第1項)。

社会正義の実現手段として「法」を駆使する弁護士に憧れた中学高校時代

大学4年次の5月から11月にかけて行われた司法試験予備試験(①短答式試験、②論文式試験、③口述試験)を受験し、無事に合格することができました。予備試験の合格率は、毎年3~4%程度と言われていますので、達成感を得ると同時に、長年の目標である法曹に一歩近づくことができ、ひとまず安堵しています。それでも4か月後の7月にはいよいよ司法試験を受験するので、必ず合格を掴めるよう、卒業してからも引き続き猛勉強の日々が続いています。

子どもの頃に憧れていたのは警察官でした。刑事ドラマなどの影響もあったと思いますが、安心できる社会のために、正義感と使命感を持って体を張って活躍する姿が格好良いと思ったのです。中学生になって社会科「公民」の授業などを通じて、刑法をはじめ法律への興味が芽生え、社会正義の実現手段として「法」を駆使する弁護士という存在を意識するようになりました。高校生になると、法律の専門知識を土台に、言葉と論理的思考で社会や人の役に立つことを実感できる職業として弁護士に大きな魅力を感じるようになり、大学受験を控えた高校3年生の時には、近い将来、司法試験にチャレンジする気持ちを固めて法学部を受験することにしました。青山学院大学のイメージは「渋谷のおしゃれな大学」でしたが、受験に際し詳しく調べてみると、当時の法学部には司法コースがあって、さまざまな分野の専門家の教員による授業が用意されていることがわかり、法曹を目指す私が成長できそうな環境が整っているところに魅力を感じて志望しました。

コロナ禍を言い訳に弁護士という目標を諦めてはいけない!と決意を新たに

司法試験の道には、大学卒業後に法科大学院(ロースクール)を修了して受験するというルートと、法科大学院修了者と同等と認定される司法試験予備試験に合格して受験するというルートと、2つのルートがあります。法学部の私が在学中に予備試験を合格できれば、法科大学院ルートより2年早く司法試験を受験することができます。時間・金銭の両面から、私は最短ルートの予備試験合格を第一志望に定めました。

入学当初から青学の図書館をはじめとする学修環境を最大限活用し、司法試験予備校に通いつつ、大学生らしくアルバイトやサークル活動にも取り組み、充実した生活を送っていました。ところが、2年次になると同時にコロナ禍に見舞われ、大学に通えず自宅でパソコンに向き合う日々が始まりました。当初は、学びに対するモチベーションをどのように維持すればよいのか苦悩しましたが、3年次前期に履修した「法曹演習G」をきっかけに、コロナ禍を言い訳にして弁護士という目標を絶対に諦めてはいけない!と決意を新たにすることができました。

この演習は、刑事訴訟法第316条の2第1項の公判前整理手続*を中心に、法曹を目指す水準、具体的には法科大学院の法学未修者コースと同じ教材を用いて同じ授業形態で学ぶ科目で、裁判官の立場に限定せず、検察官あるいは弁護人という当事者の立場からどのような立論ができるかを考える場面が多くありました。私は、特に弁護人が一連の手続きの各局面において何を考え、実行していくのかを実践的に学んだ経験によって、将来自分が弁護士として弁護活動に臨む姿を鮮明にイメージできるようになりました。授業で要求される水準がとても高い分、やりがいと面白さは特別に印象に残っています。ちなみに合格した予備試験の公判前整理手続に関する出題では、演習の内容を思い出しながら正しく解答することができました。

また、2年次前期の「入門演習」(プレゼミ)は、授業準備に多くの時間を費やし、とても苦労しましたが、仲間から受ける刺激という面でも、非常に得るものが大きい授業でした。刑事訴訟法や少年法、刑事政策に関するテーマを題材に、グループ単位でのプレゼンテーションとディスカッションを繰り返す演習科目です。履修者には私と同じように真剣に法曹を目指して勉強している学生もいたので議論のレベルが高く、まったく妥協が許されないハードな学びの体験でした。 自宅でのオンライン授業期間中、グループでのプレゼン準備のために電話をつないで仲間と白熱した議論を深夜まで続けた日々は忘れられません。当時は何度もくじけそうになりましたが、志を同じくする仲間との議論は、事実に即した論理構成の構築という法曹に必要不可欠な能力開発の機会になりましたし、今はその体験が良い思い出になっています。
*最初の公判期日の前に、裁判所、検察官、弁護人が争点を明確にした上、これを判断するための証拠を厳選し、審理計画を立てることを目的とする手続。

プレゼミの仲間と前期授業終了後の夏休みに鎌倉にドライブに

大学は試験予備校ではなく学問の場。自分の知的好奇心に従って視野を広げる

法学部での履修科目選択にあたっては、司法試験の合格に不可欠な法律基本科目(憲法・行政法・民法・商法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法)の知識修得にとらわれず、個人的に興味を持った授業、例えば「法思想史A」や「刑事政策B」、「教育法」などは迷わず履修しました。大学は試験予備校ではなく学問の場ですから、自分の関心に従って視野を広げることを第一に考え、司法試験の有利・不利という尺度で履修科目を決めることはしませんでした。そうして学んでいく過程で、私の関心は当初の刑事法に加え、民事法分野、特に企業法務にも広がっていきました。
3年次からのゼミナール(ゼミ)「法学・政治学演習」では、公害訴訟における証拠の偏在等の特殊事情に着目し、「環境訴訟と立証責任」をテーマに研究し、卒論を執筆しました。学生各自の関心に従って自由に研究できるゼミで、ゼミ生同士の仲も良かったのでとても楽しく、充実した時間を過ごすことができました。ゼミ長としてプレゼンや合宿・ゼミ旅行などの取りまとめも担当し、リーダーシップを学べたことも良かった点です。

また、青山学院大学には、司法試験の合格を目指して活動している法学部公認の学生団体「尚法会」があり、私も3年次から入会しました。青山キャンパスにある尚法会の室内には司法試験関係の参考書など必要書籍がそろっているうえ、メンバーには個人ブースが与えられるなど、大変に恵まれた環境で受験勉強に取り組むことができました。また、定期的に開催される弁護士のOBの方との勉強会などに参加できることも大きな魅力でした。

法曹は、やはり狭き門なので、大切なのは「絶対に法律家になる!」という自分自身の覚悟です。それと同時に、仲間の存在も大切です。同じ目標に向かって励まし合える尚法会の同志たちから受ける刺激は、適度なプレッシャーとなってポジティブな連帯感を芽生えさせてくれました。勉強法や試験対策の情報交換をしながらモチベーションを高め合った仲間は、大きな心の支えにもなりました。

「尚法会」室内の髙谷さんの個人ブース

司法試験に挑むための「正しい努力」とは?

司法試験はとにかく試験範囲が広いので、一度覚えたことも時間が経ったら忘れていることもあります。しかし、そんなことで一喜一憂していては前に進めないことを思い知りました。忘れたらまた覚え直せばいい……そんな気持ちで大きく構えて臨むことが合格までの長い道のりには必要になります。

さらに、司法試験や予備試験は、たくさん勉強した人が必ず合格するわけではないと感じています。合格できる人は「正しい努力」ができている人だと考えています。「正しい努力」とは、やみくもに学説や判例の暗記を繰り返す努力ではなく、一つ一つの知識をかみ砕いて自分のものにする努力です。法律や条文の背景にある制度の趣旨や論理をしっかりと把握して、ケースに応じて妥当な結論を出すことが重要です。意外に思われるかもしれませんが、家でテレビのニュース番組を見ている際、家族から解説を求められるのですが、その時間が、問題点を法的視点で整理・説明できるかどうか自分自身の理解度を試す好機になっています。究極的には、子どもにも法律知識をやさしく説明できるようになれば、その専門知識は本物と言えると思っています。

卒業した今、青山学院大学での4年間は、つくづく自分の可能性を最大限に拡張できる恵まれた環境であったと感じます。友人たちを見ていても、進む道は違ってもそれぞれに手厚いサポート体制があり、意欲さえあれば誰もが成長し、目標をつかみ取ることができる学生生活だったと思います。
青山学院大学での経験を糧に、7月の司法試験合格を絶対に勝ち取り、将来は企業法務を専門とする弁護士として、ビジネスや日本経済を背面からしっかり支える「法の守り手」として活躍することが目指す姿です。

法学部 法学科

AOYAMA LAWの通称をもつ青山学院大学の法学部には、「法学科」に加え、2022年度新設の「ヒューマンライツ学科」があります。法律は、人間社会の生活すべてに直結するともいえるルールです。法律を正しく理解し、公正で客観的な判断を下せる「リーガル・マインド」は社会のあらゆる領域で求められます。AOYAMA LAWの国際性豊かな教育は青山学院大学の歴史とともに歩んできました。法学科では、国際的・実践的なカリキュラムを通じて、専門的知識と法的正義感を備えた「法の智恵」を養います。また、基本的な法律科目から多彩な選択科目まで、豊かで系統的な法知識と、それを現実に適用する技能を身に付けます。

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