論理的思考力で
経済の仕組みを
「数値化」し、
社会問題にアプローチする

掲載日 2022/9/8
No.177
<2022年度 学業成績優秀者表彰 優秀賞受賞>
経済学部 現代経済デザイン学科 4年
鹿島 友里花
千葉県立佐倉高等学校出身

OVERTURE

中学生の時に読んだ本で開発途上国の現状に衝撃を受け、将来は世界の貧困問題解決に何らかの形で関わりたいという想いを抱き続けてきたという鹿島友里花さん。得意の数学を生かしながら開発途上国の経済状況について学ぶため、統計学と開発経済学に関する授業が履修できる現代経済デザイン学科に進学しました。グローバルな活躍をめざして勉学に励む鹿島さんの学生生活を紹介します。

分権化・集権化の説明をグラフで可視化するおもしろさ

私は現在、矢崎之浩先生のゼミナール(ゼミ)に所属していますが、先生が担当された「地方財政の経済学Ⅰ」は非常に興味深い授業でした。地方財政論とは地方政府(地方自治体)の活動を経済学的に分析する学問で、国と地方自治体の望ましい役割分担を歳出面から検討し、そこから発生する諸問題をミクロ経済学に基づいて考えていきます。例えば、介護保険施設の指定・許可を現状の都道府県ではなく国が行った場合や、保育所の認可を都道府県から市区町村に変更した場合のメリット・デメリットを、分権化・集権化の観点から数値を用いてグラフ上に示すというものです。これまで学んできたミクロ経済学の知識と、実社会に存在する諸問題とを結びつけて考える点におもしろさを感じました。試験は記述式で、自分の言葉で説明するための準備には時間がかかりましたが、その勉強がより深い理解につながりました。特に分権化・集権化の説明をグラフで可視化できたことが強く印象に残っています。この授業は、経済学の知識を社会事象に置き換えて考えてみるきっかけになりました。日本だけではなく、開発途上国における深刻な社会問題の解決を考える上でも重要な学びであったと思います。

統計学を探究し、論理的思考力を身に付ける

ゼミでは、ミクロ経済学や統計学、計量経済学などを用いたデータ分析手法について学んでいます。社会経済に関する問題や現象を、経済理論や統計データをもとに分析する論理的思考力を養います。2年次後期の「基礎演習」から、3年次前期の「専門演習」では教科書を読み込んでディスカッションを繰り返すことで統計学の理解を深め、3年次後期の「専門演習」ではグループワークで実証分析に取り組むという流れです。
3年次後期のグループワークは4人のチームで「田舎は都会に比べて精神疾患が少ないか」というテーマで統計分析を進めました。12月の最終発表に向け、このテーマが統計的に有意な仮説であるのか否か数値を用いて証明することを目標に取り組みました。結果として有意な結論を得ることができませんでしたが、統計学の基礎を学んで“土台”をしっかり構築したことで、実証分析もスムーズに進行し、今までの地道な学習が生かせている手応えを感じました。最終的には、真偽不明の情報が入り交じる中で正しい情報を見分ける「データ分析スキル」と、そのデータを用いた「論理的思考力」を身に付けることが目的です。卒業論文では、企業が実施するCSR・ESG活動と企業利益の関係をテーマにしたいと考えています。

国際協力に関する知識を得て、想いをさらに強く

本学独自の全学共通教育システムの青山スタンダード科目の「グローバル課題とNGO」は、途上国の諸問題やNGO団体の活動に関心のある私にとって、非常に刺激的な授業でした。これは国際NGOである特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ)による寄附講座で、現役職員の方々がオムニバス方式で講義を担当してくださいます。世界を取り巻く課題の現状と、その解決に向けての取り組み、NGOの役割、市民社会組織の持続的運営と課題、グローバル人材としてのキャリアデザインなどがテーマとして取り上げられました。
自分が将来取り組みたいと考えている分野に直結する内容であり、さらに世界の第一線で活躍する方々の貴重なお話を直接聴くことができ、大変に貴重な機会でした。国際協力に関する幅広い知識を学び、今後のキャリアについても真剣に考えるきっかけになったと感じます。生まれた場所の違いだけで不平等が生じる世界の現状を無視してはいけないと、あらためて強く思いました。

キャンパスから飛び出し、国内外でボランティア活動に励む

サークル活動では、「青山学院大学公認 SHANTI SHANTI国際ボランティア愛好会」に所属しています。2019年にはベトナムを訪れ、家を建てるボランティア活動を経験しました。また、コロナ禍における活動の一環で、団体に所属する16人で「山茶花(さざんか)」というチームを結成。SNSで募集したイラストでポストカードを作成し、品川区商店街連合会が病院に提供していたお弁当に添えて、医療従事者の皆さんに感謝の気持ちを届けました。
2020年2月には、Projects Abroadという団体の活動に応募してタンザニアを訪れ、マサイ族の学校で現地の先生方のお手伝い(チャイルドケア)をしました。3週間のホームステイで、週末には2泊3日のサファリや現地の観光も経験しました。タンザニアを選んだ理由は、アフリカ大陸で異文化交流を経験してみたかったことに加え、実際に自分の目で開発途上国の現状を確かめたかったからです。

開発途上国の貧困問題に携わり、より良い社会づくりを

入学当初から現在に至るまで、経済を勉強することで世界の貧困問題解決に貢献したいとの思いは、変わっていません。しかし、本学での学びや学生生活を通して実際の社会の課題にふれたことで、当初はぼんやりとしていた未来へのアプローチが、次第にはっきりと見えるようになってきました。多岐にわたる具体的な選択肢を知り、今後は自分に一番合った貢献方法を探していくつもりです。

卒業後は金融業界に就職し、あらゆる企業の海外進出や社会貢献事業を促進させることによって長年の希望である世界の貧困問題解決の貢献に繋げられたらと思っています。業務内容はまだ絞っていませんが、どんな場面でも数値化して論理的に説明することが求められるはずです。私は「相手を説得するには数学的素養が必要不可欠」だと考えます。私の思う本学科の魅力は、まさに数値化することによって経済の仕組みを論理的に学べるところです。論理的思考力・説得力を身に付けつつ、社会経済の知識とシステムを理解することは、社会貢献を具現化するための力になると信じています。

インタビュー動画

※各科目のリンク先「講義内容詳細」は掲載年度(2022年度)のものです。

経済学部 現代経済デザイン学科

経済とは人々が生存していくことであり、多様な要因にもとづいて成り立っています。それゆえ、その理解には幅広い視野が求められます。青山学院大学の経済学部においては、このような経済を学ぶ場として多様なテーマの研究が蓄積されており、公正な社会の創造を目指して本質を理解し論理的に行動する力を育成します。
グローバルな産業発展が引き起こす貧困や地域格差、環境破壊といった諸課題の解決に向けて、「公共性」の概念が重要となってきました。現代経済デザイン学科は公共性の担い手として政府だけではなく、地域コミュニティにも着目します。誰もが公平で幸せに暮らせる社会づくりのデザインについて学びます。「理論・政策・地域」という新しい枠組みのもと、経済学の応用力と実践力を深めていきます。

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