青学だから頑張れた。研究活動で得た成長を航空業界での活躍につなぐ

掲載日 2025/2/28
No.338
理⼯学部 電気電⼦⼯学科 4年
坂井 美紀
神奈川・私立神奈川学園⾼等学校出身

OVERTURE

電気電子工学科の授業を通じて物性工学に強い興味を持ち、憧れていた航空業界で活用されているエレクトロクロミックデバイスの研究に励んだ坂井美紀さん。「一目ぼれ」した相模原キャンパスで学ぶことの喜びや周囲のサポートを力にし、失敗も学びに変えることで、大きく成長を遂げました。夢を叶え、卒業後は航空会社の技術職として羽ばたく坂井さんに、電気電子工学科の学びの魅力や恩師への感謝の思い、いま描く将来像などをお話いただきました。

電気電子工学科の広範囲の研究領域にふれて、
魅了された物性工学の面白さ

オープンキャンパスで初めて相模原キャンパスを訪れ、正門の前に立った時、真っすぐ延びるプロムナードの先の校舎(B棟メディアセンター)を臨む景色に「なんて素敵なキャンパスなんだろう!」と心を奪われました。その感動は青学生になってからも色あせることはなく、テストの時や実験が難航して大学に向かう足が重い時でも、この景色を見ると自然と背筋が伸びて、「よし、今日もがんばろう!」と体の中からやる気が湧いてきました。今春からは希望が叶って、第一志望の航空会社で航空機の整備・運航を支える技術職に就く予定です。大好きな相模原キャンパスを離れるのは寂しいですが、これまでの経験と学びを胸に、新たな一歩を踏み出すことが楽しみです。

最新の設備が整った研究施設や先輩学生の活気に満ちた雰囲気も青学に魅力を感じた点でした。さらに、青学の理工学部出身である中学・高校時代の数学の先生に、大学生活が充実していたことや、「青山スタンダード」という全学共通の教養科目があり、理系分野外の学びから視野を広げる機会もあることなどを教えていただき、「青学で学び、成長したい」と思いました。
電気電⼦⼯学科を選んだ⼀番の理由は、現代社会を支える基盤の役割を果たしている電気や電⼦、磁気について多角的に学んでみたかったからです。さまざまな産業で応用されているこれらの分野の知識は、将来幅広いフィールドで生かせるに違いないと考えました。

1年次の必修科目「電気電⼦⼯学概論」は、本学科の学びの導入となる授業です。各先生が研究室の研究内容とそれがどのように実社会に応用されているのかを解説してくださり、電気や電子の領域が想像以上に多様で奥深いことを感じて、これからの学びへの期待が膨らみました。その中で心を引かれたのが、物質の性質や機能について探究する物性工学の分野です。たとえば、普段当たり前に使っているスマートフォン一つとっても、個々の部品とそこに使われている材料に着目すると、数えきれないほどの物理現象が利用されています。このことを知り、物性工学という学問の面白さと可能性を感じました。

3年次前期に履修した「電子物性工学」の授業では、黄晋二先生に物理的原理が実際の技術やデバイスにどのように応用されているのかを丁寧に教えていただきました。電気物性工学の知識が単なる理論にとどまらず、技術革新にどのように貢献しているのかを実感することができ、さらに「知識を深めたい」という意欲が湧きました。

壁にぶつかり、試行錯誤した経験も財産に

現在は、物性工学を扱っている研究室の中でも、特に興味があった「エレクトロクロミックデバイス」の研究に取り組んでいる黄先生の「先端素子材料工学研究室」に所属しています。エレクトロクロミックデバイスとは、エレクトロクロミズムと呼ばれる電気化学的な酸化還元反応により物質の色が変化する現象を利用したデバイスで、電気のオン・オフで色調を変えることができます。3年次の夏に参加した航空会社のインターンシップで、飛行機にもこの技術が使用されていることを知り、詳しく学んでみたいと思うようになりました。

私の研究テーマは「グラフェンを透明電極材料としたフレキシブルなエレクトロクロミックデバイスの作製」です。この研究テーマでは、助教の渡辺剛志先生に直接指導していただきました。原⼦⼀層分という薄さと⾼い電気伝導性、フレキシブル性、透明性を兼ね備えたシート状のナノ炭素物質であるグラフェンを電極材料に使⽤したフィルム型デバイスの完成を目指しています。これを窓ガラスに貼り付ければ、通常のガラスをスマートウィンドウに変えることができると考えています。
開発しているデバイスでは、グラフェン上にプルシアンブルー(PB)というエレクトロクロミック材料を電着させます。しかし、電着後にグラフェンの導電性が低下し、PBの⾊変化を確認できないという問題が発⽣しました。この課題を解決するために、使⽤する材料や濃度の調整を試⾏錯誤し、何度も実験を重ねました。⽂献を調査し、考え出した案がすべて失敗したときは途方に暮れてしまいましたが、先⽣や先輩⽅のアドバイスをもとに、一から異なるアプローチを試みたところ、改善に成功することができました。この過程で、失敗から学ぶことの重要性と、柔軟な思考で問題解決に取り組む姿勢を⾝に付けることができたと思います。以前はてこずっていたグラフェンの転写作業もスムーズにできるようになり、自分の成長を感じられるようになりました。

手にしているのが作製中のエレクトロクロミックデバイス

そして、3週間に一度行われる進捗報告の場では、研究内容を非専門家にも分かりやすく伝えるスキルを身に付けることを目指してきました。「いかに分かりやすく、簡潔に説明するか」を意識することで、表現力が大きく向上したと実感しています。

航空業界の技術職への挑戦を後押ししてくれた恩師のエール

航空業界を志したのは、旅行が大好きで、数ある交通手段の中でも特別なワクワク感を与えてくれるのが飛行機だったことが理由です。漠然とした憧れが明確な目標になったのは、航空会社が主催する格納庫見学に参加したことがきっかけでした。高い技術力や乗客の安全を守るために一丸となって協力し合う姿に感銘を受け、さらに業界を深く学ぶためにインターンシップ(インターン)への参加を決めました。インターンでは、日々の安全運航を支えるために多くの職種の連携と協力が必要不可欠であることを実感しました。また、更なる発展を目指して挑戦し続ける姿勢と高い運航品質を支える姿に心を動かされ、「この仕事がしたい!」と思いました。
その根底には、いまの私を形成する大きな要素にもなっている中学・高校時代に所属していたダンス部の経験があります。部活では、仲間と団結して共通の目標に挑み、それを達成することの喜びを知りました。この経験を通じて、チームワークを大切にしながら向上心を持って挑戦を続け、仲間やお客様に貢献できる仕事がしたいという思いが芽生えたのです。この思いが、航空業界への強い志につながっています。

就職活動を進めるにあたり、専門性を突き詰める前の段階であれば、より自由な気持ちで幅広く就職先を選べるのではないかと考えて学部卒での就職を目指すことに決めましたが、インターンでは大学院生との知識や思考力の差を痛感し、不安でいっぱいになりました。そんな時、やさしく背中を押してくださったのが黄先生です。研究室配属前の面談で進路についての迷いを打ち明けたところ、「やってみるだけやってみたらいい。それでダメなら大学院で深く勉強してから再チャレンジすることもできる」と励ましてくださいました。さらに「面接の練習もいつでもつき合うよ」とお声がけいただき、とてもうれしかったのを今でも鮮明に覚えています。この一件で再び前を向くことができました。

支えてくれた人たちへの感謝を胸に、
安全な運航を支える技術者を目指す

これまでの研究活動では、実験を始める前に目的を明確にし、その達成に向けて仮説を立て、計画的に進めてきました。問題に直面した時は、自分一人で抱え込まず、先生や先輩方に積極的に相談しながら計画的に実験を進めるためにやるべきことを日々考え、実行してきました。こうした経験を通じて、目標達成に向けて粘り強く向き合う姿勢や遂行力を身に付けることができました。これらを武器に、技術と知識を磨いて多くの人たちと協力しながら、安全な運航と航空機の品質を支える技術者になりたいです。

大学生活を振り返ると、多くの授業に日々の実験、レポート、テストと、理工学部の学びは時に大変に感じることもありましたが、それを乗り越えるたびに得られる達成感は非常に大きく、この道を選んでよかったと思っています。ただ、ここまで一人で頑張ってこられたわけではありません。先生方をはじめ、親身になってアドバイスをしてくださった研究室の先輩方や共に切磋琢磨した電気電子工学科の友人たち、そして、常に支えてくれた両親に心から感謝しています。「頑張っているね」という一言さえも、私にとってはとても大きなサポートでした。

理工系を目指す女子生徒の皆さんには、女性だからといって自分の可能性を制限する必要はないと伝えたいです。もし困難にぶつかることがあっても、その先にある成長を楽しみに、自分を信じて前に進んでみてください。

クリーンルーム内でグラフェンの性質を評価するラマン分光装置を操作している様子

※各科目のリンク先「講義内容詳細」は掲載年度(2024年度)のものです。

理工学部 電気電子工学科

青山学院大学の理工学部は数学、物理、化学といったサイエンスと、テクノロジーの基礎から最先端を学ぶ環境を整備しています。国際レベルの研究に取り組む教員のもと、最新設備を駆使した実験、演習、研究活動の場を提供するとともに、独自の英語教育を全7学科統一で実施。未来志向のカリキュラムにより、一人一人の夢と可能性を大きく広げます。
私たちの暮らしを支えている電気や電子、磁気。これらを制御し、応用することで社会に役立てるのが「電気工学」「電子工学」です。あらゆる産業に活用されており、さまざまなフィールドで日々技術革新が進んでいます。電気電子工学科では、進展するテクノロジーに対応していくための応用力と、新技術創出の源泉となる基礎力をバランスよく身に付けられるよう、多面的な学びに注力しています。

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