授業で魅了された「建築」を究めるため全力で学び、卒業後は周囲に喜んでいただける仕事を
OVERTURE
総合文化政策学部の授業を通して建築に興味を持った長山明里さんは、ゼミナール(ゼミ)での学びや、やりたいことに熱中する多くの友人に触発され、3年次から建築関連の専門学校でも学び、二級建築士の資格取得を目指しています。建設業界一本に絞って臨んだ就職活動では、目指していた大手ゼネコン企業への内定を決めました。
「アートと精神分析学を結ぶ学び」と、「建築」への興味
青山学院大学への受験を考えたとき、シラバスやカリキュラムを調べて「芸術やアート、文化、メディアをテーマとした幅広く探究できる授業が多くあって、楽しく学べそう」と思い、総合文化政策学部に進学を決めました。入学後も、せっかく興味のある分野を4年間学べるので、「単位を取る」ことより「学びたいと思える授業」を優先的に考えて履修するようにしました。
1年次に受講する「総合文化政策学入門」は、複数の先生方がそれぞれの専門分野を講義してくださるオムニバス形式の授業です。幅広く総合文化政策の分野に触れることで、より深く学びたいと思う分野に出会うことができました。この授業がきっかけで、絵画の中から作者の意図や時代背景を読み取ることにとても興味を持ち、2年次からは「アートと精神分析学の関連性」という研究内容に惹かれて福田大輔先生のゼミナール(ゼミ)を選びました。当時はゼミ生が私一人だったので、マンツーマンで指導を受けるというとても贅沢な環境でした。しかし難解な文章について先生と考察するのは容易なことではなく、なるべく早く知識を身に付けるために、疑問点は積極的に質問をしていました。
前期は精神分析学の創始者といわれるジークムント・フロイトの論文を読み、毎回レジュメを作成するというハードな内容でしたが、ただまとめるだけではなく、自分なりの新しい視点を出せるように努力しました。後期にはレオナルド・ダ・ヴィンチを分析したジークムント・フロイトの文献を読み、幼少期の環境と、芸術や自然をはじめとした研究欲動との繋がりを学び、ゼミの選択時に関心を持っていた「アート」にも関連づけられてますます楽しくなりました。また、3年次からはゼミの人数が増えたことで議論ができるようになり、自分にはない見方を持てることに面白さを感じました。
専門分野を意識しながら学びに専念しつつ、2年次は「建築」への興味が高まった時期でもあります。本学部には建築を専門とする教員がいて、中でも、黒石いずみ先生の「建築デザイン論」は、国内外の建築の歴史を振り返り、そのデザインや表現の意味を深く学ぶことができて印象に残っています。そして3年次には伊藤毅先生の「建築文化論」「都市・建築史」を受講し、その時代の政治や社会、文化と関連させて日本と西洋の建築を学修しました。自分が知らない世界にますます魅了され、先生方の膨大な知識を少しでも吸収できるように、ノートをしっかりとって整理し、今でも折にふれて見返しています。
授業で得た知識を生かし、現在は、「建築」と「精神分析」を関連づけたテーマで卒業論文の準備をしています。福田先生と相談しながら切り口を探っていますが、これまで学んできたことをヒントに、自分の中で徐々にアイデアが出てきてテーマが広がってきているところです。入学当初は、各授業を「面白い」と感じるにとどまっていましたが、学修したい専攻を持つようになると、別の分野の授業でも、自分の専攻と相互にリンクさせた捉え方ができるようになったと思います。
昼間は大学、夜は専門学校で建築技術を学ぶ日々
1年次はオンライン授業が多く、友人との交流が少なかったのですが、対面授業が増えた2年次には、いろいろな人との交流機会が増えました。映像作品を制作する人、雑貨をつくって販売している人、音楽に打ち込んでいる人など、個性的で自分のやりたいことをどんどん実行している友人がたくさんできましたが、それと同時に「これをやりたい」という目標を持っていない自分を省みて少し落ち込んでしまいました。将来は何をやりたいのかと自問する中で、ちょうど興味を持ち始めた「建築」について、もっと究めたいという希望がわき上がりました。学部での学びとは異なる技術的な知識を身に付けたいという思いから、専門学校で建築の技術を学ぶことを決意し、3年次から夜間の専門学校に通う生活を続けています。最初は「学ぶ」ことを目的にしていましたが、次第に「資格取得」も意識するようになり、今は卒業後の二級建築士資格取得を目指しています。
昼間に大学の講義や課題をこなしながら、夜は専門学校の授業を受講し、さらには就職活動時期とも重なって、やるべきことが増え、時間に余裕がなくなって精神的にも大変だと感じることが多くありました。けれどもそういう時には、辛さばかりに目を向けるのではなく、「身に付けた知識や経験をどうしたら生かせるのか」といった明確な目的を強く持つことを心がけました。それは「就職後に仕事で役立つ」などの狭い範囲のことに限りません。たとえばゼミでの研究活動で、精神分析学の視点を得られたことで、ものの見方や人生観が変わり、私自身とてもよい影響を受けています。課題が複数重なった時や時間が足りない時は、その一瞬の忙しさばかりに気をとられず、将来の自分に生かせることや、挑戦を思い立った時の初心を思い出して前進するようにしました。
建設業界に絞り、技術のわかる文系事務職としての活躍を目指す
就職活動は、3年次の6月頃、会社説明会への参加やインターンシップ(インターン)への応募からスタートしました。大学では、建築のデザインや歴史を学ぶことができましたが、専門学校に通ってからは、建設業界の中で、ものづくりを支えたいという思いが大きくなり、就職活動開始時点で、建設業界を目指すことは決定していました。将来の進路を考えるためにこれまでを振り返り、2年次の授業がきっかけで抱いた「建築」への高い関心は、小学生の時に、東京スカイツリーの建設過程を見ていたことが土台になっていると気付きました。当時は近くに住んでいたこともあり、見るたびに高くなっていく東京スカイツリーを眺めながら、これまで世の中に存在しなかった建物を想像し、実際に形にしていくという仕事に憧れを持ったのです。
しかし、建設業界でどのように自分の能力を生かして仕事ができるのか、初めはイメージできませんでした。そこで進路・就職センターを訪れ、相談をしたところ、「いろいろな会社を見て、実際に働いている方にお話をうかがうと良いのでは」とアドバイスをいただき、就職活動の基本的な進め方について教えていただきました。そのアドバイス通り、建設業界内のさまざまな企業にアプローチして、インターンや社員の方と話ができるリクルーター面談を通して、業界の知識を身に付け、自分がどう働けるのか少しずつイメージを具体化していきました。
ある企業のインターンでは、文系と理系のメンバーで業務企画を立てるグループワークの課題に取り組みました。その中で、皆で意見を出し合い、それぞれの専門知識や強みを生かせる環境の楽しさや、企画業務や営業など起点となる仕事の大切さを実感し、文系として技術職を支える働き方を将来の自分にあてはめて考えるようになりました。
着実に成長を実感しながら進めていった就職活動ですが、3年次の3月頃、最終面接での不合格が続いてしまった時には、自分でも「こんなに落ち込むんだ」と驚くほど気持ちが後ろ向きになってしまいました。しかし、「目の前の事をとにかく一生懸命やろう」と心に誓い、また一から始めるつもりで就職活動を再開しました。その結果、最終的に大手ゼネコンである株式会社大林組から内定をいただき、入社を決めました。一度振り出しに戻った就職活動でしたが、諦めず向き合い続けたことで、今では、何も無駄なことはなかったと感じることができています。
総合文化政策学部だからこそ出会えた友人、拓けた未来
株式会社大林組は、私が建設業界に興味を持つきっかけとなった東京スカイツリーの施工を行った企業です。最終面接前には、「また最終で落ちるかもしれない」という不安もありましたが、「最後の最後なので悔いのないように万全の状態で臨もう」と気持ちを切り替え、東京スカイツリーや、同社が持つバイオマス発電所などを訪れて、「この企業で働きたい」と自分の強い気持ちを改めて確認し自信をつけました。
専門学校に通い、二級建築士資格の取得を目指していることで「技術職は希望していないのですか?」と面接でも質問されましたが、私は誰かを支えることにやりがいを感じる性格なので、技術職の方々がどんなことをやっているのかを理解したうえで、事務職としてこれまで培ってきた知識を生かしたいと回答しました。将来的には、文系ではゼネコンならではの職種である、建設現場の一画に事務室を構えてそのプロジェクトの遂行を支える「現場事務」の仕事をし、様々な知識を身に付けたいと思っています。また、営業職などに就いた場合も、技術職と多少なりとも専門的な話ができることでスピーディーな対応を目指せると考えています。建設技術の専門知識を学んだ経験を生かして、細かいところにも気付ける広い視野を持ち、技術職や職人の方はもちろん、ともに働く仲間にも喜んでもらえる仕事ができるよう挑戦を続けていきたいです。
私が建築系の専門学校で学ぶことを決意できたのは、総合文化政策学部で、個性あるさまざまな活動に熱中する友人と知り合えたからです。卒業に必要な単位取得に関係する授業だけでなく、興味のある授業を積極的に受講している人も多く、単位を取るためではなく「これを学びたいから」と授業選択をする学生ばかりで、たくさんの良い刺激を受けました。こうした環境のおかげで、子どもの頃からの憧れに気付き、ゼネコンで自分の強みを生かす将来を拓くことができたのだと実感しています。大学生になってやりたいことがある人も、今はまだない人も、この学部に来て学んだら、きっと好きなことを見つけて成長し、大きく羽ばたけると思います。
長山さんの就職活動スケジュール
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<3年次> 2022年6月
企業説明会への参加、インターンシップへの応募を開始
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<3年次> 2022年7月〜8月
建設業界企業のインターンシップに参加、さまざまな企業について学ぶ
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<3年次> 2022年11月
インターンシップをきっかけにゼネコン企業のリクルーター面接を受ける
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<3年次> 2023年2月
リクルーターのアドバイスでSPI(ウェブテスト)対策に本腰を入れる
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<3年次> 2023年2月末
建材商社から内々定
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<3〜4年次> 2023年3月〜4月
複数のゼネコン企業の選考に落ちて気持ちが落ち込むが、再出発を決意
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<4年次> 2023年5月~6月
ゼネコン複数企業から内々定をいただく
※各科目のリンク先「講義内容詳細」は掲載年度(2023年度)のものです。
総合文化政策学部
青山学院大学の総合文化政策学部では、“文化の創造(creation)”を理念に、文化力と政策力を総合した学びを探究。芸術・思想・都市・メディアなどの広範な領域を研究対象とし、各現場での“創造体験”とともに知を深めていくチャレンジングな学部です。新たな価値を創出するマネジメント力とプロデュース力、世界への発信力を備えた“創造的世界市民”を育成します。古典や音楽、映像、芸能、宗教、思想、都市、ポップカルチャーなどあらゆる「創造」の現場が学びの対象です。どうすれば文化や芸術によって社会をより豊かにすることができるのか。創造の可能性を模索し、自身のセンスを磨きながら、創造的世界市民として社会への魅力的な発信方法を探ります。