日本の
モノづくりを支え、
世界市場の
信頼に応える

掲載日 2021/5/24
No.77
三菱電機株式会社
静岡製作所 資材部購買第二課
法学部卒業
千田 智也

OVERTURE

大学での学びのフィールドは、キャンパス内のみならず、海外留学やインターンシップ、ボランティアを通じて世界中に広がっています。
千田さんは、学生時代に海外で感じた日本製品への信頼に応えるため、半導体などの調達を通じて日本のモノづくりに貢献しています。

デジタル家電に
不可欠な半導体、
集積回路の調達を担当

三菱電機静岡製作所は、家庭用冷蔵庫やエアコンの生産、技術開発、さらに企画開発や国内外の販売戦略立案など、通常は本社機能に位置づけられる機能も集約した一大生産拠点です。

私は、入社以来調達部門に所属し、現在は半導体や集積回路など電気・電子部品の調達を担当しています。家電製品の心臓部である電子基板には、約500個の電子部品が搭載され、私が担当する半導体だけでも、年間の購入数は35億個に上ります。エンジニアが考案した図面に基づき、さまざまなサプライヤーから、必要な部品や素材を安定的に安く調達することが当課のミッションです。材料の購入費は製造原価の8割を占めますが、その購入価格の裁量権を持っているのが調達担当者で、日々、会社の利益に直結する責任の重さとやりがいを感じながら仕事をしています。
また、静岡製作所は、三菱電機が世界で展開する空調冷熱事業の中心となるマザー工場(メーカーが海外に工場を設立して事業を拡大する際に、生産のシステムや技術面でモデルとなる工場)であり、海外拠点を通じて各国のお客様にも製品を供給しています。タイ、中国、トルコ、スコットランドなど8カ所の海外拠点とも頻繁に連携しながら、世界市場を視野に業務にあたっています。

調達部門は、購入価格や納期の交渉はもちろん、時には取引先の技術提案や品質トラブルにも対応します。エンジニアや品質管理部門と連携して業務を進める必要もあり、設計や工学の知識が不可欠です。そのため、調達の仕事は、メーカーの中でも技術系の社員が調達を担当していることもありますが、文系学部、理系学部のどちらの要素もあり、モノづくりが好きな文系の人も大勢活躍している仕事です。その中で私が調達部門に配属されたのは、とにかくモノづくりが大好きという情熱と、興味を持って知りたい、調べようという意欲を見込まれたのかもしれませんね。必要な知識は、専門の本を読んで習得したり、社内のいろいろな部署の担当者や時にはサプライヤーの担当者に教えてもらいながらカバーしています。

電子基板

インドの農村で生まれた
「モノづくり」への情熱

就職先にメーカーを選んだのは、日本のモノづくりに貢献したいという強い思いからでした。そのきっかけは大学2年次、一人旅で訪れたインドの農村地域での経験にあります。
その村は、都市部から離れていたこともあり、現地の方にとって「日本人」である私は珍しい存在でした。ところが、「日本製品」は珍しいどころか、生活になくてはならないものとして、当たり前に使われていました。村の至るところを日本のバイクが走り、中には「俺は日本製の冷蔵庫を使っているんだ。良いものを作ってくれてありがとう」と話しかけてくれる人もいたのです。さすがにリップサービスかもしれませんが、日本製品に対する信頼の高さと、その信頼が日本や日本人の評判に繋がっていることを肌で感じ、世界中に価値を提供する日本のモノづくりに携わりたいと考えるようになりました。

初めはメーカーの海外営業を目指していたのですが、三菱電機でのインターンシップで出合ったのが、調達という業務です。材料や部品の調達を通じて、幅広い製品、多様なサプライヤーに関わり、より広い視野で世界の人々の暮らしに貢献できる。そう考えて三菱電機に入社し、文系職種の中でもっともモノづくりに近い調達部門を希望しました。

インドにて

独禁法を研究する
ゼミで培った
思考力、交渉術、調整力

法学部での4年間の学びの中で、今の私に特に大きな影響を与えているのは、岡田直己教授の独占禁止法を主に研究するゼミナール(ゼミ)での経験です。
岡田ゼミでは、2週間に一度、一つの判例を選んでディベートを行っていました。限られた時間の中で、判例の選定、日米の事例検討、主張と論拠の構築といったあらゆる準備を行なわなければならず、授業の合間や休日も関連文献を読み込む日々を送りました。ほかのメンバーと徹底的に議論を交わしながら主張を固めていくのですが、時には意見が合わず、終電時間ギリギリまで議論を続けたこともあります。

調達の担当者は、サプライヤーに対してさまざまな依頼ができる優位な立場にあります。そのため、日々の業務自体が、独禁法の補完法である下請法に抵触するリスクをはらんでいるといえます。ゼミで独禁法の判例に数多く触れて得た知識が、業務に潜むリスクの回避に役立っています。
さらに、ディベートとその準備で培われた、論理的で筋の通った法学的思考力は、現在の取引先との交渉に生かされていると感じています。ディベートで自らの考えを適切に伝えるためには、多角的な知識と情報に裏付けられた論拠が必要です。同じように、価格や納期の交渉も、市況、今後の製品開発計画、電子部品の技術的知識を事前にどれだけ把握しているかで、結果が大きく変わります。忙しい中でも準備時間を確保し、場当たり的な発言ではなく、説得力のある論理的な思考で交渉に臨む姿勢は、間違いなくゼミで養われたものです。

大学4年次でのゼミ夏合宿にて

ゼミのメンバーは個性派揃いで、自分の主張をなかなか曲げない人ばかりでした。準備すればするほど自信のあるプレゼンテーションができるので、なおさら互いに譲らなくなります。ゼミ長としてメンバーの間を取り持ち、異なる意見を調整して落としどころを探るバランス感覚を身に付けたことが、現在の業務において、多部門にまたがる社内調整をする時にも役立っていますね。

世界をリードする
日本の製造業に
寄与する仕事を

調達の業務に就いて5年目となりました。業務を通じて、あらためて日本のモノづくりの技術力、品質力に感心することがあります。昨今、家電などの完成品としての日本製品は、国際的な影響力が薄れる傾向にあることは事実です。しかし、今なお日本のモノづくりは世界をリードし、日本経済を支えています。
製造業が日本を代表する産業であることに、変わりはありません。メーカーの一員としてさまざまな製品づくりに携わり、製造業の継続、発展に寄与する仕事に幅広く取り組んでいきたいと考えています。

三菱電機は、価格以上に品質を重視して調達を行う方針を掲げています。高品質な部品を使って製品全体の質を高めているという点では、今の業務が、学生時代にインドの農村で感じた「日本への信頼」に応えるものになっていると感じます。これからもモノづくりへの情熱を持ち続け、製品を通して、日本から遠く離れた土地で暮らす方々の生活の質の向上にも貢献していくことが私の目標です。また、調達という仕事を通じて微力ながらも日本の製造業を少しでも盛り上げていけるような人になりたいと思っています。

千田さんの1日

  1. AM 9:00

    出社。メールチェック

  2. AM 9:30

    サプライヤーとの打合せ

  3. AM 11:00

    社内の設計部門、品質管理部門と次のモデルの仕様について会議

  4. PM 0:00

    昼の休憩

  5. AM 12:45

    メールチェック

  6. PM 1:30

    サプライチェーン再検討に向けて社内関係部門と会議

  7. PM 2:30

    取引先との交渉に向けて、
    準備資料を作成

  8. PM 3:30

    社内各部署から届く発注の申請に対する決済業務

  9. PM 4:00

    タイ、中国の生産拠点とテレビ会議

  10. PM 5:00

    退勤。
    帰宅後、リフレッシュのためサウナで汗を流すのが楽しみ。

卒業した学部

法学部

“AOYAMA LAW”の通称をもつ青山学院大学の法学部は、弁護士、検察官、裁判官などの法曹を目指すだけでなく、青山学院の建学の精神に立脚しつつ、人間的素養と法学的基礎を備えて社会の多様なニーズを識別し、複雑な事象の科学的分析を行える応用力を身に付けます。社会で必要とされる能力を発揮して自らの道を切り拓くことができる人材を育成します。そして、この人材育成のプロセスを通じて、法的な課題・紛争を客観的に分析して的確かつ公正な判断を行うだけでなく、その判断と理由について他者と理解を共有し、課題・紛争を解決に導くことのできる能力の養成を重視しています。2022年4月、法学部に日本初の「ヒューマンライツ学科」を設置予定(設置届出中)です。

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