大学で実感した数学の
厳密な論理や内容の奥深さ。
抽象的議論の魅力も発見
理工学部 物理・数理学科*数理サイエンスコース 4年
OVERTURE
2021年度より物理・数理学科から改編された数理サイエンス学科の研究領域は、代数・幾何・解析といった純粋数学から応用数学まで多岐にわたります。さらに、1年次から講義の内容に則した演習科目も開講。具体的な問題を自分で考え、活発な議論や質疑応答で数学への理解を深めます。本学科でさまざまな学びを経験し、「抽象的な数学」におもしろさを感じているという石川健太さんにお話を伺いました。
*2021年度より、物理・数理学科は「物理科学科」「数理サイエンス学科」に改編
物理と数学の基礎を学んだ上で数学を選択
私が入学した当時の物理・数理学科は、1年次で物理・数学の基礎を学び、2年次から物理科学コースと数理サイエンスコースに分かれて学びを深めていくというカリキュラムでした。物理と数学の基礎を理解してから専攻を決めることができたため、受験生時代に物理と数学のどちらにも興味をもっていた私にとってはぴったりの学科でした。実際に“大学で学ぶ数学”にふれ、厳密な論理や内容の奥深さに魅力を感じて2年次からは数理サイエンスコースを選び、数学を学んでいます。
3年次では2年間で身に付けた基礎的な数学への理解をより深めるとともに、応用数学の考え方について学びました。代数学・幾何学・解析学などの数学分野はいくつかの領域に分かれていますが、それぞれの分野のつながりを意識したカリキュラムが設計されていると感じます。入学当初は数学の中でも微分積分学に関心がありましたが、現在は代数学により深く取り組みたいと考えています。
先人が営んできた「学問としての数学」を実感
3年次に履修した授業「解析学Ⅳ」では、ルベーグ積分(※1)の考え方について根本的な部分から構築する方法を学びました。高校で学ぶ積分は、一般にリーマン積分(※2)と呼ばれるもので、ルベーグ積分はその純粋な拡張として考えることができます。このルベーグ積分を一から学び、リーマン積分との関連や、積分における極限操作などについて理解を深めます。今までに学んできた数学は、「そういうもの」として与えられた定義や命題を用いて計算することがほとんどでした。この授業では、定義や命題を一から構成する方法を学びます。数学における集合に関する積分の概念を構成するため、議論はかなり抽象的なものとなります。
数学で抽象的な議論を行うのはほぼ初めての経験だったので、議論が進むにつれて内容の難しさに理解が追い付かないことも多く、たいへんハードな授業でしたが、同時にそこが魅力でもありました。積分学の歴史的背景も学び、先人たちが営んできた「学問としての数学」を実感しました。授業を通して抽象的な議論の方法が身に付き、このアプローチは日常的な問題解決などにも幅広く応用できると感じました。
同じく3年次の「数理専門実験Ⅰ・Ⅱ」では、輪講の形式で授業が行われました。少人数のグループに分かれて学生が順番に発表する形で進行します。前半は過去に学んできた問題を黒板に書きながら解説します。より発展的な問題にも取り組むことで、単なる復習にとどまらず一層深い理解を図ります。後半はあらかじめテキストを読み、理解した内容をセミナー形式で発表していきます。この一連の学習を主体的に取り組み、今までに獲得してきた知識をさらに深く理解することができたと感じます。同時に、それを自分の言葉で人に伝えることの難しさと楽しさも知りました。
※1 ルベーグ積分…1900年頃にフランスのアンリ.ルベーグによって考え出された積分の新しい定義
※2 リーマン積分…1800年代半ばにドイツのベルンハルト.リーマンが唱えた積分の定義
教養科目で知識の幅を拡げ、経験を積む
「本学独自の全学共通教育システムの青山スタンダード科目」では「科学史」の授業内容が印象的でした。科学とは何か、何をもって科学と呼ぶのかを、科学が成立した歴史を学びながら考える授業です。科学の性質や特徴を理解し、科学が現代社会でどのように利用されているのかを学びます。自分が今まで「科学」だと考えていたものが実はそうではなかったり、思いがけないところに「科学」が潜んでいたりと、さまざまな事例を知り、考えさせられる内容でした。自分なりに科学の概観をつかむことができたように思います。また、研究論文の内容が科学であるか否かを自分で見極めるという経験を積み、科学が論文の中でどのように使われてきたのかを学びました。科学史を学ぶ魅力と同時に、論文を読み解く難しさも実感しました。それまで研究論文を読むという機会がなかったため、一歩成長することができた授業でした。
英語教育に関しては、本学部ではTOEICのオンラインテストを受ける機会が豊富に設けられています。そのため、英語学習の成果がTOEICのスコアアップという形で如実に表れていると自分でも感じます。今後は英語の論文を読む機会も増えてくるため、後れを取らないように継続して語学力を磨いていくつもりです。
本学科は先生方と学生との距離が非常に近く、疑問については理解できるまで根気強く教えてくださいます。この環境を最大限に活用しながら勉学に励み、卒業後は本学の大学院に進学して、数学をさらに専門的に探究していく予定です。そして、将来は教育関係の職に就きたいと考えています。
インタビュー動画
※各科目のリンク先「講義内容詳細」は掲載年度(2022年度)のものです。
理工学部 数理サイエンス学科
青山学院大学の理工学部は、数学、物理、化学といったサイエンスと、テクノロジーの基礎から最先端を学ぶ環境を整備しています。国際レベルの研究に取り組む教員のもと、最新設備を駆使した実験、演習、研究活動の場を提供するとともに、独自の英語教育を全7学科統一で実施。未来志向のカリキュラムにより、一人一人の夢と可能性を大きく広げます。
さまざまな数学の基礎を学びながら、数理科学に関する未知の事柄について研究を行います。「数理サイエンス」という言葉には、厳密な論理に基づく学問としての数学だけではなく、現実社会の諸問題を記述し解決する道具としての数学という意味が込められています。自分で考える習慣と力を身に付けることが目標です。