災害時に地図情報で
被災地を救う
サーバント・リーダー

掲載日 2021/2/19
No.60
青山学院大学
地球社会共生学部 教授
古橋 大地

OVERVIEW

“時代が直面する課題解決に向けて、人のため社会のために、自分にできることは何か”青山学院のスクール・モットー「地の塩、世の光」の精神を体現しながら、その問いに真摯に向き合う「サーバント・リーダー」を紹介します。

理事長を務めるクライシスマッパーズ・ジャパンの
活動についてお聞かせください

災害時に、被災地の状況を迅速かつ正確に把握するため、ドローンで撮影した画像から地図を作成し発信する「クライシスマッピング」が主な活動です。2010年のハイチ地震の際、衛星画像などの情報をもとにインターネットを通じて被災地の地図を作る活動に参加した経験から、災害時の地図作りの重要性を実感したことがきっかけです。ただ衛星画像は迅速性などに限界があるため、リアルタイムで必要な情報を得られるドローンに着目し、災害ドローン救援隊「DRONE BIRD」を立ち上げました。関東を中心に29自治体(2020年3月現在)と協定を結び、災害時はもとより平時にも協力して訓練を行い、防災・減災に取り組んでいます。この活動には、地球社会共生学部の古橋研究室を主とした学生も参加しています。実社会の人たちと現場で共に活動することで実践的な学びを得られると考えています。

活動の中で苦労したことや意義を感じたことは?

災害時には自治体の機能が停止することを想定し、私たちの判断で出動できる取り決めを交わしています。各地に大きな被害を出した2019年の台風15号と19号の際は、信号が止まり交通渋滞も起こる中、撮影の優先順位を判断する難しさがありました。例えばドローンを飛ばす際に、鉄道の架線上などリスクのある場所もありますが、災害時に躊躇していては必要な情報を得られず、現場で瀬戸際の判断をすることも難しいです。一方、2013年に伊豆大島で台風による土砂災害が発生した際、メディアが報道した土砂の流出域は実際より広域でしたが、私たちが作成した詳細な地図により、現地の工場が的確に対応できたと伺い、活動の意義を実感しました。

青山学院大学の教員として考えるサーバント・リーダーの
素養やご自身のモットーをお聞かせください

サーバント・リーダーに必要なことは、「フォロワー」を増やすことだと考えています。SNSのそれとは少し意味が異なり、“共に活動する仲間”ということで、リーダーが方向性を明示し、適切に動ける環境を作ることでフォロワーが次のフォロワーを生み、コミュニティが広がると考えます。大学の研究室では、常に「オープンであること」をモットーとしています。情報や活動内容をオープンにすれば「利便性」が上がり、多くの人が関わることで「多様性」が生まれ、自分がいなくても誰かが引き継ぐことができ「継続性」も担保されます。

今後のビジョンを
お聞かせください

災害ドローン救援隊「DRONE BIRD」の活動において、より多くの自治体と災害協定を結びたいと考えています。それに伴い、私たちと連携を取りながら地域で活動できる人材を育成する必要もあります。対象エリアを拡大することで、より実質的な活動にし、日本各地をカバーしていきたいと思っています。

全国の受験生や高校生に
エールをお願いします

ある会社が提唱する“アドベンチャー・トゥギャザー”という言葉が好きです。クライシスマッピング活動においても、空間情報学を学ぶ上でも、フィールドワークが重要です。 現場を見なければわからないことがたくさんあり、知識があっても現実を知らなければ机上の空論になりかねません。そして、その経験を誰かと共有することが大切だと考えています。青山学院大学で共に学ぶ仲間たちと「一緒にフィールドに行こう!」と誘い合ってほしいです。

地球社会共生学部

2015年4月に開設した青山学院大学の地球社会共生学部では、共に生きる―共生マインドをテーマに、急成長する東南アジアを学びのフィールドの中心として、教養と社会科学の専門性を併せ持った、グローバル人材を育成します。世界の経済は、これまで欧米を中心としていましたが、今後、アジアを中心とした経済に変わろうとしています。また、アジアは世界最大の英語使用圏になると予想されており、コミュニケーション能力の向上が大きなテーマとなっています。専門4領域を中心に学ぶとともに、東南アジアへの半期海外留学をカリキュラムの柱の一つとし、グローバルな視点からの課題解決力を培った、真の地球市民へと育て上げます。

VIEW DETAIL

バックナンバー

*掲載されている人物の在籍年次や役職、活動内容等は、特記事項があるものを除き、原則取材時のものです。

学部選択

分野選択