学びの中で見えてきた自分の道
データサイエンティストを目指して研究に打ち込む

掲載日 2023/7/14
No.247
<2023年度 学業成績優秀者表彰 最優秀賞受賞>
理工学部 経営システム工学科 4年
目黒 心
長野県屋代高等学校出身

OVERTURE

高校時代に理系を選択しながらも、経営に強い関心を抱いていた目黒さん。進路を探す中で見つけたのが、組織の問題を工学的視点で捉えて解決を図る経営システム工学です。さまざまな専門科目に触れて学びを深めていくうちに、「データ分析技術を活用して企業の課題解決に取り組む」という展望が見えてきました。

理系の知識を生かしながら経営も学べる

経営システム工学科を選んだのは、興味があった情報工学と経営学を組み合わせた学問領域だからです。経済学や経営学に興味がありましたが、理系科目の方が得意だったこともあり、高校の文理選択で理系を選択したのを契機に目標を理系の学部に絞ろうと決断しました。高校3年生のとき、情報工学を学べる大学を探す中で青山学院大学の理工学部にある経営システム工学科の存在を知り、工学的な視点から企業経営にアプローチできる学問の可能性に魅力を感じて進学を決めました。

1年次では、「解析学」や「線形代数」などの数学的な知識を身に付ける基礎科目を中心に学びました。また、青山スタンダード科目の「日常生活の数理」は、数学の知識を活用すればパズルを数学の問題として定式化できたり、簡単に解く方法を求められたりすることがわかり、面白かったので深く印象に残っています。パズルの数理的な性質を理解することは非常に難しく感じましたが、数学を利用してパズルについて考えることで、学習知識を日常の身近な例に応用可能だという手応えを感じ、強いやりがいを感じました。問題の性質を一つ一つ読み解いていく論理的思考力を高めることができたと思っています。

データ分析のやりがいと社会的な有用性を実感

2年次で「統計学」や「多変量解析」の学びを契機に、データ分析への興味を深め、さらに踏み込んでいきたいと思うようになりました。「多変量解析Ⅱ」の授業では、データを処理して得られた結果について、適切に解釈することの重要性を学びました。
授業の期末課題で、私は都道府県ごとのワイン生産の特徴とその特徴を生み出す要因について考察を行いました。授業の中で学んだ統計ソフト「R」を用いた主成分分析や因子分析といった手法によって、様々なデータから分析結果を得ることができたのですが、その解釈に決まった答えはありません。自分の解釈が妥当なのか非常に悩みましたが、様々な事例や考え方を参考にしながら分析結果について考える中で、自らの土地で生産したブドウを用いてワインを生産している都道府県もあれば、海外からブドウを輸入して、大量にワインを生産、消費する都道府県も存在するということが分かりました。ワインの生産量はその原料であるブドウの生産量と関連しているのではないかと予想していましたが、データ分析の結果、予想とは異なる知見を得ることができました。
授業で取り組んだ様々な演習を通して、妥当な解釈を導くことで新たな知見が得られるというデータ分析のやりがいを強く感じることができました。また、経営システム工学の学びがどのような場面でどのように役立つのかという具体的なイメージを持つこともできました。

さらに、学科の学びが企業活動にどのように役立てられるのかを実例として知ることができたのが、「経営システム工学の最先端」や「経営システム工学特別講座」といった授業です。経営者、管理職、若手実務家として最前線で活躍する本学科の卒業生ゲストスピーカーから「社会におけるデジタル化の広がりによって、システム構築やデータ分析を担うIT人材の需要が大きく高まっている」という話を聞いたことで、自分の学びが社会に必要とされていることを実感し、企業の幅広い問題の解決にデータ分析を生かしたいという具体的な将来展望が見えてきました。

プレゼンスキルやチームワークを身に付ける

3年次からは大内紀知先生のイノベーション・マネジメント研究室に所属しています。大内先生の「経営システム工学輪講Ⅰ・Ⅱ」では、データ分析やイノベーション・マネジメントに関する文献の精読に研究室メンバーと一緒に取り組みました。1章ずつ担当し、内容を要約して発表するのですが、当初の私は発表に慣れていなかったこともあり、客観的に理解してもらえる資料を作成するのに大変苦労しました。何とかスキルを高めたいと、メンバーの指摘に耳を傾け、他の発表者の良い部分を取り入れるなど試行錯誤の結果、バランスが良く、わかりやすい発表のコツを身に付けることができたと思います。また、専門書や研究論文と真剣に向き合う経験は、個別具体の問題解決に最適なデータ分析手法があるという知識を広げると同時に、最新の経営理論に触れることができたため、経営学の理解も深めることができました。

3年次は実験に取り組む機会も増えました。「モデル化技術実験」の授業では、自動車工場の生産シミュレーターを用いた生産管理にチームで取り組みました。実際の改善活動がどのように進められるかを学ぶと同時に、研究にチームワークが求められることを知ることができました。

経営システム工学科特有の特徴として、英語で学べる授業が多いことが挙げられます。2年次以降に学ぶ学科科目の多くは、教科書や講義資料が英語で書かれているので、英語で専門用語を学ぶことができます。授業の説明自体は日本語で行われるため、授業内容が理解できないということはありませんでした。講義が英語で行われる科目では、英語での説明に慣れることができ、英語の論文や教科書などを読む際にも抵抗なく読み進めることができるようになり、専門知識と英語力の両方を効率的に身に付けられたと感じています。特に、大学院に進学する場合は、国際学会発表の機会が与えられることもあるので、学科の学びの中で英語に触れられるというのは、将来的な活動に役立つ特徴であると感じています。

IT-Aの仕事で大学生活がさらに充実したものに

課外活動では、2年次から情報メディアセンターで学生によるITアシスタント(IT-A)の活動に力を注いでいます。青学生は、全学必修で青山スタンダード科目「情報スキルⅠ」を履修しますが、単位取得には情報メディアセンターが開講する「IT講習会」を修了することが条件となっています。そのIT講習会で自学自習支援やスキルチェックを行う教室での試験監督など、IT講習会に関わるさまざまな業務のサポート業務を担うのがIT-Aです。私自身が1年生でこの授業を履修したときIT-Aの存在を知り、得意分野であったため後輩たちにわかりやすく指導できるのではないかと考え、2年生になってすぐIT-Aに応募しました。学生が問題に対して的確に解答できるようになると、その役に立つことができた実感が湧き、達成感を得られます。活動を通じて他学部の学生と交流でき、大学で過ごす時間も長くなりましたし、IT-Aとして働いていることによって、私の大学生活はより充実したものになっています。さらにこの体験は、私自身の研究室活動の中で、自分が調べた論文についてまとめ、他の学生に説明する際にIT-A活動で培った説明力が役立っていると実感しています。

高度なデータ分析技術を持つ人材になる

現在は、「企業がラディカルな研究開発に取り組む状況の解明」をテーマに、今ある技術の延長線上にない、新しい技術を生み出す研究開発を積極的に推進するのはどのような企業か、その背景・要因を解き明かそうと研究に取り組む毎日です。特許出願数をはじめとする特許に関係するデータを用いて、企業の技術力やラディカルな研究開発に取り組む推進姿勢をデータ化して分析し、そのメカニズムを突き詰めたいと考えています。限られた時間の中で成果を出さなければなりませんから、毎日を大切にしながら研究に取り組んでいきたいと思っています。

卒業後は本学の大学院に進学し、より専門的な研究を行うことで、データ分析能力や、問題解決能力をさらに高め、現在の研究を掘り下げたいと考えています。また、「データサイエンティスト育成プログラム」*を履修して、あらゆる産業で求められ活躍できる実践的なデータサイエンティストやITコンサルタントなどの職に結び付けていきたいと考えています。
*理工学研究科博士前期課程の学生対象

2023年度、この学科には9つの研究室がありますが、経営分析や機械学習、生産管理や数理最適化など、それぞれの研究室で扱うテーマは多様であるため、自身の適正に合った研究室を見つけることができます。特に、私と同じように理系の視点から経済学や経営学にアプローチしたいと考えている人や、生産活動の改善や最適化について学びたいと考える人、またコンピューターを用いたデータ分析や機械学習などに関心がある場合には、ぜひ本学の経営システム工学科をおすすめしたいと思います。

※各科目のリンク先「講義内容詳細」は2023年度のものです。

理工学部 経営システム工学科

青山学院大学の理工学部は数学、物理、化学といったサイエンスと、テクノロジーの基礎から最先端を学ぶ環境を整備しています。国際レベルの研究に取り組む教員のもと、最新設備を駆使した実験、演習、研究活動の場を提供するとともに、独自の英語教育を全7学科統一で実施。未来志向のカリキュラムにより、一人一人の夢と可能性を大きく広げます。
社会は、人・モノ・お金・情報が複雑に関わり合う多様な組織によって成り立っています。企業やNPOなどの組織を「より良く機能させる」ための技術とシステムを開発し、導入からマネジメントまでの全プロセスを学問領域としているのが「経営システム工学」です。経営システム工学科では、現実社会の問題を把握する知識と工学的な視点を融合させた学びにより、高度で先端的な課題解決力を養います。

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