自らの使命と信じて
コーヒー生産者と消費者の
”架け橋”を目指す

掲載日 2022/4/15
No.144
国際政治経済学部
国際経済学科 4年
吉田 光佑
東京・私立青山学院高等部出身

OVERTURE

大学での学びは、キャンパスでの授業だけにとどまりません。部活動やサークル活動、ボランティアなどの課外活動で自己研鑽を積み、社会に出て羽ばたくための翼となる知見を得た学生を紹介します。高校時代に東ティモールを訪れた経験を契機に、コーヒーサークル「青山珈琲愛好会」の創設にとどまらず、昨秋には同国にフォーカスを当てたコーヒーショップを立ち上げた吉田さん。果敢なチャレンジの根底にある強い思いをお聞きしました。

活動の源は東ティモールで受けた衝撃と使命感

高校3年生のとき、代表も務めていた青山学院高等部の自主団体「ブルーペコ」のスタディーツアーで東ティモール民主共和国に渡航し、同国経済を支える柱のひとつであるコーヒーの生産農家を訪ねたことが、私の人生の転機です。それまで勉強した中で読んだ書籍などでは、コーヒーチェリー(コーヒーの実)が買いたたかれ、生産者は収入が搾取される弱い立場であることが強調されていました。しかし、実際に現地で目にしたのは、情熱を持ってコーヒー生産に取り組む農家の人々の誇り高い姿でした。単なる高校生である自分に「努力の結晶だ!見てくれ!」とコーヒーを見せ、その裏にあるさまざまな挑戦やプライドを伝えてくれました。私は、そのギャップに衝撃を受け、現地を訪れた者として、生産者の努力やコーヒーの品質について正しく消費者に伝え、生産者と消費者をつなぐ”架け橋”にならなければいけないという使命感を抱くようになりました。

コーヒー好きの父の影響で小学4年生の頃から趣味程度にコーヒーの勉強はしていました。ですが、より専門的な知識を得るため、大学入学と同時にコーヒーの専門学校で焙煎や抽出、品質評価のためのカッピングなどの技術を本格的に学び始めました。そして、本学にコーヒーに関するサークルがなかったことから、1年次の5月には「青山珈琲愛好会」を創設しました。これから世の中への情報発信をリードする立場になる若い世代のコーヒーに対する価値観を高めたいと考えたからです。コーヒーカルチャーの新たな発信源を作ろうと、ブランディング部門を設けてSNSの活用に力を入れてきたことが功を奏し、現在では約240名のメンバーが所属する組織に成長しています。

青山珈琲愛好会で作成した冊子

コロナ禍の今はオンラインでの活動が主になっています。ですが、コーヒーの諸知識や技術を学ぶセミナーの開催、オリジナルブレンドを作成して、青山祭や私が関東支部長に就任している全国学生珈琲協会主催の「Japan Student Coffee Festival」に出店するなど、精力的に活動してきました。カフェと共同でオリジナルブレンドを作り、店頭で販売するなど、当初からやりたいことのひとつだった企業とのコラボイベントも実現することができました。私はこれらの活動で、企業や他大学との交渉やミーティングに奔走しながら、専門学校で学んだ知識をフル活用してコーヒー豆の選別から焙煎、レシピ決めや抽出のトレーニングまで、全ての過程を監修しました。生産者がいくらがんばって良いものを作っても、扱い方ひとつでそれをダメにしてしまうこともあります。ですから、メンバーがスキルを習得するために妥協なく指導しましたし、メンバーもそれに応えてくれたと思います。その甲斐あって、企業コラボのオリジナルブレンドが好評を博して完売するなど、嬉しい成果を得ることができました。

品質での真っ向勝負でおいしさを伝えたい

サークル活動に加え、2021年11月には東ティモール産の豆に特化したコーヒーショップ「LUSH-COFFEE」をオープンし、オーナーを務めています。1年次の夏休みにインターンシップで再び東ティモールの農村部に入り、共同生産者の立場で約1カ月間現地の人々と共にコーヒー豆を乾燥させる作業、品質維持などに従事した経験が、開業決断のきっかけになりました。改めて彼らのコーヒーに対する誇りを感じたのはもちろん、どこの集落に行ってもまるで家族のように接し、食べ物を用意してもてなしてくれるやさしさ、おおらかさに感じ入りました。そして同じ立場からコーヒーに関わることで、自分のすべきことが日本で東ティモールコーヒー市場を拡大するべく、”仕事”として同国のコーヒー産業の発展に取り組み、貢献することだという確信を得るに至ったのです。私の実家は小売りや飲食などの事業を営んでおり、新規事業として出店が叶いました。私の思いを理解し、後押ししてくれた家族には大変感謝しています。

東ティモールでのインターンシップにて

ビジネスを続ける上でも、生産者のモチベーションを高めるためにも、発展途上国への支援という観点をアピールするのではなく、品質で真っ向勝負することが重要だと考えています。その点では、おいしかったと言ってリピートしてくださるお客様が増えていることに手ごたえを感じているところです。コーヒー豆は集落単位で販売していて、「〇〇集落の豆が気に入ったからまたほしい」と集落名でオーダーされる方までいらっしゃいます。そのような声を聞くと、”架け橋”としての役割が少しでも果たせていることを感じます。また、店頭に立つときは、お客様と積極的にコミュニケーションを取り、「この豆はこんな人が作っていて、こんな工夫をしているんですよ」と、商品の背景にあるストーリーを伝えるようにしています。それが付加価値になり、目の前の一杯がより豊かな味わいになる、そしてコーヒーの価値が上がることで最終的には持続的な生産と生産者の所得向上につながっていくと信じているからです。

生産者との関係構築と経営にも生かされている学科での学び

国際経済学科に進学したのも、農村部におけるコーヒー生産の発展やコーヒーの取引に関する知識を身に付けるため、開発経済学や貿易、国際ビジネス関連の学問を基礎から理論的に学びたいと考えたからです。特に開発経済学を研究する加治佐敬先生のゼミナール(ゼミ)やラオスのコーヒー産業が題材として取り上げられた「開発経済学」の授業は、東ティモールで実際に見聞きした事象を学問的に捉えて理解することができる内容で、自分は何をなすべきかを考える材料になりました。例えば、私がインターンシップの時に感じた人々の家族的な雰囲気は、村共同体ならではの人のつながりの強さ故であり、いつも相互監視の目があるからこそ、みんながしっかり働き、よい方向に進むのだと学びました。この関係性を生産者とアウトサイダーである私の間にも作ることでコーヒーの品質向上を図りたいと考え、商品がどのように消費者に好まれているかという情報から、欠点豆(味や風味に悪い影響を与える不良豆のこと)が多いといった改善すべき点まで密にフィードバックし、信頼関係を構築しながら発奮を促しています。

また、店の立ち上げで事業計画書を作成した際には、「ビジネスマネジメント」の授業で事業計画書をレポートとして作成した経験が大いに役立ちました。ビジネスにそのまま活用できる実践的な学びが得られたことも大変助けになっています。

開業は夢への通過点

開業はあくまでもひとつの通過点に過ぎません。LUSH-COFFEEの影響力を拡大するため、これからも努力を続けていきます。また、かねてから「フェアトレード認証を用いないフェアな取引のあり方」に関心を持っています。フェアトレード認証を取るための基準が最貧困層には高い障壁であること、最低保証価格が設定されることによる、農家側の品質向上意欲の低下リスクがあることからです。

現在は1年次に参加したインターンを主催しているNGO経由でコーヒー豆を買い付けていますが、大手の企業も関わっているため、特定の集落のものしか買えないなど制約があります。東ティモールコーヒーの評価と価格向上のために独自の流通経路を持つことで、今扱うことができていない集落の豆も販売できるようにしたいですし、ゆくゆくは生産者と共にコーヒー開発などもできる体制を目指したいと思っています。また、Qグレーダー(Licensed Q Grader)というコーヒーの品質評価をするための国際資格取得に向けた勉強もしています。Qグレーダーがつける点数次第でコーヒー豆の評価や価格が変わり、生産者の所得にも大きな影響を与えます。この資格をもって、公的な立場から東ティモールコーヒーの品質の良さを広めていきたいと考えています。

自分自身の流通経路を持つには資金も必要です。そのため、店の経営を副業として行うことを前提に、就職活動も行ってきました。卒業後は内々定をいただいているIT関連の企業に就職する予定です。就職先では、サークルや事業を起こした経験、イベントや店舗で養ったコミュニケーション力を活用し、顧客目線に立った課題解決の提案などで貢献したいと考えています。会社員と店舗経営、二足の草鞋になりますが、どちらもおろそかにならないよう、ワークライフバランスをとりながら、かつて私が出会ってきた生産者の人々の暮らしと東ティモールコーヒーの味のバラエティがより豊かになる形での振興という夢を実現させたいと思います。

国際政治経済学部

青山学院大学の国際政治経済学部は国際社会への貢献を掲げ、国際系学部の草分けとして創設されました。3学科×5コース体制のもと、専門性と国際性、現場感覚を重視した学びを実践しています。グローバルレベルの課題への理解を深め、エビデンスにもとづいて議論・討論するスキルを養成します。領域を超えて学べる独自の学際教育、所属学科を超えて選べるゼミナールブリッジや英語で専門科目を学べるグローバル・スタディーズ・プログラム(GSP)等によって、世界の多様な人々と協働し、新たな価値を創造する実践力を育みます。

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