社会に貢献したい思いで
酵母モデルの研究に
打ち込み大学院修了後は
食品の開発へ

掲載日 2022/10/7
No.186
理工学研究科 理工学専攻 生命科学コース
博士前期課程 2年
藤田 聖也

OVERTURE

理工学研究科で酵母をモデルに生命現象の研究に取り組む藤田聖也さんは、入学当初から社会貢献できる研究・開発職に興味がありました。念願が叶い、修了後は食品企業で製品開発に従事することになりました。研究で培った課題解決能力を生かして活躍したいと話す藤田さん。部活動やアルバイトなど、幅広い活動に熱中した経験も大きな成長につながったそうです。

多方面に学びを深めながら、専攻分野を絞り込む

高校時代、生物と化学の両方が好きで、どちらを専攻するか迷っていた私にとって、両方を幅広く学びながら専攻を絞り込んでいける本学の理工学部化学・生命科学科はとても魅力的でした。広く学ぶことで、ひとつの課題にさまざまな視点を持つ力を養うこともできたと思います。

本学独自の全学共通教育システムの青山スタンダード科目が充実していることも本学を選んだ理由のひとつです。中でも「技術史B」という授業は特に印象に残っています。社会で技術を生かすためには、理論や理屈だけではなく人との関わりが大切であることを学び、社会の成り立ちについても深い考察をすることができました。
最終的な専攻を決める上では「生命科学B」や「バイオテクノロジー」の授業に特に大きな影響を受けました。学部2年次の「生命科学B」では生命科学研究の基本を学習し、生物の機構を明らかにできる分野であることに強く興味を持ちました。3年次の「バイオテクノロジー」で、より具体的な実験方法や生物を使った実験の難しさを知り、自分なりの経験を深めて独自の研究ができるのではないかと考えました。今まさに発展している分野で、実験の新しい手法や技術が次々に生み出されている点でも、最先端に興味のある自分の志向に合っていると思いました。

現在は、酵母をモデルにして圧力というパラメーターを用いる、他に類を見ない研究をされている阿部文快先生の研究室に所属しています。阿部研究室を選んだのは、最先端の内容の研究ができることに加え、阿部先生の教育や研究に対するひたむきな姿勢と優しいお人柄のおかげで、先輩も後輩も皆で気兼ねなく相談しながら研究を進められる雰囲気にひかれたからです。

難病の解明にもつながる、圧力下の酵母をモデルとした研究

大学入学当初から、メーカーでの研究・開発職に興味があり、そのためには大学院でより高い知識や技術を修得する必要があると考え、大学院に進みました。
現在取り組んでいる研究のテーマは「高圧ストレスによる液胞の断片化現象」です。酵母に高い圧力がかかる際に、液胞という小器官が細かく分かれる現象の解明を目的としています。物質を運搬するタンパク質の役割に異常が生じると、この断片化現象が生じることは知られていますが、高圧ストレスにさらすことで断片化が起こる理由は未だわかっていません。どの遺伝子がこの現象に関係しているのか、遺伝子の編集を行い一つ一つ実験で明らかにしています。データが少しずつ取れてきて、頭の中には仮説や検証したいことが山ほどあります。在学中に論文としてまとめあげ、学会で発表することも目標にしています。

もともと私は、病気の治療など、人々の役に立つ研究をしたいという希望が強く、がんや老化に関わるTORC1という細胞内の栄養源センサータンパク質に注目しました。そして、TORC1が液胞の膜上に存在することから、液胞の断片化とTORC1が関係するのではないかと考え研究を始めたのです。その過程で研究内容の再検討を余儀なくされる場面もあり試行錯誤の連続でしたが、阿部先生が丁寧に助言してくださって、最終的には有意義なテーマにたどり着けたと思います。研究で着目している物質の運搬機構は、ヒトでは「リソソーム病」という難病に関連するため、酵母での研究がこの病気の治療方法の開発につながる可能性があり、希望と誇りをもって研究を進めています。
研究室に入って3年目となり、課題に対するアプローチが磨かれてきた手応えがあります。論文をもとにさまざまな情報を集めた上で、自分の研究テーマにダイレクトに関わる情報を適切に取捨選択し、研究の中での深掘りをより質の高いものにする技術が身に付いてきました。

妥協することなく多様な活動に熱中し、研究にも良い影響をもたらす

これまでの大学・大学院生活を振り返って、特に苦労したと思うのは部活動との両立です。私は幼少期より野球をやっていて、学部の3年次まで理工軟式野球部に所属していました。特に3年次は、多くの実験とレポート作成に取り組み、部長としてリーダーシップを発揮しつつ、練習場所の確保、練習試合の対戦相手探し、会計などの裏方業務も行う多忙な日々でしたが、勉学も課外活動も両方とも全力で取り組むことを目標にしてきました。
忙しさ以外にも、初めのうちは、チームが一丸となれないことも大きな課題でした。メンバーと個別に話し合って少しずつチームの一体感をつくっていったところ、努力がだんだんと結果に結びつき、春のリーグ戦で6チーム中6位だったところ、秋のリーグ戦では2位、個人タイトルは青学が最も多く獲得するという結果を残すことができました。

理工軟式野球部部長として試合前にチームを鼓舞する

この忙しい日々により、時間の効率的な使い方を工夫するようになり、大きな成長もできました。そのおかげで、今、研究を進める上でも作業を効率化するスケジューリングやマルチタスクを実現できています。
また、学部2年次から飲食店でアルバイトも続けています。接客業務で、言葉遣いやコミュニケーションスキルなどを身に付けることができました。このように学内外の活動に真剣に取り組めたのは、青学で多様な人々と交わり、さまざまな活動を目にして刺激を受けて、妥協することなくやりたいことに挑戦する意欲を持てたからです。やる前から諦めず、幅広い活動に熱中できたことは、これから生きる上で財産になっていくと思います。

幅広く人々に貢献できる食品企業で製品の開発を

入学当初からの希望が叶って、大学院修了後は大手食品企業に入社し、製品開発に携わる予定です。仕事を通じた社会への貢献に興味があり、製薬企業や食品メーカーを中心にインターンシップに参加しました。インターンシップでは各業界・企業の仕事内容や社風を知ることができましたが、製薬企業の研究・開発は、研究一筋のスペシャリストが多い印象を受けました。大学生活を通して、部活動、アルバイトなど、いろいろな活動で多様な人と関わる経験を重視してきた私には、食品業界の方が合っていると感じて、夏のインターンシップ以降は、食品業界に比重を置いた就職活動(就活)となりました。

いつも明るい雰囲気の研究室メンバーと

内定先企業は、多くの人にとって身近な企業であり、幅広い人々に貢献できることに魅力を感じています。製品開発では、おいしさはもちろん重要なファクターですが、そのおいしさが安定していること、リーズナブルであること、消費者が使うときに簡単であることなど、実に多方面の課題があります。容器の素材や梱包、加工技術なども含め、多分野の技術を結集させてひとつの製品はできあがります。研究に取り組んで身に付けた、情報を取捨選択する力や課題解決力を、こうした多方面からアプローチが必要な製品開発に役立てたいと考えています。
実験を進めながらの就活で、両立が難しい時もありましたが、長時間を要する作業とすき間時間でできる作業を選り分け、スケジュールをコントロールしていました。その上では、進路・就職課で、ウェブ面接用のブースをお借りすることで、採用面接後にまたすぐに実験に取り組むことも可能になり、とても助かりました。
青学には、学生の思考や知識の幅を広げてくれるカリキュラム、多様な人々と関われる環境があり、学生が大きく成長できる大学だと思います。そして、化学・生命科学科では、今後さらに発展し社会貢献に繋がるバイオテクノロジーの高度な研究ができます。ぜひ進学先の候補に入れてみてください。

藤田さんの就職活動スケジュール

  1. 博士前期1年 2021年7月

    インターンシップ選考でエントリーシート(ES)準備

  2. 博士前期1年 2021年8月

    製薬・食品企業を中心に夏季インターンシップに参加

  3. 博士前期1年 2021年9〜11月

    冬季インターンシップ選考、ESの準備

  4. 博士前期1年 2022年1〜2月

    冬季インターンシップに参加、食品業界に比重を置く

  5. 博士前期2年 2022年3〜6月

    採用試験本選考

  6. 博士前期2年 2022年6月

    食品会社より内々定を獲得

理工学部 化学・生命科学科

青山学院大学の理工学部は、物理、化学、生命科学といったサイエンスと、テクノロジーの基礎から最先端を学ぶ環境を整備しています。国際レベルの研究に取り組む教員のもと、最新設備を駆使した実験、演習、研究活動の場を提供するとともに、独自の英語教育を全7学科統一で実施。未来志向のカリキュラムにより、一人一人の夢と可能性を大きく広げます。
「化学」とは、物質の本質とその可能性を分子レベルから探究する学問です。それを基盤として、生命現象の本質を分子の性質とその相互作用に基づいて理解を深めていくのが「生命科学」。化学・生命科学科では、環境、生命、資源、情報をキーワードに多様な選択科目群を配置しています。有機EL照明をはじめとする工業化学や遺伝子関連のバイオテクノロジーなど、最新分野にアプローチできます。

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