森田准教授からの
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森田 武史
理工学部情報テクノロジー学科では、デジタルメディア/CG・Web、高度機械学習/AI、人間情報学/XR、ロボティクス/IoTの4 テクノロジー領域で情報通信・ソフトウェア設計の基礎分野から人工知能やロボット工学などの応用・関連分野まで、幅広い分野を実践的に学べます。その中でも、知識工学研究室では、人間の持つ知識を人工知能が利用できるようにする技術や、その知識を利用できるシステムの研究を行っています。
Q.知識工学研究室の研究内容を教えてください。
知識工学研究室の主な研究分野は、「知識工学」、「セマンティックWeb」、「オントロジー工学」、「自然言語処理」です。
人間の知的作業をソフトウェアが支援するためには、人間の持つ知識をソフトウェアが利用できるようにする必要があります。人間が書いたり話したりする「自然言語」をソフトウェアが直接理解できれば理想ですが、現状それはまだ困難です。Webにある膨大なテキストデータも、ソフトウェアはほとんどの場合、文字の記号として処理していて、その意味を完全に理解しているわけではありません。
そこで、自然言語を「構造化データ」と呼ばれるソフトウェアが理解できる形式のデータに変換していく作業が必要です。手作業で変換することはできますが、それでは莫大な手間やコストがかかります。この作業を自動化し、ソフトウェアが理解、利用できるデータを増やしていくことが、この研究室の一つの目標です。
例えば、ソフトウェアが理解可能なWeb記述のしくみ「セマンティックWeb」は、私の主要研究分野の一つですが、Webページへのメタデータ付与やソフトウェアが利用できる辞書「オントロジー」の活用などで、より高度な推論を用いた情報検索が期待できます。セマンティックWeb実現のためには、既存のデータベースにおけるデータ同士の関係を、グラフ構造で表現した知識グラフを構築して、複数のデータベースを統合し、データベースを横断してデータを参照する仕組みも必須です。現在でもすでに各国の統計データや生命科学分野のデータが、知識グラフなどの構造化データとして公開されていて、さらなる充実が期待されます。
当研究室では、こうした知識グラフの効率的な構築や、知識グラフを利用した対話システム、質問応答システムの研究を進めています。また、谷津元樹助教のメインテーマである、ソフトウェアによるユーモアの理解の研究を通し、自然言語処理のテーマも広く扱っています。
Q.研究が進むと、将来どのようなことが実現されるのでしょうか。
例えば、スマートスピーカーに質問をするとします。現状は、質問に関連するWebページやインターネット百科事典ウィキペディアの記事を回答として提示するか、「富士山の標高は?」「夏目漱石の代表作は?」など比較的シンプルな質問には直接答えることができます。しかし「東京都とアメリカ合衆国のニューヨーク州はどちらの面積が大きいですか?」などの質問には、各国の行政区画の面積を知って比較することができなければ答えを出せません。このような複雑な処理が必要な質問に自動で答えることは難しいのが現状です。
世の中のデータの構造化が進み、ソフトウェアが幅広く情報を参照できるようになれば、スマートスピーカーやソーシャルロボットが、推論して新たな事実を発見し答えを出したり、様々な話題について人間と対話できたりするようになると考えられます。
ビッグデータという点では、国や企業など様々な組織が持つ膨大なデータを横断し多角的に分析する自動システムが実現すれば、それまで人間が思い付かなかったような新しい知見を得られ、画期的なサービスが生まれる可能性があります。
Q.学生への指導ではどのようなことを心がけていますか。
当研究室では、まず基礎知識と技術について学びます。基礎を身に付けた後、教員から研究テーマをいくつか提示し、学生にはその中から一つ選んでもらい、各々の研究が始まります。教員からの選択肢以外にも、学生が希望するテーマの設定も可能です。研究テーマの設定にあたっては、学生の意見を聞きながら、学生が本当に興味を持って、主体的に研究を進められるテーマを設定できるようにしています。
初めての研究では、些細なことが原因で研究が進まなくなってしまうことがあります。週に1〜2回ほど学生と教員でのミーティングの機会をつくり、進捗状況や疑問点をヒアリングすることで、学生一人一人の状況をこまめに把握し丁寧にサポートするようにしています。チームコミュニケーションツールを導入し、学生がいつでも気軽に質問できる環境も整えています。
情報技術分野は進歩が速く、表層的な技術はすぐに陳腐化してしまいます。一つのプログラムを理解できても、それはすぐに使われなくなるかもしれません。学生には、常に抽象化して物事を捉え、様々なプログラムに共通する問題や、時間を経ても変わらず使える技術を意識してほしいと考えています。そうすることで、将来各々が進む分野で知識を応用することができるでしょう。
当研究室は、対話や質問応答システム、自然言語処理、知識推論など、現代的な課題を学び、それらを統合した研究も行っているので、卒業後はIT企業をはじめ、メーカー、金融、通信など、幅広い業界で活躍ができます。情報テクノロジー学科の3年生を対象に、研究の一端を体験できる「ラボワーク」を開催しています。配属研究室選びの参考に、ぜひご参加ください。
学生の
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神奈川県立大和高等学校出身
IT関連の仕事をしている父の影響で、子どもの頃からITに触れる機会が多く、入学当初から人工知能に関する研究に取り組みたいと考えていました。知識工学研究室を選んだのは、3年次の、各研究室の研究分野を学べる「情報テクノロジー輪講Ⅱ」等での森田先生の講義が面白かったからです。狭い範囲での応用技術だけでなく、将来長く活用できる基礎的な研究にも取り組めるところが気に入っています。森田先生の丁寧なご指導も研究室の魅力です。
卒業研究では、日本語の文章の質問から、公開されている知識グラフの情報にソフトウェアが適切にアクセスできる技術を研究しました。日本語は英語に比べ、機械的な認識が難しいのですが、英語で同じことを行うプログラムを参考に、日本語用のプログラムを動かすことに成功しました。一定の成果を出せたので、学部卒業前の3月には「人工知能学会」の研究会で、2022年6月には同学会の全国大会でも発表ができました。こうした学会発表時の評価をモチベーションに、現在はより深い研究に向けて、最先端の研究や技術活用状況の調査を進めています。
大学院修了後は、今までの研究を生かせるようなIT関連の仕事をしたいと考えています。IT関連の研究が進んでいる海外での活躍も視野に入れ、「科学技術英語Ⅰ」の授業を履修して、英語の勉強にも力を入れています。この授業では、英語でのプレゼンテーションや海外の方との会話で使えるようなジェスチャーや話し方など、実践的な表現方法についても学ぶことができます。
森田研究室では、知識工学や自然言語処理について、基礎から学び、研究を深めていくことができます。人工知能研究に興味のある学生におすすめです。
理工学部 情報テクノロジー学科
青山学院大学の理工学部は、数学、物理、化学といったサイエンスと、テクノロジーの基礎から最先端を学ぶ環境を整備しています。国際レベルの研究に取り組む教員のもと、最新設備を駆使した実験、演習、研究活動の場を提供するとともに、独自の英語教育を全7学科統一で実施。未来志向のカリキュラムにより、一人一人の夢と可能性を大きく広げます。
情報テクノロジー学科では、デジタルメディア/CG・Web、高度機械学習/AI、人間情報学/XR、ロボティクス/IoTの4分野を中心に編成。情報通信・ソフトウェア設計の基礎分野から人工知能やロボット工学などの応用・関連分野まで幅広く学習します。実習や演習が豊富なカリキュラムで、高度な専門知識とスキルを培い、社会で活躍できる人材を育成します。