「社会心理学」の研究を
続け、受賞に輝く。
この先は磨いたスキルを
生かし、社会に貢献を

掲載日 2023/10/26
No.270
社会情報学研究科 社会情報学専攻
社会情報学コース 博士前期課程 2年
比留間 圭輔
青山学院大学 社会情報学部 社会情報学科 出身
東京・千代田区立九段中等教育学校 出身

OVERTURE

文理融合の学びを求めて社会情報学部へ進学した比留間さん。そこで思いがけず「社会心理学」と出合い、大学院に進学し研究を深めた結果、2022年には「日本社会心理学会若手奨励賞」を受賞しました。今回は比留間さんの研究の道筋や、東京都職員としての将来像についてご紹介します。

大学進学時に選択した文理融合の学びが「社会心理学」への道を開く

高校時代の私は、どちらかといえば文系科目を得意としていましたが、大学受験の時期に「社会の問題を解決するには、複数の学問分野を学ぶ必要がある」という言葉を耳にしたことで、幅広い学びをしたいと考えるようになりました。青山学院大学の社会情報学部ではその希望がかなうとともに、統計やプログラミングのスキルが得られる点も魅力でした。そしてこの「文理融合の学部で学ぶ」という選択が、自分にとっては未知の学問だった「社会心理学」への道につながりました。

学部生の時、授業で特に印象に残っているのは、2年次で履修した「人間科学研究法」です。この授業で初めて本格的に心理学系の研究論文を読み、論文を読む面白さや難しさ、研究で示される知見の面白さを知りました。また清成透子先生の「社会心理学」、大林真也先生の「社会学」の授業などを通じて、社会学や心理学に関心を持つようになりました。3年次では「合理的思考と社会行動」という授業を通じて、現代社会の問題について多角的な視点から考える大切さを学びました。また授業内容を整理し、文献を引用しながら自分の考えをまとめた経験は、のちに自分が論文を執筆する際にも役立ちました。

また、2年次で参加した海外語学・文化研修も思い出深い経験です。留学先にはアメリカ・ロサンゼルスを選び、1ヶ月ほど滞在しました。現地では、語学学校にも週4日ほど通学し、放課後や休日には周辺の観光なども楽しむことができました。もともと自分の英会話力に苦手意識を持っていたため、まずは英語で話す機会をつくろうと思い、海外語学・文化研修に参加したのですが、自分が想像していたより現地の人とスムーズに会話できたことは良い経験になりました。研修への参加を通じて自分の英会話レベルを確認できた一方、さらに英会話力を向上させたいとも感じました。

語学研修の修了記念に撮影

ゼミに所属して本格的な研究へ。大学院では自らの研究が受賞

3年次では、社会心理学を専門とする清成先生のゼミナール(ゼミ)を選択しました。清成先生は、卒業研究に向けて、基礎的な知識(論文探索方法も含む)の習得、データ分析スキルの習得(統計学)、ディスカッション・ゼミでの発表・プレゼンテーションスキルなどの習得を目指して、徹底的に鍛えることを掲げたゼミ運営が特徴です。当時は新型コロナウイルス感染症対策としてオンラインによる指導から始まりましたが、4年次の3月から学会に参加する機会があり、私が学会発表に向けて、予行練習として撮影した動画を提出するたび、スライドの見やすさから説明時の所作に至るまで、清成先生は、妥協せずにアドバイスしてくださいました。何度も練習し、改善することで、私は公の場における発表のスキルを高めることができました。ここまで親身に指導してくださる先生に感謝しています。

3年次の終わりの頃から本格的に自身の研究に取り組みました。私は、文化によって異なる心の性質や行動のパターンが「どのように」「なぜ」示されるのかを考えています。従来の研究では「文化心理学」*の考えがベースとなっており、「欧米人の多くは『相互独立的な人(=自己主張の強いタイプ)』、日本人の多くは『相互協調的な人(=和を重んじるタイプ)』としての“心”を備えている」という考えがなされてきました。日本人が相互協調的(和を重んじるよう)に振る舞うのは、日本人が「相互協調的な“心”」を持っているからとされてきました。しかし近年の先行研究では、日本人が相互協調的に振る舞うのは、「文化心理学がいうところの“心”に基づくものではなく、他者から嫌われないようにするための戦略に基づくものではないか」という議論がなされています。実は私も、かつては「日本人は相互協調的な“心”を持っている」と信じて疑っていませんでした。ですが、あるときその「常識」を覆す論文が非常に印象的で、現在の研究を始めました。大学院に進学した後も清成先生のもとで研究を継続し、「2022年度 日本社会心理学会若手研究者奨励賞」を受賞しました。

*文化的背景から人間の心理を探究する学問

比留間さんが取り組んだ研究のポスター

実際に研究を進めていくと、楽しいと感じることばかりではありません。まだ答えの出ていない新たな問いについて考えるわけですから分からないことも多く、楽しさより大変さの方が上回るように感じることもあります。学部生の時は、オリジナリティーのあるテーマを設定して研究し、発表にまで至れば、それが研究のゴールとされていたかもしれません。しかし修士となった今では、自らの研究が持つ社会的な意義まで深く突き詰める必要があります。さらにその「研究の意義」は他の人とも共有できるよう、しっかりと内容を整理しなければなりません。こうした研究活動には苦しさや困難も伴いますが、研究の成果を学会で発表したり、それが認められたときには手応えを感じます。今回の受賞も、自身の研究において大きな励みとなりました。

大学院で学んだスキルを生かし、行政の立場から社会に貢献したい

博士前期課程修了後は、東京都職員として勤務する予定です。学部4年次にふとしたきっかけで、とある公務員志望者向けの説明会に参加したところ、自らの業務について熱意を込めて語る職員の方に心を引かれたのです。ある公務員の方が「日本をもっと良くしていきたい。社会を良くするため、仕事に打ち込むのは楽しい」と語る姿に強い印象を受け、「公務員として社会に貢献するというキャリアもあるのではないか」と考えるようになりました。

公務員試験は筆記試験対策が重要ですが、本学の進路・就職課の公務員志望者支援の一環で、「公務員試験対策 学外講座」があることを知り、連携先の専門予備校のいくつかに自分で足を運んでWスクール先を決めました。学会への参加準備(夏・冬・春)もあり、公務員試験対策との両立が困難がになる時期もありましたが、メリハリを付け、研究に打ち込みながらも、採用試験に取り組みました。そして博士前期課程2年次の8月、東京都庁から内々定が出ました。

東京都の職員として、市区町村単位で解決できないような広域的な行政課題に取り組みたいと思っています。スポーツ、都市づくり、デジタル、環境、財政、福祉、教育など様々な課題に向きあい、行政としての仕事に取り組みたいです。

仕事を進めていくうえで、どこかで研究において得た知識や経験が生きればいいなと思います。例えば社会心理学では、社会(マクロ)と個人の行動(ミクロ)の関係について深掘りをすることがありますが、行政の立場から効果的な施策を考える際にはこうした考え方が役に立つのではと思います。また、データを用いて客観的に分析する技術、論理的に説明する力といったスキルなども活用し、業務を通じて社会に貢献したいです。

比留間さんの就職活動スケジュール

  1. <4年次> 2022年 2月~

    公務員志望者向けの説明会に参加。公務員の仕事に対して興味を持つ

  2. <博士前期課程1年次> 2022年 3月~

    本学と提携する就職予備校に入学。少しずつ試験対策を開始

  3. <博士前期課程2年次> 2023年 4月~

    東京都庁の第一次試験から受験を開始

  4. <博士前期課程2年次> 2023年 7月

    東京都庁の試験が終了し、最終合格

  5. <博士前期課程2年次> 2023年 8月

    東京都庁から内々定をいただき、就職活動を終了

※各科目のリンク先「講義内容詳細」は掲載年度(2023年度)のものです。

社会情報学部

現実の社会には文系・理系の境界はなく、高度情報化社会と呼ばれる現代では、文系・理系の双方に精通していることがアドバンテージとなります。さまざまな社会的課題を解決するため社会情報学部においても“文理融合”の学びを追究しています。文系の「社会科学」「人間科学」と、理系の「情報科学」の各専門領域をつなぎ、各分野の“知”を“融合知”に高めるカリキュラムを整備。新たな価値を創造し、社会へ飛び立てる力を育みます。文理の垣根をなくした「文理融合」をコンセプトに、社会・情報・人間の複数分野にまたがる学際的な学びを展開。学問領域をつなぐことで生まれる新たな価値観で、一人一人の可能性を広げ、実社会における複雑な問題の解決に貢献できる人材を育てます。

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