専門分野の学びを
深めるために挑戦した
初海外での
アメリカ交換留学

掲載日 2022/10/12
No.187
<2023年度 学業成績優秀者表彰 優秀賞受賞>
理工学部
化学・生命科学科 4年
木下 彩
東京都出身

OVERTURE

グローバルな環境に身を置き、多様な価値観を肌で感じながら、専門分野の学びを深める留学。今回は、協定校派遣交換留学生として米国・フロリダ大学で化学分野の研鑚を積んだ木下 彩さんを紹介します。

化学反応の詳細なメカニズムに関心を持ち化学・生命科学科へ

高校時代、学校では詳しく触れない反応機構について塾の先生から教わり、その奥深さや面白さを感じて化学をもっと学びたいと思い、また生物分野にも興味があったので理工学部の化学・生命科学科に入学しました。
入学後、高校での授業との大きな違いを感じた科目は、まず「有機化学A」「有機化学B」「有機化学C」「有機化学D」です。化学反応が起こる理由や、反応中にどのような現象が生じるのかといった詳細なメカニズムを常々知りたいと思っていたので、大学入学以前に抱いていた自分の中の疑問が次々に解決していくことが楽しく、主体的に授業に取り組みました。また、専門科目の知識をさらに深めたいと思うようになった授業は、1年次に履修した理工学部共通科目「化学基礎実験」です。化学の基礎的な授業ですが、これまで教科書でしか見たことのなかった実験を、自らの手で行ったことにより、高校では得ることができなかった深い内容を学ぶことができ、大学で専門的な学問を学習しているという喜びを感じました。

入学当初から万代記念図書館は頻繁に利用してきました。どんなに小さな疑問でも放っておけない性格なので、試験や提出課題とは直接的に結びつかなくても、図書館に籠って長時間にわたり解決するまで調べていました。今思うと、ここで培った探究心と得られた知識は、後の留学でも大いに役立ちました。

「化学×英語力」を兼ね備え、
社会に貢献できる人を目指して選択した交換留学

留学を志したのは大学1年次でした。私は、化学を通じて社会に貢献したいという目標がありました。まず、深い専門知識の獲得のためには、莫大な情報量からITを駆使して、英語で収集・処理する能力が必要です。そして、他国の研究者との情報共有やディベートに必要な英語によるコミュニケーション能力、とりわけ多様な価値観が存在する環境下で他者とコミュニケーションをとる能力を身に付けたいと思いました。そして将来は、「化学の専門知識」と留学で得られる「英語運用能力」を掛け合わせることによって、専門知識と語学力の双方を兼ね備え、社会に貢献できる人になりたい。そのためには、高いレベルの化学の専門教育を行っている大学に留学したい。これらの希望を全て満たすためには、青学が相互交流の協定を締結している大学の中でも、アメリカのフロリダ大学(University of Florida 以下「UF」)が最適であろうと考えました。UFは6,000人以上の留学生を受け入れており、世界各国から様々な価値観を持った学生が集まっています。そのような環境で他者と意見交換し、あらゆる刺激を受けることは、異文化コミュニケーション能力の獲得と国際理解への第一歩に繋がると考えました。また、これまで家族や友人に支えられて快適に過ごしてきた環境から飛び出し、自分を鍛えたい、新たなことに挑戦し体験したいという思いも強かったです。

UFのサインの前で友人と

留学準備は、まず英語力向上に力を入れました。留学先では生活上英語力が必須のうえ、専門科目を履修しますので、日常会話にとどまらず、アカデミックな英語力も必要です。UFでは、最低限の語学能力として、TOEFL iBTが80、IELTSが6.0のスコアが求められていました。もちろん大学の成績(G.P.A)も出願資格に設定されていますから、日常の授業と並行させて英語力向上を目指しました。

英語で深めた専門的な学び、広がった価値観

渡米前に、英語による化学関連の専門用語辞書を買い、英単語をたくさん暗記して備えていたものの、留学当初は授業についていくだけで大変でした。理解できなかった内容をティーチングアシスタント(TA)や先生に質問に行きましたが、化学関連の話題を英語で話すことが初めてだったため、かなり苦労した記憶があります。
UFでの「有機化学実験」は、日本での実験授業とは進め方が異なり、事前説明や規則が一切なく、学生たちがチームとなって、テキストを読みながら自力で進めていくスタイルでした。自由度が高い分、自主性や積極性が求められ、学生同士での共同作業では英語によるコミュニケーションが不可欠で、最初は大きなストレスを感じました。しかし、実験前にテキストを何度も読み込み、頭でシミュレーションする予習を人一倍徹底することによって、授業内での作業効率を上げ、苦境を乗り越えることができました。
また、有機分光法について学ぶ科目「Organic Spectroscopy」では、多種の機器から検出されるスペクトルを分析するノウハウを習得しました。受講生のほとんどが大学院生というレベルの高い授業に必死でついていき、オフィスアワーの度に先生を訪ねて、積極的に質問をしていました。

NASA(Kennedy Space Center)にて

専門外の授業で深く印象に残っているのは、宇宙空間で起こるさまざまな現象や天体の特徴などを学ぶ科目「Discovering the Universe」です。広大なキャンパス内にある丘からフロリダの美しい夜空を望遠鏡で眺め、火星を観察した体験は忘れられません。机上だけの学びではなく、実際に天体を観測した経験にアメリカらしいものを感じ、学習意欲が高まって、火星に関する最新の論文も調べてレポートにまとめました。

どの授業でも履修期間中に数回のテストが実施され、思うような結果が出せないこともありましたが、「次こそは」と毎晩遅くまで勉強し、諦めずに努力する根気強さも身につき、最終的にはかなり成長できたのではないかと思います。UFでは、レベルの高い授業を履修しましたが、それについていくことができたのは、青山学院大学で3年間懸命に専門科目を学んだからだと感じています。成長を実感できたのは例えば、学術的な記述が含まれる本や動画を見て、十分に理解できるようになっていることに気づいた時や、学習中に「なるほど!」と納得し、感動を覚えた内容が記憶として定着していることに気づいた時です。

UFのフットボールの試合観戦

私が暮らしていたUFの国際寮には、さまざまなバックグラウンドを持つ学生たちが世界中から集まっており、まずは文化の違いに悩まされました。例えば就寝後、真夜中に帰宅したルームメイトに度々起こされていたのですが、ある時、思い切って、翌日の授業に支障があるので配慮してほしいと打ち明けてからは、必要なことは言葉にして相手にきちんと伝えられるようになれました。これは、私自身が今回の留学まで海外経験がなく、日本特有の察し合う文化にすっかり慣れていた影響も大きかったのだと思います。
寮生たちとは、アメリカンフットボール観戦に出かけてスタジアムの熱気に圧倒されたり、ケネディ宇宙センターの見学に行き感銘を受けたり、各自が故郷の手料理をふるまったりと数多くの経験を共有しました。多様な仲間たちと過ごした日々は、「自分の当り前」を覆す体験の連続で価値観が広がり、さまざまなことに挑戦する楽しさにも気づいて、知的な刺激にあふれる環境で生活したいと思うようになりました。

自分の探究心の赴くままに学べる青学の環境

留学準備では多くの書類やフォームの記入が必要で、不慣れな手続きに困惑することもありましたが、国際センターの方々が親切にサポートしてくださり、スムーズに進められました。他大学の日本人留学生から、手続きはすべて一人で済ませたと聞いた時には、自分が恵まれた環境にいたのだと改めてありがたく感じたものです。青山学院国際交流奨学金などの給付型奨学金をいただき、経済面でもたいへん助けられました。自分の探究心の赴くままに学ぶことができ、とても良い環境に恵まれたと感じています。

UFで履修した
「Organic/Biochemistry 2」のノート(上)
「Organic Chemistry Lab」のテキスト(下)

交換留学には留学先で履修した授業の単位認定を受けて4年間で卒業できるメリットがあり、多くの学生が活用しています。しかし、私は、UFで学んだ化学の知識・体験に加えて、青学の化学・生命科学科のカリキュラムも4年間しっかり履修したいという考えから、単位認定制度はあえて使わず、卒業を1年間延期するという決断に至りました。これまで多くを学んできた有機化学の他に今後は無機化学も深く学んでいきたいと考えています。また将来的には、グローバルに展開する企業への就職を目指して学びに励んでいます。
変化に対して慎重だった私にとって、留学は極めて重大な決断でした。しかし、いざ最初の一歩を踏み出してみると新しい世界が開け、居心地の良い環境を離れて成長するという、まさに望んでいた目的が果たせました。留学に限らず、行動を起こすべきか迷っている方には、ぜひとも勇気を持って挑戦してほしいと思っています。

木下さんの交換留学スケジュール

  1. 〈1年次〉2019年

    入学後に交換留学を決意し、英語力向上に注力

  2. 〈2年次〉2020年8月

    IELTS受験

  3. 〈2年次〉2020年9月

    出願(第1~第5志望)

  4. 〈2年次〉2020年秋

    1次選考(書類審査)を経て2次選考(面接)

  5. 〈2年次〉2020年11月

    第1志望のUFに交換留学決定

  6. 〈2年次〉2021年

    年初より留学先の諸手続き

  7. 〈3年次〉2021年5月

    奨学金申請(青山学院国際交流奨学金 JASSO(日本学生支援機構))
    コロナ禍で先行きが不透明に

  8. 〈3年次〉2021年6月

    留学許可 ワクチン接種、ビザ取得等

  9. 〈3年次〉2021年8月

    渡米 入寮

  10. 〈3年次〉2021年9月

    授業開始

  11. 〈4年次〉2022年5月

    帰国

理工学部 化学・生命科学科

青山学院大学の理工学部は、数学、物理、化学といったサイエンスと、テクノロジーの基礎から最先端を学ぶ環境を整備しています。国際レベルの研究に取り組む教員のもと、最新設備を駆使した実験、演習、研究活動の場を提供するとともに、独自の英語教育を全7学科統一で実施。未来志向のカリキュラムにより、一人一人の夢と可能性を大きく広げます。
「化学」とは、物質の本質とその可能性を分子レベルから探究する学問です。それを基盤として、生命現象の本質を分子の性質とその相互作用に基づいて理解を深めていくのが「生命科学」。化学・生命科学科では、環境、生命、資源、情報をキーワードに多様な選択科目群を配置しています。有機EL照明をはじめとする工業化学や遺伝子関連のバイオテクノロジーなど、最新分野にアプローチできます。

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国際センター

国際センターは、大学の国際化に関わる教育支援と国際人育成をサポートしていきます。主な業務は、海外協定・認定校を対象とする「学生派遣」と「留学生の受入れ」、短期語学研修などのプログラムやイベント等の企画・運営、および青山学院中・高等部などの設置学校と大学間のグローバル化に関わる一貫教育体制のサポートなどを担います。国々の多様な文化や慣習および学生の異なる価値観を尊重しながら、海外大学と本学との連携をさらに強化・拡充していきます。

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