チーム一丸となってつかんだ箱根駅伝の栄冠。部活に、勉強に、全力で駆け抜けた大学生活
OVERTURE
「第100回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)」で大会新記録を塗り替え、2年ぶり7回目となる総合優勝に輝いた陸上競技部(長距離ブロック)。チーフマネージャーである主務赤坂匠さんと女子マネージャーという立場で共にチームを献身的に支えた渡會留那さんが、クラブ活動を通して得られたものや学部での学び、将来について語り合いました。
それぞれの思いを胸に陸上競技部(長距離ブロック)へ
赤坂:選手として箱根駅伝を走って、優勝することを目標に青学に入学しました。陸上を始めたのは小学4年生のときで、兄が中学校の駅伝大会で活躍している姿を見たことがきっかけでした。当時は水泳も習っていたため、心肺機能の強さが長距離を走ることに生かされて、勝てる楽しさから陸上が好きになりました。
渡會:私は運動が大の苦手。そんな私が駅伝の強豪校である青学の陸上競技部に入部したのは、青学でしかできないことをしたいと思ったからです。また、原晋監督からいろいろなことを学んでみたいと考えたのも大きな理由でした。
赤坂さんは故障で苦しい経験をしたね。
赤坂:私は怪我の影響で、大学での練習量に体が耐えられなくなってしまったのです。思うように走れない中、偉大な先輩方の走りに格の違いを感じましたし、記録を伸ばしていく仲間たちと自分を比較してしまい、陸上をやめることも考えていた2年次の7月に、原監督から引退を打診されました。退部するかマネージャーとしてやっていくかの二択を前に悩んだ末、退部の意思を伝えました。そこから気持ちが変わったのは、私の思いを知った先輩や同期たちが「やめるなよ」と声を掛け続けてくれたからです。「この人たちを裏切ることはできない」。そう思い、マネージャーになる決断をしました。
渡會:部員全員が、チームの勝利を叶えるために、互いの意見を伝え合い、チーム全体を良くしていこうとしています。私は大学に入るまでスポーツも部活も無縁だったこともあり、チーム一丸となって、勝利という同じ目標にこだわって向かっていく部員の姿と熱い思いにとても胸を打たれました。
赤坂:大学最後の年に主務を務め、記念すべき第100回箱根駅伝で優勝できたことは誇りです。今年の大会で印象に残っているのは、エントリーから外れた選手たちが給水や沿道の応援などに主体的に取り組んでいた姿です。「絶対に勝つんだ」という気持ちの高まりを全員が共有し、それぞれの立場で力を発揮したことが最高の結果につながったのだと思います。たくさん葛藤もあった4年間でしたが、「報われた」と思いました。
渡會:マネージャーチームの中で、私たち4年生が大事にしていたのは、下級生の意見を取り入れ、チーム一体となって選手を支えること。練習中は厳しく言うべきところは言うけれど、時間があれば後輩と食事に行って楽しくおしゃべりするなどメリハリをつけていました。お互いを思い遣って、チームのメンバーが良い関係を築いていれば、「このチームのために何かしたい」と自発的な行動が生まれ、勝利に近づくのではないかと思ったからです。
全うした自分の役割とそこから得た成長
赤坂:主務の仕事は練習メニューの作成やメディア取材関係の対応、マネージャーの統括、そして監督と選手の橋渡しなど多岐にわたります。練習も取材対応も最終的な判断をするのは監督なので、原監督と毎日コミュニケーションを取りながら業務を行っていました。
渡會さんはSNSの運営を担当して、Instagramのフォロワー数獲得に尽力したよね。
渡會:私が入部した当時、陸上競技部の公式Instagramが頻繁に更新されていなかったので、より多くの方にチームを応援していただけるように、Instagramを活用したいと思いました。また、コロナ禍で選手がファンの方に直接応援してもらえる機会が少なくなっていたため、 SNSでファンの方と交流できる場を作ることで、選手のモチベーション向上にもつながるのではないかと考えました。そこで意識していたたことは、見ていただくファンの方々の目線です。ファンは選手の素の部分が見てみたいはずだと考え、選手同士で話しているところを撮影するなどして、ありのままに近い部分が伝わるコンテンツを増やしました。さらに、コンテンツのクオリティーを上げることやコンスタントに投稿し続けることも意識しました。一眼レフカメラを購入し、画質にもこだわることができたため、ファンの方からのコメントや「いいね」をいただくことも増えました。
SNSの取り組みを始めた当初は、初めての試みだったので課題も山積みで、悩むことも多かったですが、原監督に「正しいことを続けていたら結果はついてくる」という言葉をいただき、諦めずに挑戦を続けました。結果として、選手やマネージャーの皆が協力してくれたおかげで、Instagramのフォロワー数を2万人から6万人まで増やすことに成功しました。このことを通じて、自分が正しいと思うことをやり続けることの大切さを学びました。
赤坂さんはどんなことを心がけていた?
赤坂:監督や選手ととにかくコミュニケーションをとること。選手が監督に本音を言うのはときに難しいものです。例えば足が痛いとしても、大会への選考に関わると考えるとなかなか言えないこともあります。そうした選手の気持ちを汲み取りながら、状況をすべて把握していただけるよう監督にうまく伝えることに気を配っていました。
渡會:私は陸上の経験がなかったので、その中でも自分にできることを常に探し自発的に取り組むようにしていました。Instagramもそうだし、張り詰めている選手の気持ちを少しでもゆるめる役割ができればと、選手といつも明るく楽しく接することを心がけていました。
赤坂:原監督と話すと、いつも「どう思う?」と意見を聞かれます。そのため監督に何か伝える前にまずは自分で考えることが習慣になり、陸上以外でも常に自分の考えを持つという姿勢が身に付いたと思います。また、世の中で当たり前のように行われてきたことが果たして本当に正しいかよく考えてみることの重要性も、原監督のそばにいて教えていただいたことのひとつです。
渡會:「箱根を走る」「トップに立つ」などの目標を有言実行した選手たちに教えられたのは、思いや夢を口に出していくことの必要性です。言ったからには努力をするし、周りも手助けしたくなる。叶えたい夢や希望は言葉にして叶えていくことが大事だと強く感じました。
部活と勉学の両立に奮闘し、学部での学びも充実
赤坂:留学経験がある兄の影響や、子どもの頃に交換留学生を家に迎えた経験などから英語をしっかり勉強したいと思っていたこと、また、高校は文系でしたが将来は得意な数学も生かしたいと思っていたことが、社会情報学部を選んだ理由です。
中学生の頃から文武両道を基本に陸上に取り組んできましたが、勉学ができる時間はどうしても限られるため、授業では前から1、2番目の席に座り、集中して先生の話を聞くことで授業時間内での知識の定着を深めました。前に座っていると先生に顔と名前を覚えていただけるメリットもありますし、よく質問が飛んでくるので授業中にアウトプットの機会もできていた感覚です。
渡會さんはなぜ地球社会共生学部を志望したの?
渡會:留学に行けるカリキュラムがあること、現在ゼミナール(ゼミ)でも指導いただいている松永 エリック・匡史先生の模擬授業をオープンキャンパスで受け、学者然としていないフレンドリーなお人柄に惹かれたこと、学部の先生方との距離も近く信頼関係を築けるフラットでオープンな学習環境があること、さまざまな分野で実務経験を積まれてきた先生方のもとで視野を広げられることなど、魅力を感じる点が数多くあったからです。
地球社会共生学部の授業では、ディスカッションやプレゼンテーション(プレゼン)を行うことが頻繁にあり、その分資料作成などの課題が多く出ます。授業の課題だけではなく、部活の日々の仕事もたくさんあるので、思い立ったらどこでもすぐに作業するなど、時間を有効活用していました。
赤坂:印象に残っているのはプログラミングの演習です。「情報科学総合演習A」は、3年次から所属しているゼミの宮治裕先生がご担当で、アプリを開発し、最終的に企業の方にプレゼンを行うという実践的な授業で、貴重な経験ができました。私が作ったのは、練習メニューの報告アプリです。授業では宮治ゼミの先輩方がアシスタントを担当され、エラーが起きると助けてくださいました。当時の自分には理解できなかった問題を解決できる先輩たちを「かっこ良い」と思い、その姿に憧れてエンジニアを目指すようになりました。「情報科学総合演習B」ではセンサーやモーターなどを使ってIoT(Internet
of Things)に取り組み、アイデアが浮かんだらとにかくそれを形にしてみることの楽しさを知りました。
ゼミの卒業研究では、陸上競技において、手動でのタイム計測に限界を感じたことを契機に、走者が体に付けたチップをセンサーで読み取り、全自動でタイム計測ができるシステムを構築しました。開発の作業時間が夏合宿期間中しかなかったため、休憩時間に必死でパソコンに向かい、なんとか仕上げることができました。
渡會:ぜんぜん知らなかった!苦労を周りに感じさせずに、人一倍努力しているのが赤坂さんのすごいところだと思います。
私は幅広い分野にわたって多くの学びが得られました。ゼミではエリック先生が執行役員を務められていたデロイト トーマツ グループが展開するプログラム「Women in Tech」と提携し、テクノロジーの世界で活躍する女子学生を増やすための事業構想策定に取り組みました。施策を立て、コストや利益を試算し、発表では出資の依頼までを行い、思考力やプレゼン力が養われる貴重な経験となりました。「ジャーナリズム取材演習」では毎回新聞記事を書く課題があり、元新聞記者である福原直樹先生が厳しくも楽しく熱心に指導してくださるおかげで文章力が向上しました。ここで身に付けた文章力は陸上競技部の公式Instagramでのコメント作成にも役立ったのではないかと思います。また、ぜひ青学生に受講をお薦めするのが、教育格差について学んだ辰巳哲子先生の「教育の社会学」です。この授業を受け、現在、大学に通い勉強できていることがいかに恵まれた環境にいるかということを改めて感じました。よく「大学生活は人生の夏休み」と言われることもありますが、学ぶときと遊ぶときのメリハリをつけ、4年間しかない学生生活を有意義に過ごさなければいけないと思い、「青学でやりたいこと、できることを全部やろう!」と何事にもより積極的に取り組むようになりました。
卒業後の進路と目指す未来は
赤坂:卒業後はWED株式会社というベンチャー企業でソフトウェアエンジニアとして働きます。事業や組織が安定している大企業よりも、社員全員の顔と名前がわかる規模感で、少数精鋭の組織の一員として会社の成長に貢献できる方が、やりがいとともに、ワクワクしながら楽しく仕事ができそうだと思ったんです。会社として発展途上の段階だからこそ、個人の裁量が大きくかつ求められる基準も高いので、ビジネスマンとしてより大きく成長できる機会があると考えました。インターンシップでWED株式会社の社員の方々がいつも楽しそうに働いていた姿も入社を決めた理由の一つです。
渡會:私は「より多くの人を幸せにする仕事がしたい」ということを就職活動の軸にしていました。就職するオイシックス・ラ・大地株式会社は、元々食べることが大好きというのもありますし、社長が食の社会課題の解決に情熱を持っていらっしゃることに惹かれました。
赤坂:将来はリモートで仕事をしながら海外で生活するという目標があります。理想のワークスタイルを実現するためにも、まずはエンジニアとしての実力をつけることが第一だと思っています。これまで陸上競技部から技術系に就職した人がおらず、就職活動は手探りでしたし、研究も主務の仕事も自分自身で考え前に進めてきました。こうした中で身に付いた自走力を誰にも負けない武器として、がんばっていきたいと思います。
渡會:高校生のときに東日本大震災復興のボランティア活動をするなど、自分一人の力では限界がありますが、人と力を合わせることで、世の中のために役に立つ活動ができればと行動してきました。今年の元日には、能登半島地震が発生し、そのような状況で箱根駅伝を開催していいのだろうかと複雑な気持ちもありました。しかし、レースが始まると、SNSなどを通じて、「青学の走りに元気をもらった」や「希望をありがとう」といったコメントをたくさんいただき、多くの方々に勇気や感動を与えられることを改めて感じることができました。
青学のスクール・モットーである「地の塩、世の光」たるものであるべく、今後も世の中のために尽力していきたいと思います。
※各科目のリンク先「講義内容詳細」は掲載年度(2023年度)のものです。
社会情報学部
現実の社会には文系・理系の境界はなく、高度情報化社会と呼ばれる現代では、文系・理系の双方に精通していることがアドバンテージとなります。さまざまな社会的課題を解決するため社会情報学部においても“文理融合”の学びを追究しています。文系の「社会科学」「人間科学」と、理系の「情報科学」の各専門領域をつなぎ、各分野の“知”を“融合知”に高めるカリキュラムを整備。新たな価値を創造し、社会へ飛び立てる力を育みます。
文理の垣根をなくした「文理融合」をコンセプトに、社会・情報・人間の複数分野にまたがる学際的な学びを展開。学問領域をつなぐことで生まれる新たな価値観で、一人一人の可能性を広げ、実社会における複雑な問題の解決に貢献できる人材を育てます。
地球社会共生学部
地球社会共生学部(School of Global Studies and Collaboration/GSC)では、世界の人々と共に生き、共に価値を見出し、よりよい社会を共同で創造していくための専門知と実行力を備えた人材育成を目指します。タイとマレーシアなどのアジア諸国への留学をカリキュラムの柱におき、効果的な留学のための集中的な英語教育などとともに、激動する世界を視野に「地球社会」の多様性に触れ、異文化理解を深める幅広い学びを展開。世界の人々との「共生」をキーワードに、コラボレーション領域、経済・ビジネス領域、メディア/空間情報領域、ソシオロジー領域の専門4領域を中心に、Global
Issuesを共に解決し協働できる「共生マインド」を養います。
地球社会共生学科は、国境を超えた「地球社会」を教育研究対象としています。多角的な視点と異文化への共感力、語学力に裏打ちされたコミュニケーション能力をもって、さまざまなグローバル課題の解決策や持続的な社会を創造する方法を探究します。