「国語科」×「図書館」教育の面白さを知った自由な学び。思考力を育てる教員を目指す

掲載日 2023/7/27
No.251
<2021年度学業成績優秀者表彰 奨励賞受賞、2022年度学業成績優秀者表彰 最優秀賞受賞>
教育人間科学部 教育学科 4年
樋口 海翔
神奈川県立鶴見高等学校出身

OVERTURE

教育学科での学びを進めるうちに、国語という教科の、文章を読み解くだけではない面白さを知り、目標を定めることができた樋口さん。地方に赴いての課外活動では、図書館の果たす役割を発見し、司書・司書教諭も目指すなど、興味の幅が広がりました。教育実習を終えた直後、国語科の教員を目指すきっかけや理想の教師像など、青山学院大学での学びについて語っていただきました。

1年次から丁寧な指導を受けた経験が、文章表現力と批判的思考力の基盤に

「教育は国家百年の計」という言葉が示す通り、国や人の将来にも影響する教育は、誰もが生涯にわたって行われる普遍的なものです。そのような教育を多面的に捉えて学びたいと、教育人間科学部教育学科に進学しました。自分の興味に応じて、学校教育に限らない広い視野で教育について専門的に学べるので、私は「教育情報・メディアコース」を選び、社会全体での教育の役割を含めて広範囲に学んでいます。

1年次のうちから、授業でのレポート提出や意見発表の機会が多くあるので、文章表現力や批判的思考力が養われます。どの先生もコメントを丁寧に返してくださるので、自分の文章や意見を客観的に見直す機会が多く、成長につながっているのだと思います。この土台があって3年次以降の専門科目でも有意義な学びが可能となり、毎日の授業で自然と力が付く恵まれた環境にいると感じます。

青山スタンダード」科目は、学びの視野を広げることができます。「キリスト教概論Ⅱ」は、キリスト教について理解するだけでなく、批判的な考え方や論理的思考力、様々な倫理観を身に付けることができる授業として深く印象に残っています。宗教に対し「何となく怖い」というイメージを履修以前はもっていましたが、宗教を学問的に捉えた経験によって「怖い」の前に「無関心」であった自分に気付かされました。人類が人知を越えたものにどう対峙してきたのか、なぜ宗教を必要としてきたのか知ることができました。この気付きは今後、教員となった後にも役立つと考えています。

文章を読み解くだけでない面白さを知り、高校の国語科の教員を目指す

教員になりたいという目的をもって青学に入学しましたが、幼稚園から高校までのどの学校にするのか、教科は何にするのか、明確には決まっていませんでした。高校の国語科の教員を目指そうと決めたのは、2年次に受講した「国文学A」がきっかけです。この授業では、文学の分析を通して文化が成立した背景や人々の思想を批評的にたどり、履修者が自由に意見を述べます。自明のものと思われがちな「ジェンダー」や「平和」などを、言葉の意味から確認し、通常「善」とされるものが本当にそうなのか、そもそも「善」とは何かなど、自分以外の学生がもつ多様な価値観に毎回揺さぶられる授業でした。国語という科目の、文章を読み解くだけではない面白さを知って目標を定めることができました。自分の無知に気付かされ、生涯、学習を続けていく大切さを教えてもらえたのもこの授業です。

現在は、「国文学B」で出会った大岡昇平の戦争文学作品を、加害者の視点から捉えるというテーマを卒業研究に選び、長谷川祥子先生のゼミナール(ゼミ)で研究を進めています。この題材を研究テーマに選んだ理由は、戦争に限らず歴史や物事に「被害者」と「加害者」の立場がある場合、加害者の視点で語られることが少ないことを疑問に感じていたからです。特に戦争は被害者側に重きを置くため、加害者側の視点から読み進めることで、文学作品にどのような影響をもたらしているのか研究しています。被害者と加害者は、絶対的ではなく、立場や視点を変えれば逆転する場合もあります。このような考え方は、いじめの問題にも同じことがいえます。国語科教育の中で加害者の視点を取り入れることは、「自分が加害者となり得ること」を考える上で重要なことではないかと思います。

ゼミでの模擬授業の様子

長谷川ゼミは国語科教員志望の学生が多いですが、それ以外の教科の教員や民間企業への就職を目指す人もいるため、小学校の道徳教材や別教科の教材なども扱います。ゼミでの発表は、共通の教材や作品からテーマを決めて考察するので、仲間や先生から多様な観点での意見に触れることになり、自分の考えを客観視することができます。他者からの意見の中には厳しい指摘もありますが、それは自分が成長できる機会と捉えています。指摘や意見を積極的に聞き、自分の意見を洗練させていく経験を重ねていくうちに論理的文章表現力が身に付き、日本語の奥深さも学べるので、考察力が深まるのを実感しています。

図書館の教育効果に関心を持ち、司書・司書教諭資格取得も

教育を幅広い視点から捉えるということでは、2年次に樋田大二郎先生が行っているアントレプレナーシップ教育に関するプログラム参加して、島根県の高校を訪問し、生徒と連携して地域の課題を解決する活動を行ったことをきっかけに、図書館を活用した教育効果について興味をもつようになりました。現在、司書・司書教諭の資格取得に必要な科目を履修しています。「図書館情報学概論」や「図書館システムサービス論」では、教育施設である図書館が、どのように日常生活と関わり、公共施設として課題に向き合っているのかを学びます。図書館は本の貸し出し以外にも、スマートフォンを使っての情報検索のアドバイス、場合によっては悩みを相談できるなど多様な役割があり、人と情報をつなぎ、「居場所」を提供できる施設なのだとわかりました。教育施設にはいろいろな形態があり、図書館はその一つです。学校教育以外の場所を必要に応じて紹介できることは教員にとって大切だと思います。

また、学校教育の現状を知るために役立つと思い、本学シビックエンゲージメントセンター主催の中学校の放課後ボランティア「広尾中学校アフタースクール」(渋谷区)で活動しています。初めはあまり話せなかった生徒も、だんだん打ち解けて話が弾んでくると、明るく笑ってくれるようになりました。学校は、他の人とおしゃべりし、気楽に楽しくいられる場所だと感じてくれたことが笑顔から伝わってきて嬉しくなります。大学以外の現場での学びや気づきを通して、大学内外の学びが相互に作用し相乗効果を上げていることを強く感じます。

ゼミの友人から誕生日に青学フラッグのプレゼント

将来は、生徒の考えを拾い上げ一緒に深められる教員に

現在は、卒業論文の執筆とともに、神奈川県の高等学校の国語科の教員を目指して、採用試験の勉強にも力を入れています。青学には、教職課程指導室主催の「教員採用試験対策講座」、「白亜の会(青山学院大学卒業生教職員校友会)」など、授業以外でも手厚いサポートがあり、面接や小論文の実践的な指導を受けています。
先日は母校で教育実習を行いました。先生方の連携の様子を目の当たりにし、授業面・学級運営面の双方に対して指導教員の先生からご指導いただいた経験は、とても勉強になりました。水泳部の活動にも参加し、生徒と一緒に泳げたことはとても楽しい思い出です。

国語科教育は文化・学問の基盤になり、人間関係をつくるコミュニケーションの基盤にもなるもの、と青学での学修を通して考えるようになりました。将来は、国語科授業を通じて、生徒の批判的・論理的思考力を養い、その能力を他教科にも応用できるような指導がしたいと考えています。生徒の考えを拾い上げ、その考えを一緒に深めていけるような教員を目指して努力を続けるつもりです。教員は児童や生徒の在校時の指導のみならず、未来図を描く際のサポートを行う立場なので、一人一人に真摯に向き合う必要があります。そして、学校現場で経験を積んだ後、得られた課題をもとに、大学院で研究を深め、今後は学んだことを少しでも社会に還元していきたいと思っています。

※各科目のリンク先「講義内容詳細」は掲載年度(2023年度)のものです。

教育人間科学部 教育学科

青山学院大学の教育人間科学部は、教育学科・心理学科を連携させながら、「人間」をさまざまな角度から学ぶ多彩な講義や、理論を実践する演習や実習を展開しています。理論的かつ実践的なアプローチの反復によって、人間についてより深く追究。現代社会や人間の諸問題を読み解く高度な専門性と、自ら行動するための課題解決能力・自己教育力を育成します。教育とは、年代や環境を問わず生涯にわたって行われる普遍的なものです。教育学科では、乳幼児期から老年期に至るライフサイクルの中で、人間がどのように発達・学習・社会化・成熟していくのかを学修し、3年次に選択する専門分野の学びを通して、教育の本質と理想の姿、教育の担い手である人間という存在について理解を深めます。幼稚園から高等学校まで幅広い教員免許状の取得が可能です。

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