ソーシャルメディアの可能性を見出し、経営者の道へ。
未来を見据え、起業家育成に力を注ぐ

掲載日 2023/4/27
No.233
株式会社サイバー・バズ 代表取締役社長
※東証マザーズ市場(現:東証グロース市場)上場
経営学部 経営学科卒業
髙村 彰典

OVERTURE

大学時代から経営やビジネスに関心を持っていた髙村さん。卒業後はSNSマーケティングを手がける株式会社サイバー・バズの代表取締役として、会社の成長を牽引してきました。自社の発展のみならず、次世代の起業家の育成にも力を入れており、青山学院大学ではOBとして「経営学部ワークショップ」に全面協力。ご自身の経営最前線での実体験を、母校の後輩たちに向けて惜しみなく伝えながら、実践的なご指導をくださっています。100年先の未来を見据えて、各種の取り組みに尽力しています。

会社の創業期を経験し、経営の面白さに夢中に

実家が自営業だった影響から、最先端の情報が集まる東京でビジネスや経営について学びたいと思い、青山学院大学経営学部の門を叩きました。入学後は、学業とアルバイトの両立に努める毎日。大学で経営学と向き合いながら、アルバイトを通して実際のビジネスに触れる。社会の仕組みを多角的に学べた4年間は、かけがえのない財産です。学生の学習意欲や挑戦心を尊重する青山学院大学だったからこそ実現できた大学生活だったと感じます。

大学を卒業し商社で経験を積んだ後、創業間もない株式会社サイバーエージェントに転職しました。同社を立ち上げた藤田晋氏は青山学院大学の先輩で、彼の「若い力とインターネットで日本を変える」という言葉に感銘を受けたのが大きな理由です。私は学生時代から能動的に行動を起こしてきたので、「自分にしかできないことを成し遂げたい」という思いがありました。当時、社員が5人ほどのサイバーエージェントで、自分の力で会社を成長させようと奮い立ったのを覚えています。注力したのはインターネット広告事業の立ち上げです。事業展開の方法や組織マネジメントなど、大学で深めた経営学の理論を実践に移す格好の機会になりました。そこから気が付けば、経営の面白さと奥深さに夢中になっていました。

転機となったのは、スマートフォンの普及で個人による情報発信がより影響力を持ち始めた2007年頃です。当時のサイバーエージェントでは、ブログを用いたマーケティングを専門とするサイバー・バズを子会社として運営しており、インフルエンサーが台頭する状況を目の当たりにしました。「これからはSNSを活用したプロモーションが主流になる」と確信し、自分がその事業を拡大・発展させるのだという強い意志のもと、自ら手を挙げて2010年に代表取締役に就任しました。現在に至るまで、InstagramやTikTok、Twitter、YouTubeなどをプラットフォームに、インフルエンサーを主軸としたソーシャルメディアマーケティング事業を中核とした事業を展開してきました。売り上げを伸ばすために苦悩した日々もありましたが、試行錯誤を重ね、2019年に目標としていた上場(東京証券取引所マザーズ市場(現:グロース市場))を果たすことができました。

ベンチャー企業経営当初の失敗談に苦労話、「リアル」からしか学べないこと

日々の仕事の中で忘れないようにしているのは、困難の中にチャンスが眠っているということです。何か新しい事業を構想する際も、障壁の高さに怯むのではなく、誰もやっていないからこそ攻めの気持ちで取り組むことによって、新たな価値を創出できるというマインドで挑んでいます。

経営者として経験を積み重ねていくうちに、「変化を恐れずに挑戦できる人材が世の中にもっと増えてほしい」と強く思うようになりました。青山学院出身の経済人が集う「青山経済人会」での交流を通じて、社会の第一線で活躍される諸先輩方も同様の思いを抱いていることを知り、「イノベーションを生み出すことができる人材育成のために、自分が寄与・貢献できることがあるはずだ」と、かねてからの考えを行動に移す決心をしました。自分自身のリアルな経験を現役の経営学部生に伝えることによって、起業やベンチャー企業経営に興味を持つ学生を少しでも後押しできたらと考え、経営学部の課外授業として約2か月で全6回の講義を行う「経営学部ビジネスワークショップ」を企画。大学に提案し、自らも講師を務めました。

大学の授業で体系的な経営理論の知識は身に付きますが、実際の経験からしか学べない点があるのも事実です。企業経営当初の失敗談や苦労した点など、リアルな情報を交えながら、企業経営の醍醐味を伝えました。通常の座学とは一味違う、私にしか語ることのできない濃密な情報を提供できた手応えを感じています。講義には予想以上に多くの学生が集まり、私にとっても彼らの情熱や意欲的な姿勢に触れる貴重な機会となりました。また、働き方が多様化し、幅広い情報にアクセスしやすい現代だからこそ、若年層のベンチャー志向が高まっていると知れたことも大きな収穫です。本ワークショップが、彼らの夢の実現や目標達成の一助になればうれしいですね。

経営学部の課外授業「経営学部ビジネスワークショップ」で講師を務める

すべての取り組みの根底にある「グッド・アンセスター」

未来の子孫にとって「よき祖先」となるために、私たちは今、どう行動すべきか。短期思考から長期思考への転換の必要性を説く「グッド・アンセスター」という考え方がありますが、これは私が人生の中で大切にしている概念です。自社の発展や利益だけを追求するのではなく、広く社会のために何ができるのかを真摯に考える。若手起業家の育成もその一環です。前述のワークショップのように、自ら起こしたアクションを通して、将来より良い世の中を創る人材が一人でも多く生まれてほしいと願っています。

企業経営において、一人の力だけで目標を達成することはできません。リーダーとして目指すビジョン・社会を描きながら、その共感者を生み出していくプロセスが一番の醍醐味だと感じます。そのために「グッド・アンセスター」という概念のもと、社会や環境のために何ができるのかを模索する毎日です。100年、200年先の未来を見据えながら、より豊かな世界の実現に貢献できるように今後も全力を尽くします。

卒業した学部

経営学部 経営学科

経営学部は「マネジメント」(経営管理)を中心に学ぶ学部です。青山学院大学の経営学部では、優れた研究者が教員として揃う質の高い教育環境のもと、企業や組織、ひいては個人をマネジメントするために必要な経営学の知識を、体系的に身に付けられるカリキュラムを用意しています。デジタル化時代に応えるべくデータ分析にも力を入れており、その学びを通して論理的思考力を養います。
半世紀の歴史を刻む経営学科では、企業や組織におけるマネジメントに普遍的に求められる先端理論と実践技術を身に付けます。経営・会計・マーケティングの基礎的学習を踏まえ、多様な専門科目を履修することで、より深くマネジメントを学ぶことが可能になります。企業の社会的責任や企業倫理の重要性を理解するとともに、演習などで主体的な学習を重ね、研究成果をまとめる技術も手にします。

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