オリジナルの分子を使って
新たな核酸の検出手法を
開発

掲載日 2022/4/26
No.146
<2021年度 学生表彰受賞>
理工学研究科 理工学専攻 生命科学コース
博士後期課程2年
蒔苗 宏紀
東京都立南平高等学校出身

OVERTURE

青山学院大学理工学部・大学院理工学研究科では、充実した研究環境や支援制度を整えており、それらを利用して、在学中から学生が優れた研究成果を発表しています。大学院博士後期課程でラマン散乱光測定による細胞内核酸検出の研究に取り組む蒔苗さんは、昨年、核酸化学の国際会議「The 48th International Symposium on Nucleic Acids Chemistry (ISNAC2021)」で優秀な学生発表者に贈られる「ISNAC Outstanding Poster Award in 2021」に輝き、本学の2021年度学生表彰を受賞しました。

陸上競技がきっかけで研究の道へ

私が所属する田邉一仁先生の生体分析化学研究室は、化学と生物の境界領域にあたるケミカルバイオロジーの分野を専門に研究しています。化学や生物の分野に興味を持ったのは、高校時代、陸上部で400mの選手として練習に打ち込んでいた頃です。走っている時に自分の筋肉で何が起きているのかを自主的に勉強したのですが、それをきっかけに筋収縮に関わるATPやクレアチニン、さらに生体内で働くさまざまな化学物質への興味が高まり、大学では化学・生命科学科に進むことに決めました。
研究室では、特定の性能を持つオリジナルの分子を合成し、できた分子を分光学的手法で評価した後、生体投与して実際に機能するかを評価するという流れで研究を進めていきます。私は学部の4年次から一貫して、ラマン散乱光測定を活用した生体分子の検出に関する研究に取り組んできました。ラマン散乱光測定とは、物質に光を照射した時に生じるラマン散乱光の波長によって物質の評価を行う方法です。研究室に入りたての頃は、先生に提示されたテーマに基づいて実験していましたが、経験や知識を重ねて徐々に自分のアイデアを盛り込めるようになると、研究がぐんと面白くなりました。博士前期課程2年次に、先生の想定とは違う分子を自分のアイデアで設計し、研究成果を論文として発表することができました。その成功体験がモチベーションになり、あの喜びをまた味わいたいという思いで博士後期課程での研究を続けています。

国際会議の研究発表で名誉ある賞を受賞

昨年11月、「The 48th International Symposium on Nucleic Acids Chemistry (ISNAC2021)第48回国際核酸化学シンポジウム/日本核酸化学会第5回年会」でポスター発表を行い、ISNAC Outstanding Poster Award in 2021を受賞しました。117人の学生発表者のうち、受賞は5名。まさか自分が、と驚きましたがとてもうれしかったです。
発表はすべて英語で行うのですが、私の英語力は決して高くはありません。どんな質問をされるかを想定して英訳し、単語や表現をひたすら暗記して準備しました。大学院の科学技術英語の授業で、相手の目を見て堂々と話す力はかなり鍛えられていたので、つたない英語でも自信を持って質問者と心地よく議論できたことが評価に繋がったのかもしれません。

発表した研究は、DNAに結合するオリジナルのヘキスト(Hoechst)分子を使い、細胞内にある複数種類の核酸をラマン散乱光測定で検出する手法を開発したというものです。この手法では、ラマン散乱光を検出しやすいアセチレン構造をヘキスト分子に導入した「エース・ヘキスト」という分子を用いています。この分子は、私が学部の4年次に別の研究で合成したものなのですが、実はその時の研究ではまったく良い結果を出してくれませんでした。今の研究を始めた時、ふと「あの分子が使えるのではないかな?」と思いつき、やってみたところ大正解。少年野球でレギュラーになれなかった子が、サッカーをやってみたら急に才能が開花したような感じでしょうか。学部時代からひたむきに研究を続け、知識や経験が増えた今だからこそ、「エース・ヘキスト」の性能を生かせる研究にたどり着けたような気がしています。

研究室の「サーバント・リーダー」として

これまで青学で学んだ7年間で、自分が成長したと感じる点が2つあります。1つは、論理的思考力です。研究で扱う全ての分子は自然法則にのみ従っていますから、その性能やシステムを論理的に考えられなければ、研究は間違いなく失敗します。研究室に入った当初は、十分論理的に考えたつもりで発表しても、指導教員の田邉先生や先輩方にすぐに論理の穴を指摘され、悔しい思いをしました。それを何度も何度も繰り返す中で、次第に論理を積み上げる力が鍛えられたと感じています。
もう1つは、人より一歩先まで努力する力が付いたという点です。研究室で朝から晩まで活動し、週末もほぼ研究室で過ごしています。もちろん、研究とは、費やした時間や労力が必ず報われるというものではありません。しかし、研究に向き合う中で、論理的思考力を鍛え、努力を続けていけば、報われる確率は格段に上がると信じて、やりがいのある研究に挑戦しています。

また、大学院に進んだ頃から、自分の時間を自分のためだけに費やすより、人のために尽くすことの方が有意義だと考えるようになり、時間を惜しまずに後輩のサポートをするよう努めています。悩みは人を成長させるもの。後輩の悩みに一緒に向き合うことは、相手が前に進む力になれるだけでなく、自分一人では得られない成長のチャンスにもなるはずです。後輩たちの身近な「お助け隊」になってみんなを支え、リーダーシップを発揮する。私が大事だと思って続けてきたそんな行動が、青学が目指す人物像「サーバント・リーダー」に近いのではと気づきました。自分の考えが間違いではなかったと思えて、うれしかったです。

田邉先生と研究室にて

3つの支援制度に助けられて研究に没頭

博士後期課程では、3年間授業料が免除される「青山学院大学若手研究者育成奨学金」、研究費が支援される「アーリーイーグル研究支援制度」、学生が研究に専念できる環境整備、挑戦的・融合的な研究支援、またさまざまなキャリアで活躍できる支援が受けられる「AGUフューチャーイーグルプロジェクト」の3つのサポートを受けています。一般的に大学院博士課程の学生は経済的な問題を抱えてしまうことが多く、私が研究に集中できるのは青学の充実した支援体制があるからこそ。本当に助けられています。
また、理工学部には機器分析センターがあり、機器の使い方をアドバイスしてくださる専属の職員もいらっしゃるので、研究環境の面でも充実していると思います。また余談ですが、ここ1年ほど、学内のフィットネスセンターで筋トレを続け、研究に集中できる体力を付けています。気軽にトレーニングができる環境も、私にとっては研究へのサポートの1つといえるかもしれません。

今後は、賞をいただいた研究をさらに進め、より優れた成果を出していきたいと考えています。また、これまでは分子を検出する研究を続けてきたのですが、最近は疾患の治療につながる核酸医薬の研究にも興味を持っています。ヘキスト分子は核酸医薬の研究との親和性も高いと考えているので、これまでの研究と組み合わせて新しい研究に取り組んでみたいです。青学での研究で培われた論理的思考力、心身ともにタフであることは、研究者としてだけでなく、どのような社会的役割においても強みになるものだと考えています。これからも、研究室で後輩たちを支えてきたように、どんなに忙しくても周りに頼りにされる存在でいたいと思います。相手のためにできる限り力を尽くし、皆を支える存在でありたいです。

理工学部 化学・生命科学科

青山学院大学の理工学部は、数学、物理、化学といったサイエンスと、テクノロジーの基礎から最先端を学ぶ環境を整備しています。国際レベルの研究に取り組む教員のもと、最新設備を駆使した実験、演習、研究活動の場を提供するとともに、独自の英語教育を全7学科統一で実施。未来志向のカリキュラムにより、一人一人の夢と可能性を大きく広げます。
化学・生命科学科では、有機化学、無機化学、分析化学、物理科学、生命科学の5分野について学びを深めます。先端の研究設備を用いて行う実験・実習や多彩な講義を通じて、研究者や技術者に必要な専門的知識・技術・手法を習得します。有機EL照明をはじめとする工業化学や新しい遺伝子関連のバイオテクノロジーなど、最新分野にアプローチできます。

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