仲間と過ごした時間が生み出す 新しい音の重なり

掲載日 2019/12/20
No.14
青山学院管弦楽団
文学部 比較芸術学科 3年
鈴木 愛弥
メイン写真

OVERVIEW

大学での学びは、授業だけに留まりません。
部活動やサークル活動、ボランティアなどの課外活動で自己研鑽を積み、
社会に出て羽ばたくための翼となる知見を得た学生を紹介します。

青山学院大学文化連合会オーケストラ部と、
青山学院女子短期大学オーケストラ部が合同で活動している青山学院管弦楽団。
他大生も含めて130名を超える団員が所属しています。
活動のメインは年2回(春・秋)の定期演奏会。
そこで披露する3曲のために、半年もの準備期間を費やします。
大勢の仲間と時間をかけて作品を創り上げる経験とはどのようなものなのか。
団長、コンサートミストレス、ステージマネージャー、次期団長の4名が語り合いました。
(インタビューは2019年10月30日に実施)

TALK MEMBERS
顔写真
  • 団長
  • 担当:Percussion(パーカッション)
  • 文学部 比較芸術学科3年
  • 鈴木 愛弥さん
顔写真
  • コンサートミストレス
  • 担当:Violin(バイオリン)
  • 青山学院女子短期大学
    子ども学科3年
  • 鈴木 麻結実さん
顔写真
  • ステージマネージャー
  • 担当:Cello(チェロ)
  • 文学部 比較芸術学科3年
  • 松本 汐梨さん
顔写真
  • 次期団長
  • 担当:Fagotto(ファゴット)
  • 文学部 比較芸術学科2年
  • 山崎 圭資さん

プロの指導に加えて、
皆で教え合って
音楽を深める

―青山学院管弦楽団の活動内容を教えてください。

鈴木(愛):通常は青山キャンパスで週3日練習を行っています。メインの活動は、基本的に5月と11月の年2回行われる定期演奏会です。この春・秋の演奏会を目指して、およそ半年間準備をします。

鈴木(麻):他に、OB・OGの団体などからご依頼を頂いて演奏することがあったり、6月に団内でアンサンブル大会を行ったり、12月のメサイア公演などもあって、活動の幅は広いですが、なんといっても気合が入るのは定期演奏会です。ご依頼に応じて演奏させていただくときも、定期演奏会で披露した曲をそのまま使うこともあります。

松本:そう、やはり定期演奏会が大きな活動目標ですよね。いつも素晴らしいホールを使わせていただき、お客様もたくさん入ってくださるので、「失敗できない!」というプレッシャーもすごいです。
ちなみに、今年の春公演は2019年6月1日(土)に池袋の東京芸術劇場(東京都豊島区)のコンサートホールで演奏しましたし、秋は2019年11月3日(日・祝)に東京オペラシティ(東京都新宿区)のコンサートホールで公演することが決まっています。

コンサートホールでの写真

―練習はどのように行っていますか?

鈴木(愛):定期演奏会で指揮をしてくださるプロ指揮者からのご指導が、週に1回ぐらいあります。他に、パートごとにNHK交響楽団などの諸先生方をトレーナーにお迎えして、ご指導頂いています。
ただ、先生方がいらっしゃらない時間も多いので、パートごとに自主練習したり上級生が下級生を教えたりしていますね。下級生から逆に教えられることも多くあります。

山崎:上級生に教えるなんて、とんでもないです。

鈴木(麻):大学のオーケストラ部に入ってから、技術的なことはもちろんですが、曲についてその背景を学ぶなど、曲に関する幅広い知識を吸収することで、演奏の質を高めていく先輩たちの姿から学ぶものがたくさんありました。
高校でも音楽をやっていましたが、「とにかく練習して、その曲を弾けるようになること」を目指していて、「曲をどう解釈するか」ということは考えていませんでしたから、とても新鮮でした。

山崎:私はまだ2年生なので、まさに今3年生の先輩方から学んでいるところですが、時には「自分の解釈は違うな」と思うこともあります。そんなときは、下級生の立場であっても意見を伝えるようにしています。先輩方もちゃんと聞いてくださって、いろいろな意見をすり合わせながら曲を仕上げていくのも楽しいです。

鈴木(愛):約130人もいる大所帯で、初心者も多いですがちゃんと仲間になれます。役員9名だけでなく、セクションリーダーや係の仕事もあるので、皆で協力し合って運営している感じです。

練習風景

時間をかけて一つのものを
創り上げる貴重な経験

―活動のメインとなっている定期演奏会ですが、どのように準備されてきましたか?

鈴木(愛):次の定期演奏会は11月3日に迫っています。
東京オペラシティで演奏することは2年前に決まっていましたが、今年の2月頃、まだ寒い時期に団員にアンケートを取って、曲目の候補を出しました。そこからパートリーダーたちの話し合いで曲目を絞っていって、まずメインの曲が決まったのは4月頃だったかな?

鈴木(麻):そう、4月頃でした。演奏会では3曲演奏しますが、メインとなる最後の曲から決めていきます。今年はシベリウスの「交響曲第2番」です。皆を引っ張る立場の私たち3年生の学年カラーにぴったりな曲だと、私は思っています。

松本:確かに。今の2年生だったら選ばない曲かもしれません。私は本当は別の曲をやりたかったのですが、時間をかけて長く練習しているうちに、愛着が湧いてきました。

鈴木(愛):そうですね、私も本当は違う曲が良かったけど、学年カラーにはマッチしているかな。春公演のメインの曲だったブラームスの「交響曲第2番」もそうですが、ちょっと〝おしとやか〟というか落ち着いていて。2年生の団員は私たちよりも人数が多くて個性が強い印象を受けるから、また違う選曲になると思います。

山崎:私たち2年生は、情熱的な感じの人が多いからでしょうか。3年生はキュッとまとまっていますよね。

鈴木(愛):メインの曲との編成面でのバランスや、初心者の負担などを考えながら、最終的に残りの2曲も7月に決定しましたよね。ちょうど夏休みに入るので、夏休みは週に4日、4~5時間ずつの練習をこなしてきました。8月には5泊6日の合宿をして、最後の2日間は指揮者の先生にもいらしていただきました。

―定期演奏会の準備には、かなり時間をかけているのでしょうか?

山崎:プロの奏者はテクニックもあるので、ほんの3回ぐらい練習して皆で音を合わせて、「はい、本番!」ということができますけど、私たちはそうはいかない。時間をかけて準備していきます。
でも、時間をかけるからこそできることもあります。例えば私はファゴットを担当していますが、聴かせどころで毎回違う演奏をしてみるなど、いろいろなアプローチを試してみています。そうすると、同じ楽譜をくり返していても、そこから生まれる演奏は全く違ったものになるので面白いです。

シンバルを叩く鈴木(愛)

鈴木(愛):時間をかければかけるほど新しく見えてくるものがあります。いろいろなアプローチを試したり、曲の解釈を勉強したりして自分で気づくこともあれば、先生や他の団員に言われて気づくこともある。一つの音符でも、出だしをどうするのか、どう音を伸ばしてどう切るのか、その表現の仕方は無数にあります。楽譜は記号なので変わりませんが、そこから見えてくるものは時間をかけることでどんどん変わっていくんですよね。

鈴木(麻):何回も練習するうちに、曲への愛情も深まっていきます。いろいろな音源を聴いて、いろいろな意見を聞いて、段階を踏んで徐々に一曲を創り上げていく感じです。自分のパートのことだけを考えていれば良いわけではありませんから、他のパートと合わせてみて、アイコンタクトを取って、一緒に呼吸をあわせます。それで初めて分かることもあります。

松本:自分が気をつけるべきところだけじゃなくて、他のパートがどう絡んでくるのかが分かってくると楽しくなってきますよね。

鈴木(麻):だから演奏会が終わると、いつも達成感がある!すごく素敵なホールで演奏して、たくさんのお客様から拍手をいただいて、一つの演奏会を成功させたかと思うと幸せです。

鈴木(愛):ただ、演奏会を成功させるには、特に私たち役員は音楽のことだけを考えていれば良いわけではない。私は我慢強くなったかな。人数も多いから、やりたいことに気持ちを向けつつ、演奏を形にするためにはうまくすり合わせていかなければならない。それぞれがやりたいことだけをやり続けていたら一つにならない。ただ、団長は全体を把握していれば良いだけだと思いますが、ステージマネージャーはもっと大変だと思います。

松本:まさに11月3日の東京オペラシティの定期演奏会に向けて、今すごく大変!
もちろん、私一人で働いているわけではありませんが、オーケストラのセッティング表を作ったり、ホールスタッフの方など外部のいろいろな方とも連絡をとったり、とにかく仕事が多い。それを効率よく確実にこなしていかないといけません。それに加えて、自分の練習もしなくてはいけないですから。
ただ、仕事が多くて自分でも苦しい分、例えば「練習がイヤだ」とか、ネガティブになる人の気持ちが分かるようになりました。そういう人に「もっと頑張らなきゃ!」と言うのではなく、そっと寄り添いたいと思います。

山崎:役員の先輩たちは、常にサービス残業状態です。まず、練習時間自体が長くて、練習時間は練習しかできないので、それ以外の時間に役員の仕事をやってくださっています。
体育会はもっと練習が大変かもしれませんし、試合もたくさんこなしてると思います。でもオーケストラ部は、たった2時間半の演奏会本番のために、半年もかけて練習や準備をするわけです。

鈴木(愛):本当にじっくり時間をかけますね。コストパフォーマンスよりも質を追求する部活と言えます。

鈴木(麻):たった1回の演奏会のために、頑張りますからね。

鈴木(愛):大学に入ると、クラスといっても皆で団結して何かをするわけでもありませんから、こんなに時間をかけて仲間と取り組むことって他にないと思います。皆、授業やアルバイトで忙しい中で、週3日という結構な時間をかけて練習しています。
130人もの大人数でひとつのことを長い時間やっていれば、イヤなことやトラブルが生じることもありますが、それでも結局は良い演奏をしたいから、きちんと練習に来て本番を迎えている。やはり「音楽が好きだ」とか「良い演奏をしたい」という気持ちがなければ、部活を続けることはできません。 だから技術的なことはもちろん、精神面でも、定期演奏会を迎えるたびに大きくなれると思います。

バイオリンを引く鈴木(麻)

3年生にとっての
集大成となる
秋の定期演奏会

―定期演奏会を前にした心境を教えて下さい。

松本:ステージマネージャーとして、準備の追い込みの時期です。ステージマネージャーの仕事は、「できて当たり前」です。できていないことがあれば、「何やっているの?」と思われて当然の立場だし、もし何か失敗すると、演奏会自体を台無しにしてしまう可能性を背負っています。
私たちの活動の軸が定期演奏会で、その2時間半のために長い時間をかけて皆が頑張ってきているわけですから、その気持ちを大事にして、皆が気持ちよくのぞめる舞台づくりをしたいと思います。片付けをして皆がホールから出て、すべて終わるまでは全く気が抜けません。

鈴木(麻):そうですよね。コンサートミストレスは演奏に集中すればいいだけだけど、ステージマネージャーはそういうわけにはいかない。本当に大変だと思います。
他にも事務や裏方で動いてくれている人たちがたくさんいます。その人たちや、ついてきてくれる後輩たちのおかげで演奏できるんだな、と思います。この秋の定期演奏会は、私たち3年生にとっては引退前の集大成になるので、皆で一緒に、来てくださるお客様のために良い演奏を創りたいです。

山崎:先輩方が演奏会を成功させるために、音楽面でも運営面でも頑張ってくださっているので、後輩としては自分ができるベストの演奏をして、先輩たちの最後の舞台のはなむけにしたいです。次期団長としては、自分の学年のモチベーションを高めて先輩方のサポートをしていきたいです。

4人の集合写真

鈴木(愛):演奏会の舞台に立ったら、演奏に集中し、ただ自分たちのやりたい音楽を演奏するということでしょうか。役員としての仕事でも達成感を得られますけれど、結局は音楽がやりたくてここにいるわけです。団員にはそれぞれ、自分が音楽を楽しみたいとか、お客さんに楽しんでもらいたいとか、いろいろな想いがあると思うんです。それを、演奏会本番で表現できれば良いですね。

定期演奏会を迎えるまで

  1. 開催2年前⋯
    会場決定

    土日祝日に開催するため、良いホールを押さえるためには早めの準備が必要。今回の東京オペラシティは、2年前に確保。

  2. 8ヶ月前⋯
    曲目候補出し

    団員にアンケートを取り、演奏したい曲を集約。

  3. 4ヶ月前⋯
    曲目決定・個人錬習

    パートリーダーの話し合いでメイン候補を3曲に絞り、投票で決定。そのメインの曲を基準に、バランスを考えながら他の2曲も決定。

  4. 3ヶ月前⋯
    夏合宿

    週4日も練習する夏休み。その中でも5泊6日の合宿で集中的に練習。

  5. 1ヶ月前⋯
    合奏・パート錬習

    練習を重ね、自分のパートだけでなく、他のパートの音がよく聴こえるようになって理解が深まり、完成度が高まる時期。

  6. 当日

    さあ、いよいよ本番!

青山学院管弦楽団

活動は春と秋の定期演奏会を中心に、12月のオール青山メサイア公演、学位授与式での演奏、青山祭への参加、各種依頼演奏などです。また、毎年6月に部内アンサンブル大会を開き、〝少人数で合奏する楽しさ〟も味わっています。 練習は、青山キャンパスで週3日。水・木曜日の18:30~21:00と土曜日の14:00~17:00が練習時間です。2月下旬と8月下旬の合宿では、NHK交響楽団トレーナーの先生方によるレッスンもあり、定期演奏会に向けて密度の濃い1週間を過ごします。

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