同じ街、同じ大学を
それぞれの視線で
見つめて

掲載日 2019/6/21
No.10
国際政治経済学部 国際経済学科4年
児玉 愛
KODAMA Ai
×
総合文化政策学部 総合文化政策学科3年
ラシリカ・バイオレット
LAUCIRICA, Violet George

OVERVIEW

青山学院大学は、多くの学生が
世界各国へ留学し、同時に、多くの留学生が
各国から集まる「学生たちの交差点」。
グローバルな視野を持ち、
異文化に飛び込んでチャレンジした
2人の学生を紹介します。

青山学院大学には数多くの協定校があります。その一つ、アメリカ・シアトルの名門校ワシントン大学で学んだ日本とアメリカの学生が、今、同じ青山キャンパスで学生生活を送っています。青山学院大学からワシントン大学に留学した児玉愛さんと、ワシントン大学から青山学院大学に留学中のラシリカ・バイオレットさん。異文化の中で暮らし、学んだ日々から、2人はどのようなことを感じたのでしょうか。そして、それぞれの経験から学んだグローバルな時代に必要な力とは?同じ街で同じ大学に通った2人が、本音で語り合いました。

児玉 愛さんの
Profile

青山学院大学
→ University of Washington

神奈川県出身。小学3年生から家族と中国・上海に暮らした経験から、中国と日本の架け橋になりたいと考え、国際政治経済学部に進学した。英語で専門科目を学ぶ「Global Studies Program」に参加し、2017年9月から9カ月間ワシントン大学に留学した。現在は、英語のスピーキングトレーニングのインストラクターなど、英語力を生かしたアルバイトにも取り組む。

国際政治経済学部 国際経済学科4年
児玉 愛さん

ラシリカ・バイオレットさんの
Profile

University of Washington
→ 青山学院大学

アメリカ・シアトル出身。日本の文化に興味を持ち、2018年9月から青山学院大学に留学中。学内のアカペラサークルや国際交流サークルに所属し、日本の学生だけでなく各国からの留学生との交流も深めている。ワシントン大学卒業後は大学院に進学し、日本語や社会言語学を研究することが目標。日本でのニックネームは「すみれ」。

総合文化政策学部 総合文化政策学科3年
ラシリカ・バイオレットさん

自分が学びたいことを
学べる環境を求めて

―留学しようと思ったきっかけや、留学の目的を教えてください。

児玉:私は以前、7年ほど上海に住んでいました。配車アプリ(オンライン配車サービス)の「DiDi」をはじめ、上海はITを活用したサービス産業が発展し、例えばDiDiの運転手のような新しい職業が次々と生まれています。新しい産業が人々にチャンスと選択肢を与える様子を現地で目の当たりにして、社会を変える力を持つITビジネスに興味を持ちました。
ITビジネスをリードするのは、やはりアメリカです。中でもシアトルは、アマゾンやマイクロソフトの本社がある街。そして、シアトルにあるワシントン大学は、全米トップクラスの名門校で、ビジネス分野の教育もハイレベルです。英語でビジネスを学び、同時に、最先端のITビジネスやITサービスを身近に感じることができる理想的な学びの場だと感じて、ワシントン大学への留学を決めました。

バイオレット:小さい頃から日本のゲームやアニメが身近で、ずっと日本に住んでみたいと思っていました。日本語を本格的に勉強し始めたのは、地元のコミュニティカレッジの2年生の時。学び始めると、日本語の奥深さにどんどん引き込まれました。もっと専門的に勉強したいと思うようになり、ワシントン大学に編入しました。ワシントン大学は日本人の留学生が多く、日本語教育でも有名です。
私は生まれてからずっとシアトルに住んでいましたが、児玉さんは、中国にも住んでいたことがあるのですね。いいなあ、面白そう!

児玉:私はずっとシアトルに住んでみたかったです。

バイオレット:児玉さんの話を聞いていて、私とはシアトルに対する印象が違っているので、少し驚きました。シアトルに住んでいるときには、あまり大企業があることやITビジネスを意識していませんでした。

―バイオレットさんにとってのシアトルは、どんな街ですか?

バイオレット:私が小さかった頃は、シアトルといえば音楽の街でした。ニルヴァーナなどグランジと呼ばれるオルタナティヴ・ロックのイメージが強くて、ITの印象はまだありませんでした。

児玉:知りませんでした。シアトルは、広々としていて自由がある感じもとても好きでした。ワシントン大学はすべての建物にカフェや学習スペースがあって、気分によっていろいろな場所で学べる環境が整っていると感じていました。天気の良いときには、開放的なテラス席で勉強するのも好きでしたね。それに、キャンパス内に歴史のある建物がいくつもあって、見ているだけでリラックスできます。

バイオレット:スザロ図書館も素敵ですよね?

児玉:そう!ハリー・ポッターの映画の世界に出てきそうな雰囲気。

バイオレット:スザロ図書館は、外観はとてもきれいですが、トイレや設備が古いのが少し難点ですよね。児玉さんは、シアトルで「不便だな」と思ったことはありますか?

児玉:ショッピングや大学以外の場所に出かけるときは、リンク・ライト・レールという路面電車を利用しますが、最寄り駅が寮から歩いて30分もかかりました。電車も一路線しかないので、沿線以外の場所に行く時はバスを利用しますが、最初、バスに乗ることが少し怖く感じました。通学は寮から大学まで徒歩でしたから問題はありませんでしたが。

バイオレット:確かに、治安が良くない場所もあるので、バスに乗るのは慎重になります。東京はどこでも電車で行けますし、便利です。特に青山キャンパスは、どこにでも行きやすい便利な場所にありますね。

児玉:立地が良い反面、朝や夕方の電車の混雑が私は少しつらかったです。満員電車で通学するのはつらくありませんでしたか?

バイオレット:私は逆にそこが好きです。渋谷のスクランブル交差点が好きだし、満員電車も遊園地のアトラクションみたいで楽しく感じます。

普段と異なる環境で
過ごすからこそ学べたこと

―二人は「留学したからこそ学ぶことができた」と感じていることはありますか?

児玉:私は、行動力の大切さをアメリカで感じました。ワシントン大学のビジネス分野は講義のレベルが高く、最初は「交換留学生は履修できない」と言われました。でも、私はどうしても受講したかったので、履修したい科目の担当教授に直接会いに行ったり、メールを送ったりして何度も熱意を伝えました。スチューデントアドバイザーとも毎日のように交渉して、ようやく許可してもらうことができたのです。その時、やりたいことがあったら、自分から行動しないと何も始まらないと、心の底から感じました。また、大学ではさまざまな国や地域からの学生と出会い、さまざまな背景を持つ人とつながることができました。講義で学んだ知識はもちろんですが、留学中に広げた人的ネットワークは、一生の財産になると思っています。

シアトルの街では、ライドシェアのウーバー(Uber)やリフト(Lyft)、Amazon Goでのショッピングも体験できました。Amazon Goは、レジのないコンビニエンスストアのような体験型店舗です。入店時に専用アプリのQRコードを読み取らせれば、店内でお金を払う必要はなく、商品を持って店を出ると自動的に決済されるんです。最先端のITサービスに触れられたことも、貴重な経験だったと思います。

バイオレット:Amazon Go、私はまだ行ったことがありません。帰ったら行ってみたいです。
私が日本でしか学べないと感じていることは2つあって、1つは敬語です。シアトルでも日本人の友達とは日本語で会話していましたが、くだけた表現が多く、敬語は学べませんでした。今、大学では先生との会話、アルバイト先ではお客さんとの会話を通じて、敬語や丁寧な表現を身につけています。敬語のほかにも、レポートの文章や授業で使う難しい言葉の勉強には、特に力を入れています。言語学の分野では、英語と日本語は最も違う言語だといわれているほどですから、日本語は私にとって難しいし、複雑です。でも、勉強がとても楽しいです。
もう1つは、整理することです。日本人の整理する能力や、細かなことに気を配る力は、とても素晴らしいと思います。例えば、手帳。日本に来るまでは手帳を持ったことがなかったし、細かいことを気にするのはエネルギーの無駄だと思っていました。でも、今は私も周りの友達と同じように手帳でスケジュール管理をしていて、身の回りの物や情報をしっかり整理する日本人のようになりたいと思っています。
手帳の書き方は、日本の友達に教わりました。友達は、何気ない時にカードや小さなプレゼントをくれたり、一緒に遊んだ後に連絡をくれたりするのですが、それがとても嬉しくて感動しています。周りの人に細かな気遣いをしてくれるのも、日本の素敵な習慣ですよね。私もそういう気遣いができるようになって、友達に喜んでもらいたいです。

特別扱いされないことの
大変さと大切さ

―お互いに、聞いてみたいことはありますか?

バイオレット:児玉さんは留学中、何が一番大変でしたか?

児玉:レポートやグループワークですね。グループワークでレポートやプレゼンテーションの担当を割り振る時にも、交換留学生だからといって少なめにしてくれることは一切なく、一般学生と同じ量、同じ質を求められました。グループ全体で評価されるので、もし私が不出来だとグループ全員の成績が下がってしまいます。責任重大でしたね。レポートを書こうにも、引用可能な信頼度の高い文献がどれかも分からず、そこから勉強して、リサーチして、やっと文章を書く作業に取りかかる、という状態だったので、本当に大変でした。

バイオレット:ワシントン大学の学生の間でも、ビジネス系は学生同士の競争がとても激しいことで知られています。

児玉:「意識高い系」が集まっている感じです。みんながクラスのトップにならなきゃ、という意識が強い。

バイオレット:確かにそうでした。それと比べて、私が学んでいた語学の分野は、人数も少なく、自分のペースで自由に勉強できるので、全然雰囲気が違いました。

児玉:バイオレットさんは、どうして留学先に青山学院大学を選んだのですか?ワシントン大学の留学協定校は、日本にたくさんありますよね。

バイオレット:青山学院大学は、国際学生寮で日本の学生と一緒に生活できるのが、とても良いなと思いました。授業をすべて日本語で受けられることも魅力でした。留学生のための授業ではなく、日本の一般学生と一緒に、同じ授業を受けたかったからです。
確かに、ワシントン大学には日本の協定校がたくさんあるので、留学前は1校ずつ情報を調べました。留学経験者のレポートを読むと、ほかの大学の体験談には「日本の学生とは授業も生活も別々で、あまり留学生向きではない」というコメントが残されていたのです。しかし、青山学院大学は寮生活も授業も、日本の学生と一緒。留学生が学ぶのにベストな環境だと思いました。

児玉:今のバイオレットさんの話を聞いて、納得しました。あらためて考えてみると、確かに青山学院大学は留学生が学びやすい環境ですね。

バイオレット:それに、私は、授業で分からないことや困ったことがあると、すぐに国際センターに相談に行っています。とても優しく説明してもらえるので、助かっています。

児玉:私も、留学中、国際センターの担当者の方からこまめにメールをいただいて、コミュニケーションを取っていました。堅い文面のメールだと少し緊張してしまうのですが、フレンドリーな雰囲気の文面だったので、気楽に対応ができてありがたかったです。

バイオレット:そうそう、私は国際センターのチャットルームも使っています。

―英語のチャットルームですか?

バイオレット:いえ、韓国語のチャットルームです。韓国語も少し勉強しているのですが、日本語と韓国語は共通点が多いので、言語学が専門の私にとってとても興味深いです。

自分らしくいること、
相手のことを考えること

―異文化の中に飛び込んだとき、そこで自分の良さを発揮するために、どのようなことが大切だと感じましたか?

児玉:恐れずに自分らしくいること、でしょうか。

バイオレット:私もそう思います。

児玉:異文化の中にいると、どうしても周りに圧倒されてしまうのですが、恐れないことが大切だと思います。
グループワークでは、メンバーにアジア人は私一人。英語が母語の学生に混ざって英語を話すことに抵抗を感じてしまい、最初はあまり発言できませんでした。ほかの学生は自分の考えを積極的に発信し、周りを巻き込んで議論を進めているのに、私は意見を言うこともなかなかできず、自分の無力さを感じることもありました。
でも、せっかく素晴らしい環境にいるのにそれではいけないと考え直し、少しずつ、一言だけでも意見を言うようにしました。そうすると、私が発言する度にほかのメンバーが「その意見いいね」と返してくれたり、「もっとこうしたらいいんじゃない?」と話を広げてくれたりしたので、その声に背中を押されて、もっと自分の意見を言おうと思えるようになりました。恐れずに踏み出したことが自信になり、成長につながったと思います。

バイオレット:私は、日本ではどうしても外見が目立ってしまいます。それが最初はとてもいやで、街を普通に歩けないと感じてしまうほど気にしていました。でも、毎日過ごすうちに環境に慣れ、日本人と違った意見を持っても大丈夫だし、自分らしくいれば良いのだなと思えるようになりました。目立つことも「目立つからこそ、いろいろな人に話しかけてもらえる」とポジティブに捉えるようになりました。
日本の人との違いを感じるのは、外見だけではありません。日本では空気を読むことをとても大事にしていて、直接的な表現で言われなくても、自分で考えて理解することが当たり前ですよね。でも、それが私にはなかなか難しい。自分が相手の意図をちゃんと分かっているのか、不安になることがあります。

児玉:アメリカでは言いたいことを素直に伝えてくれる。分かりやすくてありがたい反面、ストレートすぎてちょっとドキッとしますよね。一方で、確かに、日本では遠回しに物事を伝えますが、本当はどう思っているのかが分かりにくい。

バイオレット:アルバイト先のコーヒーショップでも、文化の違いを感じたことがありました。私は失敗するとつい笑ってしまう癖があるんですが、接客中にミスをして笑ってしまった時、「お客様に対して失礼だから笑わないように」と注意を受けました。笑うことが周りの方に失礼に当たるとは考えたことがありませんでしたし、アメリカでは笑っても気にする人はいなかったと思います。

児玉:私もミスをすると笑ってしまうタイプです。

バイオレット:日本にも笑ってしまう人はいるんですね。でも、注意を受けてからは、ミスをしても笑わないように努めています。私に悪気はなくても、お客様に失礼だと感じさせてしまうのはよくない。自分の意図や「つもり」を一方的に押しつけるのではなく、相手がどう捉えるのかを考えなければ、コミュニケーションは成り立たないと思います。

児玉:きっと、異文化理解も同じですよね。お互いが相手のことを考えながらコミュニケーションをすることが大事だと思います。

―最後に、留学を考えている学生にメッセージをお願いします。

児玉:私が留学で得たのは、語学力だけではありません。友人たちとのグローバルな人間関係や、日本ではできないたくさんの経験が、自分を成長させてくれたと思います。留学中はつらいことや大変なこともありますが、それを乗り越えることで身につく力が必ずあるはずです。人生は一度きり。挑戦したいと思ったら、ぜひ海外へ飛び出し、たくさんのことを経験してきてください。

バイオレット:たくさんの人にぜひ一度留学を経験してほしいです。留学先の国の文化や言語の勉強ができますし、世界の国や人のこと、自分の国や自分自身のことも、より深く理解できるようになると思います。

青山学院大学国際センター

学生が個々の希望に合った留学を実現させるため、さまざまなサポートを行っているのが国際センターです。協定校留学、認定校留学など多様な留学に関して、資料収集の方法や留学先の選び方など、幅広い相談を受け付けています。また、留学国際交流オリエンテーション、留学経験者と直接相談できる留学相談会、留学経験者の体験談を聞く留学セミナーなども開催しています。日本からの留学だけでなく、海外からの留学生のサポートも国際センターの役割です。留学生と日本の学生がゲームなどを通じて異文化理解を深める「国際交流の会(コーヒーミーティング)」、留学生が担当するチャットリーダーと英語・中国語・韓国語などでコミュニケーションする「チャットルーム」など、学生同士の交流の場も提供しています。

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