掲載日 2023/10/24

社会情報学部 社会情報学科
「つくる」にこだわり、
ICTと工学システムの力で
社会問題を解決する

宮治教授からの
Message

社会情報学部 社会情報学科 教授
情報メディアセンター所長
宮治 裕

社会情報学部では「文理融合」の学びを大きな特色としています。「人間・社会・情報」の3領域に関して個別に専門的な理解を深めるととともに、各領域を「つなぐ」実践力を備えた人材育成を目指しています。宮治ゼミナール(ゼミ)では、社会の問題を解決するために、情報と社会の双方からアプローチし、自らサービスを企画し、自らの作り上げられる人材育成を目指しています。

Q.ゼミナールの研究内容や特色を教えてください。

本ゼミナールでは、ICT(Information and Communication Technology)を活用した工学システムやサービスの開発を行っています。ウェブや身の回りのセンサ(IoT:Internet of Things)類から集めたデータを機械学習によって分析し、新たなシステムやサービスの形に落とし込むという流れです。データは最終的にスマートフォンのアプリケーション(アプリ)やウェブのサービス、VR (Virtual Reality:仮想現実) / AR (Augmented Reality : 拡張現実)などに生かし、社会に提供されます。学生が開発を進めるに当たっては、開発だけをゴールとするのではなく「提案し・実装し・検証する」という一連の流れにこだわっています。

新しいシステムやサービスを開発することで、社会問題の解決が可能となるだけでなく、新たなビジネスの創出にもつながります。例えば、本ゼミでは、高齢化社会に向けて新たな「高齢者見守りシステム」を開発しました。より高度なプライバシー保護のため、データ処理に工夫を施したものです。またストレス社会への対策としては、心身の不調を予防するシステムを開発しました。さらに、ビジネス創出の分野では、楽曲などの提案に関する新システムがあります。これは、インターネット上のさまざまな情報を複合的に活用することで、新たな角度から楽曲やアーティストの提案を行うものです。これらの研究開発は一見関連性がないように思えますが、先ほどの研究室のコンセプトに則っており、日本政府が提唱する「Society 5.0*」とも非常に近い意味を持っています。

本ゼミは理工学部の学問領域と似ているように思われるかもしれません。一般的に理工学部では「技術の研究や開発」にフォーカスした教育研究をすることが多いですが、本ゼミでは「情報の力で、社会問題をどう解決するか」という視点をベースにしていることが大きな違いと言えます。この視点は社会情報学部の方針が色濃く反映されたものであると言えるでしょう。

*サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)

Q.ゼミナールでの指導について教えてください。

現在、本ゼミには学部3年次から博士後期課程までを合わせ33人が在籍しています。3年次は、ICTと社会貢献の関係について輪読形式で学習するとともに、各人でウェブアプリを作成します。基本的なアプリ開発スキルを身に付けるために「1年間で2種類以上の新技術を習得する」をノルマとして課しています。4年次ではいよいよ卒業研究に取り掛かります。4年生の多くは卒業後に就職するため、週1回の「進捗報告会」では働く上で不可欠な「報・連・相」の力を育むことを意識して指導しています。ゼミの卒業生はICT業界で幅広く活躍していますが、在学中や卒業後数年以内に起業する学生・OGOBも隔年ペースで現れます。起業志向の学生が比較的多いゼミです。
学生を指導する際は、とにかく自主性を重視しています。私は、研究に打ち込むためには本人が好きなテーマを選ぶべきだと考えていますので、研究テーマも、習得する技術も学生自身に決めてもらっています。ゼミでは学生同士が大いに刺激し合って研究に取り組んでいて、互いに競い合って発奮することもあれば、あえてニッチを極めるような分野を選ぶ学生もいます。お互いの研究を見ながら、自分はどういう方向で力を伸ばすべきかを考えているようです。

学生には粘り強さを身に付けてほしいと考え、限界を感じるまで自力で研究と格闘してもらっています。また、時代や技術は進歩しますから普段からアンテナを張っておき、新たな技術や情報は自らキャッチアップする必要があります。社会の課題解決に向け、その技術を応用する力を身に付けてほしいと考えています。また誰かの発言をうのみにせず、当事者意識を持って問題を分析するとともに、その解決策を他の人に積極的に提示できる能力を養ってほしいと考えています。こうした方針に基づき、3年次に関しては基礎力を育て、4年次の卒業研究ではより実践的な指導を意識しています。

Q.学生にメッセージをお願いします。

私は学生が成長していく姿を見るのがとても好きなのです。初めは知識も経験も乏しかった学生が、後輩をサポートできるほどに成長し、やがて、就職や研究などそれぞれの希望の道を選択して進んでいく――こうして学生が夢をかなえていく姿を見ると、教員冥利に尽きます。学生の皆さんにお伝えしたいのは「あなたの潜在能力は、自分で想像しているよりはるかに高い」ということです。能力を発揮する鍵は、やる気と行動力です。文理融合を掲げた社会情報学部では多彩なことが学べますから、皆さんもぜひ自分の好きなことを見つけて積極的に行動してほしいと思います。

学生の
Message

社会情報学部 社会情報学科 4年
<2022年度 学業成績優秀者表彰 優秀賞受賞>
薄井 百花

私は以前から、ICTの力で社会問題を解決するということに関心を持っていました。そして文理融合を特色とする社会情報学部でなら、「社会への視点」と「ICT」の両方の学びを得られると知り進学を決めました。
宮治先生との出会いは、2年次の授業「情報科学総合演習A」です。自分でテーマを決めてウェブアプリを開発するという楽しく手ごたえもある授業で、宮治ゼミの院生TA(Teaching Assistant)の方々が親身にサポートしてくださり、自分も先輩方のように成長したい、そのような環境で大学生活を過ごしたいと強く思うようになりました。3年次で宮治ゼミに入った当初は、飛び交う専門用語がまるで外国語のように聞こえ、先輩方の会話に圧倒されたことを覚えています。その一方、先輩方が心から楽しそうに語っていた姿を見て、私も宮治ゼミで貪欲に学んできたいと意欲がさらに湧きました。
3年次にはアプリを3本開発しました。まずは「React」というプログラミング言語を用いて観光マップアプリを作り、2本目は同様に「React」を使って楽曲とビジュアルを同時に楽しめるようなアプリを開発しました。3本目は、「Python」というプログラミング言語を用いて、機械学習のアプリケーションの開発をしました。宮治先生は、学生ができるだけ自分で考えるよう促す一方で、本当に研究が行き詰まったときにはさりげなくサポートしてくださいます。3年次終盤には、私も先輩方の技術的な会話についていけるようになっていることに気付き、自らの成長を感じることができました。
4年次では、学んだ技術を駆使し、卒業研究(卒業制作)を行います。私は、何か社会問題の解決につながるようなアプリを作りたいと考えていたところ、身内があわやフィッシング詐欺に遭いかけたことをきっかけに「フィッシング詐欺の未然防止」をテーマに設定しました。卒業制作では、詐欺メールやフィッシングサイトを見分ける練習アプリの開発を進めています。
ゼミ合宿では、チーム単位で投入可能なリソースを最大限に有効活用しながらアプリ開発を行った経験から、ただ開発をするだけでなく、企画をしたり、組織横断的なチーム内での橋渡し役やとりまとめ役を担ったりすることにも魅力を感じるようになりました。卒業後は、企業が抱える課題をITを駆使して解決に導く「ITコンサルタント」の職に就く予定です。入社後は、社会情報学部で体得した知識や経験を生かしてクライアントの課題解決に取り組んでいきたいと思います。
宮治ゼミでは多くのことを習得したと思いますが、最も大きな学びは「新しい技術の身に付け方」そのものです。また、先輩・同期・後輩みんな仲が良く、自分の言いたいことを言い合える関係なので、発表などについて疑問や質問があれば遠慮せず発言することができる雰囲気です。先輩には働きながら大学院に通う方もいらして、様々な視点で社会的課題を考えることができるのも特徴です。実際に手を動かして技術を学びたい方はもってこいの研究室だと思います。ぜひ宮治研究室にお待ちしております!

※科目のリンク先「講義内容詳細」は掲載年度(2023年度)のものです。

社会情報学部 社会情報学科

現実の社会には文系・理系の境界はなく、高度情報化社会と呼ばれる現代では、文系・理系の双方に精通していることがアドバンテージとなります。さまざまな社会的課題を解決するため社会情報学部においても“文理融合”の学びを追究しています。文系の「社会科学」「人間科学」と、理系の「情報科学」の各専門領域をつなぎ、各分野の“知”を“融合知”に高めるカリキュラムを整備。新たな価値を創造し、社会へ飛び立てる力を育みます。
文理の垣根をなくした「文理融合」をコンセプトに、社会・情報・人間の複数分野にまたがる学際的な学びを展開。学問領域をつなぐことで生まれる新たな価値観で、一人一人の可能性を広げ、実社会における複雑な問題の解決に貢献できる人材を育てます。

バックナンバー

*掲載されている人物の在籍年次や役職、活動内容等は、特記事項があるものを除き、原則取材時のものです。

学部選択

分野選択