青学での学びに導かれ、
国連機関で持続可能な
人間居住開発に従事

掲載日 2023/4/21
No.232
国際連合人間居住計画 (UN-Habitat)
ケニア共和国駐在
地球社会共生学部卒業
谷中 大翔

OVERTURE

国連人間居住計画(UN-Habitat)で、アフリカ地域を中心とした開発途上国の都市開発に従事する谷中さん。本学在学中の留学先で知った、世界の格差の現状に疑問を抱いたことを契機に、卒業後は、誰もが自分らしく生きられる社会づくりに貢献できるキャリアを選択してきました。青山学院大学で周囲に支えられながら夢に向かって挑戦した経験は、国連での職務にも生かされています。

相手の価値観を尊重し、正解を共に探す

学部時代から国際協力分野に関心のあった私は、大学卒業後、JICA(独立行政法人国際協力機構)青年海外協力隊としてインドの養蚕農家のコミュニティー開発に従事しました。その後、より深く国際協力分野について研究するべく、イギリスのマンチェスター大学の大学院に進学。現在は国連人間居住計画(UN-Habitat)に就職し、本部があるケニアのナイロビで、サブサハラ・アフリカ地域の都市計画に携わっています。
私が担当しているのは、都市部で発生したゴミ・廃棄物を効率的に処理するためのプロジェクトです。人口増加が著しいアフリカ地域ですが、特に人口が集中する都市部ではゴミ・廃棄物の増加が予想されます。そのため、インフラの整備が急務となっており、快適な都市環境づくりを実現する上で非常に重要なプロジェクトだと言えます。その他にも、開発が進む都市部において、仕事や住居を失った低所得者層の人々に対する生活サービスの拡充を図るなど、住民一人一人の人権が守られる環境づくりに取り組んでいます。

ナイロビにある東アフリカ最大の最終ゴミ捨て場「ダンドラ・ダンプサイト」で調査中の谷中さん

日頃の仕事において心がけているのは、現地の人々をリスペクトすることです。国際協力というと、どうしても「先進国」と「開発途上国」という対比の枠組みで物事を捉えてしまいがちです。しかし、実際に双方の文化や価値観の間に優劣はありません。国連の組織の一員として開発途上国の人々を支援する立場ではありますが、決して自分の考えが正しいとは思わずに、相手の価値観を尊重しながら「正解を共に探していく姿勢」を何よりも大切にしています。

ケニアの都市Nakuru(ナクル)のCounty government(州庁)会議

留学先のタイで目の当たりにした経済格差

大学卒業後からさまざまな形で国際協力に携わってきましたが、そのモチベーションとなっているのは、学生時代の学びを通して培われた「貧富の差に関係なく誰もが自分らしい生活を送り、豊かな人生を歩んでほしい」という思いです。地球社会共生学部には、2年次後期に東南アジアに半年間、留学する制度があります。学部間協定を結んでいるタイとマレーシアの大学から留学先を選択することができるので、私は関心のあった開発経済学関連の授業が充実しているタイ・カセサート大学に留学しました。
現地で目の当たりにしたのは、都市部と農村部との経済格差です。ビルが立ち並び発展した都市部とは異なり、インターネットすら不安定な、世の中から隔絶された農村部。その時、「住む場所によって、教育や雇用、情報へのアクセスに不公平があってはならない」と強く思いました。

JICA青年海外協力隊ではインドに派遣され、養蚕農家と共に養蚕技術向上のための課題解決に取り組んだ

さらに、国連職員を目指すきっかけとなったのが、在学時に開講されていた「世界の青学」という地球社会共生学部の授業です。実際に国際機関で働く方を講師としてお招きし、仕事内容についてレクチャーいただく講義がありました。その中で、本学卒業生のUN-Habitat職員が登壇され、公益性を重視しながら開発途上国の支援を行える点に、強く惹かれたことを覚えています。

自分の仕事観にも通じる青山学院大学の校風

国連職員を目指すうえで精神的な支えとなったのが、青山学院大学の個性を尊重し挑戦を支える風土です。当時は、アカデミックな英語の書き方が未熟だったので、海外の大学院に入学する際に審査の対象になるアカデミックエッセイがしっかり書けるか不安でした。そのような私を後押ししてくれたのが、地球社会共生学部の「海外大学院進学支援室」の存在です。海外の大学院を修了した学部所属の教員が、海外の大学院を目指す学生・卒業生をサポートしてくださるのですが、英語で執筆した論文の添削を通して、ネイティブ・スピーカーに伝わる文章の書き方を親身に指導していただきました。印象に残っているのは、手取り足取り正解を教えてもらうのではなく、学生自身で何が課題かを常に考えながらステップアップしていく指導アプローチです。そのおかげで、グローバルな環境で渡り合える英語力のみならず、仕事を遂行するうえで不可欠な課題解決力も身に付きました。

ナイロビにあるUN-Habitat本部前で

教員や友人は、私の夢を全力で応援してくれる人ばかりでしたから、よく教員の研究室を訪れては、学業の悩みや将来の進路について相談していました。また、キャンパスには夢や目標に向かって何かに懸命に打ち込む仲間が集まっており、こうした環境から青山学院大学にポジティブな雰囲気が生まれているのだと感じました。
一人一人が自分らしさを発揮できる青山学院大学の校風は、現在の自分の仕事観にも通じています。国連での自分の役割はあくまでも支える側であり、主人公は現地に暮らす人々にほかなりません。これからも変わらず「常に相手の立場になって考えること」を第一に、一人一人が能力や個性を発揮し、自己実現できる社会づくりをめざして、一層の努力を重ねていきます。

卒業した学部

地球社会共生学部

地球社会共生学部(School of Global Studies and Collaboration /GSC)では、世界中の人々と共に生き、共に価値を見出し、よりよい社会を共同で創造していくための専門知と実行力を備えた人材育成を目指します。タイとマレーシアなどのアジア諸国への留学をカリキュラムの柱におき、効果的な留学のための集中的な英語教育などとともに、激動する世界を視野に「地球社会」の多様性に触れ、異文化理解を深める幅広い学びを展開。世界の人々との「共生」をキーワードに、コラボレーション領域、経済・ビジネス領域、メディア/空間情報領域、ソシオロジー領域の専門4領域を中心としてアジア留学や英語教育などの充実を図り、Global Issuesを共に解決し協働できる「共生マインド」を養います。
地球社会共生学科は、国境を超えた「地球社会」を教育研究対象としています。多角的な視点と異文化への共感力、語学力に裏打ちされたコミュニケーション能力をもって、さまざまなグローバル課題の解決策や持続的な社会を創造する方法を探究します。

VIEW DETAIL

バックナンバー

*掲載されている人物の在籍年次や役職、活動内容等は、特記事項があるものを除き、原則取材時のものです。

学部選択

分野選択