細かい検証から事実を探る歴史学に魅了され、計画性をもって剣道と勉学の文武両道を実現

掲載日 2023/8/24
No.256
<2023年度 学業成績優秀者表彰 奨励賞受賞>
文学部 史学科 3年
森野 裕成
静岡・私立星陵高等学校出身

OVERTURE

子どもの頃の武士への憧れから、歴史に興味を持った森野裕成さんは、史学科の日本史コースで「これこそやりたかったこと」と歴史学に魅了される毎日を送っています。史料を多方面から丹念に検証する地道な学びに取り組みながら、体育会剣道部でも活躍。勉学も部活動もメリハリをつけて全力で取り組んでいます。

「これこそやりたかったこと」歴史学に魅了される日々

小学生の頃、坂本龍馬のドラマを見て「カッコイイ」と思い、歴史や武士に興味を持ちました。武士に憧れて小学校2年生から剣道も習い始め、現在も体育会剣道部に所属して続けています。武士への興味から始まった「歴史」と「剣道」は私の原点であり、「4年間、専門的に歴史学を学ぼう」と強い気持ちを持って入学しました。

青学の文学部史学科は、1年次に日本史・東洋史・西洋史・考古学の4領域を幅広く学び、2年次からコースを選択し、より専門的な「歴史学」を学修します。4領域の知識の偏りをなくしながら、まんべんなく基礎をしっかり培った後に専門分野に分かれて学ぶプロセスは、私に合っていたと思います。

実際、1年次に履修した「史学概論」では、日本史を学ぶ上でも西洋史・東洋史を理解する必要性や文字で残されたものだけではなく、出土品や風土、さまざまなものから歴史研究ができることや他国での歴史の捉え方などを知ることができました。「歴史学」とは何かを根本から考え、現在の学びの土台となり、歴史を学ぶ楽しさに「これこそやりたかったことだ」とますます意欲が湧き出た授業でもあります。

日本史コースに進んだ2年次に履修した「古文書学Ⅰ・Ⅱ」は、古文書の種類、記述された文章の様式や目的など基本的な知識を身に付けた上で、教科書に掲載されている古文書を参照し、一字一句を慎重かつ丁寧に読み進めながら、過去の情報を引き出す方法について学びます。
古文書は、たった1枚から多大な情報を得られる面白さがあり、例えば、レポートで室町時代の訴訟に関する古文書に取り組みましたが、文書の内容を把握した後、他の古文書調査も並行して訴えの経緯を確認し、当時の訴訟ルールに照らし合わせながら社会的背景の確認も行いました。そのように地道な努力を重ねることで、訴訟手続きがどのように行われていたか、ルールが適用されないときの対処方法等、多くのことを知ることができました。検証を重ねるごとにたくさんの事実が判明したことにやりがいを感じ、とことん調べてレポートを完成させました。

谷口先生との出会いでさらに興味が深まる

私はこれまで「日本史」の中でも特に「日本中世史」を深く学びたいと思ってきて、文学部史学科に進学しましたが、「日本中世史」を専門とされている谷口雄太先生と出会えたことは、「歴史学」にさらにのめり込むきっかけとなりました。「基礎演習A・B」や「日本史史料講読ⅠA・ⅠB」を履修しましたが、まず授業の初めに「日本の存在とは何か」という問いかけをしてくださいました。私は、日本史を学ぶことは、「日本」という国はどのような歴史を歩んできたのかを学び、その中で自分自身と向き合うことだと思っていたのですが、「日本」の存在を漠然と当たり前に捉えて根本から考えていなかったことに気付きました。1年次に東洋史や西洋史、考古学の概要をまんべんなく学んだことで、日本史を専門にする場合でも、同時代の諸外国との結びつきや、「日本」の存在意義についてもっと深く考える必要性を痛感しました。

現在は、谷口先生のゼミナール(ゼミ)に所属し、「基礎演習A・B」から引き続き、南北朝時代の軍記物語『太平記』を題材に、書かれた内容が事実かどうかを見極める研究を進めています。ゼミでは、学生が主体となって自由に進める方針がとられていて、ペアで話し合いながら気になった記述を選び、他の史料や先行研究を参照し、自分たちの言葉でまとめていきます。そして発表を通して他の学生や先生から意見やアドバイスをいただきながら、さらに精度を高めます。山のようにある情報から史料を選び出して根拠をもって検証し身に付けたことは、今後社会に出ても役立つスキルと考えています。卒業論文に関しては、地元である静岡県の中世をテーマに、研究を進めていきたいと思っています。今後先生と相談しながらより細かくテーマを絞る予定ですが、現時点では「室町・南北朝期の駿河国今川氏」を扱いたいと考えています。

学生が主体で進めるゼミの様子

谷口先生は、フィールドワークも大切にされていて、実物の史料見学のために、千葉県に連れて行ってくださったこともあります。授業では活字や画像データで史料の内容を確認することが多いので、本物を見る経験は貴重でした。ゼミでは、秋に小豆島での研修旅行も計画しています。風土、自然、地理を自分の目で見て、地域の成り立ち、育んできた文化や歴史に思いを馳せる予定です。『太平記』に書かれた内容を細かく検証する作業も楽しいのですが、文字以外の情報から歴史を学ぶこともとても楽しみです。

古文書を読み解くためには、くずし字を読む訓練も必要

計画性とメリハリで剣道と勉学を両立

学業とともに、私が大学生活の軸に据えているのが体育会剣道部の活動です。青学剣道部は、先輩・後輩の関係はありながらも、稽古では1年生から4年生まで学年の壁を感じることなくお互いにアドバイスし合える雰囲気があって気に入っています。コロナ禍で、対面での練習がなかなかできない時期もありましたが、2年次には群馬県の片品村で合宿ができてメンバーとの親睦が深まり、結束が強くなりました。

練習は週5日あり、現在は、関東学生大会に剣道部の代表として出場することを目標にしています。大学では歴史の学びも剣道も思いっきり頑張ると決めていたので、1年次から、計画性をもってスケジュールを立てることには気を付けてきました。
レポートや課題など、提出日等から逆算して「これはこの日までに必ずやる」と決めて、剣道の練習の時間もレポートにかける時間も減らさないように工夫しています。目の前の一つのことに集中し、メリハリをつけることも心がけています。

剣道で培った忍耐力や辛抱強く物事に取り組む姿勢は、多くの史料を読み、丹念に地道に調査・検証することが必要な「歴史学」の学びに生かされていると感じます。剣道も勉学も手を抜かないことで時間の使い方は難しくなりましたが、相互にモチベーションを高めてくれる存在であるからこそ、学業成績優秀者を受賞できたと思います。

男子が優勝、女子が第3位となった2022年10月の第19回明鏡杯争奪剣道大会。後列右端が森野さん

「当たり前」にとらわれず、歴史にも現代の課題にも向き合う

歴史学は、説を唱える人や観点の違いによって解釈は変わり、学べば学ぶほど「当たり前」が正しいとも限らないことに気付く学問です。そして、過去のできごとは、現在の「当たり前」で解釈してはいけないし、当時の「当たり前」は何だったのかを学ばなくては真の意味を理解することはできません。これまでの学びの中で、客観的・批判的なものの見方を意識するようになりました。
過去から現在、そして未来は密接につながっています。今なぜここにいて、これからどうしていきたいのか、適切な判断をするためには過去から学ぶことが必要です。歴史学で身に付けた、複数の史料を丹念に読み、背景を探り、なぜこの史料が残されたのか、なぜこの人物がこの発言をしているのか、自分の持つ「当たり前」にとらわれずに検証していくことは、現代の社会課題や未来の開拓にも応用できると思います。

卒業後どのような職業に就くか、まだ決めていませんが、人々が長い年月をかけて築き上げて出来上がった現在の社会を支えつつ、そこにさらに新しい価値を提供できるような人になりたいと思います。そのためには、さまざまなアドバイスや気付きをくださる谷口先生のような素晴らしい先生のもとで学べる環境に感謝し、目の前の課題に全力で取り組み、過去から現在や未来を見据える視点を養っていきたいと思います。

※各科目のリンク先「講義内容詳細」は掲載年度(2023年度)のものです。

文学部 史学科

青山学院大学の文学部は、歴史・思想・言葉を基盤とし、国際性豊かな5学科の専門性に立脚した学びを通じて、人間が生み出してきた多種多様な知の営みにふれ、理解を深めることで、幅広い見識と知恵を育みます。この「人文知」体験によって教養、知性、感受性、表現力を磨き、自らの未来を拓く「軸」を形成します。
ギリシア語の“historia”は、英語の“history”と“story”の語源で、歴史・物語という両方の意味をもちます。人間の歴史に物語性がある証左でしょう。しかし、歴史学は史料を読み解き、過去を再構成する科学的・実証的な学問です。史学科では、「日本史」「東洋史西洋史」「考古学」の視点から学びを深めます。歴史を通して、人間とその社会について広く深い理解力を養い、社会の持続可能性も探ります。

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