自分で実験装置を一から
作り、答えのないテーマと
向き合う日々が貴重な成長の機会に

掲載日 2022/6/28
No.158
理工学部 物理・数理学科*物理科学コース 4年
山本 あい
東京・私立大妻多摩高等学校出身

OVERTURE

基礎物理学から最先端応用分野まで、さまざまな階層の物理学をカバーする物理科学科*。高分子物理学を専攻する山本あいさんは、「演習重視の授業や充実した実験設備環境が魅力」だと話します。難解な理論や高度な実験に日々取り組みながら、専門分野以外の学問にも挑戦する、青山学院大学での学びについて語ってもらいました。
*2021年度より、物理・数理学科は「物理科学科」「数理サイエンス学科」に改編

量子力学を通して培われた柔軟性と考える力

専門科目で印象に残っているのは「量子力学」です。この学問は現代物理学の基本となるもので、最先端の自然科学を理解する上で必須の概念です。主に“光は粒子であり、波でもある”ことの根拠について、二重スリット実験や光電効果現象などを通して学びました。高校の物理で扱った古典力学が、ボールや船の動きといったマクロな世界を運動方程式で説明するのに対し、原子や電子などのミクロな世界を波動関数で説明する量子力学は、大学で初めて学ぶ概念です。講義の内容を演習で復習しながら進めていきましたが、慣れない計算や数学的手法に最初は戸惑いの連続でした。しかし、諦めずに勉強を重ねる中で、少しずつ理解が深まっていく達成感を味わうことができました。量子力学を学ぶ上で大切なのは、異なる概念を受け入れる柔軟性と、難しい理論を自力で導き考える姿勢です。本講義を通して培われたこれらの力は、大学でのアカデミックな学びや高度な研究を進めるための糧になっています。

課題へ取り組む姿勢や新たな価値観を養う

所属している坂上貴洋先生の研究室では、主に高分子物理学や統計物理学の観点から、細胞や生体高分子を含む「柔らかな物質の振る舞い」を研究しています。私が取り組むテーマはシャボン膜の破裂についてです。シャボン膜を生成する物質の種類や濃度、膜の大きさなどの条件がシャボン膜の破裂にどのように影響するのか、重力の影響によるシャボン膜の破裂過程にフォーカスし、仲間とペアを組んで調べています。実験では高感度カメラを用いてシャボン膜中の流れを観察します。この実験装置を自分たちで一から手作りし、得られたデータをもとに議論を重ねたことで、より一層理解が深まりました。研究室での活動は、まさしく答えのないテーマと向き合う日々です。研究課題に対し、仮説を立て、実験方法を検討し、結果に対して考察を深める。高校時代とはまったく異なる奥深いプロセスの実践は、課題へ取り組む姿勢や新たな価値観を養う貴重な機会となっています。この経験は、今後の社会生活にも生かせるでしょう。

幅広い学問分野に挑戦できる青学の学び

年次を重ねるごとに、自分の知識やスキルと比例して高度な実験ができるようになるため、毎日の授業がおもしろくて仕方ありません。また、本学には全学共通教育システム「青山スタンダード」というリベラルアーツを重視した教養科目があり、私自身は理工学部に在籍していますが、心理学や経済学、韓国語など、幅広い学問分野にふれることができ、視野が大きく広がりました。特に韓国語は趣味も兼ねて高校時代から独学で勉強していた言語です。第二外国語は1年次に必修で初級を履修しますが、私は第二外国語学力認定試験に合格したため、1年次から中級の授業を受け、4年次には上級の「韓国語Ⅲ」を履修することができました。上級クラスは受講者数が少ないため、発言や発表の機会も多く、課題を通して日常会話ではなかなか出会えない表現や単語も学習することができ、とても成長を感じました。2年次の夏にはカナダに短期留学し、チャットルームや学内の国際交流イベントに参加することで英語力を養いました。
また、本学科における女子学生の割合は、私の学年では2割ほどと少数でしたが、学生生活を送る上でそれがハンディになったことは一度もありません。自分がやりたければ全ての研究が可能ですし、積極的に何かをやりたい気持ちがあれば自ら行動できる友人ばかりで、男女を問わず多くの友人ができました。

韓国人留学生会に参加

卒業後はIT企業に就職予定です。3Dホログラムや空中ディスプレーといった先進技術に関心があり、それらをさまざまな事業分野に応用し、システムの利便性やユーザビリティを大きく進化させるような仕事に携わりたいと考えています。大学で得た学びや研究成果を社会に還元し、広く世界に貢献していくつもりです。

インタビュー動画

※登場する人物の在籍年次や役職、活動内容等は取材時(2021年度)のものです。
※各科目のリンク先「講義内容詳細」は掲載年度(2022年度)のものです。

理工学部 物理科学科

青山学院大学の理工学部は、数学、物理、化学といったサイエンスと、テクノロジーの基礎から最先端を学ぶ環境を整備しています。国際レベルの研究に取り組む教員のもと、最新設備を駆使した実験、演習、研究活動の場を提供するとともに、独自の英語教育を全7学科統一で実施。未来志向のカリキュラムにより、一人一人の夢と可能性を大きく広げます。
物理学は根源原理がシンプルで、幅広く応用できる学問です。物理科学科では、原子から宇宙まで、そして半導体や超伝導物質についても学びます。また、生命科学も物理学の手法で解明します。これらの研究においては、古くからビッグデータの解析(データサイエンス)が必要で、物理学を基盤とした研究においても、AIの普及はとても魅力的です。講義や実験・演習形式の授業を通じて物理を学び、充実した設備環境での実験により自然現象や先端技術に対する理解を深めます。

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*掲載されている人物の在籍年次や役職、活動内容等は、特記事項があるものを除き、原則取材時のものです。

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