いつも心にある母校
青学での
かけがえのない日々

掲載日 2021/11/18
No.115
TBSアナウンサー
文学部英米文学科卒業
江藤 愛

OVERTURE

TBSの顔として毎日、帯番組に出演し、社内ではトップスペシャリストとして後輩の育成にあたる江藤さん。青学で過ごした大学時代の学びや経験を糧に、「サーバント・リーダー」*の自覚を持って活躍されています。
* 自分の使命を見出して進んで人と社会とに仕え、その生き方が導きとなる人。

アナウンサーに憧れ上京し、文学部英米文学科へ

子供の頃は恥ずかしがりやで、人前で話すことに苦手意識を持ち、コンプレックスを感じていた私がアナウンサーを目指したきっかけは、流ちょうな英語で外国の方にインタビューをする姿が素敵な、木佐彩子さんへの憧れでした。中学生のある日、テレビを見ていた私は衝撃を受けました。木佐さんがウミガメのモノマネをしたとたん、共演していた方々がわっと大きな笑い声を上げ、ご本人もとても楽しそうにしていたのです。自分にとって人から笑われることは怖くて耐えがたいのに、なぜこの方は平気でいられるのだろう。そんな疑問も持ちましたが、あれは笑われたのではなく、他の人に笑う機会を提供していたのだと後から気づき、働く女性としてますますかっこいいと感じるようになりました。

英語を学ぶことがずっと好きだったので英米文学科を目指し、アナウンサーの夢を叶えるために東京の大学へ進もうと決めて、青学に合格した時には、木佐さんの母校だという理由で勝手にご縁を覚え、大変うれしく思いました。
出身地の大分県日田市は四方を山々に囲まれ、澄んだ川の水が流れる自然豊かな土地ですが、本当の良さに気づいたのは上京してからです。暮らしていた時には、方言や交通の不便な点などに目が行きがちでしたが、郷里を離れ、あの土地で過ごした日々が私を育み、私の大きな部分を成しているのだと誇れるようになりました。それでも上京したての頃はやはり東京への憧れが強く、青山キャンパスでのキャンパスライフに期待し胸を躍らせていたのは間違いありません。ただ当時、文学部の1、2年生は相模原キャンパスに通っていました。最初に聞いた時には、まだ土地勘もなく「相模原ってどこ?」と戸惑ったものの、都心からそう遠くなく、何よりとても自然との調和が美しいキャンパスで、初めて目にしたあの光景には感動しました。青々とした芝生、明るく清潔な校舎、特にB棟最上階からの眺めは最高で、休み時間には友人と連れ立ち爽快な気分を味わったものです。学生食堂で販売されていた、種類豊富なソフトクリームも「今日は何味かな」と楽しみにしていました。今も相模原キャンパス学生食堂のTwitterをときどき見ては懐かしさをかみしめるほど、思い出がいっぱい詰まった場所です。

今の仕事にもつながる大学での学び

今回、当時のノートを見つけて読み返し、久しぶりに青学で学んだあの日々に帰ったような気持ちになれました。強く印象に残っている授業は「キリスト教概論」です。私はクリスチャンではないので、キリスト教を学ぶ授業があること自体にまず驚きましたが、大学の礼拝堂で行われる礼拝に実際に出席して、聖書を読み、讃美歌を歌うことを通して学びながら、キリスト教が伝える無償の愛の大切さに気づいてからは、常に教室の前方の席で、真剣に受講していました。自分ひとりではなく、誰かのために手を差し伸べる助け合う精神の重要性を知り、卒業後も、仕事ではもちろん、人として生きるうえで大切にしています。また落ち込みやすかった性格も「どうにかなる、最終的には大丈夫だから」という心構えを身に付け、少し前向きに変われたように思います。

3年次のゼミナール(ゼミ)と「英文学特講」の授業でお世話になった冨山太佳夫先生からも多くを学ばせていただきました。英文学をただ訳して読むのではなく、書かれた当時の背景など作品の奥にある意味もしっかり教えてくださり、知らない世界を見せてくださる先生を尊敬し、ものの見方や考え方に感心しながら毎回、講義を楽しみにしていました。例えば論文の書き方について「いちばん言いたいことは最初に持ってくるんだよ」というご指摘はまさにアナウンサーの仕事にもつながる内容で、今でも大切にしています。
授業は英文学を軸に履修していましたが、アナウンサー志望ということもあり「広告コミュニケーション文化論」や「メディア実践論」など、ゲストスピーカーのマスコミの方から直接お話を聞ける授業も受講していました。2年次に英米文学科のあるオックスフォード大学の短期留学プログラムでは、青学の先生も同行してハートフォードカレッジで3週間ほど研修を受け、シェイクスピアの戯曲を自分たちで演じたり、ロンドンに「オペラ座の怪人」を見に行ったりして、本場の演劇に触れ、その奥深さに感激を覚えてからというもの舞台鑑賞が趣味になりました。この経験は、英文学を肌で感じられた良い思い出となっています。

多くの方と出会い経験を積んだ大学生時代

在学中は自分の夢をしっかりと持ち、その実現のために学び、努力を惜しまない友人たちが私の周りには大勢いました。それぞれの目標に向かって切磋琢磨しながらも、一緒にいると穏やかな時間を共有できる、本当の友達ができたのはキャンパスだとあの頃から感じていましたし、今でも仲がいいのは青学時代の友人たちです。そして皆当時から青学が大好きでした。
TBSには私と同期で既に退職された田中みな実さん、現在も在籍する高野貴裕さん、皆川玲奈さん、日比麻音子さん、山本里菜さんなど青学出身のアナウンサーが多く、強いつながりを感じ、青学会を開いたこともあります。仕事の時間がバラバラなのでその後はなかなか開けずにいますが、「やっぱり渋谷だよね」と出かけ、学生時代に思いをはせながら、楽しい時間を過ごしました。
最も有意義だった課外活動は、テレビの世界を感じたいと考え、他局で4年間続けたアシスタントのアルバイトです。採用はオーディション形式でしたが、後にアナウンサーになった方が多くいらしたので思い切って挑戦し、スポーツイベントのマスコミ向けの受付やバラエティ番組のアシスタントなどを体験しました。

TBS のアナウンススクールにも2年生の終わりから半年ほど通い、現役アナウンサーの先輩たちから発声の基礎や自己 PR について勉強させていただき、大きな収穫となりました。アピールできるものなど自分にはないと当時は思っていたのですが、「これができる、ではなく、これが好きだと楽しそうに話す姿を見て、あなたと一緒に話したい、働きたい、と思うものだから、意識しなくていいよ」という講師の方のお言葉に強く励まされたことは、今でもよく覚えています。就職活動はとかくアピール合戦になりがちですが、あのアドバイスが大きな力となり、安心していつも通り自然体で臨むことができました。
結果的にアナウンサーという目標に向けて突き進んだ大学生の私を、青学は優しく受け入れてくれました。卒業後もずっと心の中にある母校は、青山通り正門の前を通るたび今も私に元気を与えてくれる存在です。

アナウンサーは情報の交通整理役
縁の下から支えるサーバント・リーダー

アナウンサーになってからはますます多くの方々と出会い、木佐彩子さんにも「はなまるマーケット」にゲスト出演された際、ずっと憧れていたことを伝えたところ、ハグをしてくださり、中学生だった頃の自分に「諦めなければ夢は叶うよ」と教えたくなるほど感激しました。また私は箱根駅伝が大好きで、大学時代には原晋監督率いる学連選抜に青学の選手も参加して異例の4位という好成績を収めた瞬間を目の当たりにし、大喜びしたものですが、その原監督とも「ひるおび!」で共演させていただく機会を得て、たいへんご縁を感じました。
10月からは新番組「THE TIME,」が始まり、まだ模索している最中ですが、番組の立ち上げに関わるのは今回が初めてで、やりがいを感じ、楽しく充実した毎日を送っているところです。アナウンサーという職業は、タレントの方や著名な方とお話しをするので、前へ出る仕事だと思われがちですが、実は裏方としての役割も大きく非常に重要です。

視聴者のみなさんに「楽しい、わかりやすい」と思っていただくことが番組制作の大きな目標なので、ゲストの方のお話やニュースがきちんと伝わるように、アナウンサーは導かなければなりません。どんなにその場が盛り上がり、自分もともに楽しんでいても進行のことを常に頭に置きながら、共演者の皆さんには自由に羽を広げていただきます。「次、何だっけ?」と聞かれた時には、すかさず「こちらです」と交通整理をする信号機のような役割です。それを担うのがアナウンサーだと自覚し、実践を心がけています。現在、社内ではトップスペシャリストという役職に選んでいただき、後輩の指導にもあたっていますが、どんな場面でも青学で養われた「サーバント・リーダー」の精神で周りを支えていこうと努めています。
共演者やスタッフのみなさんはたいへん優しく、落ち込んだ時もうまくいった時も声をかけて私を支えてくださるので、感謝の気持ちでいっぱいです。だからこそ自分も誰かのために背中を押してあげたいと思えるようになりました。「キリスト教概論」の学びにもつながりますが、助け合いは愛だと思いながら、今日この番組に出て、この方と共演できたから私はまたひとつ成長できたと常に実感しています。縁や出会いは貴重な宝物なので、大学時代からずっと大切にしてきました。

アナウンサーになるにはどうしたら良いかという質問をよく受けますが、「好きなことに取り組んでください」といつも答えています。私自身、学生時代に興味を持ったことは全部やってきました。何をすれば良いか悩むのではなく、関心があることは何かと問いかけ、自分と深く向き合えば、同時に夢や将来の展望が見えてくることも多いのではないでしょうか。これから社会へ羽ばたくみなさんには、ぜひとも学生のうちに自分のしたいことを見つけ、存分にやり抜いて欲しいと願っています。

江藤さんの1日(「THE TIME,」出演日)

  1. AM 1:00

    起床

  2. AM 2:00

    出社
    新聞や資料のチェック、メーク、打ち合わせなど

  3. AM 5:50

    生放送出演

  4. AM 8:00

    放送終了、反省会

  5. AM 10:00

    ナレーション収録や翌日の打ち合わせなど

  6. AM 11:00

    退社
    帰宅後は、出演した放送内容を確認
    テレビや新聞等から情報を収集し、翌日に備えます

卒業した学部

文学部 英米文学科

青山学院大学の文学部は、歴史・思想・言葉を基盤として、国際性豊かな5学科の専門性に立脚した学びを追究します。人間が生み出してきた多種多様な知の営みにふれ、理解を深めることで、幅広い見識と知恵を育みます。「人文知」体験によって教養、知性、感受性、表現力を磨き、自らの未来を拓く「軸」を形成します。 「英語の青山」を体現する伝統ある英米文学科では、能力別、少人数制の授業で、1・2年次より英語の4技能を徹底的に磨き上げます。同時に、英語圏の文学、歴史、思想、言語の成り立ちを学び、語学のみならず幅広い知識を身に付け、人間や文化の本質を理解します。多くの教員免許状取得者を輩出しています。

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