起業の挑戦を支える
経済学の学びから得た思考法と
他者貢献への思い

掲載日 2021/10/8
No.105
経済学部
現代経済デザイン学科4年
柏倉 元太
山形県立山形中央高等学校出身

OVERTURE

大学での学びは、キャンパスでの授業だけにとどまりません。部活動やサークル活動、ボランティアなどの課外活動で自己研鑽を積み、社会に出て羽ばたくための翼となる知見を得た学生を紹介します。大好きなコーヒーのウェブメディアを始めたことをきっかけにウェブマーケティング会社を設立した柏倉さんは、経済学部での学びと自身の経験を糧に、事業拡大を目指して邁進しています。

他者貢献度合いを高めることが
モチベーションの源泉に

今年(2021年)1月に、SEO(検索エンジン最適化)を中心にSNSやYouTubeなどを手掛けるウェブマーケティング会社「オークス」を設立し、現在は大学を1年間休学して会社運営に専念しているところです。特に注力しているのはメディア事業で、私自身の興味関心に基づき、プログラミング、サブスク※、韓国ドラマなど、バリエーションに富んだテーマを扱う5つのウェブメディアを運営しています。中でも力を入れているのが、2019年5月に開設した「コーヒー豆研究所」です。私はコーヒーが大好きで、コーヒーの素晴らしさをより多くの人に伝えたいとこのサイトを始めました。「生の体験談をワクワクする期待感に乗せて届ける」をモットーに、自分が実際に飲んだり試したりして得た情報に基づき、コーヒーにまつわる様々な記事をほぼ毎日更新しています。

起業を決意したのも、「コーヒー豆研究所」が少しずつ注目されるようになり、成長を促進したいと思ったからです。開設当初はPV(アクセス数)が伸び悩みましたが、2年次の後半から記事メディア制作の長期インターンシップに参加し、記事を書く経験を積みながら、ユーザーが求めていることを考え、つかむというマーケティングの本質を学んだことが転機になりました。ユーザーがコーヒーのどのような情報を知りたいのかを考え、サイトの改善、SEO対策に努め、記事に説得力を持たせるためにも日本安全食料料理協会(JSFCA)認定のコーヒーソムリエの資格も取得しました。そうした努力の結果、目に見えてPVが伸び始め、月間約20万PVを集めるメディアに成長させることができたのは、これまでで1番の成果です。
起業から一貫してモチベーションの源泉になっているのは、他者へ貢献したいという思いです。会社設立にあたって、「幸せとは」ということについてよく考えました。日常生活で、私は友人に食事をごちそうして喜んでもらえることに幸せを感じるタイプです。そうしたことを考えていく中で、たくさんの人に感謝され、喜ばれることが自分自身の人生の幸せになるという思いに至りました。自社の事業で言えば、ユーザーに価値ある情報を提供することが他者貢献であり、より有益な情報をより多くの人に届けることで貢献度合いが大きくなる、そして、それは会社の利益拡大にもつながると考えています。集客力を上げるためのSEO施策を講じ、実績をあげていくことは簡単ではありませんが、成果が出た時はその分他者への貢献度合いが大きくなったということであり、大変やりがいを感じます。


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会社運営に生きているミクロとマクロの視点

起業は大学入学前には考えていなかったことですが、結果として経済学部で学んだことが会社を運営する上で役立ちました。特に生かされていることは、1年次に履修した西川雅史先生の「ミクロ経済学講義」での学びです。資料が豊富でわかりやすく、経済学の基礎を総合的に学ぶことができた授業で、ミクロとマクロの視点があるというのを知ったことに始まり、2つの視点を行き来しながら物事を考える姿勢が培われたことは、ビジネスにおいても大いに役立っています。例えば、新しいサービスを作るとき、ひとつの方向性ばかりを追っているとなかなか良い案が生まれません。そのようなときに、「そもそもの課題は何なのか」とマクロの視点で俯瞰してみることで、異なる可能性に気付けるようになりました。
また、宮原勝一先生のゼミナールで、新型コロナウイルス感染症拡大が日本経済に与えた影響について研究したことが、メディア事業の価値を見出すことにつながりました。緊急事態宣言下で日用品の買い占め等の混乱が起きた際、日用品を購入できる店を探すため「スーパー」という単語でネット検索をする人が急増したのですが、スーパーでなくてもそれらを販売しているウェブサイトなどがありました。私自身で調べた情報をもとに、日用品が購入可能な販売店の情報を発信してみましたが、そのときに、正しい情報が求められていること、そしてそれを伝えることの社会的意義を実感しました。「コーヒー豆研究所」が、実体験や自らの調査に基づく一次情報にこだわっているのはそのためです。

チームのために動くことを学んだバドミントン部の活動

課外活動では体育会バドミントン部に所属していました。高校までは陸上競技に打ち込み、バドミントンは全くの初心者だったのですが、大学でもスポーツに励みたい気持ちがあったこと、かつフィジカルではなく、テクニックで勝負できるものに挑戦してみたいという思いから入部を決めました。バドミントンはダブルスがあったり団体戦があったり、思っていた以上にチーム力が問われる競技です。また、バドミントン部は部員が少ないため結束力がとても強く、チームのためにどう貢献するか考えて動くということを、部活動を通して学ぶことができたと思います。経験者ばかりの中、練習の準備・片付けやメンバーのサポートなどを積極的に担うことで、チームに貢献できたと思いますし、一からのスタートだった私をサポートしてくれた仲間たちには、今でも感謝しています。

さらにユーザーのためになる新たな施策を

今後も、新たなサービスやプロダクトを付加させるなど、よりユーザーのためになるような施策をどんどん打ち出し、大学卒業までにできるだけ会社を成長させたいと思っています。そして卒業後は会社をイグジット(株式公開または株式譲渡)させ、より他者への貢献度合いが大きい環境で、オークスで培ったことを生かしながら働きたいと考えています。

また、仕事とは別の軸で取り組んでいきたいと思っているのが、地元である山形の地域活性化です。そもそも私が経済学部現代経済デザイン学科を志望したのは、過疎化が続く地元の状況を変えたいという思いからです。現代経済デザイン学科は、誰もが暮らしやすい世の中をデザインするための政策立案について、地域・コミュニティの視点からも学べることに魅力を感じました。当初は地方創生のための全体構想を作成したいと大きなことを考えていましたが、前述の「ミクロ経済学講義」で、個人がミクロの視点でできることを行えば、総量は大きくなり、マクロの利益を生むという気付きを得ました。まだ具体的なプランはできていませんが、大きなことをやり遂げようと思い描くのではなく、自分ができることから始めていきたいと思っています。

私はとりあえず挑戦してみようと始めたウェブメディアに興味を感じたことから、大学生活を通じて起業まで突き進むことができました。将来やりたいことが見つからないという人は、まずは少しでも興味があることを思い切ってやってみることが大事だと思います。是非皆さんも、大小問わず、いろいろなことに挑戦してみてください。

経済学部 現代経済デザイン学科

経済とは人々が生存していくことであり、多様な要因にもとづいて成り立っています。それゆえ、その理解には幅広い視野が求められます。青山学院大学の経済学部においては、このような経済を学ぶ場として多様なテーマの研究が蓄積されており、公正な社会の創造を目指して本質を理解し論理的に行動する力を育成します。
現代経済デザイン学科では、貧困・地域格差・環境破壊など現代のグローバル社会におけるさまざまな問題を、「公共性」をキーワードに紐解きます。政府だけではなく地域コミュニティにも目を向け、統計分析などの手法も取り入れながら新たな社会経済システムをデザイン。誰もが公平で幸せに暮らせる社会づくりを学びます。

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