理工学部 物理・数理学科
原子物理(量子制御、リュードベリ原子)

前田教授からの
Message

理工学部 物理・数理学科 教授
前田 はるか

2021年度より、物理・数理学科は、「物理科学科」「数理サイエンス学科」に改編されます。新しくスタートする物理科学科では、物理学の概念や手法を基に、原子から宇宙まで、自然現象を支配する未知の法則を探究していきます。前田研究室は、レーザーなどを用いて原子を制御することを目標に、さまざまな実験を通じた原理研究をメインテーマとしています。

Q.研究内容について教えてください。

 物質の最小単位である原子を対象に、その運動や内部構造を、レーザーやマイクロ波、電場、磁場などの外場を巧みに利用することで、自在に制御しようと試みています。この研究は、近年注目を集める量子デバイスとして原子を利用するための原理研究という側面を持っており、省エネ、小型化、高速化を極めた次世代型デバイスの実現に繋がるものです。また、気体状の原子が集団を作り、液体や固体へと変化していく様子を理解することを一つの目的に、冷却リュードベリ原子系の物性を調べる研究、原子の内部構造を理解するための原子分光研究など、物理分野の基礎研究も行っています。
 学生たちが行うのは、半導体レーザーやNd:YAG(ネオジウムヤグ)レーザー、波長可変色素レーザー、フェムト秒レーザーなど多種多様のレーザー装置及び超高真空装置を駆使する実験研究です。レーザー装置を使って高真空環境下にある原子や分子に光を当て、そこで生じる量子反応を微弱電気信号として測定、得られたデータを解析することで背後にどんな新しい物理が隠されているかを探ります。

Q.学生たちの学びの姿勢はいかがですか

 研究室では、学生の自主性を重んじ、独自性を尊び、独立心を養うことを重視しています。こちらから研究の方向性の大筋を示したあとは、大学院生を中心に、学生が自ら実験の計画を立てていますし、定期的な勉強会も自主的に開いているようです。そうした彼らの積極性や自由闊達な姿を、非常に好ましいと思っています。
 また、自然科学を研究する際には「固定観念にとらわれず自由に発想すること」と「地道に学問や技術の基礎を積み重ねることの重要性を認識すること」の二つが重要です。二つは相反することのようですが、研究の足腰が強くなければ自由に考えることはできませんし、一方で、過去や常識にとらわれていては教科書通りの結果しか得られません。学生には、基礎を固めた上で、楽しく自由な心で研究に向き合ってほしいと考えています 。

Q.学生を指導する際に伝えていることは

 研究を通じて、結果をすぐに求めないこと、状況に左右されずに物事の本質に迫ることの大切さを感じてほしいと思っています。
 さまざまなことが急激に変化する現代社会では、目先の結果が求められる場面が増えています。それを否定するつもりはありませんが、結果を出そうとして安易なゴールを設定して実験研究をするようになってしまっては、本末転倒です。たとえ期待していた結果が出ずに「失敗」したとしても、「失敗」に至るプロセスのどこに原因があったかを理解し論理的に説明できると同時に、今後の研究の軌道修正の道筋を明快に示すことができれば、それで良いと私は考えます。学生は、どうしても修士論文や卒業研究で発表できる結果を求めてしまうのですが、「それがすべてではないよ」と伝えるようにしています。
 研究室を巣立った学生が、全員専門知識を生かす職業に就くわけではありません。目先のゴールにとらわれず、本質に迫ろうとする意識は、研究に限らず、社会生活や人生を充実させるためにも不可欠なものだと考えています。研究室での日々を通じて、本当に追究したいことに一生かけて取り組むような、心の余裕を持った社会人になってほしいですね。

学生の
Message

大学院理工学研究科理工学専攻基礎科学コース博士前期課程2年
神奈川・私立桐蔭学園中等教育学校出身
鈴木 貴大さん

 前田研究室は、人間関係や雰囲気の良さが魅力です。同じテーマの研究をする先輩と一緒に実験をする機会が多くあるのですが、研究に向き合う姿勢から繊細なレーザー装置の調整方法まで、さまざまなことを先輩から学ぶことができました。卒業された先輩方との繋がりも強く、前田先生を交えて卒業生と在学生が交流する機会も毎年持っています。
 現在は、ストロンチウム原子のリュードベリ状態における精密レーザー・マイクロ波分光をテーマにした修士論文に取り組んでいます。研究室に所属した当初は、目に見えない原子を扱う研究に戸惑い、難しいと感じることばかりでした。しかし、3年間研究を続けるうちに、「難しいこと」を「興味深い」と思えるようになり、研究の面白さと難しさは表裏一体だと実感しています。

 大学院修了後は、IT企業に就職する予定です。前田先生や先輩方と研究を続ける中で、豊かな人間性を育むこともできたので、人に関わる仕事がしたいと感じるようになり、物理を専門とする職種にこだわらずに就職活動を行いました。前田研究室で培った主体性、論理性、人に伝える力を、将来は社会でも生かしていきたいと思っています。
※登場する人物の在籍年次や役職、活動内容等は取材時(2020年8月)のものです。

このページをシェアする

理工学部

“青学の理工”は、理学系、工学系をあわせて6つの学科からなり、自然科学の基盤となるサイエンスの最先端研究はもとより、広く社会に貢献することを目指す多彩なテクノロジー研究開発を推進しています。
“相模原キャンパス”を拠点とし、学部附置機関である先端技術研究開発センター(CAT)や機器分析センターをはじめ、先進の施設や設備は、国内外トップレベルを誇ります。
青山学院大学理工学部の充実した研究・教育環境で、未来を見据え、自らの夢を信じ、新たな可能性を求めて、ともにその実現に向けてチャレンジしていきましょう。

バックナンバー