キャンドルの灯りで
温もりのある風景を
作り出す

掲載日 2019/12/13
No.13
一般社団法人日本キャンドル協会
代表理事
国際政治経済学部卒業
神田 悠
KANDA Yu

OVERTURE

青山学院大学で過ごした大学時代。何を学び、どのような人と出会い、どのように自分を磨いたのか。
多岐にわたる経験を生かして、さまざまな角度から社会に貢献している卒業生を紹介します。

キャンドルの良さをもっと知ってもらいたい

みなさんは、最近いつキャンドルに触れましたか?欧米をはじめとする海外では、キャンドルはとても身近な存在です。家庭用の間接照明として、レストランのテーブルライトとして、また教会では祭具としてなど、さまざまな場面でキャンドルが使われ、日々の暮らしに溶け込んでいます。
一方日本では、キャンドルを使う機会はほとんどなく、一年に一度、誕生祝いのケーキの上に灯すくらいではないでしょうか。しかし、キャンドルは自然の照明としてとても温もりが感じられるものですし、昨今日本にも定着しつつある「スローライフ」を象徴するような、自然への感謝の気持ちがおのずと湧いてくる存在でもあります。このようなキャンドルの魅力を広めるため、2009年に一般社団法人日本キャンドル協会を設立しました。キャンドル教室の普及や資格認定制度の整備などを進め、現在は国内、海外合わせて34の認定スクールを運営し、資格取得者は5,000人を超えています。

プロの資格である「キャンドルアーティスト」や「キャンドルインストラクター」に認定されれば、作品の販売や装飾の仕事を請け負ったり、キャンドル作りのインストラクターとして活動したりすることができます。こうした修了生の技術の向上を目的とした研修の実施やプロとして活動するためのサポート、キャンドルアーティストたちの認知向上を目指したプロモーション活動なども協会の業務です。キャンドルのある暮らしが日常生活に浸透することや、キャンドルアーティストやキャンドルインストラクターなどのキャンドルに関わる職業が、日本社会に広く認められることを目指しています。

私は代表理事として、主にキャンドル普及のためのイベントを企画するといった、新しいことを仕掛ける役割を担っています。例えばクリスマス近辺に代官山で開催される「代官山ノエル」は、街全体がキャンドルのテーマパークとなる日本最大級のキャンドルイベントです。2016年から毎年開催されていますが、2017年の「代官山ノエル」から代官山の各所にアーティストによる盛大なキャンドル装飾を施して、クリスマス用のキャンドルマーケットやキャンドル作りのワークショップなどを開催しています。代官山の街を清掃するプロジェクト「green bird(グリーンバード)」に参加した際に、偶然、代官山ノエル実行委員会の方と知り会い、キャンドルについてお話ししたことがきっかけとなってイベントが始まりました。このように私が外に出ていろいろな方と出会うことで、新しいコラボレーションが生まれ、協会の活動の幅が広がったり、事業のアイデアが生まれたりもしています。

キャンドルは灯すだけでなく、作ることにも魅力があります。キャンドルの素材であるワックスは種類が多く、融点や粘性などが異なります。ワックスのブレンドの仕方もさまざまで、基本的技法と掛け合わせるとキャンドルの種類は無限に広がるため、キャンドル作りには、化学の実験的な面白さと新しいものを生み出すアート的な魅力の両方があります。キャンドルを作り始めた頃は、寝ても覚めても「あのキャンドルはどうやって作るのだろう」と考えていたくらい、技法を追求していくことができます。身近にある材料で簡単に作れるうえに、作ってみるとどこまでも技法を追求できる。さらに火を灯せば癒しになるだけでなく、次第に変化していくキャンドルの形を楽しむこともできます。このようなキャンドルの魅力を多くの人に伝え、キャンドル後進国である日本に、キャンドル文化を根づかせたいと考えています。

遊びも学びも、思い切りやり尽くす

青山学院には、中等部から入学し、高等部を経て、大学までお世話になりました。英語が好きで、高等部で1年間の交換留学を経験したこともあり、当時学部としてまだ新しく、英語教育に力を入れているという国際政治経済学部に進学しました。いつの頃だったか、「大学1、2年生のうちはやりたいことをして思い切り遊び、その後は思い切り勉強をしよう」と決意しその通り、1、2年生のうちは一生分遊び尽くしました。厚木キャンパス(2003年閉学)に友人たちと車で通い、テニスの練習に明け暮れ、恋愛もしました。自分が思い描くキャンパスライフをそのまま形にしたような、楽しい日々でした。

大学時代は、自由な時間がたくさんあり、人生で一番恵まれた時期だと思いますが、その反面、将来のために何をするのか、しないのかで、とてつもなく大きく差がつく時期だとも思います。私も2年生の後半に差しかかった頃、3年生からの過ごし方について考え始めました。
そのような時期に何気なく会計の授業を受講し、そのレポートが高評価だったことで、「もしかしたら会計士に向いているのかもしれない」と意識。得意な英語を活かしたかったこともあり、厳しい授業で有名だったマキロイ・ロバート教授(在学当時。マキロイ先生は現在退職。)ゼミナール(ゼミ)に入って、在学中に米国公認会計士試験の合格を目指すことにしました。マキロイ先生から「人生を切り開く三種の神器は、英語と会計とIT」と聞かされていたことも、勉強の意欲を高めました。学園祭の時にも、学校外のスペースを借りて授業をするほどの熱いゼミで、私も人が変わったように、1日15時間くらい勉強しました。友人からの遊びの誘いもなくなるほど夢中になって勉強した結果、大学卒業直後にゼミ生で初めて米国公認会計士の試験に合格し、大手の監査法人に就職することができました。

監査法人に勤めて3年が経った頃、プライベートで仲の良かった友人3人と、大好きな鎌倉の七里ガ浜に戸建を借りて4人で住むことにしました。「何かやってやろう」と常に考えている4人で、「かまくらにきてちょ」という意味からとった「かまっちょ」という名前で、自分たちにできることから鎌倉を盛り上げようと、さまざまな活動を始めました。まずは地元に溶け込むために、七里ガ浜の町内会に入会。毎年行われる夏祭りでかき氷屋さんを出店して、たくさんの子供たちにかき氷を振る舞ったり、七里ガ浜のご近所さんたちを集めてバーベキューを開催したり。そんな活動をする中で、鎌倉でキャンドル作りを趣味・仕事にしている方と出会いました。それまで自分自身まったくキャンドルとは縁がなく、キャンドルは視界に入っているけれども、特に気に留めたこともない存在でした。そのような私にとって、「キャンドルを自分で作る」という発想がとても斬新で、衝撃的だったことをよく覚えています。

このようなキャンドルとの出会いがきっかけで、その年のクリスマスのイベントでは、キャンドルを使ったイベントを開催することになりました。4人でサンタとトナカイの格好をして鎌倉全域を周り、お菓子をプレゼントしながら、透明のカップに願いごとを書いてもらいます。そして、300個近く集まったカップにキャンドルを入れて、海辺の階段に並べて一斉に灯したのです。これが、私が初めて手がけたキャンドルイベントとなりました。

キャンドルを通して、母校の魅力を引き出す

キャンドルと出会うまで、自分で会社を起こしたいという気持ちを持ったことはありませんでした。しかし、市場調査も何もせず、ほとんど衝動的といって良いような状態で頭と体が自然に動き、日本キャンドル協会を設立するに至りました。モノ作りの盛んな日本で「キャンドル作り」という切り口からキャンドルを流行らせていけば、自然にキャンドルが人々にとって身近なものになるのではないかと考えたのです。その原点には、キャンドルでビジネスをしたいというよりは、キャンドルの良さに共感し、もっと身近に感じてもらいたい、キャンドル作りを広めたいという気持ちがありました。それはいわば、おいしかったレストランの食事をSNSで共有するときのような気持ちでした。
そのように行動する中で、大学時代や卒業後の業務で学んだことが役立った側面もありました。協会を運営する上で必要な会計を自分でできたこともそうですし、コンサルティングの経験があったことで、「キャンドルアーティスト」や「キャンドルインストラクター」がキャンドルを職業として生活していくために必要な、物件選定や集客方法、会計に至るまでの支援にも取り組むことができています。

今回、キャンドルの良さを広めるという思いを実現させる一つの取り組みとして、母校である青山学院大学でのイベントに携わる機会をいただきました。そのきっかけは、「代官山ノエル」を通じて、青山学院大学非常勤講師でもあり、青山学院第2代院長『本多庸一』を記念して創立された日本基督教団本多記念教会(東京都渋谷区)の伊藤大輔牧師など、青山学院大学に関わりのある方と多く知り合えたことです。そのような方々と「代官山ノエルと青山学院大学を光でつなごう」と意気投合し、2019年11月11日から2020年1月6日まで、青山キャンパスの間島記念館やベリーホール周辺をキャンドルでライトアップするイベントに携わることになりました。卒業生として母校とのつながりがなくなってしまうのは寂しいと感じていたので、今回の機会をとても嬉しく思っています。

今回、ライトアップされている間島記念館やベリーホールは、国登録有形文化財(建造物)に登録されるほど意匠に優れた近代洋風建築で、あらためてキャンパスを訪れて眺めてみると、本当に魅力的な建物だと感じます。しかし、私の学生時代がそうであったように、学生のみなさんは、建物の魅力に目を向けることなく、ただ前を通り過ぎていることも多いのではないでしょうか。このライトアップイベントを通じて、少しでも多くの方に建物の素晴らしさを感じていただければ、私もお世話になった母校に対して、ほんの少しですが恩返しができるのではないかと、おこがましくも思っています。

大学は、さまざまな価値観とバックグラウンドを持つ人たちが集まる刺激的な場所です。私も多くの友人に恵まれ、今でもその友人たちは宝物となっています。仕事において何をするかも大事ですが、誰とするかが最も大事なことではないかと私は考えています。仕事でもプライベートでも、自分が信頼できる人たちと過ごす時間が多ければ人生が豊かになりますし、付き合う人が良ければ、自然に人生は良い方向に進むと思うからです。そういう意味で青山学院大学は良い人がたくさん集まる大学だと思いますし、人生という大海に漕ぎ出し、渡り切る力をつけるための場所だとも思っています。

青山キャンパス キャンドルイベント「世の光プロジェクト」

2019年11月11日(月)〜2020年1月6日(月)、青山キャンパスにキャンドルが灯されます。
場所は、青山ベリーホールと間島記念館。その周辺に設置されている青山学院創立に貢献したドーラ・E・スクーンメーカー女史、ジュリアス・ソーパー博士、ロバート・S・マクレイ博士、ジョン・F・ガウチャー博士、4人の宣教師のレリーフの姿や、本多庸一元院長の胸像がキャンドルの灯に照らされます。青山学院創立145周年、青山学院大学開校70周年の記念すべき2019年、色とりどりのキャンドルの灯が、キャンパスを温かな雰囲気に包んでいます。

VIEW DETAIL

インタビュー動画

バックナンバー

*掲載されている人物の在籍年次や役職、活動内容等は、特記事項があるものを除き、原則取材時のものです。

学部選択

分野選択