仲間との議論で新しい視点を得て、現場で真に役立つ法のあり方を考える

掲載日 2023/8/22
No.255
<2023年度 学業成績優秀者表彰 奨励賞受賞>
法学部 法学科 ヒューマン・ライツコース 4年
堀本 明里
愛媛県立松山中央高等学校出身

OVERTURE

「リーガルマインド」を心に留め、今後も自分自身を成長させられるよう精進していきたいと語る堀本明里さんは、自主的に学ぶ真摯な姿勢や授業での議論、友人との意見交換を通して、法的な思考や自信を付けていきました。ヒューマン・ライツコース*では、今世の中で起きていることを法の視点から捉え、より良い社会に向けての深い考察ができたそうです。

*法学部法学科に加えて、2022年度ヒューマンライツ学科を新設。法学科ヒューマン・ライツコースはその前身である。

良い評価が自信になり、学ぶことが楽しくなる好循環

高校生の頃、LGBTQなど性的マイノリティの方々を取り巻く問題について知り、自分なりに調べて広く人権問題に興味を持ちました。青学の法学部法学科のヒューマン・ライツコースでは、そのような分野に特化した科目を履修することができますし、実際に今世界で起きている問題を取り上げて、法の意義や役割を学ぶことができる点にとても魅力を感じました。

「優秀な学生が多い中で、授業についていけるかな」と、不安を持ちながら入学しましたが、自分も努力して優秀な先輩のようになりたいと思い、1年次から勉学には手を抜かないことを心がけてきました。授業に必ず出席することはもちろん、授業中のメモをノートにまとめ直して、マーカーを使ってわかりやすく整理するなど自分なりに工夫をします。定期試験対策として、その範囲内のレジュメの内容は全て覚え込みました。オンライン授業も多かったため、授業の動画を見返すことも理解の向上に役立ちました。
わからないことがある時には、友人と話すようにしています。「私はこう思うけれど、どう思う?」とおしゃべりをしながら自分の理解度を客観的に判断することで、授業の内容も一つ一つ振り返ることができました。
レポートでも、さまざまな判例を比較して事例を理解した上で、自分自身の考えを突き詰めて書くようにしました。高校時代と違って課題の多さに初めは戸惑い、時間も掛かってしまいましたが、学科の先生方に添削していただきながら何度も書く経験を積むうちに、説得力のある書き方や表現力が磨かれたと思います。

地道に勉強を進めてテストやレポートで良い評価をいただけたりすると、ディスカッションの場でも自信をもって自分の意見を言えるようになりました。次第に「授業についていけないのでは?」という不安よりも、活発な議論やそこから自分の思考を深める楽しさの方が大きくなり、良い循環で勉学を進めていくことができました。学業成績優秀者として表彰していただけたのは、その結果だと感じています。

学業成績優秀者表彰にて

現場で苦しむ当事者のために、法を機能させることが大切

これまでの学びを振り返ると、1年次に履修した「ヒューマン・ライツの現場A」という授業が印象的でした。授業を通して、法学に対する考え方の基礎が身に付きました。受講前は、社会で起こるさまざまな問題をどこか遠い世界で展開されていることのように捉えていましたが、授業で扱われたドキュメンタリー映像やジャーナリストの方の体験談から、戦争、貧困、差別といった問題の実情を目の当たりにして、「現場」に目を向けることの重要性を痛感しました。
法律はあれば良いのではなく、多くの人の権利を守るために機能しているか、法律の対象から外れてしまう人はいないか、逆に法律があるからこそ苦しんでいる人はいないか、というように「法」と「社会問題」とを深く結びつけて考える必要があります。それは私にとって4年間を通しての学びのテーマとなりました。同時に、日頃触れる報道では一部分しか伝えられない場合が多いことにも気付き、その裏には何があるのか真の現場の姿を見極める意識を持つようになりました。

また、2年次に履修した「青山スタンダード」科目の「人づきあいの科学B」も印象に残っています。この授業では、主に韓国と日本に焦点を当て、文化的価値観や異文化コミュニケーションの特徴を考察しました。「異文化」は、国籍や人種だけでなく、性別や職業、服装や趣味、家族構成なども含まれます。家族や親しい間柄にも存在するものだと知り、今までの経験を振り返るきっかけになりました。
例えば、ベビーカーや車椅子を利用する人としない人を比較してみても、それぞれ異なった生活様式の中で、各々の捉え方や考え方を持っており、これも「異文化」の一つなのだと気付くことができました。自分自身が育ってきた環境や文化の中でできあがった常識を一般的な常識だと決めつけずに、「異文化」と触れ合う際にはその相違点を認め、受け入れようとする姿勢が大切であることを、心理学の知識を交えながら専門的な観点で学修しました。

仲間との議論は、自分にない視点に出会えて発見の連続

大学の授業では、学生同士で議論する機会が多く、自分とは違った様々な意見に触れることで考えの幅が広がり、さらに学びたくなる好循環が生まれました。

2年次の「入門演習」(プレゼミ)では、民法がご専門の酒巻修也先生の演習を履修し、以前から興味のあった「男女平等の問題」に関連深い夫婦別姓をテーマにグループで研究報告を行ったり、民法の事例をもとに原告と被告に分かれてディベートを行いました。
法律の条文を隅から隅まで読んで理解し、事例と照らし合わせて検討するのはとても大変でしたが、4〜5人のチームで「説得力のある主張を行うためにどうすれば良いのか?」と議論を重ねていく中で、自分では思いつかなかった発想やものの見方を発見できることに楽しさを感じ、チームを良い方向に導くことにも注力するようになりました。ディベート本番で、相手からの鋭い主張に苦戦している場面では、積極的に発言してチームを引っ張っていくことを意識しました。それまでは人前に出て意見を言うことはあまり得意ではなかったのですが、一人一人の発言の重要性や役割の責任感を実感し、チームの勝利に貢献したいという思いが強まったことで、一歩を踏み出すことができたのだと思います。

3年次に受講した「人権法特論G」は、入学前から関心を持ち続けてきたLGBTQについて法の観点から深く学びました。現在日本では「性同一性障害特例法」で性別変更が認められていますが、そのための要件を満たすことは容易ではなく、性別変更を望んでいても、承認される事例は極めて少数なのが現状です。授業内の課題では、これらの要件の内どれを優先的に削除すべきかについて、個人でのプレゼンテーション動画を作成しました。法律が示していることを正しく理解したうえで、一つ一つの要件を具体的に検討することで、条文の問題点や今後の改善の必要性がより見えてきました。また、課題にあたっては、何を根拠にその判断に至ったのかを論理的に説明したり、説得的に主張順序を組み立てることに難しさを実感しましたが、資料作成から撮影まで全て自分一人で行うのは初めての経験で、工夫する面白さや達成感を感じることができました。

卒業後は地元・愛媛で、「リーガルマインド」を生かした銀行員に

3年次になって将来を真剣に思い描いたとき、法学部で学んだことを生かし、生まれ育った地で働くことが自分に合っていると思いました。地元である愛媛県内の企業に絞り、合同企業説明会に参加して選択肢の上位に上がったのが金融の仕事です。その中でも、お客様と直接かかわりながら人生設計のパートナーとしてお手伝いできる「銀行」の仕事に最も興味を持ちました。選考の過程で、銀行員に大切なのは、十分な法知識だけでなく「お客様に対するおもてなしの精神と、大切な人生を預かるに値する人物であるか」ということだと実感しました。私はこれまで、法学部で様々なものに触れ学んでいく中で、法律の知識はもちろん、公正で客観的な視点を持ちながら当事者の立場に立って考える「リーガルマインド」を育ててきました。青学の法学部で培ってきた財産は、銀行員として成長していく過程で必ず糧になると確信しています。この先、戸惑ったり悩んだりする場面も多くあると思いますが、お客様から「あなたなら」と頼ってもらえるような銀行員を目指して頑張っていきたいです。そして、どんなときも誠実さと笑顔を忘れず、人として成長できるよう精進していきます。

地元・愛媛のお気に入りの場所、しまなみ海道の亀老山展望台にて、母と。

法学部には、弁護士や裁判官等法曹を目指す人、いろいろな業界の民間企業を目指す人、起業を考える人、本当にさまざまな志を持つ学生が学んでいます。仲間達と将来について話し合いながら、私はその夢の内容に刺激を受け、「どんな選択肢もあり得るんだ」と思えました。最終的に地元に戻ってUターン就職することを決断できたのも、友人と語り合えたことがやはり大きいと思います。Uターン就職活動については、進路・就職センターでの相談や説明会等のイベントへの参加をはじめ、青学生専用の就職活動のためのオリジナルウェブサイト「Web Ash(進路・就職支援システム)」やオンラインサポートを活用することで、就職活動中に特段困ることはありませんでした。不安に感じるときに、Uターン就職を考えている友人とお互いの地元の情報を交換しながら励まし合えたことも、心の支えになりました。

松山の道後温泉別館・飛鳥乃湯泉にて

学生生活を振り返ると、法学部法学科のヒューマン・ライツコースでの学びを通して、世の中で起こっていることを法の視点から深く考え、また当事者の立場に立って思考する訓練ができたと実感しています。また、勉学においても卒業後の進路決定においても、様々なことにアンテナを広げて人と触れ合い、進んで新しい知識や価値観を得ようとすることが、自分自身を成長させるための重要なカギになるのだと再認識できました。

※各科目のリンク先「講義内容詳細」は掲載年度(2023年度)のものです。

堀本さんの就職活動スケジュール

  1. <3年次> 2022年4月

    外部の就職サービスに登録

  2. <3年次> 2022年9月

    愛媛に戻り就職することを決意

  3. <3年次> 2023年2月上旬

    愛媛での合同企業説明会に参加

  4. <3年次> 2023年2月下旬

    銀行の他、IT、広告などの企業に応募、インターンシップ参加

  5. <3年次> 2023年3月下旬

    SPI受験、本選考エントリーシート提出

  6. <4年次> 2023年4月

    本選考面接、内々定(銀行1行目)

  7. <4年次> 2023年5月

    本選考面接、内々定(銀行2行目)

法学部 ヒューマンライツ学科

AOYAMA LAWの通称をもつ青山学院大学の法学部には、「法学科」に加え、2022年度新設の「ヒューマンライツ学科」があります。
ヒューマンライツ学科は、人間が人間らしく生きるために欠かせない「人権」について、法学をはじめとした多様な学問分野から学ぶ日本初の学科です。人権は国の最高法規である憲法で保障されているだけではなく、国際社会の普遍的な価値でもあります。さまざまな人権問題の解決・改善のために法をどのように生かしていけるかを意識的に学び、政治学や経済学、公共政策などの観点からも学際的にアプローチします。

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