「銀行員日本代表」
として、和の心で
人を繋ぐ

掲載日 2020/11/30
No.45
三菱UFJ銀行
ニューヨーク支店ヒューストン出張所
Vice President
経済学部卒業
鈴木 浩介

OVERTURE

⼤学での学びのフィールドは、海外留学やインターンシップ、ボランティアを通じて世界中に広がっています。 鈴⽊さんは、経済学部での学びや仲間と切磋琢磨して鍛えた英語⼒と豊かな⼈間性を⽣かし、世界で事業を展開する日系企業の⽀援に情熱を傾けています。

エネルギーの街で
日系企業の経営課題の
解決をサポート

私が駐在しているテキサス州ヒューストンは、世界的なエネルギー関連企業が多数拠点を構え、“Energy Capital”とも呼ばれている街です。石油やガスを扱うエネルギー関連企業や総合商社はもちろん、石油化学、採掘に欠かせない建機等のメーカーなど、石油・ガスに関わる幅広い業種の日系企業がこの地に進出しています。私は今、そうした日系企業に対して、融資業務を中心に経営課題の解決をサポートする業務を担当しています。
ヒューストン出張所に着任して1年半。近年こちらでは、日系企業による現地企業の企業買収(M&A)が非常に活況です。担当エリアはヒューストンがある南テキサスやルイジアナ州ですが、私の担当するお客様が買収をした現地企業は全米各地にあるため、新型コロナウイルスの流行以前は、月2~3回のペースで、東はニューヨークから西はアリゾナ州まで、南は私がいるテキサス州から北はミネソタ州まで、米国内を飛び回り、お客様と英語で商談をしていました。

銀行のビジネスには、時間を掛けて利益を上げる、という側面があります。一度の取引がうまくいったからといって、そのお客様に永続的にお付き合いいただけるかといえば、そうではありません。そこで大事になるのは、やはり「お客様第一」の精神です。
融資やM&Aによってお客様の利益になる成果を実現できれば、まずお客様に喜んでいただけます。私たち銀行の利益にもなり、同僚や上司にも喜んでもらえます。お客様が喜び、仲間が喜ぶ。それが私の喜びであり、仕事のやりがいです。そして、喜びとやりがいを感じることで「お客様にもっと大きな喜びを感じていただきたい」という新たなモチベーションが生まれます。お客様第一の実現が組織への貢献になり、自己実現に繋がる。そんな循環をどんどん大きなものにしていくため、日々努力を続けています。

ヒューストンで日系企業の支援業務を担当する鈴木さん

青学で育んだ
英語力と豊かな人間性

小さいころから、海外で活躍したいという夢を持っていました。英語の勉強を自主的に始めたのは中学時代。ビートルズが好きで、曲を聴きながら歌詞を書き出して覚えることからスタートしました。高校時代までは、塾に通ったりテキストで自学自習したりしていたのですが、海外で働くことを視野に、英語をしっかり学べる環境に身を置きたいと考え、青山学院大学に進学を決めました。
大学時代は、英語の授業はもちろん集中して受けていましたし、英語講義の馬場弓子教授のゼミナール(ゼミ)にも所属しました。塾講師のアルバイトでは英語の授業を担当し、教える側に立ったことも英語の理解を深めることに役立ちました。大学2年の夏休みには、カナダに1カ月の短期留学をしました。短期間ではありますが、英語圏の文化、社会、生活を肌で感じたことも良い学びに繋がったと思います。
学生時代に鍛えた英語力は、アメリカで働く現在の私を支えていますし、日本での仕事でも大いに役立ちました。特に力を発揮できたと感じているのは、日本で担当した外資系企業の大規模プロジェクトです。英語の契約書は一言一句精査が必要でしたし、お客様の会社の本部があるニューヨーク、お客様の法務担当者がいるロンドン、私がいる東京と3都市間で、数カ月にわたって毎日英語のメールのやり取りが続きました。電話会議では、金融業界特有の表現を含んだ話の内容が正確に伝わっているか確認するため、通訳が翻訳する英語と日本語の両方を聞いて議論を進めることもありました。英語力がなければ一歩も進まない案件でしたし、最終的には当行の頭取から表彰されることができた思い出深い仕事となりました。この経験が、今回のアメリカ赴任のチャンスを掴むきっかけになったとも感じています。

英語力のほかにもう一つ、学生時代に得られた大きな財産があります。向上心や知的好奇心にあふれる仲間たちです。
高校時代にサッカー漬けの日々を送っていた私は、大学に入学するまで、社会の動きや将来を強く意識することはあまりありませんでした。ところが、大学で目にしたのは、既に社会で働くことを視野に物事を考え、人とのネットワークづくりを意識している友人たちの姿です。「次元が違う場所に来てしまったな」。最初はそう感じたこともありました。しかし、毎日彼らと一緒に授業を受け、ともに時間を共有し、刺激を受け、私の意識も変わっていきました。
マーケティング論の授業は、興味深い講義内容はもちろん、仲間と活発に議論を重ねてビジネスモデルを作り上げたことも、楽しい思い出として心に残っています。定期試験の前には、仲の良い仲間たちと「試験範囲についてのプレゼンテーション」をするのが恒例でした。半年分の講義の内容をまとめ、ポイントを絞り、どこが試験問題になるかを分析してお互いに発表し合うのですが、これが非常に効果的な学習方法になっていました。人間的な魅力にあふれた人、優しい人、視点の鋭い人、頭の回転が速い人――。キャンパスで出会ったたくさんの仲間とは、互いを高め合えるとても良い関係が築けましたし、私を成長させてくれたのは彼らとの出会いだったと感じています。

仲間たちとの大学定期試験勉強会(左から2人目)

他者を理解し、調和を生む。自ら考えたリーダー像

大学入学当初、私が周りの友人と自分の意識の差に驚き、少し気後れしていたことは、先ほどもお話しました。彼らと肩を並べたいと切磋琢磨する中で、私は、自分なりの「リーダー像」を持つようになりました。
リーダー像をつくりあげるヒントになったのは、アルバイトをしていた塾の上司との会話でした。「本当に優秀なリーダーは、自分より優れている人を動かす力がある人。そういう存在になれたらいいんじゃないかな?」。自分より頭が切れる人、自分より行動力のある人に囲まれ、自分がどんな存在になるべきなのかを考えていた私には、上司のその言葉が心に響きました。そして、そのアドバイスを咀嚼し、自分のものにするために、「どうすれば優秀なリーダーになれるか」を深く考えていきました。

組織のリーダーの価値が試されるのは、課題を解決する時です。課題を解決するために必要な力は3つ。「問題を見つける力」、「解決策を考える力」、そして「やり抜く力」です。ところが、この3つを全て高いレベルで兼ね備えている人は、そう多くはいません。「問題を発見するのは得意でも、合理的に解決策を考えるのは苦手」「解決策をパッと考えつくのに、面倒だからと実行したがらない」。そんな異なる力を持つ人たちと課題を解決するためには、それぞれの力を理解し、繋ぎ、調和させる存在がリーダーに適している。それが、私がたどり着いた答えでした。
誰よりも優秀で先頭に立つリーダーとは異なる、人を繋ぎ、周囲から信頼を得て、「和」で組織をまとめるリーダー。私が思い描いた、自分なりのリーダー像です。その姿は、青山学院が掲げる「サーバント・リーダー」(自分の使命を見出して進んで人と社会とに仕え、その生き方が導きとなる人)の姿にも相通じるものがあるのかもしれません。

経済学部開設60周年行事に登壇(前列左)

その後、「人を繋ぐこと」を意識して行動していくうちに、尊敬していた仲間たちから「リーダーはお前だよ」と認められるようになり、ゼミ長や、他大学のゼミと連携して学ぶ、ゼミナール連合の代表を経験することができました。そしてその意識が、お客様を思い、心を通わせることを大切にするという現在の私の仕事に対する姿勢に繋がっていると思っています。

「銀行員日本代表」として、もっと多くのお客様を幸せに

私が海外で活躍したいという夢を持つきっかけになったのは、幼いころから大好きだったF1のレースでした。当時は、マクラーレン・ホンダが圧倒的な強さを誇っていて、日本企業が世界最高峰の舞台で存在感を発揮している姿に憧れたのが始まりです。
その思いは今も変わることはありません。銀行には非日系の企業を担当するチームもありますが、世界のマーケットで戦う日本の企業をサポートしたいという思いが強く、日系企業の担当を希望しました。今は、私も「銀行員日本代表」になったつもりで日々頑張っています。

アメリカで仕事をする中で、これから日本が世界でさらに存在感を示していくためには、失敗に対しての寛容さが大切ではないかと感じています。日本企業は、失敗に対してネガティブに捉える傾向が強く、ベンチャー企業の買収や企業内ベンチャー等への「チャレンジ」にも消極的になりがちです。それではやはり新しい時代で活躍するものを生み出すのは難しいでしょう。近年は、少しずつその姿勢が変化しつつありますが、失敗に対して「ナイストライ」と言える気質を持つことで、より日本企業の強みを発揮できるのではないでしょうか。

今は自分が最前線に立って仕事をしていますが、これからは部下を持って仕事をする喜びを感じてみたいと思っています。上下関係にとらわれずにしっかりコミュニケーションを図り、目標に対して部下が「一緒にやりたい」と思ってくれる関係が理想です。部下を持つことで自分のフィールドが広がり、より多くのお客様を幸せにしていくことが、これからの私の夢です。

鈴木さんの1日
(現在は新型コロナウイルスの影響で在宅勤務)

  1. AM 8:00

    車でオフィスに出勤。時差がある日本からのメールをチェックし、その日の業務を確認

  2. AM 10:00

    お客様との面談

  3. PM 0:00

    お客様とランチ

  4. PM 2:00

    お客様との面談・移動

  5. PM 3:30

    お客様との面談

  6. PM 5:00

    オフィスに戻り、メール処理や資料作成

  7. PM 7:00

    退勤。帰宅後は二人の子どもと過ごすのが楽しみ

卒業した学部

経済学部

青山学院大学の経済学部には2学科があります。経済学科では、世界中で動き続け、国境を越え、まるで生き物のように刻々と変化する経済を、専門的に探究します。経済活動や現象をとらえる視点や、より良い経済システムのためにはどうすれば良いかを効率よく学ぶための「理論・数量コース」「応用経済コース」「歴史・思想コース」を設けています。また現代経済デザイン学科では、国や地域を越えて協力しあうグローバル社会で、新たな経済システム(制度)をデザイン(設計)できる力を養います。グローバル社会では、恩恵を受ける一方、格差・貧困・環境破壊等の試練等も山積しています。地理情報システム(GIS)を駆使しながら、諸問題を克服し、誰もが暮らしやすい世の中を実現するために必要な「公共」の視点を養います。

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