思い込みや偏見をなくし、誰もが自分らしくいられる社会を実現したい

掲載日 2023/10/18
No.268
文学部 フランス文学科 4年
坂本 涼華
神奈川県立鎌倉高等学校出身

OVERTURE

「思い込みや偏見を取り除き、一人一人が楽しく、自分らしくいることができるオープンな社会を実現したい」という夢を抱いて、ビジネスと生活者をつなぐポジションである広告業界を目指した坂本さん。就職活動を「新しい経験ができるチャンス」と前向きに捉え、自分が本当にやりたいことを追い求めた結果、大手広告会社から内定を得ることができました。

「新しいことに挑戦しよう」と進学先に選んだフランス文学科

バイクメーカーに勤務している父の影響で、幼い頃からバイクレースの国際大会をテレビで観戦し、国内大会は直接サーキット会場で観戦する、そんな環境で育ちました。日本でのモーターサイクルスポーツの注目度はそこまで高くありませんが、バイクレースの本場であるヨーロッパでは大変な人気を誇るスポーツです。世界大会で華やかに活躍するヨーロッパの選手の姿を見ているうちに、彼らの言語や文化に興味を持つようになりました。高校時代は世界史が好きだったこともあり、「大学では英語以外の新しい言語を学ぶことに挑戦しよう」と、ごく自然な流れでヨーロッパという地域に惹かれていきました。
その中でもフランスについて学びたいと思ったのは、近代以降、文化と芸術でヨーロッパ文明をリードし、現在でもファッションやアートの最先端の国というイメージがあったためです。私自身フランスに行ったことはなく、語学もゼロからのスタートでしたが、「新しい物事や価値観に触れてみたい」という思いが強く、思い切ってフランス語が第一言語のフランス文学科で学ぶことを決めました。

父の影響からモーターサイクルスポーツを通じてヨーロッパの文化に興味を抱いたという

しかし、入学直後の授業はコロナ禍の影響で全てオンラインとなってしまいました。これまで学んできた英語とは異なる独特の発音ルールに加え、日本人には聞き取りが難しい発音や男性名詞・女性名詞の区別と冠詞の使い分け、さらには変則的な動詞の活用など、初めて学ぶ言語の習得にかなり苦戦しました。それでもまずはフランス語に慣れることが一番と考え、会話の授業を中心に、とにかくたくさん聞いて話すことを心がけました。履修する授業も、できるだけフランス語ネイティヴの先生が担当されている科目を選択し、実践力を身に付ける努力をしました。その点、青学のフランス文学科は少人数制授業が多く、特に「コミュニカシオンⅠ~Ⅳ」という授業では、ネイティヴの先生から会話表現の指導を受けることができ、生きたフランス語を習得するには恵まれた環境だったと思います。グループごとに分かれ、それぞれテーマを決めて毎週発表を繰り返していていくうちにスムーズに会話できるようになり、自分の語学スキルが向上していくのを実感できると、次第にフランス語を学ぶこと自体が楽しくなっていきました。

オンライン授業期間で仲良くなった友達と

「思い込みや偏見の払拭」を軸に社会と自分の未来を考える

フランス文学科には語学だけではなく、フランス文学やフランス文化に関する多彩な科目が開講されています。その中でも印象に残っているのが3年次に受講した井田尚先生の「フランス文学研究Ⅰ・Ⅱ」と濵野耕一郎先生の「フランス文学演習Ⅲ・Ⅳ(8)」です。高校の世界史では、フランスの植民地問題や人種差別を「史実」として学びましたが、大学で履修したこの2つの授業を通じて、フランス小説を読み解き、描かれた時代背景や人物の心情を掘り下げることで、当時の階級制度や植民地政策に伴う人種差別の問題をより深く理解することができました。井田先生の授業は、前期と後期で18・19世紀の恋愛小説を読み解きました。毎週違う作品を用意してくださったので、新鮮な気持ちで受講できました。濵野先生の授業では、一つの自伝的小説をじっくり研究し、学期末に発表をしました。受講生が各自でテーマを設定したので、様々な見解を聞けてとても楽しかったです。現代とは異なる感覚を理解することには難しさがありましたが、これまでに出会ったことのなかった考え方や価値観を理解する貴重な機会になりました。

また、入学後、キャンパスで行われている礼拝に出席したり、「青山スタンダード」科目の履修を通して気付いたことは、ヨーロッパ文化を理解するためには、キリスト教が与えた影響について基本的な知識が必要だということです。大学生になるまでほとんど触れたことがなかった「キリスト教の思想や歴史」は私にとって新しく出会えた知識のひとつです。様々な生き方を知り、異なる考え方があるという事実を理解し、受容して尊重することの大切さを学びました。これは青山学院大学ならではの経験だと思います。

この考えは、卒業後の進路を決める上で大きな影響を与えてくれました。本格的に卒業後の進路を考えるようになった際、私の中心にあったのは「あらゆる人々が思い込みや偏見に囚われることなく、楽しみや興味の場を広げられるようにしたい」という思いです。
その原点は大学での学びに加えて、私自身の個人的な体験にもあります。「バイクに興味がある」と言うと、周囲から「男っぽい」とか「危ない」といった反応を受けることが多く、違和感を覚えていました。バイクメーカー勤務の父も、若者や女性にバイクの魅力を伝える難しさに悩んでいるという話をよくしており、思い込みや偏見を取り払うことは、メーカーにとって大きな課題になっていることも感じました。「特定の考え方に囚われることは、生活者の楽しみや喜びを狭め、一方で企業や社会の成長を妨げる要因にもなっているのではないか」という思いが就職活動を行う上での考えの軸になりました。

自分らしく、夢に挑戦できる場を見つける

3年次の10月頃に本格的に就職活動をスタートさせましたが、その時点では具体的に業界を絞り込めていなかったため、広告業界の他に、メーカーやIT業界など幅広い職種の会社説明会に参加しました。
業界を絞り込む上で重要視していたことは「個性や挑戦を受け入れ合う環境であるか」、「多領域に関わることが出来るか」の2点です。なぜなら、「思い込みや偏見をなくし、社会を根幹から変えたい」という私の目標を達成するために必要なことだと考えたからです。自分らしく働くためには多様な考え方や価値観に触れることが大切だと思い、インターンシップにも積極的に参加し、年明けからはOB・OG訪問にも力を入れました。会社説明会より詳しい情報を直接伺えた上に、エントリーシートを添削いただいたり、面接対策や、グループディスカッションに関する貴重なアドバイスをたくさんいただいた経験は大変貴重なものだったと思っています。

本選考は20社ほどにエントリーしましたが、「あらゆる人々が不自由や差別を感じることなく、生きることを楽しめる社会をつくりたい」という素直な自分の考えを伝えるべく面接に臨み、選考通過の連絡が届いたのは、ほとんどが広告会社でした。最初は驚きましたが、自己分析を続けたところ、広告会社以外のエントリーシートでは、企業が求める人材に合わせて作成していたことに気付き、やはり自分の思いを実現できるのは広告業界だと確信しました。最終面接では、「様々な業界と消費者を繋ぎ、生活者の目線でより良いサービスや商品を届けていく広告業界で、人々の無意識の偏見を取り除き、一人一人が自分らしくいられる社会の実現に貢献したい」と強くアピールした結果、第一志望の大手広告代理店から内定をいただけました。面接官の方から「あなたの夢はきっと実現できると思うよ!」と励ましていただいたことは、今も強く印象に残っています。

就職活動中は、サークル仲間の存在が大きな支えとなった

また、面接試験では話す内容とともに、常に相手に好印象を与える「笑顔」を心がけていました。オンライン面接時は照明や背景に細かく気を配り、できるだけ笑顔が映える自然光が入るよう調整していました。オンラインといえども企業の方々と初めてお会いする機会です。小さな工夫も大切にしたいと考えていました。最終面接は対面が多かったので、マスクでもきちんと熱意が伝わるようにいつも以上に笑顔や声のトーンを意識して臨みました。

社会ではまた新しい「挑戦」と「わくわく」が待っている

就職活動を振り返って感じるのは、「自分らしく」活動したことで、大変さを感じるだけでなく、楽しむこともできたということです。自分に合う企業・業界を見極めながら、焦らずにしっかりと自己分析を行い、最後まで「心から目指している夢」を貫くことができたのがその要因だったと思います。私にとって就職活動は、これまでに接する機会がなかったような年上の方や、OB・OG等の面接官と対話ができるかけがえのない体験でした。大学生の目線だからこそ率直に質問や疑問を投げかけ、気持ちを伝えられたのだと思います。

私が第一志望の企業から内定をいただけたのは、就職活動の軸を持ち続けた事はもちろん、大学での学びを通して広がった視野、さらには2年次から所属している大学公認のオールラウンドサークル「Leoneスポーツ愛好会」の活動で広がった人との繋がりがあったからこそです。気持ちが落ち込みそうな時には励まし合ったり、先輩に相談に乗っていただいたりと、周りの方の支えがとても心強かったです。また、初心者からでも臆することなく学べる、充実した青学のカリキュラムのおかげで、一から始めたフランス語も上達でき、成長が自信となりました。青山学院大学は、自分の意志さえあれば、将来の可能性を広げることができる場所だと実感しています。

サークルの友達と福岡旅行(左から三番目が坂本さん)

いよいよ来春から、社会人です。広告会社は世の中の多様なニーズに最適なソリューションを提供しようとしています。実際に自分がどのような業務を担当するか分からないですが、未知の世界に飛び込むからこそ、自分自身の経験を生かしていきたいと考えています。今まで知らなかった事にも多く直面するでしょう。だからこそ、常にチャレンジ精神を忘れず、新たな考え方や価値観に触れ続けたいです。今は大学でフランス語に「挑戦」すると決めた時と同じ、「わくわく」した期待の気持ちで自分の未来を見つめています。

坂本さんの就職活動スケジュール

  1. <3年次> 2022年 10月~12月

    1dayインターンシップ参加
    広告業界やメーカー、IT業界等の会社説明会に参加

  2. <3年次> 2023年 1月

    OB・OG訪問

  3. <3年次> 2023年 2月

    第一志望を広告業界に絞る

  4. <3年次> 2023年 3月

    広告業界含む20社の企業に応募

  5. <3年次> 2023年 3月下旬

    SPI試験、本選考エントリーシートを提出

  6. <4年次> 4月

    本選考面接
    最終面接に進んだのは、ほとんどが広告会社

  7. <4年次> 5月

    第一志望の大手広告代理店から内々定をいただく

※各科目のリンク先「講義内容詳細」は掲載年度(2023年度)のものです。

文学部 フランス文学科

青山学院大学の文学部は、歴史・思想・言葉を基盤とし、国際性豊かな5学科の専門性に立脚した学びを通じて、人間が生み出してきた多種多様な知の営みにふれ、理解を深めることで、幅広い見識と知恵を育みます。この「人文知」体験によって教養、知性、感受性、表現力を磨き、自らの未来を拓く「軸」を形成します。 フランス語はヨーロッパ文明を築いた美しく理性的な言語です。フランス文学科では、初学者にも既習者にも配慮した学習環境を整えています。1・2年次の集中的なカリキュラムでフランス語の基礎力をしっかりと身に付け、その後に多彩な演習と特別講義で知識を深めます。専門分野は「文学」「語学」「文化」から選択。実践的なフランス語能力の習得と、国際社会で活躍できる優れた人材の育成を目指します。

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