学業と両立させて獲得した
eスポーツ日本一の栄冠
法学部 法学科 ヒューマン・ライツコース 3年
プロゲーマー
OVERTURE
青山学院大学では法学に関する専門的な学びに日々いそしみながら、eスポーツで世界を舞台に活躍している樋口さん。昨年は国内トップクラスの2つの大会で優勝を果たし、その功績がたたえられ、学生表彰を受賞しました。
プロゲーマーは競技者でありエンターテイナー
私は高校生だった2018年から対戦格闘ゲーム「ストリートファイターⅤ」のプロゲーマーとして国内外のさまざまな大会に参戦してきました。昨年は「Japan University eSPORTS Championship:U-Champ. (日本学生eスポーツ競技大会)」と「CAPCOM Pro Tour Online 2021 日本大会2」の2大会で優勝を収めることができました。前者は大学生日本一を決める大会で、後者はハイアマチュアからプロゲーマーまで広く参加する国内最高峰と言える大会です。
ゲームそのものは家族の影響で3歳くらいから始め、さまざまなジャンルに触れながら育ち、小学3年生の頃には友人たちと対戦格闘ゲームで遊ぶようになりました。1対1でプレイする対戦格闘ゲームの大きな魅力は、自分が繰り出した動きや技に対して、相手がどのような反応や反撃をするのか、互いに相手の次の行動を読み合いながら試合を進める心理戦です。この対戦格闘ゲーム特有の「相手との対話」とも言うべき奥深さに引き込まれ、中学時代にはアマチュアとして大会に出場していました。
コロナ禍となり、仲間と集まる機会が大幅に減ったため、現在は主にオンラインで強豪プレイヤーと対戦し、練習しています。負けた場合には原因を分析したいので、練習後に対戦相手と話し合い、積極的にアドバイスをもらうようにしていますが、自分の意図や考え方とは異なる視点や気づきが得られるので、こうしたコミュニケーションも非常に重要だと感じています。
数年前まではとにかく勝つことにこだわっていましたが、最近は、結果ばかりを気にするのではなく自分の成長に重きを置き、何よりゲームを見ている人にも楽しんでもらうことが大切だと思えるようになりました。プロゲーマーは競技者であると同時にエンターテイナーでもあるという自覚を持ち、大会に臨んでいます。
今回、学生表彰を受賞してうれしく思うと同時に、研究論文や部活動のスポーツで功績をあげた方々と並び、eスポーツという新たな分野での活躍を認めていただき、青山学院大学の評価に対する柔軟な姿勢を実感しました。また格闘ゲーム界には現役大学生の兼業プロゲーマーがほとんどいないので、この表彰はプロゲーマーを目指す大学生や、eスポーツ発展への貢献にもつながったのではないかと思います。
法律の学びで「違和感」に対するセンスを磨きたい
大学での学びについては、授業内容はその場で理解して、疑問を持ち越さないように復習し、内容を吸収するように心がけています。まず大学の学びを終えてからゲームに取り組むといった具合に、きちんと頭を切り替えることを意識しています。ゲームはもちろん好きですが、1日中ずっと続けるのはつらいので集中して効率良く練習しており、学習が良い気分転換になっているという側面もあります。
「ヒューマン・ライツの現場A・B」を受講してからは世界各地の社会問題に目を向け、いろいろな国の方と対戦しながら、相手がどんなバックグラウンドを抱えているのか、このプレイヤーの住む国では「今あんなことが起きているんだ」などと思いをはせるようになりました。森本麻衣子先生の「人権法特論B」もたいへん興味深い内容で、日本の経済格差や教育費、非正規雇用・派遣労働などの諸問題を学び、自分の視野を広げることができました。社会人経験がないため実感しにくいトピックもありましたが、リアルなエピソードを聞くことで、個人の力ではどうにもならず、社会の構造や情勢から困窮に追い込まれてしまう例が多くあり、決して他人事ではなく、自分が深刻な状況に巻き込まれてもおかしくないと意識を変えられたことは大きな収穫です。
現代社会や政治経済の知識は、今を生きる全ての人に関わるものであり、私が携わるeスポーツ界ももちろん例外ではありません。eスポーツはまだ歴史が浅いので関連した法律の整備も追いついておらず、海外では大会運営元などからプレイヤーに賞金が支払われないといったトラブルも実際に起きています。
プロゲーマーは、ゲーム一筋の人も多く、また前例がないこともあり不当な扱いを受けても「こんなものか」と問題に気付けないこともあるかもしれません。しかし、法律などの知識を身に付けておけば「さすがにこれはおかしい」と違和感を覚えることができ、いざという時に自分を守ったり、困っている仲間の相談に乗ったりすることにもつながるでしょう。その「違和感」に対するセンスを磨くためにも、今後は民法についての学びを深めようと考えています。
チャレンジ精神あふれる人々にも開かれた青学
入学当初、授業はオンラインばかりでしたが、最近ではキャンパスに足を運ぶ機会も増えたので、今後は大学のイベントにも参加しようと思っています。卒業後もプロゲーマーを続けるのか、他の仕事に就くのかはこれからゆっくり考えますが、いずれにせよこれまでの経験を生かしてeスポーツに貢献していくつもりです。
青山学院大学総合プロジェクト研究所「知財と社会問題研究所」では、株式会社バンダイナムコエンターテインメントと共同で「ゲームを活用した社会課題解決の可能性の研究」を行い、第一線で活躍するクリエイターなどを招いたシンポジウムも開催しています。2021年度には青山学院創立記念オンラインイベント「AGU e-SPORTS CUP*」が開催されるなど、学内でeスポーツに触れる機会が今後は増えてくるかもしれません。私自身、お力になれることもあるかと思いますので、ぜひ協力させていただければと思います。
新しいジャンルであっても活躍を認めてくれる風土が青山学院大学にはあるのだと、今回の学生表彰受賞で私は実感しました。ゲームに限らず新しい分野にチャレンジしている方も、その功績を柔軟に受け入れ、認めてくれる開かれた青学で共に学びながら、ぜひとも自分のしたいことを存分にやり抜きましょう。
*新型コロナウイルス感染症の影響を受け、例年緑ヶ丘グラウンドで行なっている創立記念大会が中止となり、その代替企画として実施
※各科目のリンク先「講義内容詳細」は掲載年度(2022年度)のものです。
法学部 ヒューマンライツ学科
AOYAMA LAWの通称をもつ青山学院大学の法学部には、「法学科」に加え、新たに2022年4月開設した「ヒューマンライツ学科」があります。ヒューマンライツ学科は、人権問題の解決のためという目的意識をもって、法および隣接分野を学びます。
人権の保障は、国の最高法規である憲法で掲げられているだけでなく、国際社会の普遍的な価値として認められています。本学科では、社会のさまざまな人権問題の解決・改善のために法をどのように活かしていけるかを意識的に学び、かつ、政治学、経済学、公共政策などの観点からも学際的にアプローチします。
バックナンバー
電気電子工学科での学びと出会いで広がった視野、身に付いた積極性
理工学部 電気電子工学科 3年
幅広く芸術を学んで身に付いた、鑑賞力と印象を言語化して伝える力
文学部 比較芸術学科 3年
夢は日本のビジネスを支える弁護士。正確な知識と「説明できる力」で、司法試験に挑む
法学部 法学科 4年
将来を模索していた私が
経営学科で見定めた
公認会計士という目標
経営学部 経営学科 4年
研究を通して積み重ねた
挑戦と成功体験が大きな自信に
理工学研究科 理工学専攻 知能情報コース
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オリジナルの分子を使って
新たな核酸の検出手法を開発
理工学研究科 理工学専攻 生命科学コース
博士後期課程2年
*掲載されている人物の在籍年次や役職、活動内容等は、特記事項があるものを除き、原則取材時のものです。