憧れのロケットエンジンの
研究に熱中できる喜びと
感動が夢への原動力に

掲載日 2023/03/28
No.223
理工学部
機械創造工学科 3年
中川 賢人
神奈川県立相模原高等学校出身

OVERTURE

高校時代の夢に満ちた経験が本学での学びに結びついた学生を紹介します。中川賢人さんは、高校生の時に 宇宙航空研究開発機構(JAXA) 宇宙教育センター主催の宿泊プログラム「エアロスペーススクール」に参加。宇宙航空分野の最前線を体験する中で、ロケットエンジンの開発に強い憧れを抱きました。同じ志をもつ仲間と一緒に学びたいと、本学の機械創造工学科に進むことを決心。航空宇宙工学分野にJAXAと連携した授業があることも、ひとつの決め手になったそうです。

入学当初から履修を決めていた「流体力学」の授業

履修する前から興味をもっていた授業が横田和彦先生の「流体力学及び演習」です。流体力学とは、機械工学の基礎的な学問である4力学(材料力学、流体力学、熱力学、機械力学)のひとつ。流体(液体と気体)の静止状態や運動状態での性質、流体中での物体の運動など、ロケットエンジンの研究に欠かせない理論を学びます。機械工学全般を学ぶ上で基本的な知識となる数理的表現についても丁寧に指導していただきました。毎回提出が求められる演習課題で講義内容を復習し、応用力を高めていきます。取り扱う内容や課題が幅広く非常にハードな授業でしたが、その分やりがいや達成感も大きなものでした。ここで学習した内容が他の科目で取り上げられることも多く、同じ理論を違った角度から学ぶことで、より理解を深めることができました。
3年次の「機械創造工学実験Ⅰ」では、学部施設の機械工作室で行ったフライス盤の部品加工が印象に残っています。実際にフライス盤を使用して、凹型と凸型の金属をはめ合わせる加工実習を行いました。刃物を使う金属加工は初めての経験で緊張しましたが、安全確認を含む技術指導をしっかり受けたおかげで無事に作業を行うことができました。

空気の流れを再現する実験で狙い通りの結果に

現在は流体力学を教わった横田先生の「ジェット推進研究室」に所属しています。扱うのは、航空宇宙分野のジェット推進機の研究を中心にポンプ水車やキャビテーションなどの流体工学全般。パソコンを用いた数値計算をはじめ、ロケットエンジン内や飛行機翼周りの空気の流れを再現する実験などを行っています。航空機や水力発電といった規模の大きなものから、エアコンなどの身の回りのものまで、さまざまな製品・設備の性能や安全性を向上させるための研究です。
私のメインテーマはロケットエンジンの性能向上についてです。実用化されているロケットエンジンは、空気の流れがノズルから離れてしまう「剥離」が生じ、これがロケットを宇宙に飛ばす推力の低下を招いています。そこで、ノズル内に新たに噴射管を設置し、空気の流れを壁面に押しつけて剥離を抑える新型ノズルを設計しているところです。実験がうまくいかないことも多々ありますが、高校生の頃から憧れていた研究ができる喜びの方が大きいです。設計したノズルに、狙い通りに空気が流れるアニメーションを作成できた時の感動は忘れられません。もし現実世界で自分の設計したノズルが使用された場合、ノズル内部の状態を容易にイメージすることができ、モチベーションが一層高まりました。
本学科の学習で驚いたのは、研究に必要なソフトウェアや論文、専門科目で出される演習問題がすべて英語表記だったことです。最初は戸惑いましたが、機械工学系で頻出する専門用語や独特の表現を学ぶ良い機会となりました。語学力の向上はもちろん、エンジニアに求められる英語のスキルを磨くことができるのは、機械創造工学科の魅力のひとつだと思います。

※航空宇宙分野における本学の取り組みに関する情報はこちら

専門科目とは勝手の違う学問分野で新鮮な発見

シラバスの講義内容に興味をもって履修した本学独自の全学共通教育システムの青山スタンダード科目は、帆苅基生先生の「文学A」です。日本近現代文学における「ファンタジー」「SF」「アドベンチャー」を分析し、背後にある社会的・文化的背景がどう作品に反映されているかを考察するというものです。現代文や古文のように時代で区切らず、ひとつの大きなテーマで考察を深める授業形態が新鮮でした。今まで手に取ることのなかったジャンルの作品を読んだり、専門分野の実験レポートとは勝手の違う課題やコメントの書き方に苦労したりしたことが印象に残っています。この授業を受けてからは、鑑賞した作品が何を伝えたかったのか、作り手の意図を考える習慣が身に付いたように思います。

「ラボ・ワーク」で、予定より早く念願の研究に着手

機械創造工学科には、2年次(または3年次)から研究室に所属し、自分が取り組みたい研究について基礎訓練を受ける「ラボ・ワーク」という科目があります。私はこの授業を履修し、入学時の想定よりも早い段階で研究室に所属することが叶いました。受講するには研究室の教員と面談して許可を得なければなりませんが、4年次の研究室配属まで待たなければならないと考えていた私にとって、本制度は大きな魅力だったので思い切って志望しました。そのおかげで念願だったロケットエンジンの研究に早々に着手でき、自分から行動を起こすことの大切さをひしひしと実感しています。 研究室では、大学院生の研究方法を身近で見て学び、仲間との何気ない会話にも刺激を受ける充実した日々を過ごしています。優秀な先輩方や勉強熱心な仲間と一緒に過ごすことで、さらなる意欲が湧きました。これからも夢に向かってロケットエンジンの研究に邁進したいです。

インタビュー動画

※各科目のリンク先「講義内容詳細」は掲載年度(2022年度)のものです。

理工学部 機械創造工学科

青山学院大学の理工学部は数学、物理、化学、生命科学といったサイエンスと、テクノロジーの基礎から最先端を学ぶ環境を整備しています。国際レベルの研究に取り組む教員のもと、最新設備を駆使した実験、演習、研究活動の場を提供するとともに、独自の英語教育を全7学科統一で実施。未来志向のカリキュラムにより、一人一人の夢と可能性を大きく広げます。
機械創造工学科が掲げるモットーは、「未来を創造する機械工学」。自動車産業や重工業などに不可欠な広範囲の工学を基盤に、ソフトウェア技術を組み合わせることで、夢のある心豊かなものづくりを志向する独自の工学を推進しています。その根底には「人と社会と自然の共存」という大命題があります。このテーマを実現するための創造力と想像力を養い、21世紀のものづくりを担う人材を育成します。

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