文理融合の学びを力に、情報セキュリティで社会に貢献できるエンジニアに
<2025年度 学業成績優秀者表彰 最優秀賞受賞>
社会情報学部 社会情報学科 4年

OVERTURE
情報セキュリティに関する技術を身に付け、研究に意欲的に取り組んできた山﨑愛乃さん。その実直な姿勢が学会での受賞や学業成績優秀者表彰の最優秀賞という結果につながりました。国際学会での発表に向けて開発したアプリの改良に取り組むなど、さらに学びを深めています。
もともと好きだった数学と情報の学習が、大学でより楽しく
高校の頃は国語と数学が両方好きで、文理選択で悩んだこともありました。最終的に文系を選びましたが、「数学を学べないのは寂しい」という思いがずっとあり、大学では文理融合の学部に進学したいと考えるようになりました。大学を探す中で青学の社会情報学部を知り、中学(数学)・高校(数学・情報)の教員免許を取得できる点や数学をしっかり学べる点に魅力を感じました。また、私自身小さい頃からパソコンを触るのが好きだったこともあり、情報分野についても学べることに引かれて進学を決めました。
高校では文系だったので「数学Ⅲ」を履修しておらず、大学の授業についていけるか不安がありました。ですが、「数学Ⅱ・B」から復習できる授業が用意されていたほか、「数学質問部屋」では先生やSA(スチューデントアシスタント)の方に、どんな質問でも気軽に相談できたため、安心して学びを進めることができました。
情報系の科目では、1年次の「コンピューティング実習」など、プログラミングを学んだ上で実際に簡単なウェブアプリケーションを作る授業がとても楽しく、意欲的に取り組みました。3年次の「プログラミング応用」では、プログラミング言語の構造を学びながら毎週異なる言語に触れるのですが、幅広い言語の基本を学んだ経験が、企業のインターンシップ(インターン)で非常に役立ちました。
VRで伝える、南アジアの女性格差問題
これまで受けた授業の中で特に印象深いのは、「プロジェクト演習入門Ⅰ・Ⅱ」です。この授業は、企業や行政が抱える課題に対してその本質を整理し、解決策を少人数グループで模索する実践的な授業です。その中で私は、社会情報学部発の国際的なプロジェクト「J-BINGO(Japan Bridge for International Governmental Organizations)」に参加し、「南アジアにおける女性の格差問題の周知」をテーマに取り組みました。
どのような方法で周知するかを考えるにあたって、現地に滞在する方や国際機関などに南アジアの現状についてインタビューを行ったところ、都市部と地方では、教育やインフラ面において課題の様相が異なることが分かりました。グループ内にいるVR技術に強いメンバーの協力を得て、現地の状況をVRで周知する方法を思いつき、ネパールでボランティアをされている方にご協力いただいて動画撮影を行いました。
プロジェクトの成果はワークショップとして発表し、例えば郊外にある通学が困難な地域や、トイレが男女で分かれていない現状などを360度映像で体験してもらいました。参加者からはVRで体験することで現地の様子がよく分かったという声が多く寄せられ、周知の方法として実際に体験してもらう方法を選んで良かったと感じました。
前期から後期にかけて長期間にわたって活動しましたが、さまざまな方に積極的にコンタクトをとってプロジェクトをやり遂げることができ、自信につながったと思います。
ユーザー視点で開発に取り組み、学会で特別賞を受賞
3年次からはゼミナール(ゼミ)に所属しますが、私は情報分野の中でも特にセキュリティと教育に興味があり、これらのテーマを扱っている伊藤一成先生のゼミを志望しました。セキュリティに興味を持ったきっかけは、集中講義で受講した「情報セキュリティ」で初めてハニーポット(セキュリティ対策の一環として設置する「罠」のようなシステム)を見て、セキュリティを高めることが生活を守ることにつながると実感したことでした。
現在は、高校の「情報Ⅰ」の授業で学ぶ情報セキュリティのうち、「鍵暗号方式」の理解を助けるウェブアプリケーションの開発を行っています。鍵暗号方式とは、データをやり取りする際に“鍵”を用いて暗号化を施し、通信経路で盗聴されても機密性を保持するための技術です。教科書に載っている図だけで理解するのは難しく、生徒自身が体験的に学ぶことが望ましいという発想のもと、ゼミの先輩がアプリ「BOUCHO」の開発を始めました。
従来の「BOUCHO」は授業用として、教員が説明して生徒が使うという想定で作られていたため、自習での利用が困難でした。そこで、1人でも学習を進められるような構造に変更し、より体験的な学びを深める心理的効果を狙って、視覚的に理解しやすいようピクトグラムを活用した「BOUCHO2」へと改良しました。
この成果は「2024年度情報処理学会関西支部支部大会」で発表し、「ジュニア会員特別賞」を受賞することができました。初めて参加した学会発表で大変緊張しましたが、賞をいただけて嬉しかったです。授業でプログラミングを学んだとはいえ、最初の頃はエラーが起きるとなかなか解決できずに開発が進まず、落ち込んだこともありました。しかし、先生や先輩の丁寧な助言が支えとなり、開発を最後までやり遂げることができました。
ジュニア会員特別賞を受賞した時の写真
開発したアプリは、社会情報学部の学生が1年次に履修する「情報科学概論」の授業の中で実際に使ってもらい、受講生からのフィードバックをもとに評価を行っています。あまり理解が進んでいないと見受けられる点があったので、インターフェースを変えるなど、現在も改良を進めています。9月には、改良したアプリを携え、国際学会での発表に挑戦する予定です。
情報科学概論で鍵暗号方式について授業をしている様子
情報セキュリティと教育の両軸で、社会に貢献できるSEに
大学での学びを通して、作ったものを使っていただくことで社会に貢献できるという点に魅力を感じ、卒業後はIT企業でSE(システムエンジニア)として働く予定です。私が配属されるのは情報セキュリティの部署ですが、そこでは学校に出向いてセキュリティに関する出張授業をすることもあると伺い、ゆくゆくはそうした教育に関する仕事にも携わりたいと思っています。
就職活動にあたっては、早いうちからインターンや説明会などに参加してみて、実際に企業の様子を自分の目で確かめることが重要だと思います。あまり恐れずに、さまざまなインターンに参加してみると良いのではないでしょうか。私は進路・就職センターでエントリーシートの添削や面接練習をしていただきましたが、青学は就職支援も手厚いので、積極的に利用してみることをおすすめします。
文理融合という点に引かれて社会情報学部に入学しましたが、実際に学んでみて、この学部を選んでよかったと感じることが多々ありました。1年次からウェブサイトやアプリケーションなどを作るための技術を学び、その技術を使ってどう課題解決につなげるのか、実際のプロセスを学べる機会が豊富にあることが大きな魅力です。知識を吸収して終わりではなく、実際に手を動かして理解度を深められることが、高校までとは異なる大学ならではの学びだと思います。社会情報学部では、自分の興味を持ったことについて社会と技術をつなぐ方法を自由に研究できる環境が整っていますので、実践的に学びたい方におすすめしたい学部です。
キャンパスツアーガイドボランティアで案内する山﨑さん
※各科目のリンク先「講義内容詳細」は掲載年度(2025年度)のものです。
社会情報学部
現実の社会には文系・理系の境界はなく、高度情報化社会と呼ばれる現代では、文系・理系の双方に精通していることがアドバンテージとなります。さまざまな社会的課題を解決するため社会情報学部においても“文理融合”の学びを追究しています。文系の「社会科学」「人間科学」と、理系の「情報科学」の各専門領域をつなぎ、各分野の“知”を“融合知”に高めるカリキュラムを整備。新たな価値を創造し、社会へ飛び立てる力を育みます。
文理の垣根をなくした「文理融合」をコンセプトに、社会・情報・人間の複数分野にまたがる学際的な学びを展開。学問領域をつなぐことで生まれる新たな価値観で、一人一人の可能性を広げ、実社会における複雑な問題の解決に貢献できる人材を育てます。
